なぜ同じ火山でも活動が活発になったり静かになったりするのか?

結論からいうと、火山活動が活発になったり静かになったりするのは、地下から供給されるマグマや火山ガス、熱水の量と動き、圧力、火道の状態が時間とともに変わるからです。 新しいマグマが地下へ入り、浅い場所へ上昇すると、岩盤を押したり割ったりして火山性地震や地殻変動が増え、火山ガスの放出量や熱活動が変化することがあります。反対に、マグマ供給が弱まったり、上昇していたマグマが途中で止まったり、ガスが抜けて圧力が下がったりすると、活動は静まることがあります。

ただし、活動が活発になったからといって、必ず噴火するわけではありません。地下でマグマが動いて地震や山体膨張が起きても、マグマが地表へ到達せずに止まり、そのまま活動が落ち着くことがあります。火山活動は、同じ火山の中でも「高まり」と「静穏」を繰り返すことがあるのです。

目次

火山活動の「活発」と「静穏」は何を見て判断するのか

気象庁は、火山活動を、マグマ、熱水、火山ガスなどの移動に伴って起こる噴火、地震、地殻変動、噴煙活動などの総称としています。

そのため、火山活動が活発かどうかは「噴火しているか」だけでは判断しません。主に次のような観測を組み合わせて評価します。

  • 火山性地震や火山性微動の回数・場所・大きさ
  • GNSSや傾斜計で測る山体の膨張・収縮
  • 火山ガスの放出量や成分
  • 噴煙や噴気の量・高さ
  • 地表面や噴気地帯の温度変化

気象庁は、これらの観測値を過去の活動履歴や平常時の状態と比較し、「活発な状況」「やや活発な状況」「静穏な状況」などと評価しています。

つまり「活発」「静穏」は火山同士を単純に比べる言葉ではなく、その火山自身の通常状態からどれくらい変化しているかを見ることが大切です。

理由1:地下から新しいマグマが供給されると活動が高まりやすい

火山活動が活発化する大きなきっかけの一つが、地下深部から新しいマグマが供給されることです。

マグマが地下のマグマだまりや火道へ入り込むと、その体積と圧力によって周囲の岩盤を押し広げます。すると山体がわずかに膨張したり、岩盤が割れて小さな地震が増えたりします。

USGSは、火山が「unrest(活動の高まり)」に入ると、地震活動、地殻変動、火山ガスなどが平常時から変化することがあると説明しています。

新しいマグマの供給が続き、浅い場所へ移動するほど、地表で観測される変化が大きくなる場合があります。

理由2:マグマが上昇すると岩盤を割り、火山性地震が増える

マグマは地下にある既存の通り道だけを静かに流れるとは限りません。上昇する途中で岩盤に圧力を加え、新しい亀裂をつくったり、古い割れ目を広げたりすることがあります。

そのとき周囲の岩石が破壊されると、火山性地震として観測されます。また、マグマ、火山ガス、熱水などの流体が移動すると、火山性微動が起こることもあります。

気象庁は、火山性微動について、地下のマグマや火山ガス、熱水などの移動や振動が原因と考えられるものがあり、火山活動が活発化したときや噴火時に多く観測されるとしています。

ただし、地震が増えたから必ずマグマが噴火直前まで上がっているとは限りません。熱水の移動や断層活動でも地震が起こるため、他の観測と合わせて判断します。

理由3:火山ガスの放出が増えると活動変化の手がかりになる

マグマには水蒸気、二酸化炭素、二酸化硫黄などの揮発性成分が含まれています。

マグマが上昇すると周囲の圧力が低くなり、マグマに溶け込んでいたガスが分離しやすくなります。炭酸飲料のふたを開けると気泡が出るのに似た現象です。

USGSは、火山ガスの量や化学組成が、地下にあるマグマの種類、量、深さと関係し、放出量の増加や新しい噴気孔の出現が活動高まりの初期サインになることがあると説明しています。

気象庁も、二酸化硫黄の放出量を火山活動評価の重要な指標として観測しています。

反対に、マグマ供給が弱まったり、ガス放出が減ったりすれば、活動が低下している可能性があります。ただしガスの通り道が塞がれて地表への放出量が減る場合もあるため、単純に「ガスが少ない=安全」とは判断できません。

理由4:マグマだまりの圧力が上がったり下がったりする

火山の地下には、マグマが一時的にたまる領域があります。そこへ新しいマグマが入れば圧力が上がりやすくなります。

圧力が増えると、山体が膨張したり、割れ目が開いたりし、マグマがさらに浅い場所へ移動する可能性があります。

一方、噴火でマグマやガスが外へ放出されたり、地下でマグマ供給が止まったりすると、圧力が低下することがあります。山体が収縮する方向の変化が観測される場合もあります。

このように火山活動は、地下の圧力が一定ではなく、供給・蓄積・放出のバランスによって変化するため、活発な時期と静かな時期が生まれます。

理由5:火道が開いているか、塞がっているかでも変わる

マグマや火山ガスが地表へ向かう通り道を火道と呼びます。

火道が比較的開いている火山では、ガスやマグマが地表へ抜けやすく、小規模な噴火やガス放出が繰り返されることがあります。

一方、火道の中でマグマが冷えて固まったり、岩石や噴出物で通路が狭くなったりすると、ガスが抜けにくくなります。そこで新たにマグマが供給されると、地下の圧力が高まりやすくなります。

USGSの研究では、マグマの通り道が開くことは噴火へ進みやすくする要因の一つで、逆に構造的な障害物にぶつかったり、上昇速度が遅くなったりすると、マグマが地表へ達せず止まることがあるとされています。

理由6:マグマが上がっても途中で止まることがある

火山活動が高まったのに噴火せず静まる代表的な理由が、マグマの上昇停止です。

新しいマグマが地下へ入り込むと、地震や地殻変動が急に増えることがあります。しかし、マグマが冷えて粘り気を増したり、ガスが途中で抜けたり、硬い岩盤や構造的な障害物にぶつかったりすると、上昇を続けられない場合があります。

USGSは、このようにマグマが浅い場所まで上昇しても地表へ到達しないケースを「failed eruption」として研究しており、活動高まりが必ず噴火へつながるわけではないことを示しています。

そのため、地震や山体膨張が増えたあと、数週間から数か月かけて徐々に活動が低下することがあります。

理由7:マグマからガスが抜けると圧力が下がることがある

マグマの上昇や噴火を支える重要な力の一つが火山ガスの圧力です。

マグマからガスが効率よく抜けると、内部の圧力が低下し、マグマを押し上げる力が弱くなることがあります。上昇速度が遅いほど、地表に達する前にガスが抜けやすくなる場合があります。

USGSの研究でも、十分にガスが抜けることやマグマ供給が減ることは、噴火に至らず活動が弱まる要因として挙げられています。

一方、粘り気の大きいマグマでガスが閉じ込められると、圧力が蓄積し、爆発的な噴火へつながることがあります。

理由8:熱水や地下水の変化でも活動が高まることがある

火山の地下では、マグマだけでなく熱水や地下水も動いています。

地下の熱源が強くなると地下水が加熱され、蒸気や熱水の圧力が高まることがあります。その結果、火山性地震や微動、噴気の増加、地熱域の拡大などが起こる場合があります。

このような活動は「熱水活動」と関係しており、必ずしも新しいマグマが浅い場所まで上昇しているとは限りません。

USGSも、火山周辺の地震群は、マグマの移動だけでなく、熱水や火山ガスの移動によって起こることがあると説明しています。

つまり、火山活動が活発化したように見えるときでも、その原因は一つではありません。

噴火すると火山活動はすぐ静かになるのか

必ずしもそうではありません。

噴火によってマグマやガスが放出され、地下の圧力が下がれば活動が弱まる場合があります。しかし、地下深部から新しいマグマの供給が続いていれば、噴火後も地震やガス放出が続き、再び噴火することがあります。

また、一つの噴火活動の中で、数時間から数日、あるいはもっと長い休止をはさんで噴火が繰り返される場合もあります。

そのため、噴火が一度止まったことだけで「活動は終わった」とは判断できません。地震、地殻変動、火山ガスなどが平常状態へ戻っているかを総合的に見る必要があります。

静かな期間でも火山の地下では変化が続いていることがある

火山活動が静穏な時期でも、地下のマグマ系や熱水系が完全に止まっているとは限りません。

マグマが深部でゆっくり冷えていたり、少量のガスが放出されていたり、地下水が熱せられて温泉や噴気活動が続いていたりします。

USGSは、火山ごとの「背景レベル」を知るため、静かな時期にも地震、地殻変動、ガス、水質などを長期間観測しています。その平常値があるからこそ、普段とは違う変化を早く見つけることができます。

つまり「静穏」とは、地下に何も起きていない状態ではなく、現在の観測値がその火山の通常範囲に収まっている状態と考えるほうが正確です。

なぜ同じ火山でも活動の周期が一定ではないのか

火山活動は、時計のように正確な周期で繰り返されるわけではありません。

深部からのマグマ供給量、マグマだまりの大きさ、火道の状態、ガスの抜け方、地下水との相互作用などが毎回同じではないためです。

ある時期は短い間隔で小規模な噴火を繰り返し、その後何十年も静かな状態になる火山もあります。逆に、長い休止期間の後に活動が再開することもあります。

そのため「前回から○年たったから、そろそろ噴火する」と単純に判断することはできません。現在の観測と過去の活動履歴を組み合わせる必要があります。

活動が高まっても噴火しないことは珍しくない

火山で地震が増えたり、山体が膨張したりすると、「噴火が近い」と考えたくなります。しかし実際には、活動高まりが噴火に至らず終わるケースがあります。

USGSは、マグマの貫入によって地震や地殻変動が起きても、マグマが地表へ到達せず、活動が数週間、数か月、場合によっては数年続いた後に低下することがあるとしています。

逆に、一度活動が低下した後に再びマグマ上昇が始まり、観測値が増えることもあります。

このため火山監視では、一時的な増減だけでなく、複数の観測データが同じ方向へ変化しているか、変化が継続しているかを重視します。

火山活動の変化をどう監視しているのか

気象庁では、火山の状態変化を捉えるために複数の観測を組み合わせています。

  • 地震観測:火山性地震や微動の増減、震源の場所を確認する
  • 地殻変動観測:GNSSや傾斜計で山体の膨張・収縮を測る
  • 火山ガス観測:二酸化硫黄などの放出量を測る
  • 熱観測:火口周辺や噴気地帯の温度変化を見る
  • 遠望観測:噴煙、噴気、火映、噴出物などを監視する

たとえば、地震だけが一時的に増えても、地殻変動や火山ガスに変化がなければ、その意味は限定的かもしれません。反対に、地震・膨張・ガス増加が同時に起これば、地下のマグマ活動が高まっている可能性をより慎重に評価します。

「静かになった」ことも複数の観測で判断する

活動低下も、噴火が止まったという一点だけで判断しません。

火山性地震が減り、山体の膨張が止まり、火山ガス放出量や熱活動が低下し、噴煙活動も平常状態へ近づくなど、複数の観測が落ち着く方向へ向かうかを見ます。

気象庁も、「静穏な状況」という表現を使う際には、観測データや過去の活動履歴と比較して現在の状態を評価しています。

ただし、静穏化した後でも火山活動が再び高まる可能性はあります。火山は長期的に状態を変化させるため、継続監視が重要です。

活発化と静穏化を分ける主な条件を整理すると

  • マグマ供給が増える:地下圧力が上がり、地震・膨張・ガス放出が増えやすい
  • マグマが浅部へ上昇する:岩盤破壊や火山性微動が増えることがある
  • 火道が開く:マグマやガスが地表へ移動しやすくなる
  • ガス圧が高まる:噴火へ向かう力が強くなることがある
  • マグマ供給が弱まる:地下圧力が下がり、活動が静まりやすい
  • マグマ上昇が止まる:活動高まりが噴火せず終わることがある
  • ガスが抜ける:圧力が下がり、マグマ上昇が弱まる場合がある
  • 熱水系が変化する:マグマ噴火がなくても地震や噴気活動が増減することがある

まとめ

火山活動が活発になったり静かになったりする最大の理由は、地下のマグマ・火山ガス・熱水の供給と移動、圧力、通り道の状態が時間とともに変化するからです。

  • 新しいマグマが地下へ入ると、地震や山体膨張が増えやすい
  • マグマが上昇するとガスが分離し、火山ガス放出量や熱活動が変わることがある
  • 火道が開くか塞がるかによって、マグマやガスの移動しやすさが変わる
  • マグマ供給が減ったり、上昇が途中で止まったりすると活動は静まりやすい
  • 活動高まりがあっても、必ず噴火するわけではない
  • 噴火後も地下からの供給が続けば、活動が再び強まることがある
  • 活発・静穏の判断は、地震、地殻変動、火山ガス、熱、噴煙などを総合して行う

つまり火山は、「活動中」と「停止中」の二つだけに分かれるものではありません。地下のマグマ系と熱水系が少しずつ変化し、その結果として活動が高まったり落ち着いたりします。現在静かに見える火山も、将来状態が変わる可能性があるため、長期的な観測が欠かせないのです。

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