なぜ氷点下の霧で風が吹くと樹木や電線、風車に着氷が発達しやすいのか?

氷点下の霧で風が吹くと樹木や電線、風車に着氷が発達しやすいのは、霧の中にある過冷却の微小な水滴が風によって物体へ次々と運ばれ、表面へ衝突した瞬間に凍るからです。風が続けば新しい霧粒が途切れず供給されるため、氷は風上側を中心に少しずつ厚くなります。これが霧氷や着氷の成長につながります。

つまり、風は単に霧粒を移動させるだけではありません。氷点下では、風が「霧粒を物体へ衝突させる輸送役」になることで、樹木、電線、風車、航空機などへの着氷を発達させるのです。

目次

着氷とは何?

気象庁は着氷を、水滴が地物に付いて凍結する現象と説明しています。

長野地方気象台はさらに、空気中の過冷却した小さな水滴が木、架線、電線、地上の物体へ衝突して凍結することで着氷が生じるとしています。

このうち霧や雲の微小な過冷却水滴が凍りついてできる白っぽい氷は、霧氷や樹氷などとして見られます。

過冷却とは何?

水は0℃以下になれば必ずすぐ凍るわけではありません。

非常に小さな水滴では、凍結のきっかけとなる氷晶や凍結核が少ないため、0℃以下でも液体のまま存在することがあります。

この状態を過冷却と呼びます。

長野地方気象台は、霧や雲の粒は非常に小さく、マイナス10〜20℃程度でも凍るきっかけがなければ水滴のままでいられることがあると説明しています。

なぜ過冷却の霧粒は物体に当たると凍るの?

液体のまま漂っていた過冷却水滴が、0℃以下に冷えた樹枝や電線などへ衝突すると、その固体表面が凍結のきっかけになります。

すると水滴は短時間で凍り、表面へ付着します。

FAAも航空機着氷について、過冷却水滴が機体表面へ衝突すると凍結・付着すると説明しています。

つまり着氷には、

  • 液体の過冷却水滴が存在すること
  • 物体表面へ衝突すること
  • 表面温度が凍結に適した低温であること

が重要です。

なぜ風があると着氷が増えやすいの?

風があると、単位時間あたりに物体へ到達する霧粒の数が増えるからです。

霧粒は非常に小さいため、空気の流れに乗って移動します。

その空気が樹木や電線などへぶつかると、流れは物体を回り込みますが、すべての霧粒が完全に流線へ追従できるわけではありません。

一部の霧粒は慣性によって物体表面へ衝突し、そこで凍ります。

風速が上がれば、一定時間に通過する空気量も増えるため、条件によっては着氷の供給量も増えます。

なぜ風上側に氷がつきやすいの?

霧粒を含んだ風が最初に当たる場所だからです。

木の枝、電線、ポール、風車ブレードなどでは、風上側の表面が霧粒を最も受け止めます。

そのため着氷は物体の風上側へ偏って成長しやすくなります。

山頂の標識や樹木に、風の来た方向へ向かって白い氷が羽根のように伸びていることがあるのはこのためです。

風が強ければ強いほど必ず着氷が増えるの?

必ずしも単純ではありません。

風が強まれば霧粒の供給量や衝突率が増えることがありますが、着氷量は霧の液体水量、粒径、気温、表面温度、風向、物体の形状にも左右されます。

また、風が極端に強いと霧そのものの構造が変わったり、氷片が脱落したりすることもあります。

したがって、風速だけで着氷量を決めることはできません。

霧氷と雨氷は何が違うの?

どちらも過冷却水滴が凍って付着する現象ですが、主な水滴の大きさや凍り方が違います。

霧氷では、比較的小さな霧粒・雲粒が物体へ衝突して急速に凍るため、白く不透明で空気を多く含んだ氷になりやすくなります。

一方、雨氷ではより大きな過冷却の雨滴が付着し、凍るまでに少し流れるため、透明で硬い氷になることがあります。

FAAも、微小な過冷却水滴が急速に凍るとrime iceとなり、より大きな水滴ではclear/glaze iceになりやすいと説明しています。

なぜ樹木に着氷すると枝が折れることがあるの?

氷が積み重なると枝へ大きな重量が加わるからです。

細い枝は表面積が大きく、風上側で霧粒を受け続けるため、条件が長く続くと氷が厚くなります。

枝自体の重さに氷の重さが加わると、曲げ応力が大きくなり、枝折れや倒木につながることがあります。

さらに風が強ければ、着氷した枝が風を受ける面積も増え、機械的な負荷が大きくなる場合があります。

電線では何が問題になるの?

電線や架線へ着氷すると、線そのものの重量が増えます。

長いスパン全体へ氷が付着すれば、電線はたわみ、支持柱や鉄塔へかかる荷重も増えます。

NWSがまとめた2021年ノースダコタ州の事例では、氷点下の濃霧が数日続き、送電線に厚い霧氷が形成され、電線の垂れ下がりや断線、電柱の破損、停電が発生しました。

このように、霧による着氷でも長時間続けば社会インフラへ大きな影響が出ることがあります。

なぜ細い電線でも大量の氷がつくことがあるの?

電線は細くても長いため、全体では大きな面積が霧を受けます。

また円柱状の電線では、風上側へ霧粒が継続的に衝突します。

着氷が始まると表面の形が変わり、さらに霧粒を受けやすい突起や凹凸ができることもあります。

そのため、小さな着氷が時間とともに大きな荷重へ成長する場合があります。

風車ではなぜ着氷が問題になるの?

風力発電機のブレードは高速で回転し、空気中の霧粒・雲粒へ相対的に大きな速度で衝突します。

氷点下の霧や低い雲の中では、過冷却水滴がブレード前縁へ付着し、着氷が成長します。

着氷するとブレード表面の形が変わり、空気の流れが乱れて発電効率が低下することがあります。

また氷の偏りによって回転バランスが崩れたり、氷片が落下・飛散したりするリスクもあります。

風車は風を利用するのに、風が着氷を増やすこともあるの?

あります。

風力発電にとって風はエネルギー源ですが、氷点下の霧があると、その同じ風が過冷却水滴をブレードへ大量に運びます。

つまり「風があるほど発電に有利」という条件と、「風が霧粒を運ぶほど着氷が成長しやすい」という条件が同時に存在することがあります。

寒冷地の風力発電では、この両方を考える必要があります。

航空機でも同じ仕組みなの?

基本的な衝突・凍結の仕組みは同じです。

航空機が過冷却の雲や霧の中を飛ぶと、機体自身が高速で水滴へ衝突します。

FAAは、rime iceを「小さな過冷却水滴が航空機へ衝突した後、急速に凍ることでできる粗く白い氷」と定義しています。

つまり地上では風が霧粒を物体へ運び、航空機では機体の移動速度が霧粒との相対風を大きくする、という違いはありますが、過冷却水滴の衝突凍結という本質は共通しています。

着氷すると航空機では何が危険なの?

翼の形が少し変わるだけでも、空気の流れが乱れて揚力や抵抗に影響します。

FAAは、rime iceの粗い表面が航空機の空力特性を乱し得ると説明しています。

また着氷はプロペラ、アンテナ、センサー、エンジン吸入口などへも影響することがあります。

このため航空分野では、過冷却水滴を含む可視水分と気温の組み合わせを重要な着氷条件として監視します。

なぜ山で霧氷が発達しやすいの?

山では、湿った空気が斜面に沿って上昇して冷え、山頂付近が雲や霧の中に入ることがあります。

気温が0℃以下なら、そこには過冷却の霧粒が存在する場合があります。

さらに山頂や尾根では風が強いことが多いため、樹木、岩、標識、観測機器などへ霧粒が次々と衝突します。

その結果、風上側へ白い霧氷が大きく成長することがあります。

樹氷も同じような現象なの?

樹氷にはさまざまな成長過程がありますが、過冷却の霧粒や雲粒が樹木へ衝突して凍る作用は重要な要素です。

特に山岳地で強い風と過冷却雲粒が長時間続くと、枝の風上側へ氷が成長しやすくなります。

雪の付着や氷晶の堆積なども加わる場合があるため、実際の樹氷は一つの過程だけで説明できないこともあります。

気温が低いほど着氷は必ず多くなるの?

そうとは限りません。

着氷には液体の過冷却水滴が必要です。

気温が非常に低くなると、雲の中で水滴より氷晶が多くなり、液体水量が減ることがあります。

FAAも、温度が低下するほど雲中の氷粒子の割合が増え、過冷却液体水が減る傾向を説明しています。

そのため「寒いほど着氷が多い」ではなく、過冷却液体水が十分に存在する温度帯かどうかが重要です。

霧が濃いほど着氷も増えるの?

一般には液体水量が多いほど、物体へ供給される水滴も増える可能性があります。

しかし見た目の濃さだけでは、粒径や液体水量を正確に判断できません。

同じ視程でも霧粒の大きさや数密度が違えば、着氷効率は変わります。

着氷予測では、視程だけでなく温度、液体水量、粒径分布、風速などが重要です。

着氷は風向が変わると形も変わるの?

変わります。

着氷は主に風上側で成長するため、風向が長時間一定なら氷も一方向へ伸びやすくなります。

途中で風向が変われば、新しい風上面へ霧粒が衝突し始め、複雑な形の着氷になることがあります。

山岳地の霧氷の向きから、卓越風向を推定できる場合があるのはこのためです。

着氷が始まったら自然にどんどん増え続けるの?

条件が続く間は成長しますが、必ず増え続けるわけではありません。

気温が上がって0℃を超える、霧が消える、風向が変わって過冷却水滴の供給が止まるなどすると、成長は弱まります。

日射や暖気で融解したり、氷の自重や風で脱落したりすることもあります。

着氷を予測するには何を見ればいいの?

重要なのは、気温だけではありません。

主に、

  • 0℃以下の気温
  • 霧・低い雲などの可視水分
  • 過冷却液体水の存在
  • 風速と風向
  • 霧粒の大きさや液体水量
  • 物体表面温度

を組み合わせて考える必要があります。

着氷対策にはどんなものがあるの?

設備によって異なりますが、加熱、撥水・防氷処理、機械的な除氷、運転停止、監視などがあります。

電力設備では着氷荷重を考えた設計や巡視、風車では着氷検知と停止・除氷、航空機では防氷・除氷装置や着氷域の回避などが行われます。

重要なのは、氷が厚くなってから対処するだけでなく、気象条件から着氷リスクを早めに把握することです。

「霧粒は風に乗って移動できる」記事とは何が違うの?

霧粒と風の基本的な関係を扱う記事では、霧粒が小さく空気抵抗の影響を強く受けるため、空気と一緒に水平・上下方向へ移動できる理由が中心です。

一方、この記事では、その風で運ばれた霧粒が氷点下で樹木・電線・風車などへ衝突すると凍り、着氷という具体的な影響へつながる理由を扱っています。

「霧の種類によって風の役割が違う」記事とは何が違うの?

霧の形成と風を扱う記事では、放射霧では弱風、移流霧では湿った空気を運ぶ風など、霧の種類ごとに形成・維持へ風がどう働くかが中心です。

一方、この記事では霧の形成後に、過冷却霧粒を風が物体へ運び、衝突させることで着氷を発達させる「影響・応用」が中心です。

まとめ

氷点下の霧で風が吹くと樹木や電線、風車に着氷が発達しやすいのは、過冷却の霧粒が風によって物体へ次々と運ばれ、衝突した瞬間に凍結するからです。

風が続けば霧粒の供給も続くため、着氷は風上側を中心に厚くなります。その結果、樹木では枝折れ、電線ではたわみ・断線、風車では発電効率低下や氷片落下、航空機では空力性能低下などの問題が起こる可能性があります。

氷点下の霧における風は、単に霧を動かすだけでなく、「過冷却水滴を物体へ運び続けることで、着氷を成長させる力」になるのです。

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