なぜ植物の葉では光合成が行われるのか?

植物といえば、葉で光合成をするイメージがあります。実際、多くの陸上植物では葉が光合成の中心です。では、なぜ植物はわざわざ薄く広い葉をつくり、そこで光合成を行うのでしょうか。

結論からいうと、葉には光を受けやすい広い面積、二酸化炭素を取り込む気孔、多数の葉緑体を含む葉肉細胞、そして根から水を運び光合成産物を運び出す葉脈が一つの器官に集まっているためです。葉は、光・二酸化炭素・水という光合成に必要な条件を効率よく出会わせる構造になっています。

目次

光合成には光・二酸化炭素・水が必要

光合成では、植物が光エネルギーを利用して二酸化炭素と水から有機物をつくります。その過程で酸素も生じます。

この反応を行うためには、光を受け取ること、大気中から二酸化炭素を取り込むこと、根から水を供給することが必要です。

葉はこの三つの条件を同時に満たしやすい器官です。地上に広がって光を受け、表面の気孔から二酸化炭素を取り込み、葉脈を通じて根から水を受け取ります。

葉は薄く広いため光を受けやすい

光合成を行うには、光合成組織へ光を届ける必要があります。葉が広ければ多くの光を受けられます。

一方、葉が非常に厚い塊なら、表面で多くの光が吸収され、内部まで届きにくくなります。葉が薄いことで、多くの葉肉細胞を光が届きやすい位置に配置できます。

薄く広い形は、少ない材料で大きな受光面積をつくるうえでも効率的です。葉は、光を受ける「面」として発達した器官といえます。

葉肉細胞には多くの葉緑体がある

光合成の中心的な反応は、細胞内の葉緑体で行われます。

葉緑体の内部にはチラコイド膜があり、クロロフィルなどの色素や光化学系が存在します。ここで光エネルギーが吸収され、電子伝達を通じてATPやNADPHなどの化学エネルギーへ変換されます。

さらに葉緑体のストロマでは、二酸化炭素を有機物へ取り込むカルビン・ベンソン回路が進みます。

葉の葉肉細胞には葉緑体が多く配置されているため、光を受けて炭素を固定する反応を効率よく行えます。

光を受け取る反応はチラコイド膜で進む

葉緑体のチラコイド膜にはクロロフィルを含む光化学系があります。

クロロフィルが光を吸収すると電子が高いエネルギー状態になり、その電子が複数のタンパク質を通って移動します。この電子伝達に伴ってATPが合成され、NADP+がNADPHへ還元されます。

同時に水が分解され、電子の供給源として使われます。このとき酸素が生じます。

つまり、植物が放出する酸素は、二酸化炭素から直接生じるのではなく、光反応で水が分解される過程に由来します。

二酸化炭素は葉の気孔から入る

光合成で炭素を固定するには、大気中の二酸化炭素を葉緑体まで届ける必要があります。

葉の表皮には気孔があり、気孔が開くと二酸化炭素が大気から葉内部の細胞間隙へ拡散します。そこから葉肉細胞の表面、水相、細胞膜、細胞質、葉緑体包膜を通り、最終的に葉緑体のストロマへ到達します。

気孔は二酸化炭素の入口ですが、同時に水蒸気の出口でもあります。そのため、植物は光合成を行いたいときに気孔を開きつつ、乾燥時には閉じて水分損失を抑えます。

葉の内部には二酸化炭素が広がる空間がある

葉肉細胞は隙間なく詰まっているわけではありません。海綿状組織などには細胞間隙があり、気孔から入った気体が葉内部へ広がれます。

この空間によって、二酸化炭素は葉の表面近くだけでなく、内部の多くの葉肉細胞へ到達できます。

葉の薄さ、細胞間隙、葉緑体の配置は、光だけでなく二酸化炭素を効率よく葉肉細胞へ届けるうえでも重要です。

葉緑体では二酸化炭素が有機物へ取り込まれる

気孔から入った二酸化炭素は、葉緑体のストロマで炭素固定に使われます。

C3植物では、Rubiscoという酵素が二酸化炭素をリブロース1,5-ビスリン酸に取り込み、その後の反応で糖などをつくる材料が形成されます。

この反応には、チラコイド膜の光反応でつくられたATPとNADPHが使われます。

つまり光合成は、「光を化学エネルギーへ変える反応」と「そのエネルギーを使って二酸化炭素を有機物へ固定する反応」が葉緑体の中で連携して進む仕組みです。

葉脈が根から水を届ける

光合成には水も必要です。水は主に根から吸収され、茎の木部を通って葉へ運ばれます。

葉の中では、主脈から細い葉脈まで木部が枝分かれし、広い葉面の各場所へ水を分配します。

葉脈が細かく広がることで、葉肉細胞と水輸送経路の距離が短くなります。薄く広い葉で光合成を続けるには、この水の供給網が欠かせません。

気孔を開くと水も失うため、水輸送との連携が必要

植物が気孔を開いて二酸化炭素を取り込むと、同時に葉内部の水蒸気も大気へ出ていきます。これが蒸散です。

そのため、光合成を活発に行う葉ほど、根から継続的に水を補給する必要があります。

葉は気孔で大気とつながり、葉脈で根とつながっています。この二つの構造が組み合わさることで、二酸化炭素を取り込みながら水を補給して光合成を続けられます。

葉脈は光合成でできた糖を運び出す

葉でつくられた有機物は、その葉だけで使われるわけではありません。

光合成で得た炭素はショ糖などの形で師部へ積み込まれ、根、成長中の芽、花、果実、種子、貯蔵器官などへ運ばれます。

つまり葉は、植物体へ炭素資源を供給する「生産器官」です。葉脈は原料である水を入れるだけでなく、製品である光合成産物を外へ送り出す物流網としても働きます。

葉は光を受けやすい位置に配置される

葉は茎や枝から外側へ広がり、多くの植物では互いの葉が完全には重ならないように配置されます。

葉序や葉柄の角度、葉の向きが変わることで、植物体全体として光を受けやすい空間配置がつくられます。

密生した群落では上の葉が強い光を受け、下の葉は弱い光を受けます。そのため葉の角度や葉緑体の性質も光環境に合わせて調整されます。

光合成は一枚の葉だけの性能ではなく、植物体全体で葉をどこへ置くかという構造とも関係しています。

葉の表と裏では役割が少し違う

多くの双子葉植物では、葉の上側には光を受けやすい柵状組織が発達し、その細胞に多くの葉緑体があります。

一方、下側には細胞間隙の多い海綿状組織があり、気体が広がりやすい構造になっています。気孔も下側に多い植物がよく見られます。

このように、葉の厚さの中でも「光を受ける」「気体を通す」「水を運ぶ」という役割が空間的に組み合わされています。

葉が緑色なのも光合成装置が多いことと関係する

葉が緑色に見えるのは、葉緑体に含まれるクロロフィルが青色や赤色の光を強く吸収し、緑色付近の光が相対的に反射・透過されやすいためです。

クロロフィルは光を集める光合成色素なので、健康な葉で緑色が目立つことは、葉緑体が発達していることと深く関係します。

ただし、緑色が濃いほど必ず光合成速度が高いとは限りません。光合成速度は光、二酸化炭素、水分、温度、気孔開度、葉齢など多くの条件で変わります。

葉以外でも光合成は起こる

「光合成は葉で行われる」とよく説明されますが、葉だけが光合成できるわけではありません。

クロロフィルと葉緑体を持ち、光が届き、二酸化炭素を利用できる緑色の茎、未熟な果実、穂、莢などでも光合成が行われることがあります。

海外の研究レビューでは、穂、茎、果実などの非葉器官による光合成が、植物全体の炭素獲得に無視できない寄与をする例がまとめられています。

したがって正確には、「多くの陸上植物で葉が光合成の主な器官である」と考えるのが適切です。

それでも葉が主な光合成器官になるのはなぜ?

葉以外でも光合成できるなら、なぜ葉が中心なのでしょうか。

理由は、葉が光合成に必要な機能を効率よくまとめた専用器官だからです。

  • 広く薄いため光を受けやすい
  • 葉肉細胞に多数の葉緑体がある
  • 気孔から二酸化炭素を取り込める
  • 細胞間隙があり二酸化炭素を拡散できる
  • 葉脈から水を受け取れる
  • 師部から光合成産物を運び出せる
  • 茎や葉柄によって光を受けやすい位置へ配置できる

これらの構造が同時にそろっているため、葉は植物体の中でも特に高い光合成能力を持ちやすくなります。

葉が厚すぎても薄すぎてもよいわけではない

薄い葉は少ない材料で広い面積をつくれますが、薄すぎれば乾燥や損傷に弱くなります。

一方、厚い葉は強い光や乾燥に耐えやすいことがありますが、多くの材料が必要で、内部まで光や二酸化炭素を届ける工夫が必要です。

植物は環境に応じて葉の厚さ、葉肉構造、気孔密度、葉脈密度などを変えます。光合成に適した葉の形は一つではなく、生育環境とのバランスで決まります。

日陰の葉でも光合成できるように調整される

森林の下層や群落内部では、強い直射光がほとんど届かないことがあります。

そのような場所の葉では、少ない光を効率よく利用するように光捕集系や葉の厚さが調整されます。日なた葉と日陰葉では、葉の厚さ、クロロフィル組成、光に対する光合成応答が異なることがあります。

葉という基本構造を維持しながら、環境に合わせて内部構造や生理機能を調整できることも、葉が主要な光合成器官として機能する理由の一つです。

強すぎる光はむしろ負担になる

光合成には光が必要ですが、光が強ければ強いほど無制限に光合成速度が上がるわけではありません。

光化学系が処理できる以上の光エネルギーを吸収すると、活性酸素の発生や光阻害につながることがあります。

植物は余分な光エネルギーを熱として逃がしたり、葉や葉緑体の向きを変えたりして光合成装置を守ります。

葉は光を最大限吸うだけの器官ではなく、利用できる量の光を安全に処理する調節機能も持っています。

水不足では光合成が低下する

土壌が乾燥すると、植物は水分損失を防ぐため気孔を閉じます。

すると二酸化炭素が葉の中へ入りにくくなり、葉緑体での炭素固定が制限されます。さらに強い乾燥では、葉肉細胞や光合成装置そのものにも影響が出ます。

このため、葉に葉緑体が多くても、水と二酸化炭素の供給が不足すれば光合成速度は下がります。葉の光合成は、葉緑体だけではなく気孔・葉脈・根の働きまで含めて成立しています。

葉が老化すると光合成能力も低下する

葉は永遠に同じ状態ではありません。若い葉では葉緑体が発達途中で、成熟すると光合成能力が高まり、その後老化するとクロロフィルや光合成タンパク質が分解されます。

老化した葉では窒素などの養分が若い葉や種子へ回収され、最終的に落葉する場合があります。

植物は葉を永久に維持するのではなく、光合成による利益と維持コストのバランスを見ながら更新しています。

身近な植物で「葉が光合成器官である理由」を観察するポイント

葉の形と光合成の関係は、身近な植物でも観察できます。

  • 葉がどの方向へ広がって光を受けているか
  • 一枚の葉が薄く広い形になっているか
  • 葉を光に透かすと葉脈がどこまで広がっているか
  • 葉の表裏で色や気孔の位置が違うか
  • 日なた葉と日陰葉で厚さや色が違うか
  • 緑色の茎や未熟果実があるか
  • 黄化した葉や老化した葉で緑色が減っているか

こうして見ると、葉の形、葉緑体、気孔、葉脈が別々の特徴ではなく、光合成を成立させるために組み合わされた構造であることがわかります。

まとめ

植物の葉で光合成が行われるのは、薄く広い葉が光を受け、葉肉細胞の葉緑体が光エネルギーを化学エネルギーへ変換し、気孔から二酸化炭素を取り込み、葉脈から水を受け取るという一連の条件が一つの器官にそろっているためです。

葉緑体では、チラコイド膜の光反応でATPとNADPHがつくられ、ストロマの炭素固定反応で二酸化炭素が有機物へ取り込まれます。できた光合成産物は師部を通って植物体のほかの部分へ運ばれます。

葉以外の緑色器官でも光合成は起こりますが、多くの陸上植物では、受光・ガス交換・水輸送・物質輸送を効率よく組み合わせた葉が、光合成の主な器官になっているのです。

参考資料

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