地震の余震に場所や条件による違いがあるのは、本震の大きさや断層の破壊範囲、周囲に残った応力、地下の構造・温度、断層が普段どの速さで力を受けているかなどが地震ごと・地域ごとに違うからです。そのため、余震が非常に多い地震もあれば少ない地震もあり、数日から急速に減る場合もあれば、長期間続く場合もあります。
余震は「本震の残りの揺れ」ではありません。本震によって地下の力のつり合いが変わり、その影響を受けた断層や岩盤が新たにずれることで一つ一つ発生する地震です。したがって、どこでどの程度の力が変化したかによって、余震の場所・数・規模・続き方に差が生まれます。
余震の違いは何を比べるとわかりやすいのか
余震の地域差や条件差は、主に次の4つに分けて考えると理解しやすくなります。
- 余震の数:同じ期間に何回くらい発生するか
- 余震域の広さ:どの範囲まで地震活動が広がるか
- 余震の規模:比較的大きな余震がどの程度含まれるか
- 余震の継続期間:通常の地震活動に近づくまでどれくらいかかるか
これらはすべて本震のマグニチュードだけで決まるわけではありません。断層の長さ、地下の応力状態、地震が起きた深さ、周囲の断層の性質などが組み合わさって決まります。
本震が大きいほど余震は多くなりやすい
一般に、規模の大きな本震ほど広い断層面を破壊し、周囲の応力状態を変える範囲も大きくなります。そのため、余震の数も増えやすくなります。
日本の大きな浅い地震を調べた研究では、本震の地震モーメントが大きくなるほど、その後1か月に発生する余震数も増えるという比例関係が報告されています。
これは、大きな本震ほど「余震を起こしうる範囲」が広がるためと考えるとわかりやすいでしょう。本震によって新たに滑りやすくなった断層や、完全には破壊しなかった断層面の周辺が増えるほど、余震の候補となる場所も増えます。
ただし、同じマグニチュードなら必ず同じ数の余震になるわけではありません。地震ごとのばらつきは大きく、断層の性質や地域の地震活動度によって差が出ます。
本震が大きいほど余震域も広くなりやすい
余震は、本震で破壊した断層面とその周辺に多く発生します。そのため、本震の断層が大きければ、余震が分布する範囲も広くなる傾向があります。
大きな地震では断層破壊が数十kmから数百kmに及ぶことがあります。すると余震域も、震源の一点を中心とした小さな円ではなく、断層の形に沿った長い帯や面として広がります。
USGSも、余震は一般に本震で動いた断層の近く、おおむね本震断層の長さの1~2倍程度の範囲に多く発生すると説明しています。
そのため、同じ「震源から何km」という距離でも、実際の断層面のどの部分に近いかによって余震活動の活発さは変わります。
余震は断層のどこでも同じように起こるわけではない
本震後の応力変化は、断層周辺で一様ではありません。
ある場所では断層を滑らせる方向の力が増え、別の場所では逆に力が弱まることがあります。そのため、本震の断層近くでも余震が密集する部分と、比較的地震が少ない部分ができます。
1995年兵庫県南部地震後の高密度観測でも、余震分布には明瞭な空間的不均一があり、複数の震源クラスターが確認されました。
このような「むら」は、断層面の形、岩盤の強さ、古い断層の分布、本震時のすべり量などの違いによって生じます。
つまり、余震域は均一な地震の雲ではなく、地下構造や応力条件を反映した不均一な分布になります。
余震の減り方にも地震ごとの違いがある
余震は本震直後に多く、その後は時間とともに減るのが一般的です。この減少は、大森・宇津則と呼ばれる経験式でよく表されます。
ただし、すべての余震系列が同じ速さで減るわけではありません。大森・宇津則で使われる減衰の指数は地震系列ごとに異なります。
余震活動の総説では、この違いは地殻構造の不均質性、応力、温度など地域のテクトニックな条件と関係している可能性が指摘されています。ただし、どの要因が最も重要かは地震ごとに単純には決められません。
そのため、ある地震で「1週間でかなり減った」からといって、別の地震でも同じペースで減るとは限りません。
余震が長く続くかどうかは本震の大きさだけでは決まらない
大きな本震ほど余震の数が多くなる傾向はありますが、余震がどれくらい長く続くかについては別の条件も重要です。
USGSが紹介する日本の地震を含む研究では、余震の生産性は本震規模とともに増える一方、余震活動が通常の水準へ戻るまでの期間は、本震の大きさだけでは説明できないとされています。
特に重要なのが、断層が普段どの速さで新たな力を受けているかという応力負荷速度です。
プレート運動などによって断層へ力が速く加わる地域では、本震後の一時的な応力変化の影響が相対的に早く背景活動へ埋もれやすくなります。一方、変形が非常に遅い地域では、本震による応力変化の影響が長く残り、余震系列が非常に長期化する可能性があります。
つまり、「大地震ほど余震が長く続く」という単純な関係ではありません。大きな本震は余震を多く生みやすい一方、どのくらい長期間「余震らしい活動」が続くかは地域の断層運動速度にも左右されます。
深い地震では余震が少ないことがある
余震の起こり方は震源の深さによっても変わります。
気象庁は、震源の深さが100kmより深い地震では、その震源近くで地震活動が活発になった例はまれだと説明しています。
浅い地殻内やプレート境界では、断層周辺に多数の割れ目や不均質構造があり、本震による応力変化によって周囲の断層が次々に動くことがあります。
一方、非常に深い場所では高い圧力と温度のもとで地震が起こり、浅い地殻とは岩石の破壊条件や断層構造が異なります。そのため、典型的な本震-余震型にならない場合があります。
「マグニチュードが大きいから余震も多い」とだけ考えず、震源の深さも見る必要があります。
内陸地震とプレート境界地震で余震の特徴が違うことがある
内陸の活断層で起こる地震と、海溝沿いのプレート境界地震では、断層の規模や周囲の環境が異なります。
内陸地震は比較的浅い場所で起こり、複雑な断層帯を含むことがあります。そのため、近接した断層区間で余震が集中したり、断層端付近に地震活動が広がったりすることがあります。
一方、巨大なプレート境界地震では、破壊面が非常に広いため、余震域も広大になります。さらに、上盤側の地殻内地震や沈み込むプレート内部の地震が誘発されるなど、複数の地震タイプが同時に活発化する場合があります。
このため、同じ余震という言葉でも、どのテクトニック環境で起きているかによって分布の見え方が変わります。
比較的大きな余震が起こるかどうかにも差がある
多くの余震は本震より小さいものの、時々大きな余震が発生します。
本震で周囲の応力が大きく変わると、隣接する断層や本震断層の未破壊部分が動くことがあります。その場合、比較的大きな地震が後から起こることがあります。
気象庁は、大きな地震の発生後、特に最初の2~3日程度は規模の大きな地震が発生することが多く、1週間程度は最初の大地震と同程度、場合によってはそれを上回る地震にも注意が必要としています。
ただし、後から最初の地震より大きな地震が起これば、その地震が本震とみなされ、最初の地震は前震と呼ばれることがあります。
つまり「余震だから必ず本震より小さい」と最初から決めることはできません。
群発地震では「余震」という区分自体が当てはまりにくい
すべての地震活動が明瞭な本震-余震型になるわけではありません。
気象庁は、地震活動のパターンとして、本震-余震型のほか、前震-本震-余震型、群発的な地震活動型を挙げています。
群発地震では、突出して大きな本震がないまま同程度の地震が繰り返されることがあります。その場合、どの地震を本震、その後を余震と呼ぶかが明確ではありません。
火山や流体移動が関係する地域では、断層への応力変化だけではなく、マグマや熱水の移動が地震活動を左右することがあります。
このように、余震の「違い」を考えるときには、そもそもその地震活動が典型的な本震-余震型なのかどうかも重要です。
余震の観測数は観測網によっても変わる
余震の物理的な発生数だけでなく、「何個観測されたか」は観測条件にも左右されます。
本震直後は非常に多くの地震が短時間に発生するため、小さな余震の波形が重なり、すべてを正確に検出できないことがあります。
また、震源近くに観測点が多い地域では小さな余震まで捉えやすく、海域など観測点が少ない場所では同じ規模の小地震でも見逃されやすいことがあります。
大森・宇津則の研究でも、本震直後の小さな余震の検出漏れが、余震減衰を表すパラメータの推定に影響することが指摘されています。
したがって、異なる地域の「余震数」を比較するときは、観測網や検出能力の違いも考慮する必要があります。
余震活動が活発な場所は必ず次の大地震が起こる場所なのか
余震が多い場所は、本震によって地下の応力状態が変化した領域であることを示します。しかし、「余震が多い場所ほど次の大地震が起こりやすい」と単純に判断することはできません。
本震によって断層を動かす力が増えた場所もあれば、逆に減った場所もあります。また、小さな地震が多く起こることで応力を少しずつ解放している場所と、強く固着して地震が少ない場所のどちらが将来の大地震に結びつくかは、余震数だけでは決まりません。
余震分布は断層構造や本震の破壊範囲を調べる重要な手掛かりですが、個別の大地震の発生時刻を予知する情報ではありません。
防災では「他の地震と同じ余震経過」と決めつけないことが大切
余震活動には地域差・地震差があるため、過去の別の地震と単純に比較して安全を判断するのは適切ではありません。
「前の地震では3日で余震が減った」「この程度の本震なら大きな余震は来ない」といった経験則だけに頼るのではなく、現在の地震活動に対して気象庁などが発表する情報を確認することが重要です。
特に大きな地震の直後は、すでに傷んだ建物や斜面が後続地震によってさらに被害を受ける可能性があります。余震の回数が減ってきても、比較的大きな地震が突然起こる可能性は残ります。
まとめ
地震の余震に場所や条件による違いがあるのは、本震と断層周辺の条件が一様ではないからです。
本震が大きいほど、一般に余震数や余震域は大きくなる傾向があります。しかし、余震の減り方や継続期間は、地域の応力状態、断層の負荷速度、地下構造、温度などにも左右されます。
また、深さ100kmを超えるような深い地震では典型的な活発な余震が少ないことがあり、内陸地震・プレート境界地震・群発地震でも活動の形は異なります。さらに、観測点の密度や小地震の検出能力によって、見かけ上の余震数にも差が出ます。
つまり余震の違いは、「本震がどれだけ大きくどこを壊したか」「周囲の断層へどのように力が再配分されたか」「その地域の断層・温度・応力条件がどうなっているか」の組み合わせで生まれます。
参考資料
- 気象庁「大地震後の地震活動(余震等)について」
- U.S. Geological Survey「Why aftershock duration matters for probabilistic seismic hazard assessment」
- Yamanaka and Shimazaki「Scaling Relationship between the Number of Aftershocks and the Size of the Main Shock」
- Utsu, Ogata and Matsu’ura「The Centenary of the Omori Formula for a Decay Law of Aftershock Activity」

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