同じ時刻に起きて同じように生活していても、朝早くから頭がよく働く人もいれば、夜になってから調子が上がる人もいます。また、同じ人でも、年齢や生活リズム、光の浴び方、勤務時間などが変わると、眠くなる時刻や目覚めやすい時刻がずれることがあります。
こうした違いが生まれるのは、体内時計が全員まったく同じ設定で動いているわけではないからです。体内時計には、一日の長さに近い「周期」、眠気や体温などのリズムが一日のどの時刻に現れるかという「位相」、光を浴びたときにどれだけ時刻が動くかという「感受性」などがあり、それぞれに個人差があります。さらに、遺伝、年齢、生活環境、勤務形態などがその時々の状態に影響します。
つまり、朝型・夜型の違いや、以前は朝型だった人が生活の変化で夜型になる現象は、単なる意志や生活態度だけでは説明できません。生まれつきの特徴と、毎日の環境から受ける調整が重なって、体内時計の違いが作られています。
体内時計とは何をしている仕組み?
人の体では、睡眠と覚醒、体温、血圧、心拍、ホルモン分泌、代謝など多くの機能が、およそ24時間の周期で変化しています。この約24時間周期の変化を「概日リズム」と呼びます。
厚生労働省のe-ヘルスネットでは、体内時計の中心は脳の視床下部にある視交叉上核にあり、細胞内の時計遺伝子の働きによって約24時間周期の信号が作られると説明されています。体内時計は、外から時刻を教えられなくても自律的にリズムを作ることができます。
一方、人の体内時計の周期は外界の24時間と完全には一致しません。そのため、私たちは毎日、光などの情報を使って体内時計を外の昼夜に合わせています。特に光は強い時刻調節因子で、目から入った光の情報が視交叉上核へ伝わり、体内時計の時刻を動かします。
なぜ人によって朝型・夜型が違うの?
1.体内時計の「もともとの周期」に個人差がある
体内時計の一日は、誰でも正確に24時間というわけではありません。厚生労働省のe-ヘルスネットでは、健康な成人の体内時計周期には個人差があり、24時間より短い人から24時間30分以上と長い人までいることが紹介されています。
一般に、内因性の周期が長い人ほど生活時刻が後ろへずれやすく、夜型傾向が強くなりやすいとされています。反対に、周期が短めの人では朝型傾向が強くなりやすくなります。
ただし、周期だけで朝型・夜型が決まるわけではありません。光に対する反応、生活時刻、年齢なども重なるため、「周期が何時間なら必ず夜型」という単純な対応ではありません。
2.時計遺伝子など遺伝的な違いがある
体内時計は、細胞の中で複数の時計遺伝子が互いに働き合うことでリズムを作っています。そのため、遺伝的な違いは、体内時計の周期や位相、睡眠時刻の個人差に関係します。
人の睡眠と概日リズムの遺伝学を扱った研究レビューでは、朝型・夜型などのクロノタイプには遺伝的な要素があり、極端に早寝早起き、または遅寝遅起きとなる家系では特定の遺伝子変異が見つかる例も報告されています。
ただし、一般的な朝型・夜型の違いを一つの遺伝子だけで説明することはできません。多数の遺伝要因と環境要因が組み合わさって、その人の体内時計の特徴が作られています。
3.光への感受性にも人による違いがある
同じ明るさの光を同じ時刻に浴びても、体内時計がどの程度動くかは全員同じではありません。人を対象にした研究では、夜間の光によるメラトニン抑制や概日リズムへの影響に大きな個人差があることが示されています。
この違いには、目の網膜で光を受け取る仕組みや、その情報を体内時計へ伝える経路、年齢、遺伝的特徴、もともとのクロノタイプなどが関係すると考えられています。
そのため、「夜にこの明るさなら全員同じだけ体内時計が遅れる」というわけではありません。夜間の照明やスマートフォンの影響を受けやすい人もいれば、同じ条件では影響が比較的小さい人もいます。
同じ人でも体内時計が変わるのはなぜ?
体内時計には生まれつきの特徴がある一方、固定されたまま一生変わらないわけではありません。毎日浴びる光、睡眠時刻、仕事や学校の予定、食事、運動などによって、体内時計の時刻は少しずつ調整されます。
| 変化する条件 | 体内時計への主な影響 |
|---|---|
| 朝〜午前中の光 | 遅れがちな体内時計を早い方向へ調整しやすい |
| 夕方〜夜の強い光 | 体内時計を遅い方向へ動かしやすい |
| 就寝・起床時刻 | 光を浴びる時刻や活動時刻を通じてリズムの位相に影響する |
| 夜勤・交替勤務 | 外界の昼夜と活動時刻のずれが大きくなり、同調が難しくなる |
| 海外渡航 | 急に異なる明暗周期へ移動するため、現地時刻とのずれが生じる |
| 年齢 | クロノタイプや光への反応、睡眠時刻が年代によって変化する |
光を浴びる時刻で体内時計が変わるのはなぜ?
光は体内時計の時刻を合わせる最も重要な手がかりの一つですが、同じ光でも浴びる時刻によって効果が変わります。e-ヘルスネットでは、朝から昼ごろまでの光は体内時計を早い方向へ、夕方から深夜の光は遅い方向へ動かすと説明されています。
この性質があるため、毎朝ほぼ同じ時刻に起きて朝の光を浴びる生活では、体内時計を外の24時間周期に合わせやすくなります。反対に、夜遅くまで明るい環境で過ごし、朝は暗い室内で長く眠る生活が続くと、体内時計が後ろへずれやすくなります。
厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」でも、起床後に朝の強い光を浴びることや、日中に十分な光を浴びることが、睡眠・覚醒リズムを整えるうえで重要とされています。
年齢によって朝型・夜型が変わるの?
変わります。クロノタイプは一生同じではなく、年齢によって一定の傾向があります。一般に子どもは比較的早寝早起きですが、思春期から若年成人では体内時計が遅い方向へ動きやすく、夜型傾向が強まります。その後、年齢が上がるにつれて再び朝型方向へ移る傾向があります。
この変化には、体内時計そのものの加齢変化だけでなく、学校や仕事の時刻、日中の活動、光を浴びる量なども関わります。したがって、若い人が夜型になりやすいのをすべて「夜更かしの習慣」のせいにしたり、高齢者の早朝覚醒をすべて「年齢だから」と片づけたりするのは適切ではありません。
生活習慣で夜型になった人と、生まれつき夜型の人は同じ?
完全に同じではありません。もともと体内時計の位相が遅れやすい人は存在しますが、生活環境によって後から夜型傾向が強くなることもあります。
たとえば、夜に強い照明を浴びる、深夜まで活動する、休日に起床時刻を大幅に遅らせる、朝の光をほとんど浴びない、といった条件が重なると、体内時計は遅い方向へ動きやすくなります。
反対に、朝型の人が夜勤を続ければ、本人のもともとのクロノタイプとは異なる時刻に起きて働かなければなりません。この場合、生活上の睡眠時刻と内在する体内時計の時刻が一致しないことがあります。
夜勤や時差で体内時計が乱れやすい人と乱れにくい人がいるのはなぜ?
夜勤や海外渡航では、外の明暗周期と睡眠・活動時刻が大きく変わります。この変化に体内時計が追いつく速さにも個人差があります。
影響の大きさには、もともとのクロノタイプ、体内時計の周期、光への感受性、年齢、勤務スケジュール、睡眠不足の程度などが関係します。夜型傾向の人が夜勤に比較的適応しやすい場合もありますが、それだけで健康影響がなくなるわけではありません。
また、時差ぼけでは一般に、西へ移動して体内時計を遅らせる方が、東へ移動して体内時計を早めるより適応しやすいことが知られています。これは、人の体内時計が平均すると24時間よりやや長く、遅い方向へ動きやすい性質とも関係します。
体内時計の個人差は「異常」なの?
朝型・夜型などの違いそのものは、健康な人にもみられる正常な個人差です。全員が同じ時刻に眠くなり、同じ時刻に最も活動しやすくなる必要はありません。
問題になるのは、本人の体内時計と社会生活の時刻のずれが大きく、十分に眠れない、起床できない、日中に強い眠気が出るなど、生活に支障が生じる場合です。体内時計の調節異常が大きいと、睡眠・覚醒相後退障害や非24時間睡眠・覚醒リズム障害などの概日リズム睡眠・覚醒障害として扱われることがあります。
したがって、「夜型だから病気」「朝型だから健康」という単純な判断はできません。重要なのは、その人の体内時計と生活時刻がどの程度合っていて、必要な睡眠が確保できているかです。
自分の体内時計の傾向を知るには?
家庭で体内時計の正確な周期を直接測るのは簡単ではありませんが、生活記録から傾向を知ることはできます。
- 仕事や学校がない日に自然に何時ごろ眠くなり、何時ごろ起きるか
- 午前と夜のどちらで頭が働きやすいか
- 休日になると睡眠時刻が大きく後ろへずれるか
- 朝の光を浴びた時期に寝起きの時刻が変わるか
- 夜更かしが数日続くと、その後も遅寝遅起きが続くか
こうした記録はクロノタイプを理解する手がかりになりますが、体内時計そのものを医学的に測定したことにはなりません。睡眠時刻のずれが大きく、学校や仕事に継続的な支障がある場合は、睡眠医療の専門家に相談する選択肢があります。
よくある疑問
夜型は生活習慣が悪いからなるの?
生活習慣は影響しますが、それだけではありません。体内時計の周期、遺伝的特徴、年齢、光への感受性などにも個人差があります。
朝の光を浴びれば全員がすぐ朝型になる?
いいえ。朝の光は体内時計を早める重要な手がかりですが、反応の大きさには個人差があります。また、夜の光や就寝時刻など他の条件も影響します。
体内時計は一度ずれたら元に戻らない?
固定されたものではありません。光や睡眠・活動時刻などにより毎日調整されます。ただし、どの程度動きやすいか、どれくらい時間がかかるかには個人差があります。
朝型と夜型では必要な睡眠時間も違う?
クロノタイプは主に睡眠・覚醒の「時刻」の傾向です。必要睡眠時間とは別の性質なので、夜型だから短時間睡眠でよい、朝型だから長く眠る必要がある、という関係ではありません。
まとめ
睡眠の体内時計に人や状態による違いがあるのは、体内時計の周期、位相、遺伝的特徴、光への感受性などに個人差があり、さらに年齢、生活時刻、夜間の光、勤務形態、海外渡航などによって毎日の調整状態が変わるからです。
朝型・夜型は単なる生活態度の違いではなく、生理的な個人差を含んでいます。一方、体内時計は環境から独立して固定されているわけでもなく、光を中心とした時刻情報によって毎日調整されています。
そのため、同じ人でも生活条件が変われば睡眠時刻は変化しますし、同じ生活をしても全員が同じリズムになるわけではありません。体内時計の個人差を理解すると、「なぜ自分は朝が苦手なのか」「なぜ夜勤や時差に強い人と弱い人がいるのか」を、意志の問題だけではなく生理学的に考えやすくなります。
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参考資料
- 厚生労働省 e-ヘルスネット「概日リズム睡眠・覚醒障害」
- 厚生労働省「睡眠対策・健康づくりのための睡眠ガイド2023」
- Genetics of the human circadian clock and sleep homeostat
- Individual differences in light sensitivity affect sleep and circadian rhythms

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