火山と火山ガスが関係しているのは、地下のマグマに水蒸気・二酸化炭素・二酸化硫黄などの揮発性成分が溶け込んでおり、マグマが上昇して圧力が下がると、それらが気泡として分離して地表へ放出されるからです。火山ガスは噴火の最中だけでなく、噴火前後や静穏期にも火口・噴気孔・地熱地帯などから放出されることがあります。
つまり、火山ガスは火山活動によって地下から地表へ運ばれる気体であり、マグマや熱水の状態を反映する重要な現象です。その量や組成を調べることは、火山の活動状態を知る手掛かりにもなります。
火山ガスとは何か
気象庁は、火山ガスを「火山活動により地表に噴出する気体」と説明しています。噴火で溶岩や火山灰などと一緒に出るものだけでなく、噴気孔などから継続的に放出される気体も含まれます。
主な成分は水蒸気、二酸化炭素、二酸化硫黄、硫化水素などです。火山によって成分の割合は異なり、同じ火山でも活動状態によって変化することがあります。
見た目には「煙」のように見えることがありますが、実際には水蒸気や各種ガス、細かな液滴などが混ざったものです。
火山ガスの多くはマグマに溶けている
地下深くのマグマには、揮発性成分と呼ばれる物質が溶け込んでいます。
USGSによると、火山ガスで最も多いのは水蒸気で、次いで二酸化炭素や二酸化硫黄が主要成分になります。ほかにも硫化水素、塩化水素、フッ化水素などが含まれることがあります。
地下深部では圧力が高いため、これらの成分はマグマ中に溶け込みやすい状態にあります。しかしマグマが上昇すると周囲の圧力が下がり、溶けていた成分が気泡として分離し始めます。
この過程を脱ガスと呼びます。
マグマが上昇するとガスが出やすくなるのはなぜか
炭酸飲料のふたを開けると、圧力が下がって炭酸ガスの泡が出てきます。マグマでも、原理としては似たことが起こります。
地下深くでは高圧のためガス成分がマグマに溶けていますが、上昇して減圧すると溶けきれなくなり、気泡ができます。
さらに上昇すれば気泡は大きくなり、互いにつながったり、マグマから分離して上方へ移動したりします。
そのため、火山ガスの放出はマグマの上昇・圧力変化・脱ガスと深く結び付いています。
火山ガスは噴火を起こす力にも関係する
マグマ中でガスが発泡して膨張すると、マグマ全体の体積が増えます。
ガスが十分に抜ければ、比較的穏やかに溶岩が流れ出すことがあります。一方、粘り気の強いマグマなどでガスが逃げにくいと、内部圧力が高まり、マグマが細かく砕かれて爆発的噴火につながることがあります。
J-STAGE掲載の研究でも、マグマ上昇中の脱ガスの進み方が噴火の爆発性を左右する重要な要因とされています。
つまり、火山ガスは単なる「噴火の後に出る気体」ではなく、噴火のしかたそのものにも関係します。
水蒸気が最も多いのはなぜか
火山ガスの中では、水蒸気が最も多いのが一般的です。
マグマには水が揮発性成分として含まれています。また、火山体の地下には地下水や熱水系があり、それらが高温の岩体やマグマによって加熱されて水蒸気になることもあります。
そのため、火山から白い噴気が上がっていても、そのすべてが有毒ガスというわけではありません。
ただし、水蒸気に二酸化硫黄や硫化水素などが混ざる場合があるため、噴気地帯へ近づく際には注意が必要です。
二酸化硫黄は火山活動の観測に使われる
気象庁は、火山ガスのうち二酸化硫黄の放出量を火山活動評価の指標として利用しています。
二酸化硫黄は特定波長の紫外線を吸収するため、離れた場所から測定しやすいという特徴があります。
気象庁では小型紫外線スペクトロメータなどを使って、火山から放出される二酸化硫黄量を観測しています。
放出量が増えれば必ず噴火するという意味ではありませんが、マグマからの脱ガスや火山活動の変化を知る重要な情報になります。
ガスの「量」だけでなく「成分」も重要
火山ガス観測では、どれだけ出ているかだけでなく、どの成分がどの割合で含まれているかも調べます。
J-STAGE掲載の研究では、箱根山、草津白根山、霧島硫黄山などで、火山ガス組成と地震活動の変化に対応関係が見られ、火山活動評価に役立つことが示されています。
地下の温度や圧力、マグマから熱水系へガスが移る過程などによって、地表で観測されるガス組成は変化します。
そのため火山ガスは、地下を直接見ることができない火山で、内部状態を推定するための重要な情報源です。
噴火していなくても火山ガスが出るのはなぜか
火山ガスは噴火中だけに出るものではありません。
USGSは、マグマが地表まで到達しなくても、ガスが土壌、噴気孔、火口、熱水系などを通して継続的に地表へ放出される場合があると説明しています。
マグマから先に分離したガスが、岩盤の亀裂を通って上昇することがあるためです。
したがって、「噴火していないから火山ガスは出ない」とは限りません。静穏に見える火山でも、噴気活動が続くことがあります。
硫化水素と二酸化硫黄は同じガスではない
火山地帯では、刺激臭や腐った卵のようなにおいを感じることがあります。
二酸化硫黄は無色で刺激臭があり、低濃度でも呼吸器を刺激することがあります。
硫化水素も無色ですが、低濃度では腐卵臭が特徴です。ただし高濃度では嗅覚が麻痺し、においを感じにくくなるため、においだけで安全を判断することはできません。
気象庁も、火山ガスの吸入によって二酸化硫黄による気管支障害や、硫化水素による中毒が起こる可能性があると説明しています。
二酸化炭素は低い場所にたまることがある
二酸化炭素は無色・無臭で、空気より重い気体です。
USGSによると、火山から放出された二酸化炭素は通常は大気中に拡散しますが、風が弱い低地やくぼ地などでは高濃度にたまる場合があります。
高濃度になると、人や動物が酸欠状態になる危険があります。
そのため、火山地域では「においがしないから安全」と判断できません。地形や風の条件によって危険性が変わります。
火山ガスは風で運ばれる
地表へ出た火山ガスは、風によって火口から離れた場所へ運ばれます。
二酸化硫黄は大気中で反応し、細かな硫酸粒子などを含む火山性スモッグをつくることがあります。ハワイではこの現象が「vog」と呼ばれています。
風下では目や喉への刺激、農作物への影響、金属や設備への腐食などが問題になることがあります。
つまり火山ガスの影響範囲は、火口からの距離だけでなく、風向・風速・地形にも左右されます。
火山ガスの変化だけで噴火を予知できるのか
火山ガスだけで噴火の日時や規模を正確に予知することはできません。
ガス放出量や成分が変化しても、その後噴火に至らないことがあります。反対に、噴火前の変化が小さい場合もあります。
そのため火山監視では、火山ガスだけでなく、火山性地震、地殻変動、地熱、噴気の状態など複数の観測データを組み合わせます。
火山ガスは重要な手掛かりですが、それ単独で将来を断定するものではありません。
火山ガスを調べると地下のマグマを知る手掛かりになる
火山ガスは、地下のマグマや熱水系から地表まで移動してきた物質です。
そのため、放出量や成分、同位体比などを調べることで、ガスがマグマ由来なのか、地下水との相互作用を強く受けているのかなどを推定できます。
三宅島や箱根山などでは、火山ガス観測が活動推移の把握に活用されてきました。
地下深部を直接観察できない火山研究では、火山ガスはマグマ供給系を探る「窓」のような役割を果たします。
まとめ
火山と火山ガスが関係しているのは、マグマに水蒸気・二酸化炭素・二酸化硫黄などの揮発性成分が溶け込んでおり、マグマが上昇して圧力が低下すると、それらが気泡として分離し地表へ放出されるからです。
火山ガスは噴火の駆動力にも関係し、ガスが抜けやすいかどうかによって噴火が穏やかになるか爆発的になるかが変わることがあります。
また、二酸化硫黄の放出量やガス組成は火山活動の評価に利用されます。噴火していない時期でも火口・噴気孔・熱水系などからガスが出る場合があり、二酸化硫黄・硫化水素・二酸化炭素などは人や環境へ影響することもあります。
つまり、火山ガスは火山から出る単なる「煙」ではなく、地下のマグマや熱水がどのように動いているかを反映する物質です。火山の噴火の仕組みを理解し、活動状態を監視するうえで欠かせない情報なのです。
参考資料
- 気象庁「火山ガスに関する用語」
- 気象庁「火山ガス(二酸化硫黄)の観測」
- 大場武ほか「火山ガス観測による火山活動の評価」
- U.S. Geological Survey「Volcanic gases can be harmful to health, vegetation and infrastructure」

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