なぜ盆地はできるのか?

盆地は、周囲を山地や丘陵に囲まれた低い土地で、地殻変動によって地面の一部が相対的に低くなったり、火山活動や侵食でくぼみができたりした後、その低地に川が運ぶ土砂がたまることで現在の形に整えられていきます。 とくに日本の内陸盆地には、断層運動や地殻の変形によって生じた「構造盆地」が多く見られます。

盆地の成り立ちを理解するうえで大切なのは、「低い場所ができる仕組み」と「その低い場所が土砂で埋められて平らになる仕組み」を分けて考えることです。盆地は単なる大きなくぼみではなく、地殻変動、侵食、河川による運搬、堆積などが長い時間をかけて組み合わさった地形です。

目次

盆地とはどのような地形なのか

地形としての盆地は、周囲をより高い山地や丘陵に囲まれ、中央部が相対的に低くなった地域を指します。上から見ると山地の中に低地が入り込んだように見え、内部には平地、扇状地、河川、湖などが発達することがあります。

国土地理院は、地殻変動によって形成された盆地を構造盆地とし、その中に断層盆地、断層角盆地、地溝、曲降盆地などを含めています。つまり、盆地の一部は地殻が変形して低くなったことを直接反映する地形です。

一方、地質学でいう「堆積盆地」は、長期間にわたって地盤が沈降するなどして堆積物が厚くたまった地域を意味し、現在の地表に明瞭な盆地地形が残っているとは限りません。地形としての盆地と堆積盆地は関係することがありますが、同じ意味ではありません。

盆地ができる基本の仕組み

1.地殻変動で周囲との高低差が生まれる

構造盆地では、まず地殻変動によって土地の高さに差が生まれます。代表的なのが断層運動です。

地殻が引っ張られる地域では正断層ができ、断層に挟まれた地塊が周囲より低下することがあります。このように両側を断層で区切られて低くなった地形を地溝と呼びます。また、一方の縁を断層に区切られ、地塊が傾きながら低くなったものは断層角盆地と呼ばれることがあります。

USGSが解説する米国のBasin and Range地域でも、地殻の伸張によって断層が発達し、低下した地塊が盆地、高く残った地塊が山地となっています。地殻が割れ、相対的な上下差が繰り返し生じることで、山地と盆地が交互に並ぶ地形が形成されます。

2.周囲の山地が侵食され、土砂が盆地へ運ばれる

低い場所ができると、周囲の山地から水が盆地へ集まりやすくなります。雨や雪どけ水は山地の岩石を削り、砂、礫、泥を川へ運び込みます。

山地では勾配が急いため、川は比較的大きな礫まで運べます。しかし盆地へ入ると勾配が急にゆるくなり、流れの勢いが弱まります。その結果、運びきれなくなった土砂が盆地の縁に堆積します。

こうして山麓には扇状地が形成され、さらに細かな砂や泥は盆地中央部まで運ばれます。USGSのBasin and Range地域の解説でも、隆起した山地が侵食され、その土砂が低下した盆地へ運ばれ、厚い盆地埋積物をつくることが示されています。

3.堆積が続くと盆地の底が平らになる

盆地ができた直後の地表は、必ずしも平らではありません。断層で生じた段差や凹凸があり、場所によって深さも異なります。

ところが、周囲から長期間にわたって土砂が供給されると、低い場所ほど土砂で埋められやすくなります。河川の洪水や流路変更も繰り返されるため、盆地底の凹凸は次第に小さくなり、広い平坦面が形成されます。

そのため現在の盆地を見ると、周囲は急な山地なのに、内部は水田や市街地が広がる平らな土地になっていることがあります。地下には数百メートル以上の堆積物がたまっている盆地もあり、地表の平坦さだけでは地下の深い構造はわかりません。

なぜ盆地の周囲には扇状地が多いのか

盆地の縁では、山地の谷から出てきた川が急に平らな土地へ入ります。このとき川の勾配と流速が低下し、運んできた砂礫を堆積させます。その結果、谷の出口を頂点とする扇状地が形成されます。

盆地では周囲を山地に囲まれているため、複数の谷から河川が盆地へ流れ込みます。そのため盆地の縁にいくつもの扇状地が並び、それらが成長してつながることもあります。

一方、扇状地より中央側では勾配がさらにゆるくなり、細かな砂や泥が堆積しやすくなります。このため、盆地の縁と中央では地下を構成する土砂の粒の大きさや地下水の状態が異なる場合があります。

盆地の中央に湖や湿地ができることがあるのはなぜか

盆地では周囲から水が集まりますが、その水が外へ出る出口が狭かったり、まったくなかったりすると、中央部に湖や湿地が形成されることがあります。

とくに外へ流れ出す河川を持たない閉塞盆地では、水が盆地内部に集まり、蒸発や地下への浸透によって失われます。乾燥地域では、湖が縮小して塩湖や乾燥湖床になることもあります。

一方、日本の多くの盆地には外へ流れ出す河川があります。その場合でも、盆地形成の途中で湖が存在し、後に河川の侵食で出口が低くなって排水されることがあります。旧湖底に泥や砂が厚く堆積していれば、その後に広い平坦地として残ることがあります。

断層が盆地の形をどう決めるのか

断層によって形成された盆地では、盆地の縁が直線的になることがあります。これは、断層に沿って地盤の高さが急に変化するためです。

断層運動が繰り返されると、山地側と盆地側の高度差が大きくなります。一方、盆地側では低下した分だけ土砂をためられる空間が増えます。山地が高くなるほど侵食も進み、さらに多くの土砂が盆地へ供給されることがあります。

新庄盆地を対象とした研究では、逆断層運動によって山地と盆地が分化する一方、盆地内部でも隆起や開析が進み、丘陵が形成されたことが示されています。この例からも、盆地は単純に沈み続けるだけの地形ではなく、時期によって隆起、沈降、侵食、堆積が重なり合って変化することがわかります。

盆地はずっと低くなり続けるのか

盆地は形成後も同じ状態が続くとは限りません。地殻変動の向きや速さが変化すれば、かつて沈降していた場所が隆起へ転じることもあります。

また、盆地内部に土砂がたまり続ければ地表は高くなります。河川が盆地の出口を深く侵食すると、盆地内部の川も下刻を始め、それまでの平坦面が河岸段丘として取り残されることがあります。

つまり盆地の現在の姿は、「低くなった量」と「堆積した量」と「その後に削られた量」の組み合わせで決まります。盆地が平らに見えても、その地下や周囲には過去の地殻変動や河川作用の記録が残されています。

火山活動でできる盆地もある

すべての盆地が断層運動だけでできるわけではありません。大規模な火山噴火によって地下のマグマが大量に放出され、地表が陥没するとカルデラが形成されます。大きなカルデラでは、その内部が盆地状の低地として見えることがあります。

また、火山噴出物や溶岩が谷をせき止めて湖をつくり、その周辺が堆積物で埋められて盆地状になる場合もあります。宮城県の鳴子盆地を扱った研究では、地殻運動と火山活動が組み合わさった「火山構造性陥没地」として盆地の発達が論じられています。

したがって、盆地を見ただけで「断層で沈んだ場所」と決めつけることはできません。周囲の断層、火山地形、地層、堆積物などを合わせて成因を判断する必要があります。

盆地と平野は何が違うのか

盆地と平野はどちらも平らな土地を含みますが、分類の基準が異なります。

盆地は、周囲を高い地形に囲まれているという位置関係に注目した地形です。対して平野は、広い範囲の起伏が小さいという地表の形に注目した呼び方です。

そのため、盆地の内部に広い平野が存在することがあります。たとえば断層運動でできた低地に河川が土砂を堆積させれば、地形としては盆地でありながら、その底には平野が広がります。

反対に、海岸沿いの広い平野は周囲を山地に囲まれていないため、通常は盆地とは呼びません。

盆地と谷は何が違うのか

谷も周囲より低い地形ですが、一般に細長く、河川の流れに沿って伸びています。これに対して盆地は、谷よりも幅広く、山地の間にまとまった低地を形成します。

ただし、盆地と谷の境界が明確でない場合もあります。細長い構造盆地や、広い谷底平野を持つ谷では、地形のスケールや周囲との関係によって呼び方が変わることがあります。

盆地内部の河川は最終的に出口となる谷を通って外へ流れることが多く、盆地と谷は水系の中でも密接につながっています。

盆地の成り立ちは地下水にも影響する

盆地の地下には、周囲の山地から運ばれた砂や礫、泥などが厚く堆積することがあります。砂礫層は水を通しやすく、泥層は水を通しにくいため、地下では複数の帯水層と難透水層が重なる場合があります。

USGSは、断層や侵食でできた盆地を埋める砂礫層が重要な地下水帯水層になる例を示しています。山地で浸透した水が盆地の地下へ流れ込み、扇状地の地下などに地下水として蓄えられることがあります。

そのため盆地の成り立ちは、地表の景観だけでなく、地下水の分布や井戸の利用にも関係します。

盆地ではなぜ都市や農地が発達しやすいのか

盆地底は周囲の山地に比べて傾斜が小さく、河川が運んだ土砂によって平坦地が形成されやすいため、農地や市街地として利用されてきました。山地から流れ込む河川や地下水を利用しやすいこともあります。

一方で、低地であることには注意点もあります。盆地の出口が狭い地域では洪水時に水が集まりやすく、後背低地や旧河道などでは浸水が長引くことがあります。地下に緩い砂層がある場所では、地震時の液状化リスクを検討する必要もあります。

さらに山麓の扇状地では、豪雨時に土石流や急な洪水が発生することがあります。盆地だから安全・危険と一括りにするのではなく、盆地内部の微地形まで確認することが大切です。

地図から盆地の成り立ちを読み取るポイント

盆地の仕組みを地図で観察するときは、中央の平地だけでなく周囲との境界を見ることが重要です。

  • 盆地の縁が直線的なら、断層地形との関係を確認する
  • 山麓に扇形の緩斜面が並んでいれば、扇状地の発達を考える
  • 盆地中央の河川がどこから流入し、どこから流出するかを見る
  • 河岸段丘があれば、盆地形成後の隆起や河川下刻を考える
  • 湖や湿地、旧湖底の地層があれば、過去の排水条件を確認する

地理院地図の陰影起伏図や活断層図、地形分類図などを組み合わせると、盆地が単なる平地ではなく、地殻変動と河川作用によって形成された立体的な地形であることが見えてきます。

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まとめ

盆地は、地殻変動などによって周囲より低い場所が生まれ、その低地へ山地から運ばれた土砂が堆積することで、現在の盆地底や平坦面が形づくられて成り立ちます。

  • 断層や地殻の変形によって地塊が相対的に低下すると構造盆地ができる
  • 周囲の山地が侵食され、川が砂・礫・泥を盆地へ運ぶ
  • 盆地の縁には扇状地、中央には細粒の堆積物がたまりやすい
  • 盆地は形成後も、隆起・沈降・侵食・堆積によって変化し続ける
  • 火山活動など、断層運動以外の仕組みでできる盆地もある

盆地を見るときは、「なぜこの場所だけ低いのか」と「その低地がどのように埋められて現在の平坦面になったのか」を分けて考えると、成り立ちを理解しやすくなります。

参考資料

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