なぜ電圧の大きさは負荷・温度・濃度などの条件で変わるのか?

電池の電圧を測ると、何もつないでいないときと、大きな電流を取り出しているときで値が変わることがあります。太陽電池では温度が上がると電圧が下がりやすく、電極では溶液の濃度が変わると電位も変化します。さらに熱電素子では、温度差そのものが電圧を生み出します。

では、なぜ電圧の大きさは負荷・温度・濃度などの条件で変わるのでしょうか。結論から言えば、電圧は二点間の単位電荷あたりのエネルギー差であり、そのエネルギー差を作る仕組みや、回路内部で生じる電圧降下が、電流・温度・濃度・材料状態などによって変化するからです。

目次

電圧は「二点間のエネルギー差」

電圧は一つの物体が単独で持つ固定値ではなく、二点間の電位差です。

電荷qが二点間を移動するときのエネルギー変化をΔUとすると、電位差ΔVは、

ΔV=ΔU/q

と表せます。

つまり、電圧が変わるということは、電荷1 Cあたりに受け渡されるエネルギー差が変わったということです。

電池、発電機、太陽電池、熱電素子などでは、そのエネルギー差を作る物理・化学的な仕組みがそれぞれ異なるため、変化させる条件も異なります。

電池は「起電力」と「端子電圧」を分けて考える

電池について電圧の変化を考えるときは、起電力と端子電圧を区別することが重要です。

OpenStaxでは、起電力εを電流が流れていないときの電源の電位差として扱い、実際の電池には内部抵抗rがあると説明しています。

放電中の単純なモデルでは、端子電圧Vは、

V=ε-Ir

です。

この式から、同じ電池でも電流Iが大きくなるほど、内部抵抗での電圧降下Irが増え、端子電圧が低下することが分かります。

大きな負荷をつなぐと電圧が下がるのはなぜか

電池へ小さな抵抗の負荷をつなぐと、大きな電流が流れます。

すると電池内部の抵抗でも電圧降下が生じるため、外部の端子で測れる電圧は無負荷時より小さくなります。

OpenStaxは、実際の電圧源では端子電圧が起電力から内部抵抗によるIrを引いた値になることを示しています。

そのため「12 Vの電池だから、どんな条件でも必ず12 V」とは限りません。負荷が重いほど、実測される端子電圧が下がることがあります。

電池が消耗すると電圧が下がりやすくなる理由

電池の内部抵抗は一定ではありません。

OpenStaxでは、電池が消耗すると内部抵抗が増えることがあり、さらに内部抵抗は電流の大きさや向き、温度、使用履歴にも依存し得ると説明されています。

内部抵抗rが大きくなると、同じ電流Iを流してもIrが大きくなるため、端子電圧はより低下します。

古い電池を無負荷で測ると一見正常な電圧を示していても、機器へつないだ瞬間に電圧が大きく下がることがあるのは、この内部抵抗増加が関係します。

温度が電池の電圧を変えることがある

温度は電池内部の化学反応やイオン移動、内部抵抗に影響します。

低温では化学反応やイオン移動が遅くなり、内部抵抗が増えやすくなるため、大きな電流を流したときの端子電圧低下が目立つ場合があります。

また、電池の平衡電位そのものも温度に依存します。

したがって「温度で電圧が変わる」ときには、起電力の変化と内部抵抗による電圧降下の変化を分けて考える必要があります。

濃度が変わると電極電位が変わる

電池や電気化学セルでは、電極電位は反応する物質の濃度や活量によって変わります。

山形大学の教材では、鉄イオン(II)と鉄イオン(III)の濃度比を変えながら電極電位を測定し、ネルンストの式に従うことを確認する実験が示されています。

ネルンストの式は、電極電位が標準電位だけでなく、温度や反応物・生成物の活量に依存することを表します。

つまり、同じ種類の電極でも溶液の化学状態が変われば、発生する電位差も変化します。

充電状態が変わると電池電圧も変わる

充電式電池では、充電と放電によって電極材料の化学状態が変化します。

そのため、電極反応の自由エネルギー差も変わり、開放端電圧や負荷時の端子電圧が変化します。

ただし、電圧だけから正確な残量を判断できるかどうかは電池方式によって異なります。

電池によっては放電中の電圧が比較的平坦な領域を持つため、電圧だけで残容量を一意に求めるのは難しい場合があります。

太陽電池では温度が上がると電圧が下がりやすい

太陽電池は光から電気を作りますが、セル温度も出力電圧へ影響します。

米国エネルギー省は、太陽電池では温度上昇によって電流はわずかに増える一方、電圧はより大きく低下するため、全体として出力や効率が下がることがあると説明しています。

そのため、同じ日射量でもセルが低温のときと高温のときでは、電流―電圧特性が同じではありません。

「日差しが強いほど必ず電圧も高くなる」と単純には言えず、光の強さとセル温度を分けて考える必要があります。

太陽電池では負荷によっても電圧が変わる

太陽電池の端子電圧は、接続した負荷によって変化します。

米国エネルギー省は、負荷抵抗を変えると太陽電池が生み出す電流と電圧の組み合わせも変化すると説明しています。

負荷をほとんどつながない開放状態では開放電圧に近づき、強く電流を取り出すと端子電圧は低下します。

このため太陽光発電では、最大電力を取り出せる電圧・電流の組み合わせへ動作点を調整する制御が使われます。

熱電素子では温度差そのものが電圧を作る

電圧は電池の化学反応だけでなく、温度差によっても生じます。

神戸大学は、導電性材料へ温度差を与えるとゼーベック効果によって電圧が発生し、温度差1 ℃あたりに生じる電圧をゼーベック係数で表すと説明しています。

単純化すれば、発生電圧は、

ΔV=SΔT

のように表せます。

Sはゼーベック係数、ΔTは温度差です。

したがって同じ材料なら温度差が変われば電圧が変わり、同じ温度差でも材料が違えば電圧が変わります。

材料が変わると温度差に対する電圧応答も変わる

神戸大学の熱電材料研究では、ゼーベック係数は材料の種類やキャリア状態によって異なり、その符号によってp型・n型の極性も区別できることが説明されています。

つまり温度差による電圧変化は、単に温度だけの問題ではありません。

材料の電子状態やドーピング状態が変わると、同じ温度差でも生じる電圧の大きさや向きが変化します。

コンデンサでは電荷・静電容量・電圧の関係で変化する

コンデンサでは、

Q=CV

の関係があります。

Qは蓄えられた電荷、Cは静電容量、Vは電圧です。

したがって、電荷Qが一定なら静電容量Cが変わると電圧Vも変わります。

OpenStaxでは、充電後に電池から切り離したコンデンサへ誘電体を入れると、電荷はほぼ一定のまま静電容量が増えるため、電圧が低下することが示されています。

同じ誘電体を入れても、電池につながっているかで結果が違う

コンデンサの条件依存で重要なのは、「何を一定にしているか」です。

電池から切り離したコンデンサでは電荷Qがほぼ一定なので、誘電体を入れてCが増えるとV=Q/Cにより電圧が下がります。

一方、電池につないだままなら、電池が電圧をほぼ一定に保つため、主に蓄えられる電荷Qが変化します。

同じ材料変化でも、回路条件によって「電圧が変わる場合」と「電圧は保たれて別の量が変わる場合」があるのです。

抵抗での電圧降下は電流によって変わる

抵抗Rを流れる電流Iによる電圧降下は、オームの法則が成り立つ範囲では、

V=IR

です。

同じ抵抗でも電流が2倍になれば電圧降下も2倍になります。

そのため、回路の負荷が変化して電流が増えると、配線や内部抵抗での電圧降下が増え、負荷に届く電圧が下がることがあります。

低電圧・大電流の回路ほど、この配線電圧降下が重要になる場合があります。

温度が抵抗を変えると電圧分布も変わる

直列回路では、各部品の電圧降下はV=IRで決まります。

ある抵抗だけが温まって抵抗値が変わると、回路全体の電流と各部品の電圧配分が変化します。

したがって、電源電圧が一定でも、回路内部の各点で測る電圧は温度変化によって変わることがあります。

「電源が一定だから回路内のすべての電圧も一定」というわけではありません。

測定器をつないだことで電圧が変わることがある

理想的な電圧計は入力抵抗が無限大で、測定対象へ影響を与えません。

しかし実際の電圧計には有限の入力抵抗があります。

高抵抗の回路では、電圧計をつないだことで新しい電流経路ができ、回路の合成抵抗や分圧比が変わることがあります。

その結果、測定器をつなぐ前に存在していた電圧と、測定中の電圧がわずかに違う場合があります。

電圧の変化を正確に評価するときは、測定器自身の影響も条件の一つです。

交流では「電圧の値」の表し方にも条件がある

直流電圧は時間的にほぼ一定ですが、交流電圧は時間とともに変化します。

正弦波交流では、瞬時値、最大値、実効値が異なります。

家庭用交流で示される電圧は通常、実効値です。

したがって「100 V」という同じ数字でも、直流100 Vと交流100 Vでは波形や最大電圧が違います。

交流の電圧変化を比較するときは、周波数や波形、実効値・最大値のどれを比べているかを確認する必要があります。

電源電圧が一定でも負荷側の電圧は変わることがある

実際の回路では、電源から負荷までに配線抵抗、接触抵抗、スイッチ、コネクタなどがあります。

負荷電流が増えると、それらの抵抗での電圧降下も増えます。

そのため、電源装置の端子では一定電圧でも、負荷の端子で測る電圧は電流に応じて変化する場合があります。

長い配線や大電流を扱う設備では、電圧変動の原因を電源だけでなく配線全体から考える必要があります。

電圧の変化を比べるときにそろえるべき条件

二つの電圧値を正しく比較するには、少なくとも次の条件を確認する必要があります。

  • どの二点間の電圧か
  • 無負荷か、負荷をつないでいるか
  • 流れている電流は同じか
  • 温度は同じか
  • 電池なら充電状態や内部抵抗は同じか
  • 電気化学系なら濃度・活量は同じか
  • 熱電系なら温度差は同じか
  • コンデンサなら電荷一定か、電源接続中か
  • 直流か交流か、交流ならどの値を比べているか

条件をそろえずに「電圧が上がった」「下がった」とだけ比べると、原因を正しく判断できません。

まとめ

電圧の大きさが負荷・温度・濃度などの条件で変わるのは、電圧が二点間の単位電荷あたりのエネルギー差であり、そのエネルギー差を生み出す物理・化学的な仕組みや、回路内部の電圧降下が条件によって変化するからです。

電池では電流と内部抵抗によって端子電圧が変わり、電極では濃度や温度によって電位が変化します。太陽電池ではセル温度や負荷によって出力電圧が変わり、熱電素子では温度差と材料特性が電圧を決めます。コンデンサでは電荷と静電容量の条件によって電圧が変わります。

また、回路内では抵抗値や配線抵抗、測定器の影響によって各点の電圧が変化することがあります。

電圧を見るときは、「何Vか」だけではなく、「どの二点間を、どの負荷・温度・化学状態・回路条件で測った値なのか」を確認すると、変化の理由を正確に理解できます。

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