冷蔵庫に入れていた野菜がしおれたり、パンの表面がかたくなったり、冷凍した食品の表面が白っぽく乾いたりすることがあります。食品は水分を多く含んでいるのに、なぜ保存しているだけで乾燥するのでしょうか。
食品が保存中に乾燥する主な理由は、食品中の水分が周囲の空気へ移動し続けるためです。食品表面と周囲の空気の湿度に差があると、水は水蒸気として食品から外へ移動します。保存時間が長いほど水分損失は積み重なり、さらに低い湿度、空気の流れ、包装の有無などによって乾燥の進み方が変わります。
食品の中の水は少しずつ空気中へ移動する
野菜、果物、肉、魚、パンなど、多くの食品には水分が含まれています。この水分は食品の中に完全に固定されているわけではなく、表面から水蒸気として周囲の空気へ移動することがあります。
水分移動は、食品表面付近の水蒸気の状態と、周囲の空気の湿度との違いによって起こります。周囲の空気が乾いているほど、食品から外へ水分が出ていきやすくなります。
青果物は収穫後も生きた組織であり、表面から水分を失い続けます。水分損失が大きくなると、細胞の張りが失われ、しおれや重量減少につながります。保存中の「鮮度低下」は、微生物や呼吸だけでなく、この水分損失によっても起こります。
周囲の湿度が低いほど乾燥しやすい
食品の乾燥を左右する重要な条件の一つが相対湿度です。
周囲の空気の湿度が低いと、食品表面との水分状態の差が大きくなり、水分が空気中へ移動しやすくなります。反対に、食品の周囲を高い湿度に保つと、水分移動の差が小さくなり、乾燥を抑えやすくなります。
青果物の保存に関する研究では、高湿度条件で保存することで、収穫後の水分損失やしおれを抑え、品質を保ちやすくなることが示されています。近年のレビューでも、高相対湿度の保存は果物や野菜の水分損失を抑える重要な方法として整理されています。
つまり、冷蔵庫に入っているかどうかだけでなく、食品の周囲がどの程度乾いた空気かも保存中の水分損失に関係します。
冷蔵庫の中でも食品は乾燥する
冷蔵庫では温度が低いため、食品は常温より長く保存しやすくなります。しかし、低温だからといって水分がまったく失われないわけではありません。
冷蔵庫では冷却の過程で空気中の水分が除かれ、庫内が乾燥しやすくなる場合があります。さらに、冷気を循環させる方式では空気が食品表面を流れるため、包装されていない食品では水分蒸発が進みやすくなります。
そのため、葉物野菜をむき出しのまま冷蔵するとしおれやすく、パンや調理済み食品も表面から水分を失って食感が変わることがあります。
冷蔵は微生物の増殖を遅らせる保存法ですが、乾燥まで自動的に防ぐ方法ではありません。温度管理と水分管理は別の問題です。
空気の流れが強いと乾燥は進みやすい
保存中の乾燥では、湿度だけでなく空気の流れも重要です。
食品表面の近くでは、蒸発した水分によって湿度の高い薄い空気層ができます。この空気層がそのまま残れば、水分移動は次第に遅くなります。しかし、冷気や風でこの空気が入れ替わると、食品表面は再び乾いた空気にさらされます。
その結果、表面からの水分移動が続きやすくなります。冷蔵庫の吹き出し口の近くや、冷風が直接当たる場所で食品が乾燥しやすいのは、この影響もあります。
食品の乾燥を防ぐには、温度だけでなく、湿度と空気流を含めた保存環境を考える必要があります。
包装すると乾燥しにくくなるのはなぜ?
ラップや袋、密閉容器を使うと乾燥を抑えやすくなります。これは、食品から出た水蒸気がすぐに外へ逃げず、食品の周囲にとどまりやすくなるためです。
包装内部の湿度が高くなると、食品表面と周囲空気の水分状態の差が小さくなり、それ以上の水分移動が進みにくくなります。
また、包装材料そのものが水蒸気を通しにくければ、食品から外部へ失われる水分をさらに抑えられます。食品包装では、この水蒸気の通しやすさを示す性質が重要な設計項目になります。
日本食品科学工学会誌の研究でも、冷凍したニラをフリーザーバッグやラップで密閉・密着して保存すると表面の乾燥を防ぎやすく、包装方法によって水分損失の程度が変わることが示されています。
包装すれば密閉度は高いほどよい?
乾燥防止だけを考えれば、水蒸気を外へ逃がしにくい包装は有利です。しかし、すべての食品で「完全に密閉すればよい」とは限りません。
とくに野菜や果物は収穫後も呼吸しています。袋内の酸素が減りすぎたり二酸化炭素が増えすぎたりすると、異臭や品質低下につながることがあります。
そのため青果物では、水分損失を抑えながら必要なガス交換も行える包装が使われます。実際にブロッコリーなどでは、水蒸気やガスの透過性を調整した包装によって、重量減少や品質低下を抑える研究が行われています。
つまり、保存包装では「乾燥を防ぐこと」と「呼吸に適した環境を保つこと」の両方を考える必要があります。
食品の種類によって乾燥しやすさが違う
同じ環境で保存しても、食品によって水分の失われやすさは異なります。
葉物野菜のように表面積が大きく、薄い組織を持つ食品は、水分を失うとしおれやすくなります。反対に、厚い皮や表皮を持つ果物では、水分損失が比較的ゆっくり進むことがあります。
また、食品中の水分量だけではなく、水がどの程度組織中に保持されているかも重要です。水分の多い食品でも表面構造が水分移動を抑える場合があり、逆に水分量がそれほど多くなくても表面から蒸発しやすい食品があります。
そのため、「水分が多い食品ほど必ず乾燥しやすい」とは一概にいえません。食品の表面構造、厚さ、組織、包装状態などが組み合わさって乾燥速度が決まります。
水分が減ると見た目や食感が変わる
保存中の乾燥は、単に重量が減るだけではありません。
野菜では細胞内の水分が減ることで張りが失われ、しおれたり軟らかくなったりします。果物では表面にしわが生じることがあります。肉や魚では表面が乾き、色や食感が変わる場合があります。
パンや菓子では水分の移動によって表面がかたくなったり、本来のやわらかさが失われたりします。食品によっては内部と表面の間でも水分移動が起こり、サクサクした部分が湿ったり、逆にしっとりした部分が乾いたりすることもあります。
つまり保存中の水分移動は、鮮度だけでなく食感や見た目にも直接影響します。
冷凍庫で起こる「冷凍焼け」も乾燥の一種
冷凍した肉や魚の表面が白っぽくなり、パサついた状態になることがあります。これは一般に冷凍焼けと呼ばれます。
冷凍中でも氷は少しずつ水蒸気として移動することがあります。包装が不十分で冷凍庫内の乾燥した空気に触れていると、食品表面の氷が失われ、表面が乾燥します。
さらに、乾燥した表面では酸素にもさらされやすくなり、脂質酸化や色の変化も進むことがあります。その結果、解凍後の食感や風味が低下します。
冷凍食品でも、空気をできるだけ抜いて密閉し、水蒸気を通しにくい包装を使うことが品質保持に重要なのはこのためです。
乾燥すると保存性が高まる場合もある
ここまで保存中の乾燥を品質低下として説明してきましたが、水分を意図的に減らす「乾燥保存」は食品を長持ちさせる代表的な方法でもあります。
乾燥食品では、微生物が利用できる水を減らすことで増殖を抑えます。干物、乾麺、乾燥果実などは、この原理を利用しています。
ただし、これは製造工程として水分を計画的に減らす場合です。生鮮食品や調理済み食品を保存中に無意識に乾燥させると、食感や風味が損なわれることが多くなります。
「乾燥すると保存性が高まること」と「保存中に乾燥して品質が落ちること」は、目的と水分量が異なる別の現象として考える必要があります。
家庭で乾燥を防ぐにはどうすればよい?
家庭で保存中の乾燥を抑えるには、食品をむき出しのままにせず、食品に適した袋、ラップ、密閉容器などを使うことが基本です。
冷蔵庫では冷気が直接当たり続ける場所を避け、野菜は野菜室や適切な包装を利用すると水分損失を抑えやすくなります。冷凍する場合は、できるだけ空気を抜いて密閉し、冷凍用の袋や容器を使うと冷凍焼けを防ぎやすくなります。
ただし、野菜や果物では過度な結露やガス環境の悪化が品質低下につながることもあります。食品ごとの保存表示や推奨方法を優先することが大切です。
まとめ
食品が保存中に乾燥するのは、食品中の水分が、周囲の空気との湿度差によって水蒸気として外へ移動するためです。周囲の湿度が低いほど、また空気の流れが強く、保存時間が長いほど、水分損失は進みやすくなります。
包装は食品の周囲の湿度を保ち、水蒸気が外へ逃げるのを抑えるため、乾燥防止に有効です。一方で、青果物のように呼吸する食品では、乾燥防止とガス交換の両立が必要になります。
保存中の乾燥は、しおれ、重量減少、食感変化、冷凍焼けなどの原因になります。食品を長くおいしく保つには、温度だけでなく、湿度、空気の流れ、包装まで含めて保存環境を整えることが重要です。
参考資料
- 蓄冷材を用いた青果物の保冷における温湿度変化と鮮度保持効果
- 清野晃之「冷凍包装方法の違いによるニラのメチイン含量の変化」日本食品科学工学会誌
- Zuo X, et al. Recent advances in high relative humidity strategy for preservation of postharvest fruits and vegetables: A comprehensive review.
- Bourlieu C, et al. Edible moisture barriers: how to assess of their potential and limits in food products shelf-life extension?

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