なぜ海や湖などで水の密度が違うのか?

水の密度に場所や条件による違いがあるのは、温度、塩分や溶存物質、圧力などによって、同じ体積の中に入る水分子や溶けた物質の量が変わるからです。 純水でも温度が変われば密度は変化し、海水ではさらに塩分が加わります。深海では高い圧力による圧縮も無視できません。

つまり「水の密度は1 g/cm³」と覚えるのは便利な近似ですが、実際の自然界では一定ではありません。湖の表面と底、暖かい海と冷たい海、淡水と海水、浅海と深海では条件が違うため、密度も違います。

目次

まず密度とは何か

密度とは、物質の質量を体積で割った値です。式では「密度=質量÷体積」と表します。

同じ質量でも体積が小さければ密度は大きくなり、同じ質量でも体積が大きければ密度は小さくなります。水の場合、温度や圧力によって分子間隔が変わり、塩などが溶ければ同じ体積に含まれる質量も変わります。

USGS(米国地質調査所)は、水の密度をおよそ1 g/mLとしつつ、正確な密度は温度や水に溶けている物質によって変わると説明しています。

純水でも温度によって密度が違う

水の密度を変える最も身近な条件が温度です。

一般に液体は温めると分子の熱運動が活発になり、体積が増えるため密度が低下します。水でも高温域ではこの傾向が見られます。たとえば20℃の水より80℃の水のほうが密度は小さくなります。

ただし水には重要な例外があります。大気圧付近の純水は、約4℃で密度が最大になります。USGSも、4℃の水が0℃の水よりわずかに高密度であることを示しています。

産業技術総合研究所も、水が4℃付近で最大密度を示すことを、水の代表的な異常物性の一つとして紹介しています。

なぜ約4℃で密度が最大になるのか

水分子は極性をもち、水分子どうしの間には水素結合が形成されます。

高い温度から水を冷やしていくと、熱運動が弱くなり、分子が平均的に近づくため密度は増えます。しかし低温になると、水素結合に適した比較的開いた分子配置が増える方向に働きます。

そのため、約4℃より低温では、冷やしているにもかかわらず体積が少し増え、密度が低下するようになります。

ただし、水の密度異常を分子レベルでどのように説明するかは現在も研究が続くテーマです。産総研は、低密度液体と高密度液体という異なる構造を想定する仮説などが研究されていることを紹介しています。

淡水湖では水深によって密度が違う

湖では、水温が場所や深さによって違うため、同じ淡水でも密度差が生まれます。

夏には太陽に温められた表面水の温度が高くなり、密度が小さくなります。下層の冷たい水はより高密度なので、上に軽い水、下に重い水という成層が形成されることがあります。

秋になって表面水が冷えると密度が増し、下の水と混ざりやすくなります。さらに冬に4℃より低くなると、今度は水が軽くなるため、冷たい水が表面に残りやすくなります。

この性質が、寒冷地の湖が表面から凍ることにつながります。氷自体も液体の水より密度が小さいため、水面に浮きます。

海水は淡水より密度が大きい

海水にはナトリウムイオンや塩化物イオンなど多くの塩類が溶けています。そのため、同じ温度・圧力なら海水は一般に純水より高密度です。

気象庁は、海水の密度が主に水温と塩分によって決まり、一般に水温が低く、塩分が高くなるほど密度が大きくなると説明しています。

これは、塩が溶けることで同じ体積中に含まれる質量が増え、水分子とイオンの配置も変化するためです。

したがって、暖かく塩分の低い海水と、冷たく塩分の高い海水では、後者のほうが高密度になりやすくなります。

海域によって密度が違うのはなぜか

海では、水温と塩分が場所によって大きく異なります。

低緯度の暖かい海では水温が高いため、密度を小さくする方向に働きます。高緯度では海面が強く冷却され、水温低下によって密度が増します。

さらに、蒸発が盛んな海域では水だけが大気へ出て塩分が残るため、表層の塩分が高くなることがあります。反対に、降水が多い場所や大河川の河口付近では淡水が加わり、塩分が低くなることがあります。

気象庁も、海洋表面の塩分は降水によって低くなり、蒸発によって高くなると説明しています。

このため、同じ海でも緯度、季節、降水量、蒸発量、河川水の流入などによって密度分布が変化します。

深海では圧力も密度を変える

海の深い場所では、上にある大量の海水の重さによって非常に高い圧力がかかります。

水は日常条件では圧縮されにくい液体ですが、完全に圧縮できないわけではありません。圧力が高くなると体積はわずかに小さくなり、密度は増えます。

気象庁は、海洋の熱量計算で用いる海水密度が水温・塩分・圧力によって変化し、場所ごとに異なると説明しています。

IAPWSの水の熱力学標準式も、密度を含む物性を温度と圧力の関数として扱っています。したがって深海の密度を正確に考える場合、表面の水のように温度と塩分だけを見るのでは不十分です。

川と海が混ざる河口では密度差が大きい

河口では、塩分の低い河川水と塩分の高い海水が出会います。

淡水は海水より密度が小さいため、条件によっては軽い淡水が表面を流れ、その下に重い海水が入り込む二層構造ができます。

潮汐や風、河川流量が強い場所では両者がよく混ざりますが、混合が弱い河口では塩分と密度の成層がはっきり現れることがあります。

この密度差は、河口の水の流れ、酸素の供給、物質輸送、生態系などにも影響します。

塩湖ではさらに密度が大きくなることがある

乾燥地域の塩湖では、蒸発によって水だけが失われ、塩類が濃縮されることがあります。その結果、海水よりはるかに高い塩分になる湖もあります。

USGSが米国グレートソルト湖を対象に行った研究では、水の密度が塩分と温度の関数として大きく変化することが示されています。

このような高塩分水では、通常の淡水より浮力が大きくなります。人が高塩分の湖で浮きやすいのは、人の体の密度に対して水の密度が高いためです。

地下水では溶存成分によって密度差が生まれる

地下水は地中を流れる間に岩石や土壌と接触し、さまざまなミネラルを溶かし込みます。

一般的な淡水地下水では、溶存物質による密度差は海水ほど大きくありません。しかし、塩分の高い地下水や温泉水、沿岸部で海水の影響を受けた地下水では密度が高くなることがあります。

沿岸の地下では、軽い淡水地下水が高密度の海水の上に分布することがあります。この密度差は地下水と海水の境界位置にも関係します。

温泉では温度と溶存物質が同時に影響する

温泉水は、通常の地下水より温度が高く、さまざまな成分を多く含む場合があります。

温度が高いことは密度を小さくする方向に働きます。一方、塩類などの溶存物質が多いことは密度を大きくする方向へ働きます。

そのため、温泉水の密度を純水と比較するときは、「高温だから軽い」「ミネラルが多いから重い」のどちらか一方だけで判断できません。温度と組成の両方を見る必要があります。

氷は液体の水より密度が小さい

普通の氷Ihは、液体水より密度が小さいため水に浮きます。

凍結すると、水分子は水素結合によって比較的すき間の多い結晶格子をつくります。同じ数の水分子でも液体より大きな体積を占めるため、密度が低くなります。

USGSは、氷の密度が液体水より低いことを、水がもつ重要な性質として説明しています。

したがって、水の密度差を比較するときは液体同士だけでなく、液体と固体という相の違いも大きな条件になります。

水の密度差はなぜ自然界で重要なのか

水に密度差があると、重力のもとでは高密度の水が沈み、低密度の水が上に移動する傾向があります。

海では、低温で高塩分の重い海水が高緯度地域で沈み込み、深層循環の形成に関係します。気象庁は、海洋の深層循環が水温と塩分による密度差によって駆動されると説明しています。

湖でも、温度による密度差が季節的な上下混合や成層を生みます。

つまり、わずかな密度差でも広大な水域では大きな水の動きを生み、酸素、栄養塩、熱などを運ぶ役割を果たします。

場所や条件による違いを比較すると

  • 約4℃の純水:大気圧付近では密度が最大になる
  • 温かい淡水:約4℃の水より一般に密度が小さい
  • 0℃付近の淡水:4℃の水よりわずかに密度が小さい
  • 海水:同じ温度の純水より一般に密度が大きい
  • 低温・高塩分の海水:高温・低塩分の海水より高密度になりやすい
  • 深海:高圧による圧縮で表層より密度が増える方向に働く
  • 高塩分の塩湖:海水よりさらに高密度になる場合がある
  • 普通の氷:液体水より低密度なので浮く

「水の密度は1」と言えるのはどんなときか

学校の計算では、水の密度を1 g/cm³とすることがよくあります。日常的な概算では便利で、条件によっては十分な近似です。

しかし、精密な計算や自然現象の理解では、温度、塩分、圧力を明示する必要があります。

産総研の熱物性データベースでも、純水の密度は温度の関数として、また一部は温度と圧力の関数として提供されています。

つまり「水の密度」という一つの数字があるのではなく、その水が置かれている条件ごとの密度があると考えるほうが正確です。

まとめ

水の密度に場所や条件による違いがある最大の理由は、温度、塩分・溶存物質、圧力によって、水や溶質が同じ体積の中にどれだけ詰まっているかが変わるからです。

  • 純水の密度は温度によって変化する
  • 大気圧付近の純水は約4℃で密度が最大になる
  • 海水は塩分を含むため、同温度の純水より一般に高密度である
  • 海では低温・高塩分になるほど密度が高くなりやすい
  • 深海では高い圧力も密度を増やす方向に働く
  • 河口では淡水と海水の密度差によって成層ができることがある
  • 塩湖や高塩分地下水では溶存物質による密度増加が大きくなる
  • 普通の氷は開いた結晶構造のため液体水より低密度である

つまり水の密度は、どこでも一定の値ではありません。その場所の水温、塩分、圧力、相の違いを反映して変化し、その密度差が湖の成層や海洋循環など、地球規模の水の動きにもつながっているのです。

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