なぜ果物の色は品種・熟度・光・温度によって違うのか?

果物の色は、同じ種類でも品種によって違い、同じ品種でも熟度や日当たり、気温によって濃さが変わることがあります。赤いリンゴでも鮮やかに色づく果実と淡い果実があり、赤色系ブドウでも高温条件では着色が弱くなることがあります。

この違いを生むのは、クロロフィル、カロテノイド、アントシアニンなどの色素をどれだけ作るか、どこに蓄積するか、いつ分解するかが、品種の遺伝的な性質と環境条件の両方に左右されるからです。

つまり果物の色の違いは、単に「赤い色素が多いか少ないか」だけでは説明できません。品種 × 熟度 × 光 × 温度 × 水分などの環境が色素代謝を変えることで、見える色が変わります。

目次

結論:果物の色は、色素を作る能力と環境への反応性が違うため変わる

果物の色に違いが生まれる主な理由は、次のように整理できます。

  • 品種ごとに作りやすい色素や蓄積量が違う
  • 成熟に伴ってクロロフィルが減り、別の色素が増える
  • 光や紫外線がアントシアニン合成を促す果物がある
  • 高温でアントシアニン蓄積が弱くなる場合がある
  • 水分や栄養条件が色素合成へ影響する
  • 果皮と果肉で色素をためる場所や量が違う

そのため、果物の色は遺伝だけでも環境だけでもなく、両者の組み合わせとして現れます。

品種によって色が違うのは、色素合成の遺伝的な能力が違うから

同じリンゴでも赤い品種、黄色い品種、緑色を残す品種があります。こうした違いには、アントシアニンやカロテノイドの合成に関わる遺伝子や、それらを調節する転写因子の働きが関係します。

リンゴの果皮色研究では、MYB、bHLH、WD40などの転写因子がアントシアニン合成を調節し、品種ごとの着色特性に関係することが整理されています。

また、品種によって光への反応性も異なります。国内のリンゴ研究では、白色光や紫外線を含む光を当てたときのアントシアニン生成量が品種ごとに大きく違うことが示されています。

つまり、同じ光や同じ温度に置いても、品種によって「色素を作るスイッチ」の入りやすさが違います。

赤・黄・緑・紫の違いは、主要色素の組み合わせで生まれる

果物の色を作る代表的な色素には、緑色のクロロフィル、黄・橙・赤色系のカロテノイド、赤・紫・青紫系のアントシアニンがあります。

未熟果ではクロロフィルが多く、緑色に見えるものが多くあります。成熟するとクロロフィルが分解され、もともと存在していたカロテノイドが目立ったり、新たにカロテノイドやアントシアニンが増えたりします。

果実色のレビューでも、成熟に伴う色変化はクロロフィルの減少と、カロテノイド・アントシアニンの合成・蓄積のバランスで説明されています。

そのため「緑から赤へ変わる」ときも、一つの色が別の色へ直接変換されているわけではありません。

熟度が違うと、同じ果物でも色が違う

果物は成熟中に色素代謝を大きく変えます。

リンゴでは、成熟に伴ってアントシアニン生成能が高まる品種があります。一方、成熟の比較的早い段階で着色能力が最大になり、その後低下する品種もあります。

つまり、着色のピークは品種ごとに同じではありません。

このため、同じ品種でも早採りした果実と十分に成熟した果実では色が違い、収穫時期が少しずれるだけでも外観に差が出ることがあります。

光が当たると赤くなりやすいのは、アントシアニン合成が誘導されるから

赤色や紫色に関わるアントシアニンは、多くの果物で光の影響を強く受けます。

光を受けると光受容体を介してシグナルが伝わり、アントシアニン合成に関わる遺伝子の発現が高まります。

国内のリンゴ研究では、白色光と紫外線を組み合わせた照射でアントシアニン生成が大きく促進され、その反応性は品種によって異なることが示されています。

そのため、木の外側でよく日に当たった果実と、葉の陰にあった果実で色づきが違うことがあります。

光の「量」だけでなく「質」も色づきに影響する

果実着色に影響するのは、明るさだけではありません。

紫外線や青色光など、特定の波長がアントシアニン合成を強く刺激する場合があります。

リンゴの研究では、白色光だけの場合と紫外線を含む光の場合でアントシアニン生成量が異なり、その差の大きさも品種によって違いました。

つまり「日当たりがよい」という条件の中でも、実際には光量と光質の両方が着色へ影響しています。

高温で赤色が弱くなる果物があるのはなぜ?

アントシアニンの蓄積は温度にも左右されます。

赤色系ブドウでは、成熟期が高温になる地域で着色不良が問題になることがあります。農研機構は、着色不良の赤色系ブドウに対し、収穫後に光照射と15〜20℃程度の温度処理を組み合わせることで、果皮色を改善できることを示しています。

国内のブドウ研究でも、夜間高温条件ではアントシアニン含量が著しく低下する条件が確認され、アントシアニン合成に関わるUFGT活性が低温側で高くなる例が示されています。

つまり、高温は色素そのものを直接壊すだけでなく、色素を作る酵素や遺伝子発現へ影響し、着色を弱めることがあります。

ただし、低温なら必ず色が濃くなるわけではない

温度の影響は果物の種類、品種、発育段階によって異なります。

同じブドウでも、温度条件によっては一定の暖かさが着色に有利な場合もあり、単純に「寒いほど赤くなる」とは言えません。

また、カロテノイド主体の黄色・橙色果実では、温度への反応がアントシアニン主体の赤色果実と同じとは限りません。

果実色を見るときは、どの色素が主要なのかを先に考える必要があります。

水分条件も果物の色に影響する

果実色に関する環境レビューでは、光と温度に加え、水分条件も色素蓄積へ影響する主要因として扱われています。

適度な水分ストレスによってアントシアニンなどの二次代謝物が増える場合がありますが、強すぎる水ストレスは光合成や果実生育を低下させ、正常な着色を妨げることがあります。

つまり「水を減らせば色が濃くなる」と単純には言えません。果実が正常に成熟できる範囲での水分状態が重要です。

栄養条件も色素合成へ影響する

果樹が吸収する窒素やその他の無機養分は、葉の成長、光合成、果実の成熟速度、二次代謝に影響します。

環境要因と果実着色のレビューでは、栄養条件もアントシアニン生合成に影響する要因として整理されています。

ただし、養分を多く与えれば色が濃くなるわけではなく、過剰な栄養で枝葉が繁茂すると果実への光が不足することもあります。

着色は、果実自身の代謝と樹全体の生育状態の両方に左右されます。

果皮と果肉で色が違うのは、色素を作る場所が違うから

赤いリンゴや紫ブドウでは、果皮に多くのアントシアニンが蓄積していても、果肉は白色や淡色のことがあります。

一方、赤肉リンゴや一部のベリーでは、果肉にもアントシアニンが蓄積します。

リンゴ「紅の夢」の研究では、光が果皮近くの果肉のアントシアニン蓄積へ直接影響し、さらに周囲の葉の光合成を通じて深部果肉へ間接的に影響することが示されています。

つまり、同じ果実の中でも、色素を合成できる細胞や光が届く範囲の違いによって色の分布が変わります。

同じ品種でも、木の中の位置で色が違うことがある

樹冠の外側と内側では、受ける光の量と質、葉温、果実温度、風通しが異なります。

外側の果実は光を多く受けやすく、アントシアニン合成が促進されることがあります。一方、内側では日射が弱く、着色が遅れることがあります。

このため栽培では、剪定、枝の配置、摘葉などによって果実周辺の光環境を整える場合があります。

ただし、急に強光へさらすと日焼け果が生じることがあるため、光を多くすればよいというものでもありません。

地域や年によって色が違うのは、環境の組み合わせが違うから

同じ品種を栽培しても、産地や年によって着色に差が出ます。

理由は、成熟期の昼夜温度、日射量、雨量、水分状態などが毎年同じではないからです。

2023年の果実色に関するレビューでは、光、温度、水分などの環境条件が果実の色素生産を調節し、ストレスが強すぎると色素合成を停止させる場合もあると整理されています。

つまり、色は品種の固定的な性質ではなく、遺伝的な能力がその年の環境の中でどこまで発現したかを反映した形質でもあります。

「色が濃いほど熟している」とは限らない

多くの果物では成熟と着色が連動するため、色は熟度判定の重要な手がかりです。

しかし、環境条件によって着色だけが遅れたり、逆に色は十分でも糖や酸の成熟が追いついていなかったりすることがあります。

特に高温条件では、糖の蓄積は進んでも赤い着色が弱いケースがあります。

そのため収穫判断では、外観色だけでなく糖度、酸度、硬さ、香り、開花後日数などを合わせて見る必要があります。

色の違いは、栄養成分の違いをある程度反映することもある

アントシアニンやカロテノイドは、見た目の色を作るだけでなく、植物の二次代謝物でもあります。

そのため、色の濃さと色素含量が対応する場合があります。

ただし、見た目の濃さは果皮の厚さ、色素の存在する細胞層、光の反射、他の色素との重なりにも影響されます。

したがって、「濃い色なら必ず特定成分が多い」と外観だけで断定することはできません。

まとめ

果物の色が品種、熟度、光、温度などによって違うのは、色素の種類と量を決める仕組みが遺伝と環境の両方に左右されるからです。

品種ごとにアントシアニンやカロテノイドを作る能力や光への反応性が異なり、成熟が進むとクロロフィル分解や新しい色素の合成が起こります。

さらに、光や紫外線はアントシアニン合成を促し、高温は赤色系ブドウなどの着色を弱める場合があります。水分や栄養、樹冠内の位置、地域や年の気象条件も色の差につながります。

つまり果物の色の違いは、品種固有の色素代謝 × 成熟段階 × 光・温度・水分などの環境条件によって生まれているのです。

参考資料

関連する「なぜ?」

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

目次