なぜ住まいの換気は室内の空気を入れ替えられるのか?

住まいの換気は、単に「窓を開けること」ではありません。室内の空気を外へ出し、その分の外気を室内へ取り入れることで、空気の流れをつくる仕組みです。

人が暮らす室内では、呼吸による二酸化炭素、調理や入浴で生じる水蒸気、建材・家具・日用品などから出る物質、におい、粒子などが少しずつ増えます。換気は、こうした室内空気を外気で薄め、外へ運び出します。

つまり、住まいの換気が室内の空気を入れ替えられるのは、給気口・排気口・換気扇などで室内外に圧力差と空気の通り道をつくり、外気を取り入れながら室内空気を排出するからです。

目次

換気は「空気の入口」と「出口」で成り立つ

空気を外へ出すだけでは、換気は成立しません。排気した分だけ、どこかから新しい空気が入る必要があります。

たとえば浴室換気扇を回すと、浴室や住宅内部の空気が屋外へ排出されます。すると室内側の圧力がわずかに低くなり、給気口やドアのアンダーカット、建物のすき間などから空気が入ろうとします。

反対に、給気ファンで外気を室内へ送り込む方式では、室内の圧力がわずかに高くなり、別の排気口やすき間から空気が外へ出ます。

換気は「ファンが空気を動かす」だけではなく、入口から出口までの空気の経路をつくることで成り立っています。

なぜ換気扇を回すと空気が流れる?

換気扇のファンが回ると、羽根が空気へ力を加え、空気を一定方向へ移動させます。

排気型の換気扇なら、室内空気をダクトや開口部を通して屋外へ押し出します。その結果、排気された分の空気を補うために外気が給気口などから入ります。

米国エネルギー省の住宅換気資料では、全館換気方式を、室内空気を機械的に排出する「排気型」、外気を機械的に供給する「給気型」、給気と排気をほぼ同量行う「バランス型」などに分けています。

どの方式でも、空気の流れを生み出す基本は、ファンによって圧力差をつくり、空気を流したい経路へ導くことです。

住まいの換気方式にはどんな違いがある?

排気型

排気ファンで室内空気を外へ出し、その分の外気を給気口などから取り入れる方式です。

仕組みが比較的単純で、浴室・トイレ・住宅全体の換気などで使われます。室内側が外気よりわずかに低い圧力になりやすいため、給気口をふさぐと必要な外気が入りにくくなります。

給気型

給気ファンで外気を室内へ送り込み、室内空気を排気口や建物のすき間などから外へ押し出す方式です。

外気を特定の場所から取り込めるため、フィルターを通して供給する設計もできます。ただし、住宅の構造や気候によっては、室内外の圧力差が壁内部の湿気移動などへ影響するため、適切な設計が必要です。

バランス型

給気ファンと排気ファンを使い、外気を入れる量と室内空気を出す量をおおむね釣り合わせる方式です。

外気を取り入れる場所と排気する場所を計画しやすく、住宅全体に空気を配りやすい特徴があります。熱交換換気も、このバランス型の一種として使われます。

24時間換気はどのように家全体へ空気を流す?

日本の住宅では、シックハウス対策として、原則として機械換気設備の設置が求められています。国土交通省は、住宅では換気回数0.5回/時以上の機械換気設備、いわゆる24時間換気システムなどが必要だと説明しています。

0.5回/時とは、単純化すると1時間に住宅内の空気量の半分に相当する量を入れ替える目安です。

ただし、住宅の中の空気が一度に全部入れ替わるわけではありません。実際には、給気口から入った空気が居室を通り、ドア下のすき間や換気ガラリなどを経由して、廊下・洗面・トイレなどの排気口へ流れるよう計画されます。

この経路が家具やカーテンでふさがれたり、給気口を閉じたりすると、設計どおりの空気の流れがつくられにくくなります。

局所換気と全館換気は何が違う?

局所換気

キッチンのレンジフード、浴室換気扇、トイレ換気扇など、汚染物質や水蒸気が発生する場所の近くで直接排気する方法です。

調理の煙や水蒸気のように、短時間で大量に発生するものは、住宅全体へ広がってから薄めるより、発生場所で外へ出す方が効率的です。

全館換気

住宅全体で少量の換気を継続し、生活によって生じる二酸化炭素、におい、化学物質などをゆるやかに薄める仕組みです。

米国EPAも、室内空気質を改善する基本として、発生源を減らすこと、換気で外気を取り入れること、必要に応じて空気清浄を組み合わせることを挙げています。

つまり、局所換気は「発生源の近くで捕まえる」、全館換気は「住宅全体で薄めて外へ出す」という役割の違いがあります。

換気はなぜ室内の汚染物質を減らせる?

室内に汚染物質が発生すると、その濃度は「どれだけ発生するか」と「どれだけ外へ出るか」のバランスで決まります。

換気量が増えると、外気が室内の空気と混ざり、室内汚染物質の濃度を薄めます。同時に、汚染物質を含む室内空気が排気されるため、室内にたまり続けにくくなります。

EPAは、換気不足では外気による希釈が少なく、室内で発生した汚染物質が排出されにくいため、濃度が高くなる場合があると説明しています。

ただし、換気だけで発生源そのものがなくなるわけではありません。強いにおいや化学物質を発生する製品を減らす、調理時にレンジフードを使うなど、発生源対策と組み合わせる方が効率的です。

熱交換換気はなぜ換気しながら熱を回収できる?

冬に換気をすると、暖めた室内空気を外へ出し、冷たい外気を入れるため、暖房負荷が増えます。夏は逆に、冷やした空気を外へ出し、暖かい外気を取り込むことになります。

熱交換換気では、排気と給気を直接混ぜずに、熱交換器を通して熱だけを移します。

冬なら、外へ捨てる暖かい室内空気の熱を、入ってくる冷たい外気へ移します。夏なら、冷たい排気側へ給気の熱を移し、外気をある程度冷ましてから室内へ送ります。

米国エネルギー省は、熱回収型換気(HRV)やエネルギー回収型換気(ERV)が、給気と排気を行いながら熱交換器で熱を回収し、換気に伴う冷暖房エネルギーの損失を小さくすると説明しています。

ERVでは機種によって水分も一部移動させ、室内湿度の変化を緩和するものがあります。

換気と空気清浄機は同じ仕組み?

換気と空気清浄機は役割が違います。

空気清浄機は、室内空気を機器内部で循環させ、フィルターなどで粒子や一部の物質を取り除きます。基本的には、室内空気を屋外へ出したり、新しい外気を取り入れたりする装置ではありません。

換気は、室内空気そのものを外へ排出し、外気と入れ替えます。そのため、一般的な空気清浄機では取り除けない二酸化炭素なども、換気によって外へ出すことができます。

EPAも、発生源対策・換気・空気清浄を別の対策として整理しています。空気清浄機があるから換気が不要になるわけではありません。

窓を開ける換気と機械換気は何が違う?

窓を開ける自然換気では、風や室内外の温度差によって空気が流れます。

風が強く、向かい合う窓が開いていれば短時間で多くの空気が入れ替わることがあります。一方で、風が弱い、窓が一方向にしかない、外気と室温の差が小さいなどの条件では、換気量が少なくなる場合があります。

機械換気はファンで空気を動かすため、風の有無だけに頼らず、計画した換気量を確保しやすい特徴があります。

日常の基礎的な換気を機械換気で行い、一時的ににおいや汚染物質が増えたときに窓開けを追加する、という使い分けができます。

換気設備があっても空気が流れにくくなるのはなぜ?

給気口をふさいでいる

排気だけしても、外気が入る入口がなければ必要な風量を確保しにくくなります。

フィルターが目詰まりしている

給気口や換気設備のフィルターにほこりがたまると、空気抵抗が増えて風量が低下する場合があります。

ドア下の通気経路がふさがれている

居室から排気場所までの途中に空気が通れないと、家全体の換気経路がつながりません。

換気扇を長時間停止している

24時間換気を前提に設計された住宅で設備を止めると、想定していた換気量を確保できなくなります。

換気設備は、ファン単体ではなく「給気口→居室→通気経路→排気口」という一つのシステムとして見ることが重要です。

まとめ

住まいの換気が室内の空気を入れ替えられるのは、給気と排気の間に圧力差をつくり、外気が入って室内空気が出る経路を設けているからです。

排気型では室内空気を外へ出して給気口から外気を引き込み、給気型では外気を送り込んで室内空気を外へ押し出します。バランス型では給気と排気をほぼ同量行い、空気の流れを計画しやすくします。

局所換気はキッチンや浴室など発生源の近くで汚染物質や湿気を排出し、全館換気は住宅全体の空気を継続的に入れ替えます。熱交換換気では、排気の熱を給気へ移すことで、換気に伴う冷暖房負荷を抑えます。

大切なのは、換気扇だけを見るのではなく、外気の入口、室内の通り道、排気口がつながっているかを確認することです。換気は、住宅全体に意図した空気の流れをつくることで機能します。

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