結論から言うと、土の粒子に場所や条件による違いがあるのは、土のもとになる母材の種類、風化の進み方、水や風による運搬・堆積、斜面上の位置、深さ、人間の土地利用が場所ごとに異なるからです。その結果、砂・シルト・粘土の割合や礫の量、粘土鉱物の種類が変わり、同じ地域の中でも粗い土、細かい土、粘りの強い土などが生まれます。
土は一見するとどこでも似たような粒の集まりに見えますが、実際には粒径組成が大きく異なります。農林水産省は、土性を砂・シルト・粘土の粒径組成で表す土壌の基本的な性質として扱っています。またUSDA Natural Resources Conservation Service(NRCS)は、母材の違いが砂・シルト・粘土の割合など多くの土壌特性に関係すると説明しています。つまり土の粒子の違いは、土がどこから来て、どのように運ばれ、どのくらい風化したかという土地の履歴を反映しています。
まず「土の粒子の違い」とは何を比べているのか
土壌学では、直径2mm未満の鉱物質粒子を主に砂・シルト・粘土に分け、その割合を土性として表します。日本で広く使われてきた国際土壌学会法では、砂は2~0.02mm、シルトは0.02~0.002mm、粘土は0.002mm未満です。
農研機構は、日本で多く使われてきたISSS体系と、FAO・USDAで広く使われる体系では、砂とシルトの境界などが異なることを示しています。そのため資料を比べるときは、どの粒径区分を使っているか確認する必要があります。
重要なのは、砂・シルト・粘土が単なる名前の違いではないことです。砂が多い土は大きな孔隙ができやすく、通気性・透水性が高くなりやすい一方、粘土が多い土では粒子表面積が大きく、水や陽イオンを保持しやすくなります。つまり粒子の割合の違いは、そのまま土の働きの違いにつながります。
母材が違うと粒子の種類と大きさが変わる
土壌の出発材料を母材と呼びます。母材には、その場所の岩石が風化したものだけでなく、火山灰、河川堆積物、海成堆積物、風成堆積物なども含まれます。
母材が違えば、最初から粒子の大きさや鉱物組成が違います。たとえば河川の砂州では砂や礫が多く、静かな湖や低地に堆積した材料ではシルトや粘土が多くなりやすくなります。火山灰を母材とする土では、風化の過程でアロフェンなど特有の粘土鉱物が生じることがあります。
USDA NRCSは、母材の性質が砂・シルト・粘土の割合、化学組成、土壌構造、礫の量などに関係するとしています。つまり、土粒子の違いを考えるときの第一歩は「その土の材料は何だったのか」を見ることです。
岩石の種類で風化後の粒子が違う
同じように岩石が風化しても、元の鉱物によって残り方が異なります。
石英のように比較的風化に強い鉱物は、長く砂粒として残りやすい性質があります。一方、長石や雲母などの鉱物は化学的風化を受けると、粘土鉱物など別の鉱物へ変化していきます。
このため、風化した花崗岩に由来する土では石英質の砂が目立つ場合があり、強く風化した材料では細かな粘土鉱物の割合が高くなる場合があります。
つまり粒径の違いは、単純に「大きな岩が何回砕けたか」だけではありません。鉱物の化学変化によって、新しく細かな粘土鉱物が生成することも重要です。
風化の進み方が違うと粒径組成も変わる
母材が同じでも、風化の程度が違えば粒子の構成は変わります。
形成されて間もない若い土壌では、母材に含まれていた粗い粒子が多く残ることがあります。一方、長い時間にわたって水や温度変化、化学反応を受けた場所では、鉱物が細かくなったり、粘土鉱物へ変化したりします。
風化の速度は気候の影響も受けます。高温で水分が多い条件では、化学的風化が進みやすくなります。乾燥や低温の条件では、反応の進み方が違います。
したがって、同じ種類の岩石が分布する地域でも、気候や形成時間の違いによって砂・シルト・粘土の割合が異なることがあります。
水が粒子を選別して運ぶ
土粒子の地域差をつくる大きな仕組みが、水による運搬と堆積です。
川の流れには、粒子を動かす力があります。流れが速い場所では、細かな粒子は遠くへ運ばれやすく、礫や砂など比較的大きく重い粒子が残りやすくなります。流れが遅くなると砂が沈み、さらに静かな場所ではシルトや粘土のような細かな粒子も沈降します。
USDA NRCSは、速い河川では礫・石・砂が残り、ゆっくり流れる水や湖ではシルトや粘土のような細粒が堆積すると説明しています。
そのため同じ川沿いでも、河道近くの自然堤防と、その背後にある低湿地では土性が違うことがあります。洪水のたびに異なる粒径の堆積物が重なるため、深さによって粒子組成が変わる場合もあります。
風も細かな粒子を遠くへ運ぶ
乾燥した地表では、風も粒子を選別して運びます。
大きく重い粒子は遠くまで飛びにくい一方、細かなシルトや粘土は空中へ浮遊し、長距離を移動することがあります。風によって堆積した細粒物質は、風成堆積物として新しい母材になります。
USDA NRCSは、風で運ばれたレスが広い地域の土壌母材になる例を挙げています。日本でも大陸からの風成塵が土壌鉱物へ影響することがあります。
このように、現在その場所にある粒子が必ずしも真下の岩石からできたとは限りません。遠くから運ばれた粒子が混ざることで、粒径組成や粘土鉱物の種類が変わることがあります。
斜面の上部と下部で粒子が違うのはなぜか
同じ斜面の中でも、上部と下部では粒子組成が異なることがあります。
斜面上部では雨水によって細かな粒子が流されやすく、表土が薄くなったり、粗い粒子が相対的に多く残ったりします。一方、斜面下部や窪地では、上から運ばれたシルト・粘土・有機物が堆積しやすくなります。
USDA NRCSは、土壌形成を考える際にランドスケープ上の位置を重要な要因とし、斜面や低地で侵食・堆積条件が異なることを示しています。
つまり数十メートル程度の範囲でも、地形によって粒子の「出ていく量」と「入ってくる量」が変わり、土性の違いが生まれることがあります。
深さによって粒子の割合が違うこともある
土壌断面では、表層と下層で砂・シルト・粘土の割合が異なることがあります。
一つの理由は、異なる時期に異なる堆積物が積み重なったことです。河川の氾濫や火山灰の降下などが繰り返されると、砂の多い層の上にシルト質の層が乗るなど、層ごとに土性が変わる場合があります。
もう一つの理由は、土壌形成の過程で粘土が移動することです。上層から細かな粘土粒子が雨水とともに移動し、下層に集積することがあります。
農研機構の日本土壌インベントリーに掲載されている土壌断面でも、同じ地点の中で深さごとに土性が変化する例が確認できます。したがって「この土地は砂質土」と一言で表しても、根の深さまで同じ土性とは限りません。
黒ボク土では火山灰と風化の影響が大きい
日本で広く見られる黒ボク土は、主として火山灰に由来する土壌です。農研機構の日本土壌インベントリーでは、黒ボク土は火山灰を主な母材とし、軽しょうで、保水性や透水性が比較的よい特徴を持つと説明されています。
火山灰中の火山ガラスや鉱物は風化し、アロフェンやイモゴライトなどの非晶質粘土鉱物を生じることがあります。一方、地域によっては大陸からの風成塵や火山灰以外の材料が混ざり、結晶性の粘土鉱物を多く含む非アロフェン質黒ボク土ができます。
つまり「火山灰土」という大きなくくりの中でも、母材の混合割合や風化条件によって粒子・鉱物組成には違いがあります。
低地では洪水や堆積の履歴が粒子差をつくる
河川沿いの低地では、洪水や流路変化によって土砂が繰り返し堆積します。
流れが強いときには砂や礫が多く運ばれ、流れが弱い場所ではシルトや粘土が堆積します。このため低地土では、比較的近い場所でも粗粒質、中粒質、細粒質といった違いが現れます。
農研機構の土壌断面データでも、河成堆積物からできた低地土に砂質の層が見られる例があります。洪水の規模や流れの速さが時期ごとに違えば、同じ地点でも層ごとの粒径が変わります。
低地の土粒子は、現在の川の状態だけでなく、過去の洪水や堆積の履歴を記録しているといえます。
耕作や造成でも粒子の分布は変わる
人間活動も土の粒子分布に影響します。
耕起では表層の異なる粒子や有機物が混ざります。客土では、別の場所から運んだ土が加えられます。造成地では、切土と盛土によって本来の土壌層が失われたり、複数の母材が混ざったりします。
また、長年の侵食によって細粒が流出すれば、表層が相対的に砂質・礫質になることがあります。反対に、水路からの泥や堆積物が入れば細粒分が増えることもあります。
USDA NRCSも、人間が土を大きく混合した場合、その混合材料自体を母材として扱うことがあるとしています。現在の粒子組成は、自然の形成過程だけでなく土地利用の履歴も反映します。
同じ粒径でも粘土鉱物の種類が違うことがある
粘土は0.002mm未満という粒径で区分されますが、すべて同じ性質ではありません。
粘土鉱物には、カオリナイト、スメクタイト、バーミキュライト、アロフェンなどさまざまな種類があり、電荷、膨潤性、表面積、養分保持力が異なります。
そのため、粘土含量が同じ30%の土でも、どの粘土鉱物が多いかによって保水性、保肥力、膨潤・収縮の程度などが変わります。
場所ごとの土粒子の違いを本当に理解するには、「砂・シルト・粘土が何%か」だけでなく、特に粘土画分の鉱物組成まで見る必要があります。
粒子の違いが水はけや保水性にどう表れるのか
粒子の大きさが変わると、粒子間の孔隙も変わります。
砂の多い土では大きな孔隙ができやすく、水が下へ移動しやすいため、一般に排水性・通気性が高くなります。その一方、保水力や保肥力は小さくなりやすい傾向があります。
粘土の多い土では細かな孔隙が多く、粒子表面積も大きいため、水や養分を保持しやすくなります。ただし排水が遅く、濡れたときに粘りやすい場合があります。
農林水産省の土壌診断資料でも、砂質土は排水・通気性が大きく、粘質土は保水・保肥力が大きい傾向が整理されています。
このため、粒子組成の地域差は、農業での灌水頻度、排水対策、肥料管理などの違いにもつながります。
「土性」と「土壌構造」は別に考える必要がある
ここで混同しやすいのが土性と土壌構造です。
土性は砂・シルト・粘土の割合で決まります。一方、土壌構造は、それらの粒子が腐植や粘土、微生物、根などによってどのようにまとまっているかを表します。
たとえば同じ粘土含量の土でも、安定した団粒が発達している土と、踏圧で締め固まった土では、水はけや根の伸びやすさが大きく違います。
したがって「粒子が細かいから必ず水はけが悪い」と単純には言えません。粒径組成は基本条件ですが、実際の土の働きは構造、有機物、水分、締め固まりなどと組み合わさって決まります。
場所や条件による土粒子の違いをまとめると
- 母材の種類によって、もともとの粒径や鉱物組成が違う
- 岩石の風化しやすさによって砂として残る量や粘土生成量が変わる
- 気候や時間によって風化の進み方が変わる
- 河川は流速に応じて礫・砂・シルト・粘土を選別して運ぶ
- 風は特に細かな粒子を遠くまで運ぶ
- 斜面上部では細粒が流失し、下部では堆積しやすい
- 洪水や火山灰の堆積が重なると、深さごとに粒径が変わる
- 粘土の移動・集積によって上層と下層の粒径組成が変わる
- 耕起・客土・造成・侵食など人間活動も粒子分布を変える
- 同じ粘土含量でも粘土鉱物の種類が違えば性質は異なる
つまり、土の粒子に場所や条件による違いがあるのは、土がその場で均一に作られるのではなく、異なる母材が風化し、水や風に選別されて運ばれ、地形や時間、人間活動の影響を受けながら混ざり合うからです。砂・シルト・粘土の割合は、その土地の地質・地形・堆積・風化の履歴を反映した結果であり、だからこそ隣り合う場所でも土の手触りや水はけが違うことがあるのです。

コメント