洗濯中の色移りは、色の濃い衣類と白い衣類を一緒に洗えば必ず起こる現象ではありません。染色された布から染料が洗濯液へ離れ、その染料が別の衣類へ移動して再び付着する条件がそろったときに起こります。
その起こりやすさは、染料と繊維の結び付き、染色後に残った未固着染料、洗濯温度や時間、水量、機械的な作用、衣類の量などによって変わります。そのため同じ濃色衣類でも色移りしやすいものとしにくいものがあり、同じ衣類でも洗い方によって結果が変わります。
色移りはどのように起こるのか
色移りを理解するには、「色落ち」と「再付着」を分けて考えると分かりやすくなります。まず染色された衣類から染料が水中へ離れます。次に、その染料が洗濯液中を移動し、白物や淡色衣類など別の布へ吸着します。この二段階が組み合わさることで、受け手側の衣類に本来なかった色が付いて見えます。
2020年に発表された染料移行防止試験の研究でも、濃色布から洗濯中に染料が放出され、その染料が白布へ吸着することで色差が生じる仕組みが評価されています。つまり、色移りは単なる「濃い色がこすれて付く」現象だけではなく、洗濯液を介した染料の移動でも起こります。
衣類によって色移りしやすさが違うのはなぜか
衣類の色は、繊維に染料を固定して作られています。ただし、染料と繊維の結び付き方は、繊維と染料の組み合わせや染色方法によって異なります。また、染色後の洗浄が十分でない場合などには、繊維に強く固定されていない染料が表面付近に残ることがあります。
反応染料で染めた綿を扱った研究では、すべての染料が繊維と強固に結合するわけではなく、弱く吸着した染料や未固着の染料が洗濯時に水中へ離れる可能性が示されています。放出された染料が多ければ、同じ洗濯槽にある淡色衣類へ移る機会も増えます。
染色の耐久性は「染色堅ろう度」という考え方で評価されます。洗濯に対する堅ろう度が高い衣類では色の変化や他の布への汚染が起こりにくく、低い衣類では注意が必要です。衣類の見た目が同じ濃紺や黒でも、染料、繊維、染色・仕上げ工程が違えば堅ろう度は同じではありません。
デニムなど濃色衣類で注意が必要なのはなぜか
濃色衣類は染料の使用量が多い場合があり、色落ちが目立ちやすい衣類があります。特にデニムは、着用や洗濯による色の変化そのものが特徴になる製品もあります。
ブルージーンズを対象とした日本家政学会の研究では、製品によって洗濯温度に対する染色堅ろう度の変化が異なり、また湿った状態での摩擦では乾燥時より色落ち・色移りが起こりやすい結果が示されています。このことからも、「デニムなら全部同じ」「濃色なら全部同じ」とは扱えません。
新しい濃色衣類や、洗った水に明らかに色が出る衣類では、最初の数回は白物や淡色物と分けるなど、製品の取扱い表示や付記された注意に従うのが基本です。
洗濯温度で色移りが変わるのはなぜか
温度が上がると、染料が繊維から離れる速度や、水中での移動、別の繊維への吸着などが変化します。そのため洗濯温度は色移りに影響する条件の一つです。
市販衣類を用いた研究では、40℃・85分の洗濯は、25℃・30分の低温・短時間洗濯よりも色落ちと色移りが大きかったと報告されています。また別の研究でも、20~60℃の範囲で温度によって洗濯液への染料放出量が変化しました。ただし、その関係は単純な直線ではなく、放出と他の布への吸着が同時に進むため、温度が高いほど洗濯液中の染料濃度が常に高くなるとは限りません。
家庭では「色移り防止のために必ず何℃にする」と一律に決めるのではなく、衣類の洗濯表示に示された上限温度と処理強度を守ることが基本です。消費者庁が案内するJIS L 0001の洗濯表示も、衣類に許容される洗濯温度や処理の強さを示しています。
洗濯時間が長いと色移りしやすくなるのか
洗濯時間が長くなれば、染料が水に触れ、衣類同士が動く時間も長くなります。しかし、色移りの程度は単純に時間だけへ比例するわけではありません。洗濯中には、染料が元の布から離れる現象と、別の布へ吸着する現象が同時に進むからです。
2022年の研究では、反応染料で染めた濃色布について、洗濯時間を変えると洗濯液中の染料量が変化し、一定時間を超えると淡色布への吸着増加によって洗濯液中に残る染料量が減る現象も観察されました。これは、洗濯液の色の濃さだけを見ても、衣類への色移り量をそのまま判断できないことを示しています。
必要以上に長い洗濯を避けることは衣類の色を保つ一つの考え方ですが、汚れ落ちとのバランスも必要です。衣類と洗濯機の指定に合うコースを選ぶことが重要です。
水量や衣類の量も関係するのはなぜか
色移りは洗濯液の中で起こるため、水量と衣類量の比率も影響します。濃色衣類が多ければ、洗濯液へ放出される染料の総量が増える可能性があります。また、水量が変われば染料の濃度や布との接触条件も変わります。
家庭洗濯を模擬した研究では、濃色布の投入量が増えるにつれて洗濯液中の染料放出量が増えました。水量についても染料放出量への影響が確認されています。ただし、これも単純に「水が多ければ必ず安全」「少なければ必ず色移りする」とはいえず、染料の放出と再吸着の双方が関係します。
洗濯機へ衣類を詰め込みすぎると、洗浄やすすぎにも影響します。色移りだけを理由に特殊な水量へ変更するより、まず機種が指定する容量を守ることが基本です。
摩擦による色移りと洗濯液を介した色移りは何が違うのか
衣類の色移りには、水中へ出た染料が別の布へ付く場合だけでなく、濡れた布同士が接触・摩擦することで色が移る場合もあります。特に染色堅ろう度には、洗濯に対するものと摩擦に対するものがあり、評価する現象が異なります。
デニムを対象にした研究では、乾燥した状態より湿潤状態での摩擦堅ろう度が低い試料が確認されています。そのため洗濯後の濡れた濃色衣類を白い衣類の上へ長時間重ねるなど、洗濯槽の外でも色移りが起こる可能性があります。
洗濯終了後は衣類を長時間放置せず、早めに取り出して干すことが、しわやにおいだけでなく濡れた衣類同士の接触を減らす点でも合理的です。
色移り防止機能や洗剤は何をしているのか
洗濯中に放出された染料を別の布へ付きにくくする考え方は「染料移行防止」として研究されています。洗濯機では、洗浄条件を制御して染料の放出や移行を抑えるコースが検討され、洗剤では水中の遊離染料を保持して布への再付着を抑える成分が利用される場合があります。
2020年の研究では、濃色布から放出された反応染料と白布の色差を用いて、洗濯機の染料移行防止性能を区別する試験方法が検討されています。また、染料移行防止成分は染料の種類によって相互作用が異なるため、「色移り防止」と表示された条件でも、あらゆる衣類と染料で完全に移行を防げるとは限りません。
したがって、防止機能がある洗濯機や洗剤を使う場合でも、色落ちしやすいと表示された衣類を無条件に白物と混ぜるのではなく、衣類側の注意表示を優先する必要があります。
洗濯表示を確認する意味は何か
消費者庁が案内する現在の洗濯表示は、JIS L 0001:2024に基づき、洗濯、漂白、乾燥、アイロン、商業クリーニングなどの取扱い条件を示します。洗濯処理の記号では、許容される上限温度や処理の強さが分かります。
また、記号だけで表せない取扱い情報は、必要に応じて付記用語などで示すことができます。色落ちしやすい衣類では、製品に「単独で洗う」などの注意が付けられていることもあるため、記号だけでなく文章による注意も確認します。
洗濯表示は色移りだけの表示ではありませんが、衣類が想定する洗濯条件を外さないための基準になります。高温や強い処理を避ける指定がある衣類を、自己判断でより厳しい条件にすることは避けるべきです。
色移りを減らすための使い分け
| 衣類・状況 | 考え方 | 確認したい点 |
|---|---|---|
| 新品の濃色衣類 | 最初は淡色物と分ける選択肢を取る | 洗濯表示・付記された注意 |
| 白物・淡色衣類 | 色落ちが疑われる濃色物との混洗を避ける | 一緒に洗う衣類の状態 |
| デニムなど色変化しやすい衣類 | 素材・製品ごとの指定を優先する | 単独洗い指定、温度、処理強度 |
| 濡れた濃色衣類 | 淡色衣類と重ねたまま放置しない | 湿潤摩擦による移染 |
| 色移り防止機能を使う場合 | 補助機能として利用する | 衣類側の注意を優先 |
色移りを完全に予測することは難しいため、初めて洗う濃色衣類や、過去に色が出た衣類は特に慎重に扱います。製品の表示に単独洗いなどの指示がある場合は、それに従うことが最も確実です。
まとめ
洗濯で色移りの起こりやすさが違うのは、染料が繊維から離れる量と、離れた染料が別の衣類へ付着する量が、衣類と洗濯条件によって変わるためです。染料と繊維の結び付き、染色堅ろう度、温度、時間、水量、濃色衣類の量、濡れた状態での摩擦などが関係します。
低温・短時間の洗濯で色落ちや色移りが少なかった研究例はありますが、すべての衣類に一律の条件を当てはめることはできません。家庭では、衣類の洗濯表示と付記された注意、洗濯機の容量やコース指定を優先します。
特に新品の濃色衣類、デニム、色落ちが確認された衣類は、白物や淡色物と分けることが実用的な対策です。色移り防止機能や洗剤は補助になりますが、衣類ごとの染色特性の違いをなくすものではありません。
参考資料
- 消費者庁「洗濯表示(令和6年8月20日以降)」
- 日本家政学会「ブルージーンズの品質に及ぼす取り扱い方法の影響」
- Improved garment longevity and reduced microfibre release are important sustainability benefits of laundering in colder and quicker washing machine cycles
- The effect of washing parameters on the quantity of dye discharge from clothes

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