LED照明の調光は、単に「スイッチで電気を弱くする」仕組みではありません。LEDは流れる電流の変化へすばやく反応するため、照明器具の中にあるドライバ回路がLEDへ流す電流を制御し、光の出力を変えることで明るさを調整します。
代表的な方法には、LEDへ流す電流そのものを小さくする方法と、非常に短い時間で点灯と消灯を繰り返し、点灯している時間の割合を変える方法があります。さらに、壁の調光器や0-10V、DALIなどの制御信号は、ドライバへ「どの程度の明るさにするか」を伝える役割を持ちます。
調光の仕組みを知ると、なぜLEDと調光器の組み合わせに相性があるのか、なぜ低い調光率でちらつく場合があるのか、なぜ同じ50%設定でも製品によって明るさの変わり方が違うのかを理解しやすくなります。
LEDは安定した電流で駆動する必要がある
LEDは半導体で、順方向電圧付近では電圧が少し変わるだけでも流れる電流が大きく変化します。そのため、単純に電圧を下げるだけでは安定して点灯させにくくなります。
電気学会の解説では、現在のLED用駆動回路では、温度などでLEDの順電圧が変化しても電流を安定させやすい定電流型の回路が広く使われていると説明されています。
調光も、この安定した駆動を保ちながら「どれだけ光を出すか」を変える機能としてドライバ回路に組み込まれます。
調光信号とLEDを直接つなぐわけではない
壁の調光器、リモコン、センサー、照明制御システムなどは、利用者や建物側から明るさの指示を出します。
その指示を受け取ったドライバが、LEDへ流す電流や点灯パターンを変えます。
つまり、調光では「操作する側」と「LEDを実際に駆動する側」を分けて考える必要があります。0-10VやDALI、無線などは主に制御情報を伝える方法で、LED内部でどのように光量を減らすかという方法とは別の層にあります。
米国エネルギー省の2024年ガイダンスでも、通信・制御プロトコルと、CCRやPWMなどドライバ内部の調光方式は分けて整理されています。
CCRはLEDへ流す電流の大きさを下げる
CCRはConstant Current Reductionの略で、定電流低減方式などと呼ばれます。
この方法では、LEDへ流す電流の大きさを小さくして光出力を下げます。たとえば定格時より小さい一定電流でLEDを連続点灯させ、暗くします。
LEDが点灯している時間そのものは基本的に変えず、流す電流の強さを変えるため、アナログ調光と呼ばれることもあります。
ただし、非常に低い電流まで下げると、LEDの色やドライバの安定性などが影響を受ける場合があり、どこまで滑らかに暗くできるかは製品設計によって異なります。
PWMは点灯している時間の割合を変える
PWMはPulse Width Modulationの略で、パルス幅変調と呼ばれます。
PWMでは、LEDを非常に速い周期で点灯・消灯させます。1周期の中で点灯している時間の割合を大きくすれば明るく、小さくすれば暗く見えます。
たとえば、同じ周期のうち80%の時間を点灯すれば明るく、20%だけ点灯すれば平均的な光出力は小さくなります。この点灯時間の割合をデューティ比といいます。
LEDは応答が速いため、この方法で光量を細かく制御できます。一方、周波数や変調の深さによっては時間的な光変動が増え、ちらつきや撮影時の縞へ影響することがあります。
CCRとPWMはどちらか一方だけとは限らない
実際のLEDドライバでは、CCRとPWMを用途や調光範囲に応じて使い分けたり、両者を組み合わせたりすることがあります。
米国エネルギー省のガイダンスでは、LEDドライバの代表的な調光方式として、CCR、PWM、正位相・逆位相制御などが挙げられています。
どの方式が常に優れているというものではなく、最低調光レベル、ちらつき、効率、コスト、制御機器との互換性などを考えて設計されます。
壁の位相制御調光器は交流波形を途中で切る
家庭で古くから使われてきた白熱電球用の壁調光器には、交流電源の波形の一部を切り取る位相制御方式が多く使われています。
日本照明工業会は、位相制御式調光器にはトライアックやサイリスタなどを使う方式があり、正位相制御と逆位相制御があると説明しています。
白熱電球では、交流波形の一部を削ることでランプへ渡る平均電力を下げ、フィラメントの温度を下げて暗くできます。
しかしLED電球にはドライバ回路があるため、切り取られた交流波形をそのまま光へ変えるわけではありません。LED側のドライバが位相制御された波形を読み取り、それに対応してLED電流を調整する必要があります。
調光器対応LEDが必要なのはドライバとの相互作用があるから
日本照明工業会は、白熱電球用の位相制御調光器とLED電球の点灯回路が互いに影響し、調光できない、ちらつくなどの問題が起こる場合があると説明しています。
そのため、壁に調光器が付いている場合は「調光器対応」と表示されたLED電球を使い、メーカーが示す適合情報を確認する必要があります。
同じ「調光対応」でも、すべての調光器と完全に同じ動作になるとは限りません。調光器の回路方式、負荷条件、製造時期などによって相性が変わるためです。
0-10Vは明るさの指令を電圧で伝える
オフィスや施設照明では、0-10V制御が使われることがあります。
この方式では、制御線の電圧を使ってドライバへ明るさの指令を送ります。ドライバは受け取った信号に応じて、内部でCCRやPWMなどの方法を使いLED光出力を変えます。
つまり0-10Vは、LEDへ直接0〜10Vを流して明るさを決める方式ではありません。あくまでドライバへ調光レベルを伝えるインターフェースです。
米国エネルギー省の調査でも、0-10V対応器具ではドライバによって調光範囲や出力曲線にばらつきがあることが報告されています。
DALIや無線制御も「指令を伝える層」
DALIなどのデジタル制御や、Bluetoothなどを使った無線制御では、明るさの指令がデジタル情報として器具へ送られます。
受信した器具は、その指令をドライバへ渡し、LEDへ流す電流やPWMのデューティ比を変えます。
このため、利用者から見ると同じ「50%」という設定でも、内部では異なる方式でLEDを調光している場合があります。
最低調光レベルはドライバの安定動作で決まる
調光対応LEDでも、0%近くまで連続的に暗くできる製品ばかりではありません。
ドライバには安定して電流を制御できる範囲があり、その下限を下回ると、急に消灯したり、ちらついたり、明るさが跳ねたりすることがあります。
米国エネルギー省のガイダンスでも、調光品質は最低レベル、調光カーブ、器具間の一致、使用するドライバやプロトコルによって変わるとされています。
寝室や劇場のように非常に暗い光が必要な場所では、単に「調光対応」だけでなく、最低調光率まで確認することが重要です。
調光カーブによって操作感も変わる
リモコンを50%へ設定したとき、光束が必ず定格のちょうど50%になるとは限りません。
ドライバや制御器には、操作量と光出力の関係を決める調光カーブがあります。また、人の明るさ感は光束に対して単純比例しません。
そのため、数値上の出力を直線的に変えるより、人が自然に感じるよう調光カーブを調整する製品もあります。
同じ調光率表示でも製品ごとに明るさの変わり方が違うのは、ドライバと制御設計が異なるためです。
調光すると消費電力も一般に下がる
LED照明では、光出力を下げると消費電力も下がります。
日本照明工業会の2024年度LEDベースライト試買調査では、調光によって照度比が下がるのに応じ、消費電力もおおむね比例して低下することが確認されています。
ただし、ドライバ回路そのものも電力を使うため、どの調光レベルでも光出力と消費電力が完全に同じ割合で変化するとは限りません。
調光は光量制御の仕組みであると同時に、必要以上の光出力を抑える省エネ手段でもあります。
センサー調光でも内部の仕組みは同じ
明るさセンサーや人感センサーで自動調光する場合でも、最終的にはドライバへ調光指令が送られます。
たとえば昼光が十分ならセンサーが出力を下げるよう指示し、ドライバがCCRやPWMなどでLED光出力を下げます。
センサーは「どの程度の明るさが必要か」を判断する入口であり、LEDを実際に調光する役割はドライバ回路が担います。
調光と調色は制御する対象が違う
調光は光の量を変える機能です。調色は色温度や光色を変える機能です。
調色対応器具では、暖色系と白色系など複数のLEDチャンネルを個別に制御し、それぞれの電流やPWM比を変えて色を混ぜます。
つまり、調光と調色はどちらもドライバ制御を利用しますが、調光は全体の光量、調色は複数の発光成分の比率を主に変える点が違います。
調光の仕組みを見るときの5つのポイント
- ドライバ:LEDへ安定した電流を供給し、調光指令を実際の光出力へ変換する。
- CCR:LEDへ流す電流の大きさを下げて暗くする。
- PWM:高速な点灯・消灯の時間割合を変えて平均光出力を調整する。
- 制御インターフェース:位相制御、0-10V、DALI、無線などで調光指令を伝える。
- 適合と下限:調光器との相性、最低調光レベル、ちらつきなどを確認する。
この5点を分けて考えると、「つまみを回すと暗くなる」という現象を、入力信号、ドライバ制御、LED光出力の三段階で理解できます。
まとめ:LED調光の中心はドライバによる電流制御
LED照明の調光が成り立つのは、ドライバ回路が外部からの調光指令を受け取り、LEDへ流す電流の大きさや点灯時間の割合を変えられるからです。
CCRでは電流値を下げ、PWMでは高速な点灯・消灯のデューティ比を変えます。壁の位相制御調光器、0-10V、DALI、無線制御などは、そのドライバへ明るさの指令を伝える方法です。
調光器とドライバの方式が合わなければ、ちらつきや最低調光レベルの不足などが起こることがあります。調光の仕組みを理解すると、「調光対応」という表示の裏で、制御信号とドライバ回路がどのように協力してLEDの明るさを変えているのかを読み取れるようになります。
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参考資料
- 一般社団法人 日本照明工業会「電球形LEDランプ性能表示等のガイドライン」
- 一般社団法人 日本照明工業会「調光器対応について」
- 電気学会誌「照明における最新技術」
- U.S. Department of Energy「LED Lighting and Controls Guidance for Federal Buildings」

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