同じLED照明を取り付けた部屋でも、毎日同じ電力量を使うとは限りません。最大の明るさで長時間点灯する場合と、必要な時間だけ点灯し、昼間は調光する場合では、1日・1か月に使う電力量が変わります。
なぜ同じ照明設備でも、調光率や点灯時間・センサー制御で使用電力量が変わるのでしょうか。結論からいうと、実際に使う電力量は「照明器具の定格消費電力」だけでなく、「どの出力で」「何時間」「どの条件で点灯したか」で決まるからです。人感センサーや明るさセンサー、タイムスケジュールを使えば、不要な時間や過剰な明るさを減らせるため、同じ設備でも電力量は変化します。
「消費電力」と「電力量」は分けて考える
照明の使い方による変化を理解するには、まず消費電力と電力量を区別する必要があります。
消費電力は、その瞬間にどれくらいの速さで電気を使っているかをW(ワット)で表します。一方、電力量は、その状態をどれくらいの時間続けたかを含めた量で、WhやkWhで表します。
たとえば20Wの照明を5時間使えば100Wh、10時間使えば200Whです。照明器具が同じでも、点灯時間が2倍になれば、単純化すれば使う電力量も2倍になります。
そのため、照明の省エネでは「何Wの器具か」だけでなく、「実際に何時間点灯しているか」が重要です。
調光すると、必要な光量に合わせて消費電力を下げられる
調光対応のLED照明では、最大出力で使う必要がないときに明るさを下げられます。光出力を下げると、一般にLEDへ供給する電力も減るため、消費電力を下げられます。
ただし、「明るさを50%にしたら消費電力も必ず50%になる」とは限りません。LEDドライバーや制御回路にも電力が必要で、製品によって調光時の電力特性が異なるからです。
それでも、必要以上の明るさを抑えることは、照明エネルギーを削減する基本的な方法です。米国エネルギー省も、タスクチューニングや調光を照明のエネルギー削減手段として挙げています。
点灯時間が変われば、同じ出力でも1日の電力量が変わる
同じ消費電力で点灯していても、使用時間が違えば電力量は変わります。
たとえば、廊下の照明を一日中点灯する場合と、人が通る時間だけ点灯する場合では、器具そのものが同じでも年間の使用電力量は大きく変わる可能性があります。
環境省は、照明制御による省エネの例として、タイムスケジュールによる点灯制御を紹介しています。営業時間や利用時間が決まっている場所では、不要な時間帯を自動的に消灯・減光することで、点灯時間を減らせます。
人感センサーは「人がいない時間」を減光・消灯に変える
会議室、トイレ、倉庫、廊下などは、照明が必要な時間と人がいない時間が交互に現れます。
人感センサーを使うと、人がいるときに点灯し、一定時間人を検知しなければ消灯または減光できます。これにより、消し忘れや無人時の点灯を減らせます。
米国DOEの施設向け資料では、在室センサーによる削減効果は部屋の利用状況によって大きく異なり、間欠的に使われる空間ほど効果が出やすいとされています。
つまり、センサーを付けたから一定割合で必ず節電できるのではなく、その部屋に「照明が不要な無人時間」がどれだけあるかで効果が変わります。
明るさセンサーは、昼光がある時間の人工照明を抑える
窓際では、晴れた昼間には自然光だけで十分な明るさを確保できることがあります。このとき照明を常に100%で点灯すると、必要以上の光を使うことになります。
明るさセンサーや昼光センサーを使えば、室内へ入る自然光を検知し、人工照明を自動で減光できます。曇ったり夕方になったりして暗くなれば、再び出力を上げます。
環境省のZEB資料でも、昼光を利用し、明るさセンサーによる自動調光を行うことで、必要な照度を確保しながらエネルギー消費量を削減できると説明しています。
そのため、同じ照明設備でも、窓の大きさ、方角、天候、時間帯によって調光率が変わり、1日の使用電力量も変わります。
人感と昼光を組み合わせると、二つの無駄を減らせる
人感センサーは「人がいるか」を見て、昼光センサーは「人工照明がどれくらい必要か」を見ます。二つは役割が異なります。
たとえば、人がいなければ消灯し、人がいても昼光が十分なら低い出力にするという制御ができます。人がいて昼光も不足するときだけ、必要な明るさまで照明を上げます。
米国DOEの照明制御資料でも、在室検知と昼光調光を組み合わせることで、別々に使うより広い条件で不要な照明エネルギーを削減できる例が示されています。
ただし、複数の制御による削減率は単純に足し算できません。同じ時間帯の節電効果が重なるためです。
設定値が違うだけでも使用電力量は変わる
同じセンサー付き照明でも、設定によって動作は変わります。
たとえば、人がいなくなってから1分で消灯する設定と、30分後に消灯する設定では、無人時間に使う電力量が違います。また、無人時に完全消灯するか、20%程度で残すかでも電力量は変わります。
昼光制御でも、作業面を500lx程度に保つ設定と、より高い照度を目標にする設定では、人工照明の出力が変わります。
つまり、同じ機器構成でも「消灯までの待ち時間」「最低調光率」「目標照度」などの設定が、実際の電力量に影響します。
利用パターンによって最適な制御は変わる
毎日決まった時間に使う店舗やオフィスでは、タイムスケジュール制御が使いやすくなります。一方、利用時間が不規則な会議室や倉庫では、人感センサーの方が実際の使用状況へ合わせやすくなります。
窓際のオフィスでは昼光調光の効果が期待できますが、窓のない部屋では昼光センサーを付けても利用できる自然光がありません。
米国DOEは、照明制御の選択では、在室状況、作業内容、昼光の利用可能性などに応じて、適切な量の光を適切な場所・時間へ届けることが重要だとしています。
したがって、「最も高度なセンサーを付ければ最も省エネになる」とは限らず、空間の使われ方に合った制御を選ぶ必要があります。
制御装置そのものにも電力は必要
センサーや通信機能、照明コントローラーなどの電子回路も動作するために電力を使います。そのため、自動制御による削減効果を考えるときは、照明本体で削減できる電力量と、制御機器が使う電力の両方を見る必要があります。
大きな照明負荷を長時間削減できる施設では、制御機器の消費より削減効果が大きくなりやすい一方、もともと短時間しか使わない小さな照明では、導入効果が小さくなることがあります。
省エネ効果は機器の有無だけでなく、照明負荷、利用時間、制御設定、運用状況を含めて判断することが大切です。
温度や器具状態による変化より、運用時間の影響が大きいことが多い
LEDは温度によって効率が少し変化し、高温では光出力や効率が低下することがあります。また、電源回路の効率も負荷条件によって変わります。
ただし一般的な施設運用では、1日の使用電力量を大きく左右するのは、温度による小さな効率差だけではなく、「何時間点灯したか」「どの出力で点灯したか」です。
たとえば、10%程度の効率差より、無人時間に数時間消灯できる方が、電力量への影響が大きくなる場合があります。
そのため、変化条件を考えるときは、器具の細かな性能変化だけでなく、実際の運用時間と調光率を優先して確認すると理解しやすくなります。
実際の使用電力量を比べるときのポイント
- 照明器具の定格消費電力だけでなく、実際の調光率を見る
- 1日・1週間・1年の点灯時間を確認する
- 人がいない時間に消灯・減光できているか確認する
- 昼光がある時間に人工照明を下げられているか確認する
- センサーの保持時間や最低調光率を確認する
- 空間の利用パターンと制御方式が合っているか確認する
- 制御装置そのものの消費電力も含めて考える
まとめ
同じ照明設備でも使用電力量が変わるのは、実際の電力量が「その瞬間の消費電力」と「点灯時間」の積み重ねで決まるからです。
調光すれば必要以上の光出力を抑えられ、タイムスケジュールや人感センサーを使えば不要な点灯時間を減らせます。昼光センサーを使えば、自然光がある時間には人工照明の出力を下げられます。
さらに、同じセンサーや調光器でも、保持時間、目標照度、最低調光率などの設定によって結果は変わります。照明の使用電力量を考えるときは、器具のW数だけでなく、「いつ・どれだけの明るさで・どのくらいの時間使うか」を確認することが重要です。
関連記事
参考資料
- 環境省「ZEBを実現するための技術」
- U.S. Department of Energy「Purchasing Energy-Efficient Commercial and Industrial LED Luminaires」
- U.S. Department of Energy「How to Select Lighting Controls for Offices and Public Buildings」
- U.S. Department of Energy「Optimization of Lighting Systems」

コメント