なぜ岩石の中に鉱物の結晶ができるのか?

結論からいうと、岩石の結晶は、岩石をつくる元素やイオンが一定の条件のもとで規則正しく並び、安定した結晶構造をつくりながら成長することで成り立っています。その大きさや形、組み合わせは、温度・圧力・化学組成・冷却速度・水や流体の有無などによって変わります。

岩石を肉眼で見ると、ただの硬い塊のように見えることがあります。しかし花こう岩のような岩石をよく見ると、白い長石、灰色がかった石英、黒い黒雲母など、色や形の違う粒が組み合わさっています。こうした粒の多くが鉱物の結晶です。岩石の結晶を理解するには、「原子がどう並ぶか」と「その結晶がどう生まれて成長するか」を分けて考えるとわかりやすくなります。

目次

そもそも結晶とは何か

結晶とは、原子やイオン、分子が三次元的に規則正しく配列した固体です。産業技術総合研究所 地質調査総合センター(GSJ)は、地下の高温状態にあるマグマが冷えていくと、元素がより安定な状態をとるために結びつき、結晶をつくると説明しています。

重要なのは、結晶の外形がきれいな六角形や柱状に見えるかどうかではありません。岩石の中では隣り合う結晶同士がぶつかって自由に形を広げられないため、不規則な輪郭をもつことも多くあります。それでも内部の原子配列が規則的なら、その粒は結晶です。

USGSも、鉱物を規則的な内部構造と特徴的な化学組成をもつ天然物質として説明しています。岩石は、こうした鉱物結晶が一つまたは複数集まった集合体としてできています。

なぜ原子は規則正しく並ぶのか

結晶の中で原子が規則正しく並ぶのは、その物質が与えられた温度や圧力のもとで、より安定な状態をとろうとするためです。

原子やイオンには大きさや電荷の違いがあります。どの元素同士でも自由に結びつけるわけではなく、電気的に釣り合い、かつ空間を安定して埋められる組み合わせが選ばれます。その結果、石英、長石、輝石、かんらん石など、それぞれ特有の結晶構造をもつ鉱物ができます。

GSJは、結晶構造の安定性には元素の電荷や大きさが関係し、温度や圧力によって安定な鉱物の種類が変わると説明しています。つまり、結晶は単なる「元素のかたまり」ではなく、環境条件に応じて選ばれた規則的な原子配列なのです。

結晶はまず小さな「核」から始まる

結晶ができるとき、最初から大きな結晶が突然現れるわけではありません。まず、ごく小さな原子の集まりが安定した並び方をつくり、結晶の出発点となります。これを核形成といいます。

その核が安定して存在できるようになると、周囲から原子やイオンが次々と加わり、結晶が大きくなります。これが結晶成長です。

日本鉱物科学会の研究では、火山岩や鉱物の組織を理解するうえで、核形成の数と結晶の成長速度が重要であることが示されています。たとえば急冷した溶岩では、どのくらい多くの核が生まれ、それぞれがどれほど成長できたかによって、最終的な結晶の粒径や形が変わります。

冷却速度が結晶の大きさを左右する

火成岩では、マグマや溶岩がどのくらいの速さで冷えたかが、結晶の大きさを決める重要な要因になります。

ゆっくり冷えると大きな結晶が育ちやすい

地下深くでマグマがゆっくり冷えると、結晶が成長するための時間を長く確保できます。そのため、一つ一つの鉱物結晶が大きくなりやすくなります。

USGSは、地下でゆっくり冷える深成岩では鉱物粒が成長する時間が長いため、粗い結晶組織になると説明しています。花こう岩では、石英や長石、黒雲母などの結晶を肉眼で確認できることが多いのはこのためです。

急に冷えると細かな結晶やガラスができやすい

一方、地表に噴出した溶岩は周囲の空気や水に触れて急速に冷えます。すると、原子が規則正しい結晶構造をつくりながら大きく成長する時間が不足します。

その結果、玄武岩のように非常に細かな結晶からなる岩石や、黒曜石のように結晶化が十分に進まず火山ガラスを多く含む岩石ができます。

USGSも、急冷した火山岩では小さな結晶やガラス質が生じやすいと説明しています。つまり、冷却速度は「結晶ができるかどうか」だけでなく、「どのくらいの大きさまで成長できるか」を左右します。

結晶の数と大きさは単純に冷却速度だけで決まらない

「ゆっくり冷えれば大きい、急に冷えれば小さい」という説明は基本として有効ですが、天然の岩石ではもう少し複雑です。

結晶の大きさは、核形成の数、マグマの粘性、化学組成、過冷却の程度、水の量、周囲への熱の逃げ方などにも影響されます。

たとえば核が大量にできれば、一つ一つの結晶が利用できる材料が分散し、細かな結晶が多数できることがあります。反対に、核の数が少なく、成長する時間と材料が十分にあれば、一つの結晶が大きく成長することがあります。

房総半島の枕状溶岩を調べた研究でも、溶岩内部での過冷却度や粘性、成長時間の違いが、結晶の核形成密度や大きさ、形に反映されることが報告されています。

岩石の中で大きい結晶と細かい部分が共存するのはなぜ?

火山岩には、細かな石基の中に大きな結晶が点々と入った斑状組織がよく見られます。

これは、マグマが二段階以上の冷却履歴を経験したことを示しています。まず地下のマグマだまりで比較的ゆっくり冷え、大きな結晶が成長します。その後、噴火などで地表近くへ移動すると急速に冷え、残った部分が細かな結晶やガラスになります。

このとき、大きな結晶を斑晶、周囲の細かな部分を石基と呼びます。岩石に見られる結晶の大きさの違いは、単なる見た目ではなく、マグマがどのように冷えてきたかを記録しています。

変成岩では、既存の鉱物が再結晶する

結晶はマグマからだけ生まれるわけではありません。変成岩では、すでにある岩石が地下で高温・高圧を受けたとき、元の鉱物が固体のまま再結晶したり、新しい鉱物へ組み替わったりします。

たとえば石灰岩が変成作用を受けると、方解石の小さな結晶が再結晶して大きくなり、大理石になります。泥質岩では、条件によって黒雲母やざくろ石などの新しい変成鉱物ができることがあります。

このときも、原子はその温度・圧力条件でより安定な結晶構造へ移動します。そのため、変成岩に含まれる鉱物の種類や結晶の大きさを調べると、過去に経験した地下環境を推定できます。

堆積岩でも結晶は新しく成長する

堆積岩では、砂や泥として運ばれてきた既存の鉱物粒がそのまま残るだけでなく、堆積後に新しい結晶が成長することがあります。

たとえば砂岩では、地下水に溶けていたケイ素やカルシウムなどの成分が粒子の間に沈殿し、石英や方解石の結晶として成長することがあります。これらは粒子を接着するセメントのように働き、堆積物を固い岩石へ変えていきます。

また、風化によって長石などが変化し、粘土鉱物の微細な結晶が生じることもあります。つまり、岩石中の結晶は火成作用・変成作用・続成作用・風化など、さまざまな地質作用の中で形成されます。

結晶の形はどのように決まるのか

結晶が十分な空間をもって成長すると、その鉱物特有の結晶面が発達し、柱状、板状、針状など特徴的な外形を示すことがあります。

しかし岩石の内部では、多数の結晶が同時に成長するため、互いにぶつかって自由な形をつくれないことがよくあります。そのため、実際の岩石中の鉱物粒は、教科書に描かれるような完全な幾何学形をしていないことも珍しくありません。

結晶の形は、鉱物本来の結晶構造に加えて、成長速度、周囲の空間、温度勾配、過冷却度、流体の有無などにも左右されます。結晶の輪郭や内部構造を観察することで、成長時の環境を読み取れる場合があります。

結晶の内部に模様が残ることがあるのはなぜ?

鉱物結晶は、成長している間ずっと同じ環境に置かれるとは限りません。マグマの温度や化学組成が変わったり、別のマグマが混ざったりすると、結晶に取り込まれる元素の割合も変化します。

その結果、一つの結晶の中心部と外側で化学組成が異なる累帯構造ができることがあります。見た目では同じ一粒の結晶でも、その内部には成長過程の変化が記録されているのです。

鉱物科学では、このような結晶の内部組織や元素分布を調べることで、マグマがどのような温度変化や混合、冷却を経験したのかを推定します。

結晶を調べると岩石のでき方がわかる

岩石中の結晶は、その岩石ができた環境を知る重要な記録です。

  • 結晶が大きい:比較的ゆっくり成長できる環境だった可能性があります。
  • 結晶が細かい:急速な冷却や多数の核形成が関係した可能性があります。
  • 斑晶と石基がある:冷却環境が途中で変化した可能性があります。
  • 新しい変成鉱物がある:高温・高圧の環境を経験した可能性があります。
  • 結晶内部に累帯構造がある:成長中に温度や化学組成が変化した可能性があります。

そのため、地質学者は岩石薄片を顕微鏡で観察したり、電子顕微鏡や化学分析装置を使って結晶の組成や組織を調べたりします。結晶は、岩石がたどった歴史を保存する小さな記録媒体といえます。

「結晶」と「鉱物」は同じ意味ではない

結晶と鉱物は深く関係していますが、意味は同じではありません。

結晶は、原子やイオンが規則正しく並んだ構造そのものを表す言葉です。一方、鉱物は、自然界に産し、一定の化学組成や結晶構造、物理的性質をもつ物質の種類を指します。

たとえば石英は鉱物名であり、その一粒一粒は石英の結晶です。また、岩石の中には黒曜石のように火山ガラスを多く含み、十分に結晶化していない部分をもつものもあります。

この区別をすると、「岩石は結晶だけでできている」と単純化しすぎずに理解できます。

まとめ

岩石の結晶は、元素やイオンが一定の温度・圧力・化学条件のもとで規則正しく並び、小さな核をつくった後、周囲から物質を取り込みながら成長することで成り立っています。

火成岩ではマグマや溶岩の冷却速度が結晶の大きさに強く影響し、ゆっくり冷えれば大きな結晶、急速に冷えれば細かな結晶やガラスができやすくなります。ただし実際には、核形成の数、マグマの組成、粘性、過冷却、水分など複数の条件が関係します。

変成岩では既存の鉱物が高温・高圧のもとで再結晶し、堆積岩でも地下水から新しい鉱物結晶が成長することがあります。つまり岩石の結晶は、岩石の材料であるだけでなく、どのような環境でその岩石が生まれ、変化してきたのかを記録する重要な手がかりなのです。

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