結論からいうと、山で石の種類が場所によって変わるのは、その場所ごとに岩石ができた時代・環境・地下で受けた熱や圧力、その後の断層運動や隆起・侵食の歴史が違うからです。 山は一種類の岩石だけでできた大きな塊とは限りません。火山でできた岩石、海底や川底にたまった堆積物からできた岩石、地下深くで熱や圧力を受けて変化した岩石などが、複雑に隣り合っていることがあります。
そのため、同じ山を歩いていても、登山口では砂岩が多く、中腹では花こう岩が現れ、尾根では変成岩が見える、といったことが起こります。石の種類が切り替わる場所には、その山がどのようにでき、どのように削られてきたかという地球の歴史が記録されています。
岩石は大きく3種類に分けられる
産総研・地質調査総合センターは、岩石をでき方の違いによって大きく火成岩・堆積岩・変成岩の3種類に分けています。
- 火成岩:マグマや溶岩が冷えて固まってできる
- 堆積岩:砂、泥、生物の殻などがたまり、固まってできる
- 変成岩:すでにあった岩石が強い熱や圧力を受けて変化してできる
山地には、この3種類が一緒に分布していることがあります。さらに、それぞれの中にも玄武岩、安山岩、花こう岩、砂岩、泥岩、石灰岩、片岩、片麻岩など多くの種類があります。
つまり「山の石」と一口に言っても、でき方も成分も年代もさまざまなのです。
理由1:火山の近くでは火山岩が多くなる
火山では、地下から上昇したマグマが地表へ噴き出し、溶岩や火山灰として冷えて固まります。
マグマの成分や冷え方によって、玄武岩、安山岩、流紋岩など異なる火山岩ができます。地質調査総合センターは、火成岩の種類がマグマの組成と冷え方の違いによって変わると説明しています。
一つの火山でも、時代によって噴出したマグマの性質が変われば、古い溶岩と新しい溶岩で岩石の種類が違うことがあります。
さらに火口から離れた場所では、溶岩ではなく火山灰や軽石が厚くたまることがあります。これらが固まれば凝灰岩などになります。
そのため火山の周辺では、斜面や谷ごとに異なる噴出物が重なり、場所によって石の種類が変わることがあります。
理由2:地下で固まったマグマが侵食で地表に現れる
すべてのマグマが地表まで噴き出すわけではありません。地下深くでゆっくり冷えて固まるものもあります。
このように地下でできた火成岩を深成岩と呼び、代表例が花こう岩です。
本来は地下深くにあった花こう岩でも、長い時間の隆起と侵食によって上にあった岩石が削られると、やがて地表へ現れます。
USGSが紹介するロッキー山脈やブラックキャニオンの地質でも、隆起と侵食によって地下でできた古い火成岩・変成岩が地表に露出した例が示されています。
つまり、今山で見えている石が「その場所の地表でできた」とは限りません。地下数km以上の深い場所でできた岩石が、山の成長と侵食によって目の前に現れていることもあるのです。
理由3:昔の海底や川底の地層が山の中に残っている
山の中で砂岩、泥岩、石灰岩などが見つかることがあります。
これらは堆積岩で、砂や泥、生物の遺骸などが海底、湖底、川底などにたまり、長い時間をかけて固まってできた岩石です。
「海でできた岩石が、なぜ山の上にあるのか」と疑問に思うかもしれません。
その理由は、地殻変動によって昔の海底の地層が持ち上げられ、山地になったからです。プレートの運動によって地層が押し曲げられたり、断層で持ち上げられたりすると、かつて海の底にあった地層が高い山の中に現れることがあります。
このため山の中の石灰岩や砂岩は、その場所が昔どのような環境だったかを教えてくれる手がかりになります。
理由4:プレート運動で異なる地質が押し合わされる
山脈は、プレート同士が近づく場所でできることが多くあります。
プレートが沈み込んだり、大陸同士が衝突したりすると、もともと離れた場所にあった岩石や地層が押し寄せ、断層を境に隣り合うことがあります。
日本列島はプレートの沈み込み帯に位置しており、地質調査総合センターは、日本には古い堆積岩、付加体、火成岩、変成岩、若い火山岩など多様な地質体が複雑に分布しているとしています。
そのため山道を数km進んだだけで、岩石の種類や年代が大きく変わることがあります。
地質学では、こうした岩石や地層の分布を地質図に表します。地質図を見ると、一つの山の中でも色分けされた複数の地質が入り組んでいることが珍しくありません。
理由5:断層を境に違う岩石が隣り合う
断層は、地下の岩盤がずれてできた境界です。
断層が何度も動くと、本来は離れた場所や深さにあった岩石が、すぐ隣に並ぶことがあります。
たとえば、断層の片側には古い変成岩、反対側には比較的新しい堆積岩がある、といった配置ができます。
また、断層付近では岩石が強く砕かれたり変形したりするため、同じ種類の岩石でも見た目や硬さが大きく変わることがあります。
登山道や道路の切り通しで、岩の色や割れ方が急に変わる場所があれば、地層や断層の境界に近い可能性があります。
理由6:強い熱や圧力を受けると別の岩石へ変わる
地下深くでは、高い温度と圧力が岩石へ加わります。
岩石が完全に溶けるほどではなくても、鉱物の並び方や種類が変化し、別の性質をもつ岩石になることがあります。これが変成作用です。
地質調査総合センターによると、主にマグマの熱を受けてできる接触変成岩、広い範囲で熱と圧力を受けてできる広域変成岩、断層活動などに伴って変形・破砕される動力変成岩があります。
たとえば泥岩が強い熱を受けるとホルンフェルスになり、石灰岩が再結晶すると結晶質石灰岩になります。
そのため、同じ地層だった場所でも、マグマに近かった場所だけ岩石の種類が変わっていることがあります。
理由7:隆起と侵食が違う深さの岩石を露出させる
山が隆起すると、川や雨、崩壊などによる侵食も進みます。
侵食が浅い場所では比較的新しい地層が残りますが、深く谷が刻まれた場所では、より古く、もともと地下深部にあった岩石まで露出することがあります。
USGSのロッキー山脈の地質解説では、隆起後の侵食によって若い堆積層が削られ、その下にある古い火成岩・変成岩が露出した例が紹介されています。
このため、同じ山でも尾根では若い岩石が残り、深い谷底では古い岩盤が見える、といったことがあります。
山の石の違いは、地下構造だけでなく、どこまで削られたかにも左右されるのです。
理由8:岩石ごとに侵食されやすさが違う
岩石の種類が違えば、硬さ、割れ目の多さ、風化しやすさも違います。
侵食に強い岩石は尾根や岩峰として残りやすく、風化しやすい岩石は谷やなだらかな斜面になりやすい場合があります。
すると地形そのものが岩石の分布を強調します。
たとえば硬い岩石の場所だけ急な崖として残り、周囲のやわらかい岩石が削られて低くなると、歩いて見える石の種類も地形ごとに変化します。
つまり「岩石の違いが地形をつくり、その地形によって岩石の違いがさらに見えやすくなる」という関係があります。
同じ山でも山頂と谷底で石が違うことがある
あります。
山頂付近に特定の溶岩層が残っていても、谷が深く削られれば、その下にある古い地層や深成岩が露出します。
また、斜面の途中に断層や地層境界があれば、その高さを境に岩石が変わります。
そのため標高が違うと岩石も違うように見えることがありますが、「標高そのものが岩石を変えた」のではありません。地下に重なっていた地層や岩体を、隆起と侵食が異なる高さで切り出して見せているのです。
同じ種類の石でも見た目が違うのはなぜ?
岩石名が同じでも、風化の程度や鉱物の大きさによって見た目は変わります。
たとえば花こう岩でも、新鮮な岩盤は硬く明るい灰色に見える一方、強く風化すると褐色を帯び、砂のような「マサ」になります。
火山岩でも、気泡の多い部分と緻密な部分では見た目が違います。堆積岩でも粒の大きさや含まれる鉱物・化石の種類によって色や模様が変わります。
したがって、見た目が違う石が必ず別の岩石種類とは限りません。正確な判定には、鉱物、組織、化学組成、産状などを調べます。
川原では山のさまざまな石が混ざる
山の川原を見ると、一か所にいろいろな色や模様の石が並んでいることがあります。
これは川が上流の広い範囲から岩石を削り、下流へ運んでいるためです。
上流に花こう岩の地域、別の支流に堆積岩の地域、さらに別の谷に火山岩の地域があれば、それぞれの石が川原で混ざります。
そのため川原の石を観察すると、流域の上流にどのような地質が分布しているかをある程度読み取ることができます。
ただし丸い石は移動中に削られて見た目が変わるため、山の露頭で見る岩石より判別が難しい場合もあります。
地質図を見ると「石が変わる場所」がわかる
地質図は、表土の下にどのような岩石や地層が分布しているかを色分けして示した地図です。
地質調査総合センターの「20万分の1日本シームレス地質図」では、日本各地の堆積岩、付加体、火成岩、変成岩などを年代とともに確認できます。
登山する山を地質図で見ると、「この尾根は花こう岩」「この谷は堆積岩」「この付近で断層を横切る」といった背景を知ることができます。
山道で石の種類が変わったときに地質図と照らし合わせると、その変化が偶然ではなく、地下の地質境界を反映していることがわかります。
日本の山で石の種類が多様なのはなぜ?
日本列島は、長い地質時代を通じてプレートの沈み込み、火山活動、海底堆積、付加作用、変成作用、断層運動、隆起と侵食を繰り返してきました。
地質調査総合センターは、日本列島がプレート沈み込み帯に位置し、古い深成岩・変成岩・堆積岩から、若い火山岩や堆積物まで多様な地質体で構成されていると説明しています。
そのため、日本の山では比較的短い距離の中で岩石の種類や年代が大きく変わることがあります。
山の石の多様さは、日本列島が長い時間をかけて複雑な地殻変動を受けてきた証拠でもあります。
岩石の違いは山の形にも影響する
石の種類の違いは、見た目だけでなく山の地形にも関係します。
硬く風化しにくい岩石では急崖や鋭い尾根が残りやすく、割れ目が多い岩石や風化しやすい地層では崩壊や侵食が進みやすくなることがあります。
さらに、岩石の割れ目や透水性が違えば、湧水の出方や土壌の厚さも変わります。
つまり「どんな石でできているか」は、山の形、水の流れ、植生、土砂災害の起こり方にもつながる基本情報です。
山の石が場所によって変わる仕組みを整理すると
- 火山活動や堆積など、異なる環境でさまざまな岩石ができる
- プレート運動でそれらの岩石や地層が押し曲げられ、断層で並び替えられる
- 地下では熱や圧力を受け、一部が変成岩へ変わる
- マグマが地下へ入り、深成岩をつくる
- 山地が隆起し、侵食によって地下の岩石が地表へ露出する
- 岩石ごとの風化・侵食されやすさの差で、見える場所がさらに変わる
まとめ
山で石の種類が場所によって変わる最大の理由は、その場所ごとに異なる地質の歴史を持つ岩石が分布しているからです。
- 岩石は大きく火成岩・堆積岩・変成岩に分かれる
- 火山活動の時期やマグマの種類が違えば火山岩も変わる
- 昔の海底や川底の地層が隆起して山の中に現れることがある
- 断層運動によって本来離れていた岩石が隣り合うことがある
- 地下で熱や圧力を受けた場所では変成岩ができる
- 隆起と侵食によって、深い場所にあった岩石が地表へ現れる
- 岩石ごとの侵食されやすさの違いも、分布の見え方を変える
つまり山の石は、その山がどのように生まれ、押され、持ち上がり、削られてきたかを記録した「地球の履歴書」のようなものです。同じ山で石が変わる場所を観察すると、目の前の地形の下にある長い地質の歴史を読み取ることができます。

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