なぜ火山の噴火で火砕流が起こるのか?

火山と火砕流が関係しているのは、火砕流が火山噴火で生じた火山灰・軽石・岩塊などの火砕物と高温のガスが混ざり、地表を高速で流れ下る火山現象だからです。とくに、爆発的噴火でできた高い噴煙柱が崩れる場合や、火口付近に成長した溶岩ドームが崩壊する場合に火砕流が発生します。

火砕流は、単なる「火山灰の雲」でも「溶岩流」でもありません。細かな火山灰から大きな岩塊までを含む高温の混合物が、重力の作用で斜面や谷を急速に流れ下る現象です。気象庁は、火砕流が時速100kmを超えることがあり、温度も数百℃に達する場合があるとして、重要な火山災害の一つに位置付けています。

目次

火砕流とは何か

気象庁は火砕流を、噴火によって放出された破片状の固体物質と火山ガスなどが混合した状態で、地表に沿って流れる現象と説明しています。

含まれる固体物質には、火山灰、軽石、岩片、火山弾・岩塊などがあります。これらが高温のガスや空気と混ざり、密度の高い流れとなって斜面を下ります。

産業技術総合研究所の地質調査総合センターも、火砕流を「火山の噴火や溶岩ドームの崩壊によって放出された火山砕屑物と空気が混じり合い、高速で移動する流れ」と説明しています。

つまり火砕流は、火山から放出された物質が一度空中へ出た後、重力によって地表方向へ流れ落ちる現象だと考えるとわかりやすくなります。

なぜ火山の噴火で火砕流が起こるのか

爆発的噴火では、マグマ中の火山ガスが急膨張し、マグマが細かく砕かれて火山灰や軽石になります。

これらの火砕物がガスとともに勢いよく噴き上がると、火口の上に大きな噴煙柱ができます。

噴煙柱が十分に熱く、周囲の空気を取り込みながら軽くなれば、そのまま高い上空まで上昇します。しかし、火砕物が多すぎる、噴出速度が低下する、噴煙全体の密度が大きくなるなどの条件で上昇を維持できなくなると、噴煙柱が崩れます。

すると、大量の火砕物と高温ガスが重力によって火山斜面を流れ下り、火砕流になります。これが噴煙柱崩壊型の火砕流です。

噴煙柱が崩れると広い範囲へ火砕流が広がることがある

噴煙柱崩壊型の火砕流では、火口上空にあった大量の火砕物が一気に地表へ戻ってきます。

そのため、火口の一方向だけではなく、複数方向へ火砕流が広がる場合があります。

フィリピンのイロシン火砕流噴火を扱った学術研究でも、プリニー式噴火の途中で噴煙柱崩壊が繰り返し起こり、火砕流が発生したことが報告されています。

大規模な噴煙柱崩壊では、火砕流が火山の裾野やさらに遠方まで広がることがあるため、火口近くにだけ注意すればよいとは限りません。

溶岩ドームが崩れて火砕流になることもある

もう一つ代表的なのが、溶岩ドーム崩壊型の火砕流です。

粘り気の強いマグマが火口から押し出されると、遠くまで流れずに火口付近へ盛り上がり、溶岩ドームをつくることがあります。

溶岩ドームは急な斜面を持ち、内部は非常に高温です。新しいマグマが後ろから供給されてドームが成長すると、斜面の一部が不安定になり、重力で崩壊することがあります。

崩れた高温の溶岩塊が細かく砕かれ、周囲の高温ガスや空気と混ざると、火砕流となって斜面を流れ下ります。

雲仙普賢岳では溶岩ドーム崩壊型の火砕流が起きた

日本でよく知られている例が、1991年の雲仙普賢岳です。

産総研地質調査総合センターは、雲仙普賢岳で成長した溶岩ドームが崩壊し、火砕流が発生したと説明しています。

気象庁によると、1991年6月3日に発生した火砕流では43人が亡くなりました。

この事例は、火砕流が必ずしも「火口から爆発的に吹き出した瞬間」だけに起こるのではなく、噴火で形成された高温の溶岩ドームが後から崩れることでも発生することを示しています。

なぜ火砕流は非常に速いのか

火砕流は、高温の粒子とガスが混ざった流れです。

粒子は重力によって斜面を下ろうとし、ガスや空気が粒子の間に入り込むことで、岩石だけが崩れる場合より流動性が高くなることがあります。

USGSは、火砕流が一般に時速80kmを超える速度で移動し、条件によってはさらに高速になると説明しています。気象庁も時速100km以上に達することがあるとしています。

この速度では、火砕流が見えてから車や徒歩で安全な場所まで逃げ切ることは期待できません。そのため、防災では発生前の避難が基本になります。

火砕流が高温なのはなぜか

火砕流を構成する火山灰・軽石・岩塊の多くは、噴火直後の高温のマグマや溶岩に由来します。

また、ガスも非常に高温の状態で放出されます。

USGSは、火砕流内部の岩石やガスの温度が一般に約200~700℃になることがあると説明しています。

そのため、通過域では樹木や建物が燃えたり、人や動物が高温の灰・ガスによって重大な被害を受けたりします。

火砕流の危険性は、速さだけでなく、この高温が同時に作用する点にあります。

火砕流と火砕サージはどう違うのか

火砕流の上部や周辺では、火山灰とガスを多く含む比較的薄い流れが生じることがあります。これを火砕サージと呼びます。

気象庁は、火砕サージを火砕流の一種で、火山ガスを主体とする希薄な流れと説明しています。

火砕サージは粒子濃度が低く流動性が高いため、地形によっては尾根を越えて広がることがあります。

そのため、「谷筋に入らなければ安全」とは限りません。火山によっては、防災上、火砕サージも火砕流に含めて警戒範囲が設定されます。

火砕流と溶岩流は同じではない

火砕流と溶岩流はどちらも火山活動で発生しますが、性質は大きく違います。

溶岩流は、地下のマグマが地表へ出て、溶融した岩石として流れるものです。

火砕流は、火山灰や岩塊などの破片と高温ガスが混ざって高速で流れるものです。

一般に溶岩流の先端は比較的ゆっくり進む場合が多いのに対し、火砕流は非常に高速で、短時間で広い範囲へ到達することがあります。

ただし、粘り気の強い溶岩でできた溶岩ドームが崩れると火砕流になることがあるため、両者は無関係ではありません。

火砕流と火山灰の降下も別の現象

火山灰は直径2mm未満の細かな火山噴出物です。

噴煙に乗って上空へ上がった火山灰は、風に流されながら地面へ降ります。これは降灰です。

一方、火砕流では火山灰だけでなく軽石や岩塊、高温ガスなどが混ざり、地表近くを高速で流れます。

火砕流から舞い上がった細かな灰が上空へ運ばれ、離れた場所で降灰を起こすこともあります。

つまり、火山灰は火砕流を構成する物質の一部になり得ますが、「火山灰が降ること」と「火砕流が流れること」は別の現象です。

火砕流は地形に沿って流れやすいが、必ず谷だけを通るわけではない

火砕流は重力で地表を流れるため、一般には谷や低い地形へ集まりやすい傾向があります。

しかし、大規模で勢いの強い火砕流や希薄な火砕サージでは、地形の影響を受けながらも尾根を越えたり、広い範囲へ広がったりすることがあります。

USGSも、火砕流は谷など低い場所を通りやすい一方、規模や性質によって流下距離や広がり方が大きく異なると説明しています。

したがって、過去の流路だけを見て安全域を自己判断することは危険です。

火砕流は火山の地形もつくる

火砕流は災害現象であると同時に、火山地形をつくる働きも持っています。

流れが止まると、火山灰・軽石・岩塊などが地表に厚く堆積します。これが火砕流堆積物です。

産総研地質調査総合センターによると、火砕流堆積物にはさまざまな大きさの火山噴出物が混在し、堆積直後には比較的平坦な地形をつくることがあります。

大規模火砕流が谷を埋めると、地形や河川の流れが変わることもあります。

長い時間で見れば、火砕流は火山の周辺地形をつくり替える重要な地質作用でもあるのです。

火砕流堆積物を調べると過去の噴火がわかる

火砕流は通過した後に特徴的な堆積物を残します。

地質学者は、堆積物の厚さ、粒の大きさ、含まれる軽石や岩片、化学組成、分布範囲などを調べます。

これにより、過去にどこまで火砕流が到達したのか、どの程度の規模の噴火だったのかを推定できます。

過去の火砕流堆積物の分布は、現在の火山ハザードマップや噴火シナリオを考えるうえでも重要な基礎資料になります。

火砕流から身を守るには「発生前に離れる」ことが重要

火砕流は速度が速く、高温で、破壊力も大きいため、発生してから近距離で逃げることは非常に困難です。

気象庁も、火砕流については噴火警報などを活用した事前避難が必要だとしています。

火山周辺では、噴火警戒レベル、立入規制、避難指示などに従い、規制区域へ入らないことが重要です。

また、登山中や観光中に噴火を目撃してから自分で安全な方向を判断するのではなく、事前に火山防災マップや避難計画を確認しておく必要があります。

まとめ

火山と火砕流が関係しているのは、火砕流が火山噴火によって生じた火山灰・軽石・岩塊などの火砕物と高温ガスが混ざり、重力によって地表を高速で流れる現象だからです。

代表的な発生の仕方には、高い噴煙柱が支えきれず崩れる噴煙柱崩壊型と、不安定な溶岩ドームが崩れる溶岩ドーム崩壊型があります。

火砕流は時速100kmを超えることがあり、温度も数百℃に達するため、溶岩流や通常の降灰とは異なる極めて危険な火山現象です。また、堆積物を残して火山周辺の地形を変え、過去の噴火を読み解く手掛かりにもなります。

つまり、火砕流は火山活動で生み出された高温の火砕物が、上空や火口付近から地表へ崩れ落ちて流動する現象です。火山の噴火様式や溶岩ドームの成長と密接に結び付いているため、火山を理解するうえでも防災を考えるうえでも重要なのです。

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