なぜ火山の溶岩は場所や条件によって違うのか?

火山の溶岩に場所や条件による違いがあるのは、もとのマグマの化学組成、温度、結晶や気泡の量、噴出する速さ、斜面の傾き、流れながらどれだけ冷えたかなどが異なるためです。その結果、さらさらと長く流れる溶岩もあれば、ねばりが強く火口付近に厚くたまる溶岩もあり、同じ火山でも噴火の時期や流下距離によって見た目や動き方が変わります。

つまり、溶岩の違いは「火山ごとの違い」だけではありません。噴出した直後と遠くまで流れた後でも温度や結晶量が変わるため、一つの溶岩流の中でも性質が変化します。ここでは、場所や条件によって溶岩がどう違うのかを、材料・温度・流れ方・地形の順に整理します。

目次

まず、溶岩の違いとは何が違うのか

溶岩は地下のマグマが地表へ出たものです。しかし、すべての溶岩が同じ性質を持つわけではありません。比較するときに重要なのは、主に次の点です。

  • 化学組成:とくに二酸化ケイ素(SiO2)の量などが違います。
  • 温度:高温の溶岩ほど一般に流れやすくなります。
  • 結晶量:結晶が多いほど、全体として流れにくくなることがあります。
  • 気泡・火山ガス:気泡の量や大きさ、抜け方が流動性に影響します。
  • 噴出率:単位時間あたりにどれだけの溶岩が供給されるかで流れの厚さや到達距離が変わります。
  • 地形:急斜面か緩斜面か、谷地形か平坦地かによって進み方が変わります。
  • 冷却の進み方:流れながら熱を失うことで粘性や表面形態が変わります。

これらの条件が組み合わさるため、同じ「溶岩流」でも速度、厚さ、表面の形、到達距離は大きく異なります。

化学組成が違うと粘り気が変わる

溶岩の性質を決める基本条件の一つが、もとのマグマの化学組成です。代表的には、玄武岩質、安山岩質、デイサイト質、流紋岩質などに分けられます。

米国地質調査所(USGS)は、溶岩の粘性が主に化学組成、温度、結晶量、ガス量などによって決まると説明しています。一般に、玄武岩質溶岩は比較的SiO2が少なく高温で、粘性が低い傾向があります。一方、デイサイト質や流紋岩質の溶岩はSiO2が多く、粘性が高くなりやすい傾向があります。

そのため、玄武岩質溶岩は薄く広がりながら遠くまで流れやすく、粘性の高い溶岩は火口近くに厚く盛り上がりやすくなります。

玄武岩質溶岩はなぜ長く流れやすいのか

玄武岩質溶岩は、一般に高温で粘性が低いため、地表へ出た後も比較的速く移動できます。USGSのハワイ火山に関する解説でも、ハワイの溶岩が高い流動性を持つ主な理由として、玄武岩質の化学組成と高い温度が挙げられています。

流動性が高い溶岩は、斜面を下るだけでなく、条件によっては緩やかな地形でも長距離を流れることがあります。また、流れの表面が冷えて固まっても、その下を高温の溶岩が流れ続ければ、さらに遠くまで運ばれます。

このため、玄武岩質の火山では広い溶岩原や長い溶岩流が形成されることがあります。

粘性の高い溶岩はなぜ火口近くにたまりやすいのか

デイサイト質や流紋岩質のように粘性が高い溶岩は、地表へ出ても速く流れにくく、火口付近に厚く積み重なりやすくなります。

気象庁は、高粘性の溶岩が火口上に盛り上がってできる地形を「溶岩ドーム」としています。溶岩ドームでは、新しい溶岩が内側から押し出されるように成長することがあり、急斜面になった部分が崩壊すると火砕流につながる場合もあります。

つまり、同じ量のマグマが地表へ出ても、粘性が低ければ遠くへ薄く広がり、粘性が高ければ近くに厚くたまりやすいという違いが生じます。

温度が違うと同じ組成でも流れ方が変わる

溶岩の粘性は化学組成だけでなく、温度にも強く左右されます。一般に、同じ組成なら高温のほうが流れやすく、冷えるほど流れにくくなります。

気象庁の火山噴火予知連絡会資料として示された桜島の溶岩流シミュレーションでも、溶岩の温度低下に伴って粘性が大きく上昇するモデルが使われています。実際の溶岩流でも、流出直後は高温で流れやすく、流下するにつれて空気や地面へ熱を奪われ、しだいに粘性が上がります。

このため、一つの溶岩流でも火口近くと先端付近では流動性が異なります。火口近くでは赤熱して速く流れていても、先端では表面が固まり、ゆっくり押し出されるように進むことがあります。

結晶が増えると溶岩は流れにくくなる

溶岩が冷えると、溶けた成分から鉱物の結晶が成長します。結晶が増えると、液体部分だけの場合よりも全体の流動が妨げられ、見かけの粘性が高くなります。

2022年のマウナロア噴火の溶岩を調べた研究では、流下しながら冷却と結晶化が進み、溶岩の流動特性が変化することが示されています。これは、溶岩の性質が噴出時に固定されるのではなく、地表を流れている間にも変化し続けることを示す例です。

つまり、「同じ玄武岩質だからどこでも同じ粘り気」とは限りません。温度と結晶量が違えば、同じ溶岩流の中でも動き方が変わります。

気泡や火山ガスも流れ方に影響する

地表へ出た溶岩には、火山ガスの気泡が含まれていることがあります。噴出直後には気泡が多くても、流れる間にガスが抜けると、密度や内部構造が変化します。

USGSは、溶岩の粘性や流動性がガス量にも左右されるとしています。ただし、気泡の影響は単純ではありません。気泡の量だけでなく、大きさ、形、つながり方、結晶との組み合わせによっても流れやすさは変わります。

そのため、実際の溶岩流では、冷却・結晶化・脱ガスが同時に進み、流下するにつれて性質が複雑に変化します。

パホイホイ溶岩とアア溶岩は何が違うのか

玄武岩質溶岩の代表的な表面形態として、「パホイホイ溶岩」と「アア溶岩」があります。

パホイホイ溶岩

比較的高温で流動性が高い状態では、表面がなめらかで縄状・しわ状になることがあります。これがパホイホイ溶岩です。薄い表面の殻の下を溶岩が流れ続け、柔らかな殻が変形することで特徴的な形になります。

アア溶岩

さらに冷却が進み、粘性が高くなると、表面の固い殻が砕けて角ばった岩塊が重なる粗い表面になります。これがアア溶岩です。

USGSは、一つの溶岩流でも、流下中の冷却や脱ガスによって粘性が増し、パホイホイ状からアア状へ移行することがあると説明しています。

したがって、パホイホイとアアは必ずしも別々のマグマからできるわけではありません。同じ玄武岩質溶岩でも、流下条件や冷却の程度によって表面形態が変わることがあります。

噴出率が違うと溶岩流の厚さや到達距離が変わる

単位時間あたりにどれだけ多くの溶岩が供給されるかも重要です。大量の溶岩が短時間に供給されれば、流れの内部が高温に保たれやすく、冷え切る前に長距離を移動できることがあります。

反対に、供給量が少なく薄く広がれば、空気や地面と接する面積の割合が大きくなり、熱を失いやすくなります。

USGSの溶岩に関する解説でも、溶岩の最終的な移動距離は、粘性だけでなく流速や冷却速度によって変わるとされています。

このため、同じ火山の同じ組成の溶岩でも、噴出率が違えば到達距離が変わる場合があります。

斜面が急なら必ず遠くまで流れるのか

斜面が急になると重力によって溶岩は加速しやすくなります。しかし、到達距離は斜面だけでは決まりません。

気象庁は、溶岩流の流下速度が地形だけでなく、溶岩の温度や組成にも左右されるとしています。急斜面でも粘性が非常に高く、すぐ冷えて固まれば遠くへ進みにくいことがあります。

一方、流動性が高く供給量の多い溶岩は、緩い斜面でも長距離を進むことがあります。USGSの資料でも、急斜面は長距離流動を助ける一方、ほぼ平坦な地形でも高流動性の溶岩が遠くまで達した例が示されています。

つまり、地形は重要ですが、「急なら遠い、緩ければ短い」と単純には決まりません。

溶岩トンネルができると遠くまで流れやすくなる

流動性の高い溶岩では、表面が先に冷えて固まり、その下を高温の溶岩が流れ続けることがあります。内部の溶岩が流れ去った後に空洞が残ると、溶岩トンネルになります。

表面の固い殻は断熱材のような役割を果たすため、内部の溶岩は外気に直接触れる場合より冷えにくくなります。その結果、高温の状態を保ったまま遠くへ運ばれることがあります。

この仕組みも、溶岩の到達距離が単純に噴出口からの距離だけで決まらない理由の一つです。

同じ火山でも時期によって溶岩の組成が変わる

一つの火山が常に同じ組成の溶岩だけを出すわけではありません。地下のマグマ供給や結晶分化、マグマ混合などが変化すると、噴出物の組成も変わります。

産業技術総合研究所・地質調査総合センターの有珠火山の解説では、外輪山をつくる古い溶岩は玄武岩から玄武岩質安山岩ですが、1663年以降の歴史時代には流紋岩からデイサイト質の軽石やドーム溶岩が噴出しています。

これは、同じ火山でも活動時期が変われば、より流動性の高い溶岩を出す時期と、粘性の高い溶岩を出す時期があり得ることを示しています。

溶岩の色が違うのはなぜか

固まった溶岩の色は、化学組成や鉱物、火山ガラスの割合、酸化の程度などによって変わります。

玄武岩質の火山岩は一般に暗灰色から黒色を示しやすく、流紋岩質やデイサイト質ではより明るい色になるものがあります。ただし、同じ組成でも酸化によって赤褐色になることがあります。

また、噴出直後の溶岩が赤や橙色に見えるのは、その物質自体が赤いからではなく、高温のため熱放射で発光しているからです。冷えると発光は弱まり、固まった岩石本来の色が見えるようになります。

溶岩の違いを整理すると

  • 化学組成:玄武岩質は比較的低粘性、デイサイト質・流紋岩質は高粘性になりやすい傾向があります。
  • 温度:高温ほど流れやすく、冷えるほど粘性が上がります。
  • 結晶量:冷却で結晶が増えると流れにくくなります。
  • 気泡・ガス:量や形、脱ガスの進み方で流動性が変わります。
  • 噴出率:多量に供給されると高温を保ちやすくなります。
  • 斜面:重力による加速に影響しますが、到達距離を単独では決めません。
  • 冷却時間:流下するにつれて温度が下がり、性質が変化します。
  • 表面形態:同じ玄武岩質溶岩でも、条件によりパホイホイ状やアア状になります。
  • 火山活動の時期:同じ火山でもマグマ組成が変化することがあります。

まとめ:溶岩の違いは「材料」と「流れている間の条件」の違い

火山の溶岩に場所や条件による違いがあるのは、もとのマグマの組成が異なるだけでなく、地表へ出た後も温度、結晶量、気泡、噴出率、斜面、冷却条件が変化するためです。

玄武岩質溶岩は一般に高温・低粘性で長く流れやすい一方、デイサイト質や流紋岩質の溶岩は高粘性で火口付近に厚くたまりやすくなります。しかし、同じ玄武岩質溶岩でも流下中に冷えて粘性が上がれば、パホイホイ状からアア状へ変化することがあります。

「マグマの組成が違う→温度や粘性が違う→噴出率と地形が流れ方を変える→冷却・結晶化・脱ガスが進む→同じ溶岩流の中でも形や動きが変わる」という流れで考えると、溶岩の場所・条件による違いを理解しやすくなります。

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