なぜ火山の火口は場所や条件によって違うのか?

火山の火口に場所や条件による違いがあるのは、地下のマグマや火山ガスが通る経路、岩盤の割れ目や応力の向き、噴火の仕方、地下水や湖水の有無、斜面や既存地形などが火山ごと・噴火ごとに異なるためです。その結果、山頂に大きな火口ができる場合もあれば、山腹に側火口が開く場合、複数の火口が直線状に並ぶ場合、水蒸気やマグマと水の激しい相互作用で低く広い爆発火口ができる場合もあります。

つまり、火口は単に「火山のてっぺんにある穴」ではありません。地下から何が、どの経路を通って、どのような条件で地表へ出たかによって、位置・数・大きさ・形・深さが変わる火山地形です。

目次

まず火口とは何か

気象庁は火口を、地下のマグマや火山ガスが地表へ放出される場所にできる、ふつう円形に近いくぼみ状の地形としています。国土地理院も、狭い意味の火口をマグマの地表への噴出口として整理し、その位置によって山頂火口、中央火口、側火口などと呼ぶとしています。

火口は、マグマやガスが噴出するときに周囲の岩石が吹き飛ばされたり、火口壁が崩れたりすることで形成・拡大します。したがって、火口の形は地下の噴出口だけでなく、地表側の岩盤や地形の影響も受けます。

山頂火口と側火口はなぜできる場所が違うのか

火山の中心部を通る主な火道が山頂までつながっている場合、マグマは山頂付近から噴出しやすくなり、山頂火口が形成されます。長期間にわたって同じ付近で噴火が繰り返されると、火口は拡大したり、内部に新しい小さな火孔ができたりします。

一方、マグマは必ず山頂へ向かうわけではありません。地下の割れ目や弱い岩盤に沿って斜め方向や横方向へ進み、山腹まで達する場合があります。その場所で噴火すれば、山頂から離れた場所に側火口ができます。

このため、火口の位置は「火山の一番高い場所」で自動的に決まるのではなく、地下でマグマが通りやすい経路に左右されます。

複数の火口が一直線に並ぶのはなぜか

火山では、一つの火口だけでなく、複数の火口が直線的に並ぶことがあります。気象庁はこれを「火口列」と呼び、火口の配列方向は地下の応力場を反映していると考えられると説明しています。

岩盤に特定方向の割れ目ができると、マグマがその割れ目へ入り込み、複数地点で地表へ達することがあります。すると、一回の噴火活動で複数の火口が同じ方向に並ぶように形成されます。

1986年の伊豆大島噴火では、カルデラ床や外輪山斜面に火口列が形成されました。このような例は、火口の配置が地下のマグマの通り道と地殻の力のかかり方を反映することを示しています。

火口の大きさは何で決まるのか

火口の大きさは、噴火の強さだけで単純に決まるわけではありません。噴出物量、爆発の深さ、岩盤の強度、火口壁の崩れやすさ、噴火が繰り返された回数などが関係します。

爆発によって多くの岩石が吹き飛ばされれば、火口は大きくなりやすくなります。また、噴火後に急な火口壁が崩落すると、噴出口そのものより広い凹地へ発達することがあります。

逆に、小規模な噴出が短期間だけ起きた場合には、火口内に小さな火孔ができる程度で終わることもあります。気象庁も、火山活動に伴って火孔の位置が変わったり、同時に複数の火孔が開いたりすることがあるとしています。

爆裂火口は普通の火口と何が違うのか

国土地理院は、通常の火口とは別に「爆裂火口」という地形を区分しています。爆裂火口は、主として水蒸気爆発などの強い爆発によって、既存の火山体や岩盤の一部が吹き飛ばされてできる凹地です。

このタイプでは、新しいマグマが大量に地表へ出ることよりも、地下の熱水や水蒸気が急激に膨張し、周囲の岩石を破壊する働きが重要になる場合があります。

そのため、爆裂火口では新しい溶岩より、古い岩石や熱水変質した岩石が噴出物の多くを占めることがあります。

地下水が多い場所では火口の形も変わる

地下水が豊富な場所へマグマが上昇すると、マグマの熱によって水が急激に加熱され、水蒸気へ変化して大きく膨張することがあります。気象庁は、マグマと水の接触を駆動力とする噴火をマグマ水蒸気噴火としています。

このような浅い場所での爆発が繰り返されると、周囲の岩盤が大きく掘り崩され、幅広く浅い火口になることがあります。

米国地質調査所(USGS)は、地下水面へマグマが侵入して浅い爆発が起こることで形成される、低く広い火口を「maar(マール)」と説明しています。マールはしばしば水がたまり、湖になることがあります。

つまり、水が多い環境では、乾いた火道でのマグマ噴出だけでは見られにくい広い爆発火口が形成されることがあります。

火口が円形ではなく楕円形や不規則になるのはなぜか

火口は円形に近いものが多いものの、完全な円とは限りません。岩盤に亀裂や断層がある方向、斜面の傾き、爆発源の位置、噴出方向などによって、楕円形や不規則な形になります。

斜面上にできた火口では、下側の火口壁が崩れやすく、一方向に開いた形になることがあります。また、複数の火口が近接して形成され、その後に火口壁が崩れてつながると、複雑な形の凹地になることもあります。

このため、火口の形には「爆発の力」だけでなく、もともとの地形と岩盤構造も記録されています。

火口の深さも条件によって違う

火口の深さは、どれだけ岩石が除去されたか、噴火後にどれだけ崩落・堆積したかによって変わります。

強い爆発で深く掘り込まれても、その後に火山灰や岩塊が火口内へ落ち込めば浅くなります。逆に、火口底が陥没したり、火口壁の崩壊で内部の物質がさらに下方へ移動すれば、深くなる場合があります。

また、火口底に溶岩がたまったり、新しい溶岩ドームが形成されたりすると、以前より火口が浅く見えることもあります。このため、同じ火口でも時間とともに深さが変化します。

火口湖ができる火口と、できない火口があるのはなぜか

火口は凹地なので、雨水や雪解け水、地下水が流れ込むと湖になる可能性があります。国土地理院は、噴火口に水をたたえてできた湖を火口湖としています。

ただし、水がたまるには火口底や壁がある程度水を通しにくいことが必要です。亀裂が多く、水が地下へ抜けやすければ湖はできにくくなります。また、火山活動が活発で地熱が強ければ、蒸発量が大きくなることもあります。

つまり、火口湖の有無も、降水量だけでなく、岩盤の透水性、地下水、火山の熱活動などの条件によって決まります。

新しい火口は古い火口の中にできることもある

火山活動が続くと、既存の大きな火口の内部に新しい小さな噴出口が開くことがあります。気象庁は、火口内に新たにできたさらに小さな火口を「火孔」と呼ぶ場合があります。

地下のマグマやガスが以前とまったく同じ経路を通るとは限らないため、火口底の中央だけでなく、壁際や別の場所に新しい火孔が形成されることがあります。

噴火活動が長期化すると、こうした火孔が拡大したり、複数の火孔がつながったりして、火口全体の形が変わることがあります。

同じ火山でも火口の場所が変わるのはなぜか

地下のマグマ供給経路や地殻の応力状態は、長い時間の中で変化します。そのため、過去に活動した火口とは別の場所に、新しい火口が開くことがあります。

気象庁は、火山防災で「想定火口域」を設定する場合がありますが、その範囲のすべてで火口ができるわけではなく、場合によっては想定範囲外に新しい火口が生じる可能性もあるとしています。

これは、噴火位置が地下の割れ目やマグマ上昇経路に依存し、完全に固定されているわけではないことを示しています。

火口とカルデラはどこが違うのか

火山の大きなくぼみをすべて火口と考えると、カルデラとの違いが分かりにくくなります。

国土地理院は、火山性の火口状凹地のうち直径が2kmより大きいものをカルデラとし、通常の爆裂火口は2kmを超えないため、それより大きいものでは大規模な陥没など別の成因が考えられるとしています。

一般的な火口は噴出口周辺の爆発・噴出・崩落で形成されるのに対し、陥没カルデラでは大量のマグマが失われた後、その上部の広い地盤が沈むことが重要です。

したがって、火口の「大きさの違い」を考えるときは、単に大型化した火口なのか、形成機構そのものが異なるカルデラなのかを区別する必要があります。

火口の違いを整理すると

  • 位置:主火道が山頂へ達すれば山頂火口、山腹の割れ目へ進めば側火口になります。
  • 数と配列:割れ目に沿って複数の噴出口が開くと火口列ができます。
  • 噴火様式:マグマ噴火、水蒸気噴火、マグマ水蒸気噴火で形成過程が異なります。
  • 地下水の有無:地下水が豊富だと爆裂火口やマールの形成につながることがあります。
  • 岩盤の強さ:硬さや亀裂の向きによって火口の大きさや形が変わります。
  • 斜面:斜面上では火口壁が一方向へ崩れ、不規則な形になることがあります。
  • 噴火の繰り返し:古い火口内に新しい火孔ができ、形が変化します。
  • 水のたまりやすさ:火口底の透水性や降水量などによって火口湖の有無が変わります。

まとめ:火口の違いは「地下の通り道」と「地表の条件」の違い

火山の火口に場所や条件による違いがあるのは、マグマや火山ガスが通る地下経路、岩盤の割れ目や応力、噴火様式、地下水、地形などが異なるためです。

主火道が山頂へつながれば山頂火口ができ、山腹の割れ目を通れば側火口になります。複数の割れ目に沿って噴火すれば火口列が形成され、地下水とマグマが激しく反応する場所では爆裂火口やマールのような広い火口ができることがあります。

さらに、火口は噴火後も崩落、堆積、侵食、新しい火孔の形成によって変化し続けます。

「地下のマグマ・ガスの通り道が決まる→地表のどこで噴出するかが変わる→噴火様式と水の条件で掘られ方が変わる→岩盤と地形で形が変わる→その後の崩落や堆積でさらに変化する」という流れで考えると、火口の場所・条件による違いを理解しやすくなります。

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参考資料

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