なぜ同じ雲でも見る場所や時間によって色が違って見えるのか?

結論からいうと、雲の色には、雲の厚さ、太陽の高さ、雲の高度、観察する方向、雲粒や氷晶の大きさなどが場所や時間によって違うため、白・灰色・黒・赤・橙・虹色などの違いが生まれます。

雲そのものに白や黒の色素があるわけではありません。雲をつくる水滴や氷晶が太陽光をどのように散乱し、どれだけの光が観察者まで届くかによって見え方が変わります。

そのため、同じ雲でも、太陽に照らされた上面は真っ白に輝き、地上から見た雲底は暗い灰色に見えることがあります。朝夕には赤や橙に染まり、薄い雲では条件によって彩雲のような虹色が現れることもあります。

目次

雲の基本色が白く見えるのはなぜか

太陽光は白く見えますが、実際には赤・橙・黄・緑・青・紫などさまざまな波長の光を含んでいます。

気象庁は、雲粒による散乱では特定の色だけが強く散乱されるのではなく、可視光の各色が広く散乱されるため、雲は白く見えると説明しています。Met Officeも、水滴が可視光の各色をほぼ同じように散乱するため、散乱された光が混ざり合って白く見えるとしています。

つまり、晴れた昼間の薄い雲や、太陽に直接照らされた積雲の上部が白いのは、雲の中で太陽光の色が大きく偏らずに散乱されるからです。

同じ雲でも白い部分と灰色の部分がある

積雲や積乱雲を見ると、雲の上部や側面は明るい白なのに、底だけ灰色や黒っぽく見えることがあります。

これは雲の材料が場所によって違うからではなく、観察者まで届く光の量が違うためです。

Met Officeは、雲の中で散乱された光の多くが上や横へ向かうため、雲底へ届く光が少なくなり、雲底は灰色に見えやすいと説明しています。気象庁も、厚い雲では太陽光が雲底まで届きにくくなるため、地上からは灰色や黒っぽく見えるとしています。

つまり、雲の色は「雲そのものの色」よりも、光源である太陽と雲、観察者の位置関係によって大きく変わります。

雲が厚いほど暗く見えやすい

雲が厚くなると、太陽光は雲の中でより多くの水滴や氷晶に当たり、何度も散乱されます。

薄い雲なら、散乱されながらも多くの光が雲底まで届きます。しかし厚い雲では、光が上や横へ散らされる回数が増え、地上方向へ抜けてくる光が少なくなります。

その結果、雲底は明るい白から灰色、さらに暗い灰色へ変化しやすくなります。

気象庁は、積乱雲は背が高く分厚いため太陽光を遮り、雲底が非常に暗く見えると説明しています。一方、同じ積乱雲でも遠くから太陽に照らされた上部を見ると、白く輝いて見えます。

黒い雲がある場所では必ず大雨なのか

暗い雲は、厚く発達した雲である可能性を示す手がかりにはなります。しかし、黒く見えることだけで必ず大雨になるとは限りません。

雲の暗さは、雲の厚さだけでなく、太陽の位置、観察方向、ほかの雲による影にも左右されます。太陽を背にして見る場合と、逆光で見る場合でも印象は変わります。

また、発達した積乱雲では、上部が白く輝いていても、その真下では激しい雨が降っていることがあります。したがって、色は雲の発達を読む手がかりの一つですが、降水量そのものを直接表しているわけではありません。

朝夕に雲が赤や橙に見えるのは太陽光の色が変わるから

朝焼けや夕焼けで雲が赤や橙に染まるのは、雲の性質が変化したからではありません。雲へ届く太陽光の色が変わるためです。

気象庁は、太陽が地平線に近いと、太陽光が大気中を通る距離が長くなり、青など波長の短い光が途中で強く散乱され、赤など波長の長い光が相対的に多く残ると説明しています。

その赤みを帯びた光が雲の水滴や氷晶で散乱されるため、普段は白い雲が赤・橙・桃色に見えます。

つまり、朝夕の雲の色は「雲の色が変化した」というより、「照明となる太陽光の色が変化した」と考えるとわかりやすくなります。

高い雲ほど朝夕に鮮やかに染まることがある

雲の高度も、朝夕の色の違いに関係します。

太陽が地平線の下へ沈んだ後でも、高い雲にはまだ太陽光が届いていることがあります。そのため、地上付近が暗くなり始めても、巻雲や高積雲など高い雲だけが赤や橙に明るく照らされることがあります。

NOAAの解説では、印象的な夕焼け色は、高い雲が低層大気を長く通って弱められる前の太陽光を受けることで現れやすいとされています。特に巻雲や高積雲は、赤や橙に染まる夕景をつくりやすい雲として挙げられています。

一方、低い層雲などは地球や他の雲の影に入りやすく、夕方には赤く輝くより先に暗く見えることがあります。

同じ時刻でも場所によって夕焼け雲の色が違う理由

夕方の雲の色は、観察地点と太陽・雲の位置関係によって大きく変わります。

西の空では太陽に近い方向の雲が強い橙色に見え、東の空では赤みが弱かったり、紫や灰色に見えたりすることがあります。雲がどの高さにあるか、どの面が照らされているかでも違いが生まれます。

また、大気中のちりや煙、水蒸気などによって光の通り方が変われば、夕焼けの鮮やかさも変化します。ただし、夕焼けが赤くなる基本原理は、大気を長く通る間に短波長側の光が散乱され、赤い光が相対的に多く残ることです。

雲の種類によって典型的な色の見え方が違う

雲の種類には、それぞれ典型的な厚さや高度があります。そのため、色の見え方にも傾向があります。

  • 巻雲:高く薄いため日中は明るい白に見え、朝夕には赤や橙に染まりやすい
  • 積雲:太陽に照らされた上部は白く、厚い雲底は灰色になりやすい
  • 積乱雲:非常に厚いため、雲頂は白く輝いても雲底は黒っぽくなりやすい
  • 層雲:低く空を広く覆い、白から灰色の一様な雲に見えやすい
  • 乱層雲:厚く広いため、空全体が暗い灰色に見えやすい

ただし、雲形が色を直接決めるわけではありません。各雲形に典型的な「高度・厚さ・粒子量」が光の通り方を変えるため、見え方に傾向が出るのです。

彩雲が場所や条件によって現れたり消えたりするのはなぜか

雲の縁が赤、黄、緑、青など虹色に見える現象を彩雲といいます。

気象庁は、彩雲は太陽光が雲粒の周りを回り込む「回折」によって生じると説明しています。光の波長によって回り込む角度が異なるため、色が分かれて見えます。

さらに、雲粒の大きさによって回折のしかたも変わります。そのため、粒が比較的小さく、粒径がある程度そろった薄い雲の縁などで色が目立ちやすくなります。

同じ雲でも、太陽との角度や雲粒の大きさが変わると彩雲は見えなくなります。数分のうちに色が強くなったり消えたりするのは、雲が動き、粒子の大きさや観察角度が変化するからです。

氷晶を含む高い雲では別の光学現象も起こる

高い雲には氷晶が多く含まれることがあります。氷晶では、水滴による散乱や回折だけでなく、光の屈折によって「暈」や「幻日」などの大気光学現象が生じることがあります。

気象庁は、上層雲に含まれる氷晶で太陽光が屈折することで、太陽の周囲に暈が現れたり、太陽の左右に幻日が現れたりすると説明しています。

これらは雲全体の色そのものではありませんが、雲粒が水滴か氷晶か、その粒子の形がどうなっているかによって、見える光の色や模様が変わる例です。

観察する方向でも雲の色は変わる

同じ場所・同じ時刻でも、太陽に近い方向と反対方向では雲の明るさが違うことがあります。

太陽側の雲は強い光を受け、輪郭が明るく輝くことがあります。一方、逆光で厚い雲を見ると、雲の手前側が影になり、黒っぽく見えることがあります。

飛行機から雲を見下ろすと、地上では灰色だった雲が真っ白に見えることがあります。これは上面が直接太陽光を受けているためです。

このように、雲の色は「どこから見るか」によっても変わります。

衛星画像の白い雲は肉眼の白さとは意味が違う

天気予報で見る衛星画像でも雲は白や灰色で表示されますが、画像の種類によって白さの意味は異なります。

気象庁によると、可視画像では雲が反射した太陽光を観測しており、厚く発達した雲ほど太陽光を強く反射するため白く写りやすくなります。

一方、赤外画像では雲や地表から放射される赤外線を利用し、温度の低い雲をより白く表現します。そのため、高く冷たい雲は白く、低く暖かい雲は灰色や黒っぽく表示されることがあります。

つまり、衛星画像の「白い雲」と、人間が昼間に見上げる「白い雲」は、同じ色に見えても情報の意味が異なる場合があります。

場所や条件による色の違いを整理すると

  • 薄く太陽に照らされた雲:可視光の各色が広く散乱され、白く見えやすい
  • 厚い雲:雲底まで届く光が減り、灰色や黒っぽく見えやすい
  • 雲頂や太陽側の面:直接光を受け、明るい白に見えやすい
  • 朝夕:青い光が途中で散乱され、赤・橙の光が多く雲へ届く
  • 高い雲:日没後も太陽光を受け、赤く鮮やかに染まることがある
  • 薄い雲の縁:粒径や角度が適切だと回折で彩雲が現れることがある
  • 氷晶を含む上層雲:屈折によって暈や幻日などが見えることがある
  • 観察方向:順光・逆光、雲の上・下などで明るさが変わる

まとめ

「なぜ雲の雲の色には場所や条件による違いがあるのか?」への最も簡単な答えは、雲をつくる水滴や氷晶に当たる光の色と量が、雲の厚さ・高度・太陽の位置・観察方向・粒子の大きさによって変わるからです。

昼の薄い雲は白く、厚い雲の底は灰色や黒っぽくなります。朝夕には太陽光そのものが赤みを帯びるため雲も赤や橙に染まり、薄い雲では回折によって彩雲が現れることがあります。

雲の色は、雲そのものの固定色ではなく、雲と光と観察者の位置関係がつくる現象です。色の違いを見ることで、雲の厚さや高さ、太陽光の通り方といった大気の状態を読み取る手がかりになります。

参考資料

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