同じLED電球でも、ある調光器では滑らかに暗くできるのに、別の調光器では途中でちらついたり、一定以下まで暗くならなかったりすることがあります。複数灯をつないだときは安定していても、1灯だけにすると低い明るさで不安定になる場合もあります。
なぜ同じLED照明でも、調光器との組み合わせや負荷・設定で調光範囲が変わるのでしょうか。結論からいうと、LED照明は内部のドライバー回路で電力を変換して点灯しており、その回路が調光器の電源波形・最低負荷・制御方式をどこまで安定して受けられるかによって、実際に使える調光範囲が変わるからです。
LEDの調光は、白熱電球のように単純ではない
白熱電球はフィラメントへ供給する電力を減らせば、そのまま明るさが下がります。一方、LED電球やLED照明器具には、家庭の交流電源をLEDへ適した電流に変換するドライバー回路があります。
そのため、壁の調光器で交流波形を変化させても、LEDチップがその波形を直接受け取るわけではありません。まずドライバーが入力を受け、その状態をもとにLEDへ流す電流を調整します。
つまり、調光性能はLEDチップだけではなく、「調光器とドライバーがどのように電気的にかみ合うか」で決まります。
同じ「調光対応」でも、すべての調光器と合うわけではない
日本照明工業会は、調光機能付きの電球形LEDランプについて、調光器とランプの組み合わせ確認が必要だと案内しています。
これは、調光器にも複数の方式があり、LEDランプ側のドライバー設計も製品ごとに異なるためです。位相制御式でも、正位相・逆位相など波形の切り方が違い、それぞれの調光器が想定している負荷特性も異なります。
そのため、「LED用調光器ならどのLEDでも同じように調光できる」とは限りません。メーカーが公開している適合表や推奨組み合わせを確認する必要があります。
最低負荷を下回ると、低い明るさで不安定になることがある
一部の調光器は、正常に動作するために一定以上の電力を流すことを前提に設計されています。これを最低負荷と考えることができます。
LEDは白熱電球より消費電力が小さいため、1灯だけ接続すると、古い調光器が想定していた最低負荷を下回る場合があります。
米国エネルギー省の資料では、LED照明と調光器・変圧器の組み合わせにおいて、最低負荷条件を満たせないと調光範囲の途中で不安定になり、low-end設定を上げて安定領域だけを使う必要がある場合があると説明されています。
このため、同じLEDでも1灯では不安定、複数灯を並列に接続すると安定する、といった違いが起こることがあります。
ランプ数が変わると、調光器から見た負荷も変わる
調光器に接続するLEDランプの数を増減すると、合計の消費電力や入力電流が変わります。
たとえば5WのLED電球を1灯だけ接続した場合と、同じ電球を6灯接続した場合では、調光器から見た負荷条件が大きく違います。
DOEの試験資料でも、LEDと位相制御調光器の相性問題は、ランプ数などの負荷条件によって表れ方が変わることが示されています。ある組み合わせでは問題がなくても、灯数を変えると最低付近でちらつきや不安定動作が現れる可能性があります。
調光下限はLED単体の能力だけでは決まらない
LEDチップ自体は非常に小さい光量まで制御できる場合があります。しかし、家庭用LEDランプでは、ドライバー回路が安定して動作できる入力範囲に限界があります。
そのため、仕様上「5%まで調光可能」なLEDでも、組み合わせる壁調光器によっては10%や20%付近までしか安定して下げられないことがあります。
逆に、LED器具と専用ドライバーを一体設計したシステムでは、より低い出力まで安定して調光できることがあります。
調光範囲を見るときは、ランプの性能だけではなく、実際の制御機器との組み合わせで確認することが重要です。
low-end設定で「最低の明るさ」を意図的に上げることがある
調光器によっては、最低出力を調整するlow-end trimという設定があります。
これは、ノブやスライダーを最小まで下げたときでも、LEDが不安定になる領域まで電力を落とさないよう、調光の下限をあらかじめ高めに設定する機能です。
たとえばLEDが8%付近からちらつき始める場合、調光器の最低設定を12%程度にすれば、利用者から見ると「これ以上は暗くならない」一方で、安定した調光を維持できます。
したがって、同じLEDでも調光器の設定値によって、見かけの調光範囲は変わります。
調光器の種類によって入力波形が変わる
位相制御式調光器は、交流電源の波形の一部を切り取ることで、照明へ渡す電力を調整します。
正位相制御では波形の前半を切る方式、逆位相制御では後半を切る方式が使われます。日本照明工業会も、位相制御式調光器には複数の制御方式があることを示しています。
LEDドライバーは、この切り取られた波形を受け取って動作します。どの波形まで安定して認識・変換できるかはドライバー設計によって違うため、同じLEDでも正位相では相性が悪く、逆位相では安定するといったケースが起こり得ます。
低い調光率では、ちらつきや消灯が起こりやすい
調光を深くすると、調光器からLEDへ供給される電力や導通時間が小さくなります。このときドライバーが安定動作に必要な電圧や電流を確保できなくなると、光出力が揺れたり、突然消灯したりすることがあります。
DOEのLED調光資料でも、低い調光設定でちらつきを防ぐために、low-end設定を上げる必要がある組み合わせが示されています。
つまり「最小位置までノブを下げられる」ことと、「最小位置でも安定して点灯できる」ことは同じではありません。
最低付近だけでなく、最大側でも相性が出る場合がある
調光器とLEDの相性問題は、暗い側だけに起こるとは限りません。
最大付近でも、入力波形の処理や回路の立ち上がり条件によって、明るさが途中から変わらなくなる、点灯開始時に一瞬明るさが跳ねる、といった現象が起こることがあります。
そのため、一部の調光器では最大側にもhigh-end設定があり、実際に変化する範囲へ操作幅を合わせることがあります。
「ポップオン」が起こる組み合わせもある
LED調光では、完全消灯状態からゆっくりノブを上げても、非常に低い位置では点灯せず、ある位置まで上げた瞬間に急に点灯することがあります。これをポップオンと呼ぶことがあります。
これは、LEDドライバーが起動するために必要な最低入力条件があり、それを超えるまで回路が立ち上がらないためです。
一度点灯したあとなら、少し低いレベルまで下げられる場合もあり、点灯開始時と減光時で挙動が一致しないこともあります。
専用の0-10Vやデジタル制御では条件が異なる
家庭で多い位相制御以外にも、0-10V、DALI、専用デジタル制御などの調光方式があります。
これらでは、電源そのものを切り刻んで明るさを変えるのではなく、照明器具やドライバーへ「何%で点灯するか」という制御信号を送る方式があります。
この場合も器具やドライバーごとに最小調光率はありますが、位相制御式とは相性問題の仕組みが異なります。
オフィスや施設照明で広い調光範囲や安定性が必要な場合には、専用制御方式を使うことがあります。
同じ製品でも設定や接続条件を変えると結果が変わる
調光性能は、製品名だけでは完全には決まりません。
- どの調光器を使うか
- 正位相・逆位相など、どの制御方式か
- LEDを何灯接続するか
- 最低負荷条件を満たしているか
- low-endやhigh-end設定がどうなっているか
- 専用ドライバーや変圧器を介しているか
これらの条件が変わると、同じLED照明でも実際に使える調光範囲やちらつきの有無が変わります。
調光範囲を安定させるための確認ポイント
- LEDランプ・器具が調光対応か確認する
- メーカーの適合調光器一覧を確認する
- 調光器の対応負荷と接続可能な灯数を確認する
- 最低付近でちらつく場合はlow-end設定を確認する
- 点灯しない・途中で消える場合は最低負荷を確認する
- 古い白熱灯用調光器を流用する場合は特に適合を確認する
- 異常なちらつき、音、発熱がある場合は使用を続けない
まとめ
同じLED照明でも調光範囲が変わるのは、LEDが内部のドライバーを介して点灯しており、そのドライバーと調光器の電気的な相性が組み合わせごとに異なるからです。
特に、調光器の最低負荷、接続するランプ数、位相制御方式、low-end設定などは、どこまで暗くできるか、低い明るさで安定するかに影響します。
したがって、調光対応という表示だけで判断せず、LEDランプ・照明器具・調光器を一つのシステムとして確認することが重要です。適合する組み合わせと設定を使うことで、広い調光範囲と安定した点灯を得やすくなります。
関連記事
参考資料
- 一般社団法人日本照明工業会「調光器対応について」
- 一般社団法人日本照明工業会「高調波規格と関連Q&A」
- U.S. Department of Energy「LED MR16 Lamps」
- U.S. Department of Energy「LED Dimming: What You Need to Know」

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