地震と地域差が関係しているのは、地球のどこでも同じように力がたまり、同じように揺れるわけではないからです。プレート境界や活断層の位置によって地震の起こりやすさに差が生まれ、さらに震源からの距離や地盤の硬さによって、同じ地震でも地域ごとの揺れ方が変わります。
つまり「地震の地域差」には、大きく分けて2つあります。ひとつは地震そのものが起こりやすい場所と起こりにくい場所の差、もうひとつは同じ地震でも強く揺れる場所と弱く揺れる場所の差です。この2つを分けて考えると、なぜ地域によって地震の感じ方や被害の出方が違うのかが理解しやすくなります。
地震は世界中で均等に起こるわけではない
世界の地震分布を見ると、地震はランダムに散らばっているわけではありません。多くの地震は、地球表面を覆うプレートの境界付近に集中しています。
気象庁によると、地球の表面は十数枚のプレートに分かれており、それぞれが少しずつ動いています。プレート同士がぶつかる、すれ違う、一方がもう一方の下へ沈み込むといった場所には強い力がかかり、その力が地震の原因になります。
USGS(米国地質調査所)も、世界の地震の多くがプレート境界に集中すると説明しています。とくに太平洋を取り囲む地域には大規模地震が多く、世界最大級の地震の多くがこの帯で発生しています。
このため、プレート境界に近い地域と、安定したプレート内部の地域とでは、長い目で見た地震活動の頻度や規模に違いが生じます。これが地震の地域差を生む最も大きな理由のひとつです。
なぜ日本は地震が多いのか
日本周辺は、複数のプレートが接する非常に複雑な場所にあります。気象庁は、日本付近では太平洋プレートやフィリピン海プレートが陸側のプレートの下へ沈み込んでいるため、複数のプレートから複雑な力が加わり、世界でも地震活動が活発な地域になっていると説明しています。
海側のプレートが陸側のプレートの下へ沈み込むとき、プレート同士が強く固着している部分ではひずみがたまります。その固着が限界を超えて急にずれると、プレート境界地震が起こります。
一方で、日本の地震は海溝付近だけで起こるわけではありません。沈み込んだプレートの内部でも地震が起きますし、陸側のプレート内部にある活断層が動いて起こる地震もあります。そのため、日本国内でも「太平洋側なら多い」「内陸なら少ない」と単純に区切ることはできません。
地域差を生むもうひとつの要因は活断層
プレート境界から離れた内陸でも地震は発生します。その重要な原因のひとつが断層です。
地殻の中には過去の地殻変動によってできた弱い部分や断裂面があります。プレート運動によって地殻全体に力が加わり続けると、その力がこうした弱い部分に集中し、断層が急にずれることがあります。
USGSは、プレート内部で起こる地震について、プレート境界から伝わる応力が地殻内の古い断層や弱い部分に作用することが原因になりうると説明しています。
そのため、同じプレート内部にある地域同士でも、活断層の分布や地殻内の応力状態によって地震活動には差が生じます。活断層が多い地域では浅い地震が起こる可能性があり、震源が市街地の近くであれば、地震の規模が海溝型巨大地震ほど大きくなくても強い揺れや大きな被害につながることがあります。
地震が起きる回数と「揺れやすさ」は別の話
地域差を考えるときに注意したいのは、地震が多い地域と、強く揺れやすい地域は必ずしも同じではないということです。
たとえば、ある地域の近くで地震があまり発生していなくても、遠くの大きな地震から来た地震波が強く伝わる場合があります。逆に、地震活動が比較的活発な地域でも、震源が深かったり遠かったりすれば地表の揺れが小さいこともあります。
地表で感じる揺れの強さには、少なくとも次のような条件が関係します。
- 地震の規模
- 震源の深さ
- 震源や断層からの距離
- 地震波が通ってくる地下構造
- その場所の表層地盤の硬さ
このため、同じ地震でも地域ごとに震度が違うのは自然なことです。
地盤の違いで揺れ方に地域差が生まれる
地震波は震源から離れるにつれて一般には弱くなりますが、地表近くの地盤によって再び増幅されることがあります。
防災科学技術研究所のJ-SHISでは、地震波は地下構造の影響を受けながら地表へ伝わり、表層地盤によって振幅が増幅されると説明しています。柔らかい地盤では、硬い地盤に比べて地震波が大きくなる場合があります。
たとえば、山地の硬い岩盤の上と、川沿いの厚い堆積物がたまった低地では、同じ地震波が到達しても地表の揺れ方が異なることがあります。沖積低地や埋立地などでは、地盤条件によって揺れが増幅されやすい場所があります。
ただし、「低地なら必ず強く揺れる」「山地なら必ず安全」という意味ではありません。実際の揺れは地盤の厚さや性質、地震波の周期、地下の三次元構造などにも左右されます。
同じ市や町の中でも揺れに差が出ることがある
地域差は都道府県や市町村のような大きな単位だけで起こるわけではありません。数百メートルから数キロ程度の範囲でも、地盤条件が変われば揺れ方に違いが出ることがあります。
たとえば、昔の河川跡、谷を埋めた造成地、台地、扇状地、埋立地などでは、地下の土の種類や厚さが異なります。その結果、地震波の増幅特性にも差が生まれます。
J-SHISの地震ハザード情報が細かなメッシュ単位で地盤増幅率などを示しているのは、このように地震の揺れやすさが狭い範囲でも変わりうるためです。
震源からの距離だけでは地域差を説明できない
一般には震源に近いほど揺れが強くなりやすいものの、地震動は単純に同心円状に弱まるわけではありません。
断層のどの部分がどのように破壊したかによって、地震波が特定の方向に強く放射されることがあります。また、地下に厚い堆積層が広がる盆地や平野では、地震波が閉じ込められたり増幅されたりして、震源から離れていても長く強く揺れることがあります。
そのため、震源からほぼ同じ距離にある2地点でも、震度が異なることがあります。地震速報や震度分布図で、同じ距離帯の中に強く揺れた地域と弱く揺れた地域が入り交じることがあるのは、このためです。
観測された「地域差」には観測点の条件も影響する
私たちが目にする震度分布は、地震そのものと地盤条件だけでなく、どこに観測点が置かれているかにも影響されます。
日本地震工学会論文集に掲載された研究では、震度観測点の密度や表層地盤増幅度を考慮すると、同程度の規模の地震でも観測最大震度に地域差が生じることが示されています。観測網が細かくなるほど、震源に近い場所や局所的に揺れやすい場所の強い揺れを捉えやすくなります。
これは「昔より地震が強くなった」という意味ではありません。観測体制が充実したことで、以前なら把握しにくかった局所的な強い揺れまで記録できるようになった側面もあります。
地震が少ない地域なら安全なのか
過去に地震が少なかったからといって、その地域で今後大きな地震が起こらないとは限りません。
大きな地震は発生間隔が非常に長い場合があります。人の一生より長い周期で繰り返す地震では、数十年間地震が少なくても、それだけで安全とは判断できません。
また、現在知られている活断層だけが内陸地震の原因ではありません。地表に明瞭な痕跡を残していない断層や、まだ十分に把握されていない地下構造で地震が起こる可能性もあります。
そのため、地震対策では「この地域は地震が多いか少ないか」だけを見るのではなく、地震ハザードマップ、活断層情報、想定震度、地盤条件などを合わせて確認することが重要です。
地域ごとの地震リスクはどう調べるのか
日本では、国や自治体が地震に関するさまざまな情報を公開しています。代表的なものとして、全国地震動予測地図やJ-SHIS、自治体の地震ハザードマップなどがあります。
これらを見ると、将来強い揺れに見舞われる確率、想定される地震、表層地盤の増幅率などを地域ごとに確認できます。
ただし、確率が低い地域を「地震が起こらない地域」と読み替えてはいけません。地震ハザードは長期間の確率評価であり、特定の日や年に地震が起こるかどうかを予知するものではありません。
まとめ
地震と地域差が関係しているのは、地球内部の条件が場所によって違うからです。
プレート境界や活断層の分布が違えば、地震そのものの発生しやすさに差が生まれます。さらに、震源までの距離、震源の深さ、地震波の伝わり方、表層地盤の硬さなどが違えば、同じ地震でも地域ごとの揺れの強さに差が生まれます。
したがって、地震の地域差は「地震が起こる場所の差」と「揺れ方の差」が重なってできていると考えるのが適切です。地域ごとのリスクを知るときは、過去の地震回数だけでなく、プレートや断層、地盤、地震ハザード情報を総合して見る必要があります。
参考資料
- 気象庁「地震発生のしくみ」
- J-SHIS「表層地盤増幅率と揺れやすさの関係について教えてください」
- U.S. Geological Survey「Where do earthquakes occur?」
- 杉山充樹ほか「震度観測体制の年代差・地域差の定量評価と震度情報の解釈」

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