なぜ火山の地下でマグマは生まれ、変化するのか?

火山のマグマは、地下の岩石が条件の変化によって部分的に融けて生まれ、その融けた物質が上昇・貯留しながら、結晶や火山ガスを含む複雑な状態へ変化することで成り立っています。 マグマは単なる「地下の真っ赤な液体」ではありません。主にケイ酸塩の融けた部分に、鉱物の結晶や水蒸気・二酸化炭素などの揮発性成分が含まれたものです。

マグマができる仕組みは場所によって異なります。日本のような沈み込み帯では、沈み込む海洋プレートから放出された水が上部マントルの岩石を融けやすくし、部分溶融を起こすことが重要です。海嶺では上昇するマントルの圧力低下、ホットスポットでは高温のマントル物質の上昇がマグマ生成に関わります。

目次

そもそもマグマとは何か

マグマとは、地表より下にある高温の岩石物質のうち、少なくとも一部が融けた状態のものです。米国地質調査所(USGS)は、マグマを融けた岩石、結晶、溶け込んだガスからなるものとして説明しています。

つまり、マグマの中身は一様な液体ではありません。主に次のような成分から成り立っています。

  • ケイ酸塩メルト:岩石が融けてできた液体部分。
  • 鉱物の結晶:冷却や化学変化によってマグマ中にできる固体。
  • 揮発性成分:水、二酸化炭素、硫黄成分など、圧力が下がるとガスになりやすい成分。

マグマが地表に出たものは一般に「溶岩」と呼ばれます。地下にある間はマグマ、噴火して地表に出れば溶岩という違いです。

地下の岩石はなぜ融けてマグマになるのか

地球内部は高温ですが、地下の岩石がどこでも全部融けているわけではありません。大部分のマントルや地殻は固体です。マグマは、岩石が融け始める条件が局所的にそろった場所で生まれます。

代表的な仕組みは大きく三つあります。

  1. 水などの流体が加わり、岩石の融点が下がる。
  2. 高温のマントルが上昇し、圧力が下がって融ける。
  3. 高温のマグマが地殻を加熱し、周囲の岩石の一部を融かす。

これらの仕組みでは、岩石全体が完全な液体になるとは限りません。融けやすい成分から先に融ける「部分溶融」が一般的です。このため、生まれたマグマの化学組成は、もとの岩石とまったく同じではありません。

日本の火山では水がマグマ生成を助ける

日本列島の多くの火山は、海洋プレートが別のプレートの下へ沈み込む「沈み込み帯」にあります。

気象庁は、沈み込んだ海のプレートから放出される水の働きによって上部マントルの一部が融け、マグマが形成されると説明しています。海洋プレートは海水と反応するなどして水を含んでおり、深く沈み込んで温度と圧力が変化すると、その水が鉱物から放出されます。

この水が上盤側の高温のマントルへ加わると、岩石の融点が下がります。その結果、周囲の温度が大きく上がらなくても岩石の一部が融け始め、マグマができます。

海洋研究開発機構(JAMSTEC)も、沈み込み帯ではスラブ由来の流体が周囲のマントルへ供給されることで融点が下がり、部分溶融が起きると説明しています。

海嶺では圧力が下がることでマグマができる

海底のプレートが左右へ広がる海嶺では、深いところから高温のマントルが上昇してきます。

上昇するにつれて周囲の圧力は低くなります。岩石は温度だけでなく圧力によっても融ける条件が変わるため、高温のまま圧力が下がると、マントルの一部が融け始めます。これを減圧融解と呼びます。

JAMSTECは、拡大海嶺では深部から上昇した高温のマントル物質が圧力低下に伴って部分的に融解し、生成したマグマが周囲の固体より軽いため上昇・集積すると説明しています。

海嶺で生まれるマグマは、新しい海洋地殻をつくる重要な材料にもなります。

ホットスポットでは高温のマントル上昇が関係する

プレート境界から離れた場所でも火山ができることがあります。代表例がハワイのようなホットスポットです。

気象庁は、プレート内部を貫くようなマントルの湧き上がりがホットスポットをつくると説明しています。高温のマントル物質が上昇すると、やはり圧力の低下などによって部分溶融が進み、マグマができます。

したがって、火山のマグマは一つの方法だけでつくられるのではありません。プレートが沈み込む場所、広がる場所、プレート内部の高温域など、地球内部の環境によってマグマ生成の仕組みが変わります。

できたマグマはなぜ上昇するのか

地下で生まれたマグマは、周囲の固体の岩石より密度が小さい場合が多く、浮力によって上へ移動しやすくなります。また、マグマやガスの圧力、周囲の岩盤に生じた割れ目なども上昇を助けます。

ただし、マグマが一直線に地表まで上がるとは限りません。岩石のすき間や割れ目を通り、途中で止まったり、横方向へ移動したり、別のマグマと合流したりします。

USGSは、マグマが浮力などによって上昇し、地下の貯留域に集まり、さらに弱い部分や割れ目を通って地表へ達することがあると説明しています。

「マグマだまり」は巨大な空洞に液体が満ちた場所なのか

「マグマだまり」という言葉から、地下に巨大な洞窟があり、その中に液体のマグマがたまっている姿を想像しがちです。しかし、実際の地下はもっと複雑です。

マグマの貯留域には、液体のメルトだけでなく、多数の結晶や周囲の岩石が含まれ、一部だけが融けた状態になっていることがあります。近年は、このような結晶を多く含む領域を含めて、マグマが複数の深さに分散して蓄えられる「マグマ供給系」として理解することが一般的です。

実際、火山の地下では浅い場所だけでなく、地殻深部やマントル付近にもマグマが一時的に蓄えられる場合があります。マグマはその間を移動しながら性質を変えます。

マグマは地下で性質を変え続ける

できたばかりのマグマの組成が、そのまま噴火時まで保たれるとは限りません。地下で冷えたり、結晶ができたり、別のマグマと混ざったりすることで変化します。

結晶化

マグマが冷えると、融けた成分の一部から鉱物の結晶ができます。どの鉱物が先に結晶になるかによって、残った液体部分の化学組成が変化します。

マグマ混合

異なる温度や組成を持つマグマが同じ貯留域へ入り、混ざることがあります。これによって温度、粘り気、ガスの状態などが変化し、噴火のきっかけになる場合もあります。

周囲の岩石との反応

高温のマグマが地殻内を移動すると、周囲の岩石を取り込んだり、一部を融かしたりすることがあります。この作用もマグマの化学組成を変える要因です。

このように、火山のマグマは「生成された一種類の液体」ではなく、地下を移動する間に進化する物質なのです。

マグマに含まれるガスはどこから来るのか

マグマには水や二酸化炭素、硫黄成分などの揮発性成分が含まれています。地下深くでは圧力が高いため、これらの成分の多くはマグマの液体部分に溶け込んでいます。

マグマが上昇すると周囲の圧力が低下します。すると溶けていた揮発性成分が気泡として分離し始めます。炭酸飲料のふたを開けると二酸化炭素の泡が出る現象に似ています。

気象庁は、火口が開いてマグマの圧力が下がると発泡が進み、体積が増加して噴出につながる仕組みを説明しています。つまり、マグマに含まれるガスは噴火の激しさを左右する重要な要素です。

マグマの粘り気が火山ごとに違うのはなぜか

マグマの粘り気は、主に化学組成、温度、結晶量、揮発性成分の量などによって変わります。

一般に、二酸化ケイ素を多く含むマグマほど構造がつながりやすく、粘り気が大きくなる傾向があります。一方、玄武岩質の高温のマグマは比較的流れやすいことが多く、流紋岩質のマグマは粘り気が大きくなる傾向があります。

粘り気が小さいとガスが抜けやすく、溶岩流として穏やかに流れ出すことがあります。粘り気が大きいとガスが逃げにくく、圧力が高まって爆発的な噴火につながる場合があります。ただし、噴火様式は粘り気だけでなく、ガス量や上昇速度など複数の条件で決まります。

マグマと溶岩は同じものなのか

物質としては連続していますが、呼び方が違います。

  • マグマ:地下にある融けた岩石物質。
  • 溶岩:マグマが地表へ噴出したもの、またはそれが固まってできた岩石。

地表へ出ると圧力が急に下がるため、マグマに溶けていたガスの多くが抜けます。そのため、地下のマグマと地表の溶岩は、連続した物質であってもガスの状態などが大きく異なります。

火山のマグマの仕組みをひとことで整理すると

マグマは、地下の固体岩石が水の供給・圧力低下・加熱などによって部分的に融けて生まれ、その後に上昇・貯留・結晶化・混合・脱ガスを繰り返しながら火山の地下で変化する物質です。

日本の火山では、沈み込む海洋プレートから放出された水がマントルの融点を下げる作用が特に重要です。海嶺では減圧融解、ホットスポットでは高温のマントル上昇が大きな役割を果たします。

そして、できたマグマは周囲より軽いため上昇し、地下のさまざまな深さに蓄えられます。その途中で結晶をつくり、別のマグマや周囲の岩石と反応し、ガスの状態を変えます。こうした地下の一連の仕組みが、最終的な溶岩の性質や噴火のしかたにつながっています。

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