なぜ火山のマグマは場所や条件によって違うのか?

火山のマグマに場所や条件による違いがあるのは、マグマが生まれる場所で「どの岩石が、どの温度・圧力・水分条件で、どの程度溶けるか」が違い、さらに地下を上昇・滞留する間に結晶分化、周囲の岩石との反応、別のマグマとの混合などが起こるためです。その結果、同じ「マグマ」でも、化学組成、温度、粘り気、含まれる結晶やガスの量が異なり、玄武岩質・安山岩質・デイサイト質・流紋岩質などさまざまなタイプになります。

つまり、火山ごとに最初から決まった一種類のマグマがあるわけではありません。プレート境界などの地質環境による違いに加え、一つの火山の中でも、マグマが地下でたどった履歴によって性質が変わります。

目次

まず、マグマの「違い」とは何が違うのか

マグマの違いを比べるとき、火山学では主に化学組成、温度、粘性、結晶量、揮発性成分の量などに注目します。

化学組成では、とくに二酸化ケイ素(SiO2)の割合が重要な指標です。米国地質調査所(USGS)は、代表的な火山岩・マグマを、SiO2量などに基づいて玄武岩質、安山岩質、デイサイト質、流紋岩質に区分しています。

  • 玄武岩質:比較的SiO2が少なく、高温で粘性が低い傾向があります。
  • 安山岩質:玄武岩質とデイサイト質の中間的な組成を持ちます。
  • デイサイト質:SiO2が比較的多く、粘性も高くなりやすいタイプです。
  • 流紋岩質:SiO2が多く、一般に低温で粘性が非常に高くなりやすいタイプです。

ただし、これは便利な分類であって、自然界のマグマがきれいに4種類へ分かれているわけではありません。実際には連続的な組成変化があり、同じ火山でも異なる組成のマグマが噴出することがあります。

場所による違いの第一の理由は「マグマができる仕組み」が違うこと

マグマは、地球内部の岩石がすべて完全に溶けてできるとは限りません。多くの場合、岩石の一部だけが溶ける「部分溶融」によって生まれます。

どの鉱物が先に溶けるかは、岩石の種類、温度、圧力、水などの揮発性成分によって異なります。そのため、同じようなマントルの岩石が出発点でも、溶ける割合や条件が違えば、できる液体マグマの組成も変わります。

この違いが、場所ごとのマグマの性質を決める最初の分岐点です。

中央海嶺では玄武岩質マグマが多いのはなぜか

海底の中央海嶺では、プレートが左右へ離れていきます。その下ではマントル物質が上昇し、周囲の圧力が低下します。

高温のマントル岩石は、温度が大きく上がらなくても、圧力が下がることで部分的に溶けることがあります。これを減圧融解と呼びます。

USGSは、海洋底の広い範囲をつくる玄武岩質マグマが、主として上部マントルの部分溶融によって生じると説明しています。中央海嶺では、このような玄武岩質のマグマが大量につくられ、新しい海洋地殻を形成します。

沈み込み帯では水がマグマ形成に重要なのはなぜか

日本列島のような沈み込み帯では、海洋プレートが別のプレートの下へ沈み込みます。沈み込む海洋プレートとその上の堆積物には水を含む鉱物があり、深く沈むにつれて高温・高圧条件で水を含む流体が放出されます。

その水が上側のマントルへ移動すると、マントル岩石が溶け始める温度を下げ、部分溶融を促します。USGSのカスケード火山帯の解説でも、沈み込むプレートから放出された水が上部マントルの融点を下げ、火山弧のマグマ形成を促すことが説明されています。

このため、沈み込み帯で生まれるマグマは、海嶺で生まれるマグマとは生成条件が異なります。さらに、その後の地下での変化も加わるため、安山岩質やデイサイト質など多様な組成が現れやすくなります。

「どのくらい溶けたか」でも組成は変わる

部分溶融では、元の岩石の全部が同じ割合で液体になるわけではありません。融点の低い成分が比較的早く液体側へ入り、融点の高い成分は固体側に残りやすくなります。

そのため、溶ける割合が小さい場合と大きい場合では、できたマグマに含まれる元素の割合が異なります。同じ地域のマントルを起源としていても、温度、圧力、水の量などが異なれば部分溶融の程度が変わり、それだけでもマグマの組成差が生まれます。

「場所が違うから組成が違う」というより、場所ごとに温度・圧力・水・元の岩石などの条件が異なるため、結果としてマグマが違うと考えると理解しやすくなります。

できたマグマは上昇中にも変化する

マグマは生まれた瞬間の組成をそのまま保って地表まで来るとは限りません。地下を上昇して一時的に貯留される間に冷却されると、特定の鉱物が結晶として先にでき始めます。

産業技術総合研究所・地質調査総合センターは、マグマの温度が下がるにつれて、安定する鉱物の種類が変化することを解説しています。高温側ではかんらん石や輝石などが晶出し、さらに冷えると角閃石や黒雲母などが安定する条件へ移ります。

このように、結晶が液体マグマから分離していくと、残った液体の化学組成は少しずつ変わります。これが「結晶分化」です。

結晶分化で玄武岩質からよりSiO2の多いマグマへ変わることがある

玄武岩質マグマが地下で冷えると、かんらん石や輝石、斜長石などの結晶が成長します。これらの結晶が液体部分から分離・沈降するなどすると、残った液体は元のマグマとは異なる組成になります。

結晶分化が進むことで、残液は一般によりSiO2に富む方向へ変化し、安山岩質、デイサイト質、流紋岩質に近い組成へ進化する場合があります。

ただし、すべての流紋岩質マグマが単純な玄武岩質マグマの結晶分化だけでできるわけではありません。地殻の部分溶融や混成など、別の形成過程もあります。

周囲の地殻を取り込むとマグマはさらに変わる

マントルから上昇してきたマグマは、地殻の中を通過します。その途中で周囲の岩石を熱して一部を溶かしたり、その成分を取り込んだりすることがあります。

大陸地殻のようにSiO2に富む岩石が厚く分布する場所では、こうした地殻との相互作用がマグマ組成を変える一因になります。

そのため、元は似たマグマでも、薄い海洋地殻を通る場合と、厚い大陸地殻を通る場合では、地表に達するまでに受ける影響が異なることがあります。

異なるマグマ同士が混ざることもある

火山の地下では、異なる時期に上昇したマグマが同じ貯留域へ入ることがあります。高温の玄武岩質マグマが、すでに地下にたまっていた低温でSiO2に富むマグマへ注入されるような場合です。

このとき、両者が完全または部分的に混ざれば、中間的な組成のマグマが生まれます。また、完全には均一化せず、異なる組成の部分が残ることもあります。

地質調査総合センターの薩摩硫黄島の研究解説では、玄武岩質と流紋岩質のマグマの混合によって形成されたと考えられる安山岩組成のマフィックインクルージョンが紹介されています。これは、火山地下でマグマ混合が実際に起こっていることを示す例です。

同じ火山でもマグマが違うのはなぜか

一つの火山でも、地下のマグマ供給は長い時間の中で変化します。新しいマグマが深部から供給される時期もあれば、地下に長く滞留して冷却・結晶分化が進む時期もあります。

そのため、同じ火山がいつも同じ組成のマグマだけを噴出するとは限りません。気象庁がまとめる十和田火山の活動史でも、玄武岩質安山岩から安山岩、デイサイト、流紋岩まで、時期によって異なる組成の噴出物が確認されています。

つまり、火山の「場所」だけでなく、噴火する「時期」やその直前までの地下のマグマ供給履歴も、マグマの違いを生みます。

温度が違うとマグマの粘り気も変わる

マグマの性質の違いは化学組成だけではありません。温度も重要です。一般に、高温ほど流れやすく、温度が下がるほど粘性は高くなります。

さらに、SiO2に富むマグマは液体内部の構造がつながりやすいため、同じ温度条件なら玄武岩質より流紋岩質のほうが粘性が高くなります。

結晶が増えることでもマグマ全体は流れにくくなります。そのため、実際の粘性は「玄武岩か流紋岩か」だけでは決まらず、温度、結晶量、気泡量などを合わせて考える必要があります。

水や火山ガスの量もマグマの違いをつくる

マグマには水、二酸化炭素、硫黄などの揮発性成分が含まれています。その量は生成場所やマグマの履歴によって異なります。

地下深部では高い圧力によって水などがマグマに溶けていますが、上昇して圧力が下がると気泡として分離します。この発泡の程度は噴火の仕方にも大きく影響します。

したがって、化学組成が似たマグマでも、含まれる水やガスの量、上昇速度、脱ガスのしやすさが違えば、噴火時の振る舞いは変わります。

マグマの種類と噴火様式は一対一ではない

玄武岩質なら必ず穏やか、流紋岩質なら必ず爆発的、と覚えるのは単純化しすぎです。確かに、流紋岩質など高粘性のマグマはガスが抜けにくく、爆発的噴火につながりやすい傾向があります。

しかし、噴火様式はマグマ組成だけでなく、ガス量、上昇速度、火道の状態、水との接触などにも左右されます。玄武岩質マグマでも激しい爆発を起こす場合があります。

マグマの違いは噴火の性質を考える重要な材料ですが、それだけで噴火様式が完全に決まるわけではありません。

場所と条件による違いを整理すると

  • 生成場所の違い:海嶺、沈み込み帯、ホットスポットなどでマグマが生じる条件が異なります。
  • 元の岩石の違い:マントルや地殻など、溶ける物質が異なれば組成も変わります。
  • 部分溶融の程度:どの程度溶けたかによって液体側へ入る元素の割合が変わります。
  • 水など揮発性成分の違い:融解条件や噴火時の発泡に影響します。
  • 結晶分化:冷却中に結晶が分離すると残ったマグマの組成が変わります。
  • 地殻との反応:上昇途中で周囲の岩石を取り込むことがあります。
  • マグマ混合:異なる組成のマグマが地下で混ざる場合があります。

まとめ:マグマの違いは「生まれ方」と「地下での履歴」の違い

火山のマグマに場所や条件による違いがある最大の理由は、マグマができる環境と、その後に地下で経験する変化が一様ではないからです。

プレートが離れる海嶺では減圧による部分溶融が重要で、沈み込み帯では沈み込むプレートから供給される水が上部マントルの融解を促します。さらに、できたマグマは地下で冷却されて結晶分化したり、地殻の成分を取り込んだり、別のマグマと混ざったりします。

「生成場所が違う→溶ける岩石・温度・圧力・水が違う→できるマグマが違う→地下で結晶分化や混合が進む→同じ火山でも異なるマグマが生じる」という流れで考えると、マグマの多様性を理解しやすくなります。

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