結論から言うと、土と微生物が深く関係しているのは、土が微生物に水・空気・有機物・鉱物などを与える生活場所であり、逆に微生物が有機物を分解し、養分を循環させ、植物の根や土の構造に影響を与えているからです。つまり、土は微生物の「すみか」であるだけでなく、微生物の働きによって性質が変わる生きた環境でもあります。
土を手に取っても、ほとんどの微生物は肉眼では見えません。しかし、細菌、菌類、放線菌など非常に多くの微生物が土の粒の表面、孔隙の中、植物の根の周囲などに存在しています。こうした微生物は、落ち葉や枯れた根を分解し、窒素やリンなどの循環に関わり、植物と共生したり、ときには病気を起こしたりします。
なぜ土には微生物が多いのか
微生物が生きるには、水、エネルギー源、栄養、適切な温度や酸素などが必要です。土の中には、それらを満たす小さな環境が無数にあります。
土は、砂・シルト・粘土などの鉱物粒子だけでできているわけではありません。そこには水、有機物、空気、植物の根、動物の遺体や排せつ物なども存在します。農林水産省は、土壌が岩石の風化した粒子に、植物や微生物などの遺体が分解した有機物が加わって形成されると説明しています。
土の粒子の間には大小さまざまなすき間があります。水が多い場所、空気が入りやすい場所、有機物が多い場所など、数ミリ以下の範囲でも条件が異なります。そのため、好む環境の異なるさまざまな微生物が暮らすことができます。
有機物が微生物のエネルギー源になる
多くの土壌微生物にとって、落ち葉、枯れた根、作物残さ、動物由来の有機物などは重要なエネルギー源です。微生物はこれらを分解しながら増殖します。
農研機構の研究報告では、土壌有機物は土へ還元された有機物が土壌微生物によって分解されたものであり、土壌有機物の量は土への有機物供給量と微生物による分解量のバランスによって決まると整理されています。
つまり、有機物が土に入ると、それを利用する微生物が働き、分解の進み方によって土の炭素や養分の状態も変化します。
微生物は有機物を分解して養分を循環させる
土と微生物の関係で最も重要な働きの一つが、有機物の分解と養分循環です。
植物や動物の遺体には炭素、窒素、リン、硫黄などが含まれています。しかし、それらの多くはそのままでは植物の根が利用しにくい形です。微生物が有機物を分解すると、その一部は二酸化炭素として大気へ戻り、一部は微生物の体に取り込まれ、さらに一部は植物が利用しやすい無機態の養分へ変化します。
窒素の循環には微生物が欠かせない
窒素は植物の葉やタンパク質をつくる重要な元素です。土の中では、微生物が有機態窒素をアンモニウム態窒素などへ変え、別の微生物がそれを硝酸態窒素へ変化させます。また、条件によっては硝酸を窒素ガスなどへ戻す微生物もいます。
このため、土に含まれる窒素の「総量」と植物が利用できる窒素量は同じではありません。温度、水分、酸素、有機物量などによって微生物活動が変われば、植物へ供給される窒素量も変わります。
リンの利用にも根圏微生物が関係する
リンも植物に必要な養分ですが、土の中では鉱物や有機物と結びつき、植物が使いにくい形になることがあります。農研機構の研究では、植物が利用しにくいフィチン酸リンの利用に、根の周囲にいる微生物の可溶化・分解機能が関係することが示されています。
このように、微生物は単に有機物を「腐らせる」存在ではなく、元素を別の化学形へ変えながら、土の中の物質循環を動かしています。
植物の根の周りでは微生物とのやり取りが活発になる
植物の根のすぐ周囲は根圏と呼ばれ、土の中でも特に微生物活動が活発な場所です。
植物は根から糖、有機酸、アミノ酸などさまざまな物質を放出します。これらは微生物のエネルギー源となり、根の周囲に特定の微生物が集まる要因になります。一方、微生物の中には、植物が利用しにくい養分を利用しやすい形にしたり、根と共生して水やリンなどの吸収を助けたりするものがいます。
USDA NRCSは、根圏を土壌生態系の中でも特に活動が盛んな場所と説明し、植物が根から炭水化物を放出して微生物を養い、微生物が養分や水の獲得に関わる相互作用を紹介しています。
菌根菌や根粒菌のような共生関係もある
代表的な例が菌根菌です。菌根菌は植物の根と共生し、菌糸を土の中へ広げます。植物から糖などを受け取る代わりに、リンや水などの獲得を助けることがあります。
また、マメ科植物と共生する根粒菌は、大気中の窒素を植物が利用できる形へ変える窒素固定を行います。このような関係を見ると、植物・土・微生物は別々の存在ではなく、養分をやり取りする一つの系として働いていることがわかります。
微生物は土の構造にも影響する
微生物の影響は化学反応だけではありません。土の物理的な構造にも関係します。
菌類の菌糸は土の粒子の間を伸び、粒子どうしをまとめる働きに関わります。また、細菌や菌類がつくる粘着性の物質、有機物の分解産物、植物の根などが組み合わさることで、土の粒子が集まった団粒が形成・維持されます。
団粒が発達すると、大小の孔隙が生まれ、水が染み込みやすくなったり、空気が入りやすくなったりします。その結果、今度は微生物や植物の根が活動しやすい環境になります。
つまり、「微生物が土の構造に影響する」一方で、「土の構造が微生物の生息環境を決める」という双方向の関係があります。
土の水分・酸素・pHで微生物の働きは変わる
土に微生物がいるからといって、いつでも同じように働くわけではありません。微生物活動は土の環境条件に強く左右されます。
- 水分が少なすぎると、微生物の活動や物質の移動が抑えられる
- 水が多すぎると土中の酸素が減り、嫌気的な微生物反応が起こりやすくなる
- 温度が低いと、多くの分解反応が遅くなる
- pHによって、活動しやすい微生物の種類が変わる
- 有機物量が少なければ、多くの分解者にとってエネルギー源が不足する
USDA NRCSも、土壌生物の活動は水分、温度、pH、酸素などの物理・化学条件の影響を受けるとしています。このため、同じ作物残さを土へ入れても、湿った暖かい土と、乾燥した冷たい土では分解速度が異なります。
微生物はすべて植物に良いわけではない
「土壌微生物」と聞くと、有用菌だけを想像しがちですが、実際にはさまざまな役割の微生物がいます。
有機物を分解する微生物、植物と共生する微生物、他の微生物を抑える微生物がいる一方で、植物の根や茎に感染して病気を起こす病原菌もいます。さらに、ある微生物が有益か有害かは、植物の種類や環境条件によって変わることもあります。
USDAのSoil Biology Primerでも、土壌生物は分解と養分循環の中心的な存在である一方、作物の病害虫との関係にも関わると説明されています。重要なのは、「微生物が多ければ必ず良い」と単純化するのではなく、多様な微生物群集がどのように働いているかを見ることです。
土と微生物は互いに作り合う関係にある
ここまでを整理すると、土と微生物の関係は一方向ではありません。
- 土は微生物に水、空気、鉱物、有機物などの生息環境を与える
- 微生物は落ち葉や根などの有機物を分解する
- 窒素やリンなどの養分を別の形へ変え、循環させる
- 植物の根と相互作用し、養分や水の利用に関わる
- 菌糸や分解産物などを通じて土の団粒形成にも関係する
- 土の水分、酸素、温度、pHが微生物の活動を左右する
つまり、土は微生物を育て、微生物は土の性質と働きを変えています。土を単なる「植物を支える砂や泥」と考えるのではなく、微生物を含む多くの生物が活動する生態系として見ると、土と微生物がなぜ切り離せないのかがわかります。

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