なぜ土の色は黒・赤・黄・灰色などに分かれるのか?

結論から言うと、土と土の色が関係しているのは、土に含まれる腐植、鉄やマンガンなどの鉱物、母材の種類、水分や酸素の状態、風化や溶脱の進み方が、目に見える色として表れるからです。そのため土の色は、単なる見た目ではなく、その土がどのような環境ででき、どのような状態にあるかを読み取る手がかりになります。

畑の表面が黒っぽかったり、山の土が赤褐色だったり、水田の下層が灰色がかっていたりするのは偶然ではありません。土の色は、土を構成する物質そのものの色と、それらが酸化・還元、分解、移動、集積といった変化を受けた結果の両方で決まります。

目次

土の色は何によって決まるのか

土は、岩石が風化してできた鉱物粒子、有機物、水、空気、生物などが混ざったものです。これらのうち、とくに色への影響が大きいのが腐植と鉄化合物です。

北海道大学の土壌形成に関する資料では、土色の主な要因として腐植と鉄が挙げられ、腐植が多いほど黒みが増し、鉄は化合物の形によって赤・橙・黄・褐・青灰色などを示すと整理されています。

森林総合研究所の森林土壌調査法でも、腐植に富むA層は暗色、鉄化合物の影響を受けるB層は赤褐色から黄褐色、還元状態になるG層は灰白色を示すと説明されています。つまり土の色は、含まれている物質と、その物質がどのような化学状態にあるかを反映しています。

黒っぽい土はなぜ黒く見えるのか

表面の土が黒色や暗褐色になる大きな理由は、腐植が集積していることです。

落ち葉、枯れた根、動物の遺体などの有機物は、土の中の微生物によって分解されます。その過程でできる複雑な有機物の集まりが腐植です。腐植は暗い色をしているため、土の鉱物粒子の表面を覆ったり、細かな粒子と混ざったりすると、土全体が黒色から暗褐色に見えます。

森林総合研究所は、堆積有機物層の下にあるA層について、動植物遺体の分解によってできた腐植が集まり、暗褐色を呈する最表層の層位と説明しています。

ただし、黒い土なら必ず腐植だけが原因とは限りません。マンガン化合物や硫化鉄など、ほかの物質が暗い色をつくる場合もあります。また、同じ量の有機物を含んでいても、鉱物の種類や水分によって見え方は変わります。そのため、色だけで有機物量を正確に判断することはできません。

赤い土や黄色い土はなぜその色になるのか

赤色、赤褐色、黄褐色の土では、鉄の状態が大きく関係しています。

岩石や鉱物の風化によって鉄が放出され、酸素のある環境で酸化すると、さまざまな鉄酸化物や水酸化鉄ができます。こうした鉄化合物には赤色、黄褐色、褐色などを示すものがあり、細かな粒子として土全体に広がると土の色を強く左右します。

北海道大学の資料では、一次鉱物から遊離した鉄が鉄酸化物粒子となり、酸化や水和の状態に応じて褐色、赤褐色、赤色を示す過程が説明されています。森林総合研究所でも、B層では母材の風化によって生成した鉄化合物によって赤褐色から褐色、黄褐色を示すとされています。

赤色と黄色の違いにも鉄が関係する

鉄を含む土がすべて同じ赤色になるわけではありません。鉄鉱物の種類や結晶の状態、水和の程度などによって、赤みが強くなったり黄色みが強くなったりします。

農研機構の日本土壌インベントリーでは、西南日本や南西諸島などに分布する赤黄色土について、風化が進み、有機物の蓄積が比較的少ない赤色または黄色の土壌として整理しています。長期間の風化と鉄化合物の存在が、こうした特徴的な色につながります。

そのため、赤い土を見たときに「赤い成分が混ぜられている」と考えるより、長い風化の中で鉄がどのような形になったかが色として見えていると考えるほうが実態に近いといえます。

灰色や青灰色の土はなぜできるのか

水がたまりやすい土では、灰白色や青灰色が現れることがあります。ここでも重要なのが鉄ですが、今度は酸素が少ない環境で起こる還元が関係します。

土のすき間が水で満たされると、空気中の酸素が入りにくくなります。微生物が残っている酸素を消費すると、土の中は酸素の乏しい還元的な状態になります。すると、酸化状態で赤や黄褐色の原因となっていた鉄が還元され、溶けやすくなったり移動したりします。

森林総合研究所では、地下水が停滞して還元状態になり、鉄やマンガンが還元されて灰白色を示す層をG層として記載しています。また、E層では有機酸や表層還元などの作用によって鉄が失われ、灰白色になると説明しています。

北海道大学の資料でも、滞水した嫌気的条件で鉄が還元されるグライ化によって、土壌が青灰色から緑灰色を示すことがあるとされています。

赤い斑点と灰色が一緒にあることもある

土が一年中水に浸かっているのではなく、湿る時期と乾く時期を繰り返す場所では、灰色の土の中に赤褐色や橙色の斑点が見えることがあります。

これは、水が多い時期には鉄が還元されて移動し、水が引いて酸素が戻ると再び酸化して沈殿するためです。森林総合研究所でも、季節的な停滞水によって酸化と還元が繰り返される層を「偽似グライ化」として区別しています。

このような模様は、過去や現在の水分状態を考える重要な手がかりになります。土の色を見ることで、その場所が排水のよい環境なのか、一定期間水がたまりやすい環境なのかを推測できる場合があります。

白っぽい土はなぜできるのか

白色や灰白色の土にもいくつかの原因があります。

一つは、鉄や有機物など色の濃い成分が上の層から洗い流される溶脱です。森林総合研究所が説明するE層は、鉄が失われた結果として灰白色になります。

また、もともとの母材に明るい色の鉱物が多ければ、土も明るく見えます。石英に富む砂質土や火山噴出物など、母材の色が強く残っている若い土では、腐植や鉄化合物の影響が小さいため、母材本来の色が目立つことがあります。

乾燥地域では炭酸カルシウムや石膏、塩類の集積が白っぽさにつながる場合もあります。このように、同じ「白い土」でも原因は一つではありません。

土の色は母材によっても変わる

土は岩石、火山灰、河川堆積物などの母材からつくられます。土壌形成がまだ十分に進んでいない場合や、母材の特徴が強い場合は、その色が土に反映されます。

たとえば、鉄を多く含む母材からできた土では赤みや褐色が目立ちやすく、石英など明るい鉱物の多い母材では淡色になりやすい傾向があります。ただし、時間がたつと風化、腐植の蓄積、鉄の移動、地下水の影響などが加わり、母材の色そのものとは違う土色へ変化していきます。

そのため土色は、母材だけではなく、母材に土壌生成作用がどれだけ加わったかを示す結果でもあります。

同じ場所でも深さによって色が違うのはなぜか

土を深く掘ると、上から下まで同じ色ではなく、層ごとに色が変わることがあります。これは土の中で有機物や鉄、水の影響が深さごとに異なるためです。

典型的な森林土壌では、表層のA層は腐植を多く含むため暗色になりやすく、その下のB層は腐植が少なく鉄化合物の色が目立つため褐色や赤褐色になりやすくなります。さらに地下水の影響を強く受ける深さでは、灰白色のG層が現れる場合があります。

森林総合研究所は、土色や構造など肉眼で認識できる特徴を使って土壌断面を層位に分けています。つまり専門的な土壌調査でも、色は土の層を見分ける基本的な情報の一つです。

場所によって土の色が違うのはなぜか

同じ地域でも、高台・低地・谷底・斜面などでは、水分や酸素の条件が異なるため、土の色も変わります。

排水のよい高台では酸素が入りやすく、鉄が酸化された状態を保ちやすいため、赤・黄・褐色が現れやすくなります。一方、地下水位の高い低地や谷底では土のすき間が水で満たされやすく、還元状態になって灰色や青灰色が現れることがあります。

さらに降雨量が多い地域では、土壌中を水が移動する機会が増え、鉄や有機物などの溶脱が進むことがあります。乾燥地域では逆に炭酸塩・石膏・塩類などが集積し、淡色や白色の特徴につながる場合があります。

このように、土色の地域差は「土の材料が違う」だけでなく、地形・地下水・気候によって土の中で起こる化学反応や物質移動が違うことでも生まれます。

植生や土地利用によって土の色は変わるのか

森林、草地、農地では、土へ入る有機物の量や入り方が異なります。森林では落ち葉が地表に積もり、草地では根から土中へ多くの有機物が供給されます。農地では耕起や作物残さの持ち出しによって、有機物の分布や蓄積量が変わります。

有機物が増えれば表土は暗くなりやすく、減れば母材や鉄化合物の色が目立ちやすくなります。また、排水改良によって以前は還元状態だった土へ酸素が入り、鉄が再酸化して赤褐色の斑点が現れることもあります。

逆に、灌水や排水不良によって長く水に浸かるようになると、灰色化が進む場合があります。そのため、現在見えている土色には自然条件だけでなく、土地利用や管理の履歴も反映されることがあります。

湿った土と乾いた土で色が違って見えるのはなぜか

同じ土でも、濡れているときは乾いているときより暗く見えることが多くあります。これは水が粒子表面での光の反射のしかたを変えるためです。

そのため、場所や深さによる土色を比較するときは、水分状態をそろえる必要があります。片方が湿っていて片方が乾いていると、成分や土壌生成過程ではなく観察条件の違いを「土色の違い」と誤認することがあります。

土の色はどうやって記録するのか

「黒っぽい」「赤っぽい」という言葉だけでは、人によって感じ方が違います。そのため土壌調査では、色をできるだけ客観的に記録する方法が使われます。

森林総合研究所の調査法では、土色帖の色片と土を比較し、色相・明度・彩度を使うマンセル表色記号で土色を記載します。たとえば「7.5YR3/4」のように表します。

USDA Natural Resources Conservation Service(NRCS)も、土壌色は土壌の深さや場所による変化、鉱物組成、有機物の蓄積などを理解する手がかりになると説明しています。色を一定の方法で記録すると、地域や調査者が違っても比較しやすくなります。

土の色から何がわかるのか

土の色だけですべてを判断できるわけではありませんが、適切な条件で観察すれば、さまざまな情報を得られます。

  • 暗色が強い表層では、腐植が比較的多い可能性がある
  • 赤色や黄褐色は、酸化した鉄化合物の影響を示すことがある
  • 灰白色や青灰色は、滞水や還元、鉄の溶脱を示すことがある
  • 赤褐色の斑点と灰色が混在する場合、湿潤と乾燥の繰り返しを示すことがある
  • 層ごとの色の違いから、腐植・鉄・水の影響が変化する深さを推測できる
  • 地域ごとの土色の違いは、母材や気候、地形、風化の歴史の違いを反映することがある

農研機構の日本土壌インベントリーでも、水分状態、腐植の集積状態、土色などが土壌分類に利用されています。土色は、土の性質を調べる入口として非常に重要な観察項目なのです。

色だけで土の良し悪しを決めてはいけない

黒い土が必ず肥沃で、赤い土や灰色の土が必ず悪いというわけではありません。

たしかに暗色は腐植の多さを示す場合がありますが、養分量、pH、土の硬さ、排水性、保水性などは別に調べる必要があります。また、灰色の土は排水不良を示すことがありますが、水田のように意図的に湛水する土地では、その環境に対応した管理が行われています。

さらに土色は、水分によって見え方が変わります。湿った土は乾いた土より暗く見えることが多いため、専門的な比較では観察条件もそろえます。

したがって土の色は、「色を見れば土のすべてがわかる診断法」ではなく、土の成り立ちや状態について仮説を立てるための重要な手がかりと考えるのが適切です。

土と土の色の関係をまとめると

  • 腐植が多い表層は黒色や暗褐色になりやすい
  • 酸化した鉄化合物は赤・褐・黄系の色をつくる
  • 水が停滞して還元状態になると灰白色や青灰色が現れることがある
  • 鉄が溶脱すると明るい灰白色の層ができることがある
  • 母材の鉱物組成も土色に影響する
  • 深さごとの色の違いは、腐植・鉄・水分などの作用の違いを反映する
  • 高台・低地・降雨量・植生・土地利用などの条件差も、土色の違いとして現れる
  • 土色はマンセル表色系などを使って客観的に記録される

つまり、土の色は土の中で起きてきた化学変化、生物活動、水の動き、鉱物の風化の履歴が目に見える形で表れたものです。黒、赤、黄、褐、灰色といった違いを見ることで、その土がどのようにでき、どのような環境に置かれてきたのかを考えることができます。

関連する「なぜ?」

出典・参考資料

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

目次