結論から言うと、岩石と結晶が関係しているのは、岩石の多くが「結晶構造を持つ鉱物」の集まりとしてできているからです。鉱物は原子が規則正しく並んだ結晶であることが多く、その鉱物粒が集まることで岩石がつくられます。さらに、結晶の種類・大きさ・形・並び方は、岩石がどのような温度や圧力、冷却速度でできたのかを知る手がかりになります。
たとえば花こう岩をよく見ると、石英、長石、黒雲母などの結晶粒が肉眼でも見えることがあります。一方、玄武岩では結晶が非常に細かく、肉眼で一粒ずつ見分けにくいことがあります。この違いは、岩石ができたときの冷え方の違いと深く関係しています。
まず「岩石」と「結晶」の関係を整理しよう
岩石は、一種類または複数種類の鉱物などが集まってできた固体です。
国立科学博物館は、鉱物を天然の地質作用でできた、一定の組成と構造を持つ物質と説明しています。また、鉱物は例外を除けば基本的に結晶であり、結晶とは原子が規則正しく周期的に並んだ物質だとしています。
つまり、多くの岩石では、結晶構造を持つ鉱物の粒が集まって一つの岩石をつくっているという関係になります。
ただし、すべての岩石が完全に結晶だけでできているわけではありません。急冷した火山岩には火山ガラスが含まれることがあり、黒曜石のように結晶がほとんど成長していない岩石もあります。
結晶とは「きれいな形の石」だけを意味しない
日常語の「結晶」というと、水晶のような六角柱状の美しい形を想像しがちです。
しかし地質学や鉱物学でいう結晶は、外形の美しさよりも、内部で原子が規則正しく配列していることが本質です。
そのため、岩石の中にある小さく不規則な鉱物粒も、内部では規則的な結晶構造を持っている場合があります。
国立科学博物館は、結晶の形や割れ方、光の通り方などの規則性が原子配列を反映すると説明しています。
つまり、岩石の中には肉眼では「ただの粒」に見えても、原子レベルでは秩序だった結晶が大量に含まれていることがあります。
火成岩ではマグマから結晶が成長する
火成岩は、マグマや溶岩が冷えて固まることでできる岩石です。
高温で液体だったマグマが冷えると、その中の元素が規則正しく並び始め、鉱物の結晶が生まれます。
産総研地質調査総合センターは、マグマの温度が下がるにつれて、かんらん石、輝石、角閃石、黒雲母、斜長石、石英、カリ長石など、安定する鉱物が変化すると説明しています。
つまり火成岩は、マグマの中でどの鉱物結晶ができ、どのくらい成長したかによって、岩石の種類や見た目が変わります。
ゆっくり冷えると結晶が大きくなる
地下深くのマグマは、周囲の岩石に囲まれているため、比較的ゆっくり冷えます。
冷却に時間がかかると、すでに生まれた小さな結晶へ原子が次々と加わる時間があり、結晶が大きく成長できます。
USGSは、地下でゆっくり冷えたマグマからできる深成岩では、鉱物粒が大きくなりやすいと説明しています。
花こう岩はその代表例で、石英や長石、雲母などの結晶を肉眼で見分けられることが多くあります。
このため、粗い結晶粒を持つ火成岩を見つけると、地下でゆっくり冷えた可能性を考えることができます。
急に冷えると結晶は小さくなる
火山から噴出した溶岩は、地表の空気や水に触れて急速に冷えます。
冷却が速いと、結晶が大きく成長する時間がほとんどありません。
USGSは、地表付近で急冷した火山岩では鉱物結晶が非常に細かくなり、ときにはガラス質になると説明しています。
玄武岩や流紋岩では、結晶粒が肉眼で見えにくいものが多くあります。さらに急激に冷えた場合には、原子が規則正しく並ぶ前に固まり、火山ガラスになります。
つまり、結晶の大きさは岩石が冷えた速さを記録しているのです。
同じ岩石の中に大きな結晶と細かな部分が共存することもある
火成岩には、大きな結晶と細かな結晶が混ざった斑状組織が見られることがあります。
これは、マグマが地下で比較的ゆっくり冷えて一部の結晶が先に大きく成長し、その後マグマごと地表近くへ移動して急冷した場合などにできます。
先にできた大きな結晶を斑晶、その周囲の細かな部分を石基と呼びます。
このような組織を見ると、その岩石が一段階ではなく、複数の冷却環境を経験したことがわかります。
結晶の大きさの違いは、単なる見た目ではなく、マグマがたどった経路の記録でもあります。
結晶の種類からマグマの性質もわかる
結晶の大きさだけでなく、どの鉱物の結晶が含まれているかも重要です。
産総研地質調査総合センターは、マグマの温度や化学組成によって晶出する鉱物の種類が変わると説明しています。
たとえば、鉄やマグネシウムに富むマグマでは、かんらん石や輝石などができやすく、玄武岩やはんれい岩のような暗色の岩石につながります。
一方、シリカに富むマグマでは石英やカリ長石などが多くなり、花こう岩や流紋岩のような比較的明るい岩石ができます。
つまり結晶の種類を調べると、もとのマグマの化学的な特徴まで推定できます。
変成岩では新しい結晶が「再結晶」してできる
岩石と結晶の関係は火成岩だけではありません。
変成岩では、もともとあった鉱物が高温・高圧を受け、新しい条件に合った結晶へ組み替わったり、既存の結晶が大きく成長したりします。
USGSは、変成作用では岩石が溶けるのではなく、鉱物成分が再配列され、新しい鉱物が形成されると説明しています。
産総研地質調査総合センターも、石灰岩が再結晶して粗粒な結晶質石灰岩、いわゆる大理石になることを例として挙げています。
このため変成岩では、結晶の種類や大きさを調べることで、その岩石が受けた温度・圧力条件を考えることができます。
圧力によって結晶の向きがそろうことがある
地下で一方向から強い圧力を受けると、板状や針状の鉱物結晶が一定方向へ並ぶことがあります。
USGSは、変成岩で雲母などの平たい鉱物粒が平行に配列し、片理や縞状構造をつくることを説明しています。
片岩や片麻岩の縞模様は、結晶の配列が過去の圧力方向を反映している例です。
つまり結晶は、岩石がどのくらい熱せられたかだけでなく、どの方向から力を受けたかまで記録することがあります。
堆積岩にも結晶は関係している
堆積岩は、砂や泥、生物遺骸、化学的沈殿物などが堆積して固まることでできます。
砂岩の砂粒には、石英や長石など既存の岩石から壊れてきた鉱物結晶が多く含まれます。
また、地下水に溶けていた方解石や石英などが粒子の間へ沈殿して結晶化し、粒子同士をつなぐセメントになることがあります。
岩塩や石こうのように、水に溶けていた成分が直接結晶として析出し、それが集まって堆積岩になる例もあります。
したがって堆積岩でも、結晶は「砕けて運ばれた粒」「新しく沈殿した鉱物」「粒子を固めるセメント」という複数の形で関わっています。
岩石の中の結晶は後から変化することもある
いったんできた結晶も、永久に同じ状態を保つとは限りません。
岩石が地下深くへ運ばれれば、高温・高圧によって別の鉱物へ変わることがあります。
地表へ出れば、水や酸素、二酸化炭素などと反応して風化し、長石が粘土鉱物へ変わるなど、新しい結晶や非結晶質物質へ変化することがあります。
つまり岩石の中の結晶は、岩石ができたときの記録であると同時に、その後の変成・風化の履歴も反映します。
結晶の形はなぜ岩石の中では不規則になりやすいのか
鉱物図鑑には、整った六角柱や立方体など、美しい外形を持つ結晶が載っています。
しかし岩石の中では、多数の結晶が同時に成長して互いにぶつかるため、自由に外形を発達させられないことがよくあります。
そのため、内部には規則正しい結晶構造を持っていても、外形は不規則な粒状になることがあります。
一方、岩石の空洞や割れ目など、周囲に成長する空間がある場所では、水晶のように整った結晶面を持つ鉱物が育つことがあります。
つまり「結晶構造を持つこと」と「美しい結晶形を見せること」は同じではありません。
結晶を調べると岩石のでき方を推定できる
地質学者は岩石を薄く削った薄片をつくり、偏光顕微鏡で鉱物結晶を観察します。
結晶の種類、大きさ、形、境界、並び方、他の結晶との関係を見ると、岩石がどの順序でできたのかを推定できます。
火成岩なら、どの鉱物が先に晶出したか、どれほど速く冷えたかを考えられます。
変成岩なら、どの温度・圧力条件で新しい鉱物が成長したかを推定できます。
岩石の中の結晶は、地球内部や地表で起きた過去の出来事を読み取るための重要な「記録媒体」なのです。
結晶の大きさだけで岩石名は決まらない
結晶が大きいから花こう岩、小さいから玄武岩、と単純に決めることはできません。
岩石の分類では、結晶の大きさだけでなく、含まれる鉱物の種類と割合、組織、化学組成、でき方などを総合して判断します。
たとえば地下でゆっくり冷えたはんれい岩も結晶は大きいですが、花こう岩とは鉱物組成が異なります。
また、同じ化学組成でも冷却速度が違えば、粗粒の深成岩と細粒の火山岩という別の見た目になります。
結晶は重要な分類材料ですが、それだけですべてを決めるわけではありません。
身近な岩石でも結晶を観察できる
花こう岩の石材や河原の石を観察すると、結晶の違いを身近に確認できます。
- 透明感のある灰色粒:石英の可能性
- 白色や淡紅色の角ばった粒:長石の可能性
- 黒く薄くはがれやすい粒:黒雲母の可能性
- 肉眼で粒がほとんど見えない暗色岩:細粒の火山岩の可能性
ただし、肉眼だけで鉱物や岩石名を正確に決めるのは難しい場合があります。専門的な同定には顕微鏡観察や化学分析が使われます。
それでも、結晶粒の大きさや色の違いを見るだけで、岩石が単一の物質ではなく、多数の結晶が組み合わさったものだと実感できます。
岩石と結晶の関係をまとめると
- 岩石の多くは鉱物の集合体で、鉱物は基本的に結晶構造を持つ
- 結晶とは、原子が規則正しく周期的に並んだ固体である
- 火成岩ではマグマの冷却によって鉱物結晶が成長する
- ゆっくり冷えると結晶が大きくなり、急冷すると小さくなる
- 非常に急冷すると、結晶が十分育たず火山ガラスになることがある
- 結晶の種類はマグマの温度や化学組成を反映する
- 変成岩では高温・高圧によって新しい結晶が形成・再結晶する
- 圧力によって結晶が一定方向へ並び、片理をつくることがある
- 堆積岩でも鉱物結晶が粒子やセメント、化学沈殿物として関わる
- 結晶の種類・大きさ・並び方は、岩石のでき方やその後の履歴を読む手がかりになる
つまり、岩石と結晶が関係しているのは、岩石の多くが結晶構造を持つ鉱物の集合体であり、その結晶が岩石の性質と成り立ちを記録しているからです。火成岩では冷却速度が結晶サイズを左右し、変成岩では高温・高圧による再結晶が起こり、堆積岩でも鉱物結晶が粒子やセメントとして使われます。岩石の中の結晶を調べることは、その岩石がどこで、どのような条件で、どのような順序でつくられたのかを読み解くことにつながります。

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