なぜ岩石に含まれる鉱物は場所や条件によって異なるのか?

結論からいうと、岩石に含まれる鉱物に場所や条件による違いがあるのは、鉱物ごとに安定して存在しやすい温度・圧力・化学組成・水や流体の条件が異なるからです。同じ元素を含む岩石でも、地下深くの高温高圧環境、地表近くの低温低圧環境、マグマの中、熱水が通る場所など、置かれた条件が違えば、できる鉱物やその組み合わせは変わります。

そのため、花こう岩では石英や長石が多く、玄武岩では輝石やかんらん石が多いといった違いが生まれます。また、変成岩ではざくろ石、藍晶石、珪線石など、温度や圧力の違いを反映する鉱物が現れることがあります。つまり鉱物は、岩石をつくる材料であるだけでなく、その岩石がどのような場所と条件を経験したかを記録する手がかりでもあります。

目次

鉱物の違いを決める基本は「安定する条件」

産業技術総合研究所 地質調査総合センター(GSJ)は、結晶には温度・圧力との関係があり、高温で安定な結晶、高圧で安定な結晶など、鉱物の種類によって安定条件が異なると説明しています。

鉱物は、原子やイオンが規則正しく並んだ結晶です。しかし、どの並び方でも常に安定なわけではありません。温度や圧力が変わると、原子の配置や化学反応の起こりやすさが変わり、別の鉱物のほうが安定になる場合があります。

このため、ある場所では存在できる鉱物が、別の場所では分解して新しい鉱物へ変わることがあります。岩石中の鉱物の違いは、その場所の物理・化学条件の違いを反映しているのです。

温度が違うと、できる鉱物が変わる

マグマが冷えていくとき、すべての鉱物が同時に結晶化するわけではありません。高温で安定な鉱物が先にでき、温度が下がると別の鉱物が安定になります。

GSJは、火成岩をつくる有色鉱物の例として、マグマの温度低下に伴い、かんらん石、輝石、角閃石、黒雲母などが現れることを示しています。これは、鉱物ごとに安定しやすい温度範囲が異なるためです。

そのため、高温の玄武岩質マグマからできる岩石では、かんらん石や輝石が多くなることがあります。一方、よりケイ酸に富む低温側のマグマでは、石英やカリ長石などが多くなることがあります。

つまり、同じ火成岩でもマグマの温度や組成が違えば、含まれる鉱物の組み合わせも変わります。

圧力が違うと、同じ成分でも別の鉱物が安定する

地下深くなるほど圧力は高くなります。圧力が高くなると、原子がより密に詰まった結晶構造が安定になることがあります。

USGSは、地下で温度と圧力が上昇すると、岩石がその環境に適した鉱物組成へ変化すると説明しています。特に沈み込み帯では、比較的低温のまま高い圧力を受けるため、地表近くとは異なる高圧鉱物が形成されます。

たとえば、藍閃石やひすい輝石などは高圧条件を示す鉱物として知られています。関東山地の研究でも、ひすい輝石と石英の組み合わせが高圧条件を記録している例が報告されています。

つまり、岩石中にどの高圧鉱物があるかを見ることで、その岩石が過去にどれほど深くまで運ばれたかを考えられる場合があります。

温度と圧力は組み合わせで考える必要がある

鉱物の安定条件は、温度だけ、圧力だけで決まるわけではありません。実際には両者の組み合わせが重要です。

J-STAGEに掲載された変成岩研究では、ざくろ石、藍晶石、十字石などの鉱物組み合わせから、約470〜700℃という温度条件が推定されています。鉱物の組み合わせが変成度の上昇と対応しており、どの鉱物が共存するかが温度・圧力条件を反映することが示されています。

別の地域では、同じような岩石でも圧力条件が違えば別の鉱物が安定になることがあります。このため地質学では、一つの鉱物だけでなく、複数の鉱物の組み合わせを見て形成条件を推定します。

マグマの化学組成が違えば、できる鉱物も違う

温度と圧力が同じでも、材料となる元素が違えば、できる鉱物は変わります。

マグマには、ケイ素、酸素、アルミニウム、鉄、マグネシウム、カルシウム、ナトリウム、カリウムなど、さまざまな元素が含まれています。その割合によって、結晶化できる鉱物の種類が変わります。

USGSは、溶融した岩石の組成、温度、圧力、冷却過程が、形成される鉱物と火成岩の種類を決めると説明しています。

鉄やマグネシウムに比較的富むマグマでは、かんらん石や輝石などができやすく、ケイ酸やアルカリ元素に富むマグマでは、石英や長石などが多くなりやすくなります。

つまり、地域ごとの火成岩の鉱物差は、マグマが生まれた場所やマグマの組成差とも深く関係します。

同じ鉱物でも化学組成に幅がある

鉱物は一定の結晶構造をもっていますが、天然では似た性質の元素が互いに置き換わることがあります。これを固溶といいます。

たとえば、かんらん石ではマグネシウムと鉄が置き換わりながら組成が連続的に変化します。斜長石ではナトリウムとカルシウムの割合が変化します。

GSJは、サイズや電荷が似た元素が結晶中で置換し、その割合が主に温度によって変わることを説明しています。

そのため、「同じ鉱物名」であっても、できた場所や温度条件によって化学組成が少し違う場合があります。鉱物分析では、この微妙な組成差から形成条件を読み取ることがあります。

水や流体があると、別の鉱物ができやすくなる

地下では、水や二酸化炭素などを含む流体が岩石の割れ目を移動します。流体は元素を運び、鉱物反応を進める重要な役割をもちます。

USGSの鉱床研究では、高温の水溶液が岩石中から金属や硫黄などを取り込み、温度・圧力・化学条件の変化によって鉱物を沈殿させることが説明されています。

変成岩でも、H2OやCO2を含む流体の存在によって反応が進み、新しい鉱物が形成されることがあります。J-STAGEの三波川変成帯の研究でも、流体組成や圧力変化と鉱物反応の関係が検討されています。

このため、同じ温度・圧力条件でも、流体が多く通る場所と、ほとんど通らない場所では鉱物組成が異なる場合があります。

地表では風化によって鉱物の種類が変わる

地下で安定だった鉱物が地表に出ると、低温・低圧になり、水や酸素にもさらされます。その結果、地表環境では不安定になり、別の鉱物へ変化することがあります。

たとえば長石は水との反応によって粘土鉱物へ変わることがあり、鉄を含む鉱物は酸化して鉄酸化物や水酸化物をつくることがあります。

つまり、地下の岩石と風化した地表の岩石で鉱物が違うのは、形成条件だけでなく、その後に置かれた環境も違うためです。

同じ岩石でも、外側の風化部分と新鮮な内部では鉱物組成が異なる場合があります。

変成岩では原岩の違いも大きく影響する

変成岩にできる鉱物は、温度・圧力だけでなく、もとの岩石である原岩の化学組成によっても変わります。

石灰岩はカルシウムに富むため、変成すると方解石を主体とする大理石になりやすくなります。泥質岩ではアルミニウムやカリウムを含むため、黒雲母、ざくろ石、藍晶石、珪線石などが形成されることがあります。

同じ温度・圧力でも、原岩が玄武岩なのか泥岩なのか石灰岩なのかで、できる鉱物は異なります。

このため、鉱物の地域差を考えるときには「どんな条件だったか」だけでなく、「もともとどんな材料だったか」も確認する必要があります。

場所による鉱物の違いはプレートテクトニクスとも関係する

鉱物の分布は、プレートテクトニクスによってつくられる地質環境とも深く関係します。

海嶺ではマントルが上昇して減圧融解し、玄武岩質マグマが生じやすくなります。沈み込み帯では水の供給や高圧条件が加わり、別の鉱物組み合わせやマグマが形成されます。

大陸衝突地域では岩石が地下深くまで押し込まれ、高温高圧の変成鉱物ができます。火山やマグマ貫入の周辺では、熱によって接触変成鉱物が形成されます。

つまり、地域ごとの鉱物の違いは、その地域がどのようなプレート環境にあったかという地球規模の条件ともつながっています。

鉱物は過去の温度・圧力を記録する

鉱物の種類や化学組成が温度・圧力に依存するため、岩石中の鉱物を調べると、形成時の条件を逆に推定できます。

変成岩研究では、ざくろ石と黒雲母、角閃石と斜長石など複数の鉱物の組成を使って、過去の温度・圧力を計算する地質温度圧力計が使われます。

J-STAGEの飛騨変成岩研究でも、鉱物組み合わせと化学組成から約720〜850℃、0.5〜0.9GPaという条件が推定されています。

このように鉱物は、岩石の中に残された天然の温度計・圧力計のような役割を果たすことがあります。

同じ場所でも時間が変われば鉱物が変わる

地質環境は時間とともに変化します。そのため、一つの岩石が複数の鉱物形成段階を経験することがあります。

たとえば、地下深くで高圧鉱物ができた後、岩石が隆起して圧力が下がると、その鉱物の周囲に低圧側で安定な別の鉱物が成長することがあります。

また、マグマが冷える途中でも、先にできた高温鉱物の周囲に低温側の鉱物ができることがあります。

つまり、岩石中の鉱物の違いは「場所の違い」だけでなく、「同じ場所で条件が時間的に変化した履歴」も記録しています。

鉱物の違いから何がわかるのか

岩石に含まれる鉱物を調べると、次のような情報を読み取れる場合があります。

  • 形成温度:高温鉱物・低温鉱物の種類や組成から推定できます。
  • 形成圧力:高圧条件で安定な鉱物の有無が手がかりになります。
  • マグマ組成:石英・長石・輝石・かんらん石などの割合から推定できます。
  • 流体の影響:熱水鉱物や変成反応から水・CO2などの関与を考えられます。
  • 風化環境:粘土鉱物や鉄酸化物などから地表での変化を読み取れます。
  • プレート環境:高圧変成鉱物などから沈み込み帯などの履歴を推定できます。

ただし、一つの鉱物だけで形成環境を断定することはできません。地質学では、複数の鉱物の組み合わせ、化学組成、岩石組織、地層や地質構造を合わせて判断します。

まとめ

岩石の鉱物に場所や条件による違いがあるのは、鉱物ごとに安定する温度・圧力・化学組成・流体条件が異なり、さらに原岩やマグマの材料も場所ごとに違うからです。

高温のマグマでは高温側で安定な鉱物が結晶化し、地下深くの高圧環境では高圧鉱物ができます。地表では水や酸素によって風化鉱物が生じ、熱水が通る場所では別の鉱物が沈殿します。変成岩では、温度・圧力と原岩の組み合わせによって鉱物組成が変わります。

つまり鉱物の違いは、その岩石がどの場所で、どの温度・圧力・化学環境を経験してきたのかを記録した結果です。鉱物を比べることで、見えない地球内部の条件や過去のプレート運動まで読み解くことができます。

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