なぜ岩石の結晶は場所や条件によって異なるのか?

結論からいうと、岩石の結晶に場所や条件による違いがあるのは、結晶が成長する速さと時間が、温度・冷却速度・圧力・マグマや流体の組成・水分・変形条件などによって変わるからです。地下深くでゆっくり冷えるマグマでは結晶が大きく育ちやすく、地表近くで急速に冷える溶岩では細かな結晶やガラス質ができやすくなります。

さらに、同じ岩石の中でも表面と内部、マグマだまりの中心と縁、熱源に近い場所と遠い場所では温度の下がり方が違います。変成岩でも、熱や圧力、変形の強さが違えば再結晶する粒の大きさや並び方が変わります。つまり、岩石の結晶はその場所が経験した温度・圧力・時間・変形の履歴を記録したものと考えることができます。

目次

結晶の違いを決める基本は「核形成」と「結晶成長」

結晶は、最初から大きな粒として現れるわけではありません。まず、ごく小さな原子やイオンの集まりが安定な並び方をつくる「核形成」が起こり、その核に周囲の物質が加わって結晶が成長します。

結晶の最終的な大きさは、核がどれだけ多くできたか、一つ一つの核がどれだけ長く成長できたかによって大きく変わります。核が非常に多くできれば、材料が多くの結晶に分配されるため細粒になりやすく、核が少なく成長時間が長ければ、一つの結晶が大きくなりやすくなります。

そのため「ゆっくり冷えれば必ず大きな結晶」という説明は基本としては正しいものの、実際には核形成の数やマグマの粘性、過冷却の程度、水分なども関係します。

地下深くでは結晶が大きくなりやすい

産業技術総合研究所 地質調査総合センター(GSJ)は、火成岩の違いについて、マグマの組成と冷え方が岩石の組成・組織に反映されると説明しています。地下深くにとどまったマグマは、周囲も高温であるため熱をゆっくり失います。

ゆっくり冷えると、結晶が成長する時間を長く確保できます。そのため、花こう岩やはんれい岩などの深成岩では、鉱物粒が肉眼で見えるほど大きくなることがあります。

USGS(米国地質調査所)も、地下でゆっくり冷えるマグマでは既存の鉱物が成長を続け、新しい鉱物も形成されるため、粗粒な深成岩になると説明しています。

つまり、深い場所でできた岩石に大きな結晶が多いのは、単に「地下だから」ではなく、周囲との温度差が小さく、冷却に時間がかかる環境だからです。

地表付近では細かな結晶やガラス質ができやすい

マグマが火山噴火で地表へ出ると、空気や水に触れて急速に冷えます。すると、原子やイオンが規則的に並びながら大きな結晶へ成長する時間が不足します。

その結果、玄武岩などの火山岩では非常に細かな結晶が多くなり、さらに急冷すると黒曜石のような火山ガラスができます。

USGSは、溶岩が地表で急速に冷えると、既存の鉱物の成長が止まり、新しい鉱物が十分に発達できないため、小さな結晶と火山ガラスからなる岩石が形成されやすいと説明しています。

同じマグマでも、地下でゆっくり固まった部分と地表へ噴出して急冷した部分では、結晶の大きさが大きく違うことがあるのです。

同じ火山岩でも、大きな結晶と細かな部分が共存することがある

火山岩の中には、細かな石基の中に大きな結晶が点々と入っているものがあります。大きな結晶を斑晶、細かな部分を石基といい、このような組織を斑状組織と呼びます。

これは、マグマが一つの場所で一定の速度で冷えたのではなく、異なる冷却環境を経験したことを示します。

まず地下のマグマだまりで比較的ゆっくり冷え、斑晶が成長します。その後、マグマが上昇して噴火すると急速に冷え、残りの液体が細かな石基やガラスになります。

つまり、一つの岩石の中に結晶サイズの差がある場合、その差自体が「冷却条件が途中で変わった」という履歴を残しています。

過冷却の程度で結晶の数と形が変わる

マグマや溶岩は、鉱物が結晶化を始める温度より少し低くなっても、すぐには結晶化しないことがあります。この状態を過冷却といいます。

過冷却が大きいと、多数の結晶核が短時間にできたり、結晶が特定の方向へ急速に成長したりすることがあります。そのため、通常の粒状結晶とは違う針状・板状・樹枝状の結晶ができる場合があります。

日本鉱物科学会のスピニフェックス組織に関する研究では、結晶核密度が低く、過冷却度が高く、適度な温度勾配と冷却速度がある条件で、長い板状のかんらん石結晶が成長することが示されています。

この例からも、結晶の違いは「冷却が速いか遅いか」だけではなく、結晶化が始まるまでにどれだけ温度が下がったかにも左右されることがわかります。

温度勾配があると、結晶が伸びる方向にも差が出る

岩体の中で温度が均一に下がるとは限りません。冷たい岩盤と接する場所や溶岩の表面では、特定の方向に温度が急激に下がります。

このような温度勾配があると、結晶が熱の逃げる方向や成長しやすい方向へ伸び、方向性をもった組織ができることがあります。

一方、厚い岩体の中心部では温度差が小さく、比較的均一な方向へ結晶が成長しやすくなります。

そのため、同じ一枚の溶岩流や同じ貫入岩体でも、縁と中心で結晶の大きさや形が異なることがあります。

マグマの組成が違うと結晶成長の速さも変わる

結晶サイズの違いは、冷却条件だけでなくマグマの化学組成にも関係します。

玄武岩質マグマは一般に流動性が高く、原子やイオンが移動しやすい一方、流紋岩質マグマは粘性が高く、物質移動が遅くなりやすいという違いがあります。

また、どの鉱物が最初に結晶化するかもマグマ組成によって異なります。GSJは、マグマの温度低下に伴って安定する鉱物の種類が変わり、かんらん石、輝石、角閃石、黒雲母などの晶出順序や、斜長石・石英・カリ長石などの出現が異なることを説明しています。

つまり、同じ冷却速度でも、マグマの種類が違えば、できる結晶の種類・数・成長速度が同じになるとは限りません。

水や揮発性成分があると大きな結晶ができることがある

マグマに含まれる水、ホウ素、フッ素、リチウムなどの成分は、マグマ中の元素の移動を助けたり、結晶化する温度や粘性を変えたりすることがあります。

USGSが紹介するペグマタイト研究では、水やホウ素、フッ素、リチウムなどの成分が結晶成長を助け、比較的短い冷却時間でも非常に大きな鉱物結晶が形成される場合があることが示されています。

ペグマタイトには、数センチからさらに大きな石英、長石、雲母などができることがあります。これは「大きな結晶=必ず何百万年もかけて成長した」という単純な関係ではないことを示しています。

結晶の大きさは、成長時間だけでなく、物質がどれだけ速く結晶表面へ運ばれるかにも左右されるのです。

圧力の変化で結晶が溶けたり、再び成長したりする

マグマが地下から上昇すると、温度だけでなく圧力も低下します。圧力が変わると、それまで安定だった鉱物が不安定になり、結晶の一部が溶けることがあります。

その後、別の条件で再び結晶化すると、結晶内部に複雑な縞模様やセル状の組織が残る場合があります。

GSJ地質ニュースでは、斜長石の内部組織について、マグマ混合による温度変化だけでなく、急激な圧力低下によっても結晶の部分溶融と再結晶が起こり得ることが紹介されています。

このような結晶内部の模様は、マグマが上昇・混合・減圧した履歴を記録しています。

変成岩では「再結晶」によって結晶サイズが変わる

岩石の結晶は、マグマからできた後も変わることがあります。既存の岩石が地下で高温・高圧を受けると、溶けずに鉱物が再結晶し、結晶粒が大きくなったり、新しい結晶ができたりします。

USGSは、変成岩が熱・圧力・鉱物を含む高温流体などによって、もとの岩石から大きく変化すると説明しています。変成作用では新しい鉱物ができ、既存の結晶も再編成されます。

たとえば石灰岩が接触変成作用を受けると、方解石が再結晶して大理石になります。福岡県平尾台の結晶質石灰岩を調べた研究では、花崗閃緑岩との接触部に近いほど結晶粒が粗くなる傾向が定量的に確認されています。

これは、同じ原岩でも熱源からの距離によって温度条件が異なり、その違いが結晶粒径に反映される例です。

変形が強い場所では細かな再結晶粒ができることがある

変成岩や断層周辺では、岩石が高温下でゆっくり変形することがあります。そのとき、石英などの鉱物は結晶内部にひずみを蓄積し、細かな新しい結晶へ再結晶することがあります。

このような動的再結晶では、結晶粒径が差応力や温度に関係します。日本地質学会の研究でも、石英の再結晶粒径を使って、岩石が過去に受けた応力や変形条件を推定する方法が検討されています。

つまり、変形の弱い場所では大きな結晶が残っていても、断層やせん断帯のように変形が集中した場所では、細かな再結晶粒が発達することがあります。

結晶の大きさは時間とともに変わり続けることがある

結晶は一度できたら永久に同じ大きさとは限りません。地下で一定の温度条件が長く続くと、小さな結晶が減り、大きな結晶がさらに成長することがあります。

USGSが紹介する研究では、粘土鉱物や変成鉱物でオストワルド熟成と呼ばれる再結晶が起こり、粒径分布に地質学的な履歴が残ることが示されています。

そのため、現在観察できる結晶粒径は、最初にできたときの条件だけでなく、その後どれくらい長く高温状態にあったか、再結晶がどの程度進んだかも反映しています。

同じ岩体でも場所によって結晶が違う

一つの岩体の中でも、位置による違いはよく見られます。

  • 貫入岩の縁:周囲の冷たい岩石へ熱が逃げやすく、比較的細粒になりやすい。
  • 貫入岩の中心:冷却が遅く、大きな結晶が育ちやすい。
  • 溶岩流の表面:急冷され、ガラス質や細粒組織になりやすい。
  • 溶岩流の内部:表面よりゆっくり冷え、結晶がやや大きくなることがある。
  • 熱源に近い変成岩:再結晶が進み、粒が粗くなる場合がある。
  • せん断帯・断層周辺:変形により細かな再結晶粒が発達する場合がある。

つまり「この地域の岩石は結晶が大きい」と単純にまとめるのではなく、岩体のどの位置を見ているかまで考える必要があります。

結晶の違いから岩石の形成環境を読み取れる

岩石中の結晶の大きさ・形・内部組織は、過去の環境を推定する重要な手がかりです。

粗粒な結晶が多ければ、ゆっくり冷えた可能性があります。細粒やガラス質なら急冷した可能性があります。斑晶と石基が共存すれば、冷却条件が途中で変化した可能性があります。結晶内部に溶融・再成長の模様があれば、マグマ混合や減圧などを経験した可能性があります。

さらに、変成岩の再結晶粒径を調べれば、熱源からの距離、温度、応力、変形条件などを推定できる場合があります。

このため結晶は、単なる岩石の粒ではなく、岩石が経験した地質現象を保存する「記録媒体」として利用されています。

まとめ

岩石の結晶に場所や条件による違いがあるのは、結晶の核形成と成長が、冷却速度・温度・圧力・過冷却・マグマ組成・水分・流体・変形・時間によって変わるからです。

地下深くでゆっくり冷えるマグマでは大きな結晶が育ちやすく、地表付近で急冷すると細かな結晶やガラス質ができやすくなります。しかし、過冷却度や核形成の数、水や揮発性成分の量によっても結晶サイズや形は変化します。

また、変成岩では高温・高圧による再結晶で粒が成長したり、強い変形によって細かな再結晶粒ができたりします。同じ岩体でも縁と中心、熱源からの距離、断層からの距離によって条件が変わるため、結晶も一様ではありません。

つまり岩石の結晶の違いは、その場所で岩石がどのように冷え、加熱され、圧力や変形を受けたかという履歴が形として残ったものなのです。

関連する「なぜ?」

参考資料

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

目次