なぜ雪が降るときの湿度は海や地形によって場所ごとに違うのか?

同じ雪雲の影響を受けている地域でも、海岸では湿度が高く、内陸では低いというように、場所によって湿度が違うことがあります。雪が降っているなら空気はどこでも同じように湿っていそうですが、実際にはそうではありません。

結論からいうと、湿度は空気中の水蒸気量だけでなく、その場所の気温にも左右され、さらに海からの水蒸気供給、風向、地形による空気の上昇・下降、放射冷却などが場所ごとに異なるからです。そのため降雪時でも、海岸、平野、盆地、山地では湿度の分布がそろいません。

目次

湿度は水蒸気量だけでは決まらない

気象庁で通常「湿度」と呼ぶのは相対湿度です。相対湿度は、実際の水蒸気量が、その気温で空気が含める最大の水蒸気量に対してどれくらいかを百分率で表したものです。

つまり同じ水蒸気量でも、気温が低い場所では相対湿度が高くなりやすく、気温が高い場所では低くなりやすくなります。

同じ雪雲の下でも気温差があれば湿度差が生まれる

なぜ雪が降るときの気温は標高や地形によって場所ごとに違うのか?で扱ったように、降雪時の気温は標高、盆地の冷気だまり、海からの距離、風向などで場所ごとに違います。

その気温差は、同じ程度の水蒸気量がある場合でも相対湿度の差として現れます。したがって、湿度の地域差を考えるときは気温差を切り離せません。

海に近い場所は水蒸気の供給を受けやすい

海面からは絶えず水が蒸発しています。冬の日本海側では、冷たい空気が比較的暖かい海の上を通ることで、水蒸気と熱を受け取り、雲や雪を発達させます。

このため海からの風が直接入る沿岸では、水蒸気量が多くなりやすく、内陸へ進むにつれてその供給のされ方が変わります。

風向によって湿った空気が入る場所が変わる

湿度の地域差は、風向によって大きく変わります。海から陸へ吹く風なら湿った空気が沿岸や風上側へ入りやすく、陸から海へ吹く風なら比較的乾いた空気が流れ出すことがあります。

低気圧や冬型の気圧配置が変われば、同じ地域でも湿った空気が入りやすい場所と乾きやすい場所が入れ替わります。

山の風上側では空気が上昇して湿度が高まりやすい

湿った空気が山にぶつかると、斜面に沿って上昇します。上昇した空気は膨張して冷えるため、飽和に近づき、雲ができやすくなります。

このため山の風上側では湿度が高まりやすく、降雪も強まりやすくなります。水蒸気量だけでなく、空気を冷やして飽和に近づける地形の効果が重要です。

山の風下側では下降気流で乾燥しやすい

山を越えた空気が風下側へ下降すると、圧縮されて暖まります。水蒸気量が大きく増えなくても、気温が上がると相対湿度は下がります。

そのため同じ山域でも、風上側は湿潤、風下側は乾燥という差が生じることがあります。

盆地では冷え込みによって相対湿度が上がることがある

盆地では夜間に冷たい空気がたまりやすく、気温が下がることがあります。水蒸気量がほとんど変わらなくても、気温が下がれば相対湿度は上昇します。

このため、海から遠い内陸でも、夜間や降雪時に高い相対湿度になることがあります。

晴れ間が出る場所では湿度が下がりやすい

雲が切れて日射が入ると地表付近の気温が上がり、同じ水蒸気量でも相対湿度は下がります。

逆に夜間の放射冷却で気温が下がると、相対湿度は上がります。したがって近距離でも、雲量や日射の違いによって湿度差が生じます。

降雪そのものも湿度を変える

雪片が乾燥した空気の中を落ちると、一部が昇華して水蒸気になります。その過程では周囲から熱が奪われるため、空気は冷え、同時に水蒸気量も増えます。

その結果、降り始めに比較的乾燥していた空気でも、雪が続くうちに湿度が高まることがあります。

気象庁の資料でも雨雪判別は気温と湿度を組み合わせて見る

気象庁の資料では、雨と雪の判別が地上気温だけでなく相対湿度にも依存することが示されています。湿度が低いと雪片の昇華による冷却が起こりやすく、比較的高い気温でも雪として地上へ届く場合があります。

つまり湿度の違いは、単なる観測値の差ではなく、実際の雨雪判別にも影響します。

海岸と内陸では「高湿度」の意味も同じとは限らない

海岸で相対湿度80%、内陸で80%だったとしても、気温が違えば実際の水蒸気量は同じとは限りません。

暖かい海岸の80%と、寒い内陸の80%では、空気中に含まれる水蒸気量に差があることがあります。相対湿度の数字だけを比べると、水蒸気供給の違いを見誤ることがあります。

露点温度を見ると水蒸気量の地域差を考えやすい

露点温度は、空気を冷やしたときに飽和する温度で、水蒸気量の多さを考える手がかりになります。

気温と露点温度が近い場所ほど相対湿度は高く、離れているほど低くなります。海岸と内陸を比較するときには、相対湿度だけでなく露点温度も見ると、水蒸気量そのものの違いを捉えやすくなります。

降雪域の湿度は一様な面ではなく斑になりやすい

雪雲の中やその周辺では、上昇流、下降流、雲の濃い部分、切れ間などが混在しています。そのため数十km程度の範囲でも、湿度は一様ではありません。

地形が複雑な地域では、谷、尾根、盆地、沿岸などで空気の流れが変わるため、湿度分布も細かく変化します。

湿度差は雪の結晶や雪質にも関係する

雪の結晶は、雲の中の温度と水蒸気条件によって形や成長の仕方が変わります。湿度が高く水蒸気供給が豊富な領域では、複雑な枝を持つ結晶が成長しやすい場合があります。

また地上付近の湿度は、雪片が落下中にどれだけ昇華・融解するかにも関係し、結果として雪の乾き方や降り方に影響します。

「なぜ雪を考えるときの湿度は気温とセットで見る必要があるのか?」との違いは「湿度の仕組み」ではなく「なぜ場所で違うか」

なぜ雪を考えるときの湿度は気温とセットで見る必要があるのか?では、相対湿度が気温に依存する指標であること、同じ水蒸気量でも気温で湿度が変わることを中心に説明しました。

本記事ではそこから検索意図を分け、海、地形、風、標高、放射冷却などが場所ごとに違うため、降雪時の水蒸気量と気温の組合せが地点ごとに変わり、湿度分布に地域差が生まれる理由を扱います。

同じ地域でも時間とともに湿度差は変わる

風向が変わったり、雲が広がったり、寒気が流れ込んだりすると、湿度の高い場所と低い場所は移動します。

そのため「海岸はいつも湿っていて内陸はいつも乾いている」という固定的な関係ではありません。気圧配置と地形の組み合わせによって、その日の分布が決まります。

まとめ

雪が降るときの湿度が海や地形によって場所ごとに違うのは、相対湿度が水蒸気量と気温の両方で決まり、その二つが地点ごとに異なるためです。

海からは水蒸気が供給され、山の風上側では上昇冷却によって飽和に近づき、風下側では下降して暖まり乾燥しやすくなります。盆地では冷気がたまって相対湿度が上がることもあります。

つまり、降雪時の湿度の地域差は、海からの水蒸気供給と、地形・風・気温がつくる局地的な大気環境の違いが重なって生まれるのです。

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参考資料

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