なぜ雪崩の起こりやすさは斜面の向きや風、雪質によって場所ごとに違うのか?

同じ山でも、ある斜面では雪崩が起こりやすいのに、隣の斜面では比較的安定していることがあります。標高が近く、同じ日に雪が降っていても、雪崩の危険度は場所ごとにそろいません。

結論からいうと、雪崩の起こりやすさは、斜面の傾きや向き、標高、風による雪の移動、日射、植生、積雪内部の弱い層の有無が場所ごとに違うためです。雪崩は単に「雪が多い場所」で起こるのではなく、その場所の地形と積雪の履歴が重なって起こります。

目次

雪崩の危険は山全体で一様ではない

雪崩は、斜面上の積雪を下へ滑らせる力と、積雪をその場に支える力の釣り合いが崩れたときに起こります。

しかし、その釣り合いは山全体で同じではありません。斜面ごとに傾き、風の当たり方、積もった雪の厚さ、弱層の有無、日射の受け方が違うため、危険度にも大きな差が生まれます。

斜面の傾きは雪崩の起こりやすさを大きく左右する

国土交通省は、一般に30度以上の斜面で雪崩が起こりやすく、特に35〜45度付近で発生事例が多いとしています。

斜面が緩すぎれば雪は滑りにくく、逆に非常に急な斜面では大きな雪板が成長する前に小規模な雪崩が繰り返し起こることがあります。

同じ山でも斜面の向きで積雪条件が変わる

斜面がどの方角を向いているかによって、日射や風の当たり方が変わります。そのため同じ標高でも雪温、雪質、弱層の残り方が違います。

Avalanche.orgも、斜面方位によって風と日射への露出が異なるため、積雪構造や雪崩危険度が大きく変わると説明しています。

日当たりのよい斜面では雪の変化が速い

晴れた日には、日射を強く受ける斜面ほど雪面が暖まりやすくなります。

その結果、雪が融けたり再凍結したりして積雪構造が変わり、時刻によって安定度が変化します。春先には日中の融雪が進みやすい斜面ほど、湿った雪崩の危険が高まることがあります。

日陰の斜面では弱い層が長く残ることがある

日射の少ない斜面では低温が続きやすく、積雪内部の温度差によって結晶が変化し、弱い層が形成・維持されることがあります。

一方で、日射を強く受ける斜面では同じ弱層が壊れたり変質したりする場合があります。つまり斜面方位によって、同じ降雪後でも危険な層の残り方が違います。

風は雪を削り、別の斜面へ積もらせる

強い風が吹くと、風上側の雪が削られて風下側へ運ばれます。

そのため、同じ降雪量でも風下斜面には短時間で厚い雪が積もり、風上斜面は雪が薄くなることがあります。

風下斜面ではウインドスラブができやすい

SLFは、風で運ばれた雪が風下斜面やくぼ地、尾根の背後などに堆積して「ウインドスラブ」を形成しやすいと説明しています。

この雪板が弱い層の上に積もると、追加の荷重となって雪崩を起こしやすくします。

風向が変われば危険な斜面も変わる

西風なら東向き斜面に雪がたまりやすく、風向が変われば別の斜面に雪が運ばれます。

つまり「この斜面はいつも危険」と固定的に決まるわけではなく、直近の風向と風速によって危険な場所は変わります。

吹きだまりは短時間で危険な荷重をつくる

防災科学技術研究所は、強風で飛ばされた雪が大量にたまることを、雪崩の駆動力を増やす原因の一つとして挙げています。

降雪量がそれほど多くなくても、風によって一部の斜面に雪が集中すれば、その場所だけ急に不安定になることがあります。

標高が違えば気温と雪質も変わる

同じ山でも標高が高い場所ほど気温が低くなりやすく、乾いた雪や低温下でできる弱層が残りやすい場合があります。

低い標高では気温が0℃に近づきやすく、融雪や雨の影響を受けやすくなります。この違いが雪崩の種類や起こりやすい時間帯の差につながります。

弱層はどの斜面にも同じようにできるわけではない

積雪は、降った時期や雪質の違う層が重なってできています。その中に強度の低い弱層があると、その上の雪板を十分に支えられなくなることがあります。

しかし弱層の形成は、気温、雪面の冷え方、日射、風、過去の降雪履歴によって場所ごとに違います。

同じ山でも積雪の履歴が違う

ある斜面では風で古い雪が削られ、その後に新雪が積もる一方、別の斜面では古い雪がそのまま残ることがあります。

この違いによって、雪の層構造そのものが斜面ごとに変わります。見た目の積雪深が同じでも、内部構造は同じとは限りません。

植生も雪を支える力に影響する

国土交通省は、低木林やまばらな植生、ササや草地に覆われた斜面では、雪崩発生の危険が高い場合があるとしています。

一方、密な中高木林では幹や枝が積雪を支え、雪の連続した滑りを妨げることがあります。ただし林内でも条件によって雪崩が起こらないわけではありません。

斜面の形も雪の集まり方を変える

くぼ地や沢地形では、風で運ばれた雪が集まりやすくなります。逆に尾根上では雪が削られやすいことがあります。

そのため、同じ斜度でも斜面の形が違えば、積雪の厚さや雪板の連続性に差が生じます。

雪崩は発生区だけでなく走路と堆積区も地形に左右される

雪崩が発生した後にどこを流れ、どこまで届くかも地形で変わります。

国土交通省の技術資料では、雪崩対策の調査で斜面の傾斜、斜面形、方位、斜面長などを把握し、発生区域、走路、堆積区を考えるとしています。

気温上昇や雨の影響も斜面ごとに違う

同じ山でも、日当たりや標高が違えば気温上昇の影響は一様ではありません。

日射を強く受ける低標高の斜面では融雪が早く進み、別の斜面では低温が保たれることがあります。雨が雪面へ届く標高の違いも、雪崩の起こり方を変えます。

危険な斜面は時間とともに入れ替わる

朝は安定していた斜面でも、日射で雪が緩めば昼には不安定になることがあります。

逆に、風で雪が運ばれた直後は危険でも、時間がたつにつれて雪板が安定していくこともあります。SLFも、風による雪板の問題は短時間で形成され、状況が日単位で変化すると説明しています。

「なぜ斜面に積もった雪は雪崩を起こすことがあるのか?」との違いは「なぜ雪崩が起こるか」ではなく「なぜ場所で違うか」

なぜ斜面に積もった雪は雪崩を起こすことがあるのか?では、積雪を滑らせる力と支える力の釣り合いが崩れるという雪崩発生の基本メカニズムを説明しました。

本記事では検索意図を分け、その釣り合いが、斜面方位、標高、風、日射、植生、弱層の分布によって場所ごとに異なるため、雪崩の起こりやすさに差が生じる理由を比較の観点から説明します。

「雪が多い場所ほど危険」とは限らない

積雪が深いことは重要な要因ですが、それだけで危険度は決まりません。

雪が比較的少なくても、風でできた雪板が弱層の上に載っていれば危険な場合があります。逆に雪が深くても、層構造が安定していれば必ず雪崩になるわけではありません。

「北向き斜面は危険」「南向き斜面は安全」とも決められない

斜面方位は重要ですが、危険な向きは季節、日射、風向、弱層の分布によって変わります。

ある日は北向き斜面に弱層が残りやすく、別の日には南向き斜面で融雪が進んで危険になることがあります。方位だけで一律に判断することはできません。

地域差を見るには地形と積雪をセットで考える

Avalanche.orgは、雪崩危険が山全体へ均一に広がることは少なく、斜面方位、標高、斜度、形、森林密度、風や日射への露出など、似た特徴をもつ斜面に危険が集中しやすいと説明しています。

つまり雪崩の「場所差」は、地形そのものと、その地形の上にできた積雪構造を一緒に見て初めて理解できます。

まとめ

雪崩の起こりやすさが場所ごとに違うのは、斜面の傾きや向き、標高、風、日射、植生、弱層の分布が一様ではないためです。

風下斜面には雪が集まり、日射の強い斜面では融雪が進み、日陰では弱層が残ることがあります。さらに標高や植生、斜面形によって雪の厚さや支えられ方も変わります。

つまり、雪崩の地域差は「どれだけ雪があるか」だけでなく、その場所にどんな地形があり、その上にどんな積雪構造ができたかの違いによって生まれるのです。

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参考資料

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