冬の日本では、太平洋側と日本海側で相対湿度の傾向が大きく違うことがあります。
代表的な冬型の気圧配置では、大陸から吹き出した冷たく乾いた季節風が日本海を渡る間に水蒸気を受け取り、日本海側で雲や雪を生みます。その空気が山地を越えて太平洋側へ下ると、すでに一部の水分を降水として失っているうえ、下降しながら暖まるため、相対湿度が低くなりやすくなります。
つまり、冬の太平洋側と日本海側で相対湿度の傾向が違うのは、季節風が日本海で水蒸気を補給し、山地で上昇・降水し、風下側で下降・昇温するという一連の過程があるからです。
実際に冬の相対湿度はどれくらい違うの?
気象庁の1991〜2020年の平年値では、金沢の1月平均相対湿度は74%、2月は70%です。
一方、東京では1月の旬別平均相対湿度がおおむね50%前後で推移しています。
もちろん、日本海側のすべての地点が常に高湿度、太平洋側のすべての地点が常に低湿度というわけではありません。地域、標高、海岸からの距離、降水、局地風によって値は変わります。
それでも、冬型の天候が続く時期には、日本海側で曇りや雪の日が多く、太平洋側で晴れて乾燥した日が多いという典型的な違いが現れます。
冬の季節風は最初から湿っているの?
最初から湿っているわけではありません。
冬、大陸から日本へ吹き出す空気は冷たく乾燥しています。ところが、その空気が日本海の上を通ると状況が変わります。
冬の日本海は、大陸から来た寒気より相対的に暖かいため、海面から空気へ熱と水蒸気が供給されます。
気象庁も、冬の季節風が日本海を渡る間に、海面から熱と水蒸気を補給して雪雲を発生させると説明しています。
日本海側ではなぜ湿度が高くなりやすいの?
日本海で水蒸気を受け取った空気は、日本列島へ近づくと山地にぶつかります。
空気は山の斜面に沿って上昇し、上空ほど気圧が低いため膨張して冷えます。気温が下がると飽和水蒸気圧も小さくなるため、相対湿度は上昇します。
やがて飽和すると雲ができ、雪や雨が降ります。
このため、日本海側では冬に雲が多く、降雪・降雨も多くなり、空気が飽和に近い状態になりやすいのです。
雪が降っていると相対湿度は高くなりやすいの?
雪雲の中や降雪時には、空気は飽和に近いことが多く、相対湿度も高くなりやすくなります。
また、雲が多いと日射が弱まり、日中の気温上昇も抑えられます。
同じ水蒸気量でも気温が低いほど相対湿度は高くなるため、低温・多雲・降雪という条件が重なる日本海側の冬は、相対湿度が高めになりやすくなります。
山を越えた空気はなぜ乾くの?
日本海側で上昇した空気は、山地の風下側で下降します。
下降する空気は周囲の気圧が高くなるため圧縮され、温度が上がります。
NOAAも、湿った空気が山地の風上側で上昇・冷却して雲や降水を生み、風下側では下降して暖まり、乾燥しやすくなる地形性効果を説明しています。
さらに、日本海側で雪や雨を降らせた空気は、その過程で水蒸気の一部を失っています。
この「水分を失うこと」と「下降して暖まること」が重なり、太平洋側では相対湿度が低くなりやすくなります。
太平洋側で晴れるとさらに湿度が下がりやすい
太平洋側では、山地を越えて乾いた空気が流れ込むだけでなく、冬型の気圧配置では晴天が多くなります。
晴れると日中は日射によって地面と空気が暖められます。
気温が上がると飽和水蒸気圧が大きくなるため、実際の水蒸気量があまり変わらなくても相対湿度は下がります。
そのため、乾いた季節風と晴天による昇温が重なり、太平洋側では日中に低い相対湿度が現れやすくなります。
「太平洋側の方が暖かいから湿度が低い」だけではない
気温の違いは重要ですが、それだけではありません。
相対湿度は、実際の水蒸気量と、その気温での飽和水蒸気量の比で決まります。
太平洋側では、山地を越える途中で降水によって水蒸気が減りやすく、さらに下降・昇温によって飽和から遠ざかります。
つまり、水蒸気量そのものが少なくなることと、気温上昇によって飽和水蒸気量が増えることの両方が、低い相対湿度につながります。
日本海側でも晴れれば湿度は下がる?
下がることがあります。
日本海側でも冬型が弱まり、晴れて気温が上がれば、相対湿度は低下します。
また、フェーン現象などで山から乾いた風が吹き下りれば、日本海側でも乾燥する場合があります。
そのため、「日本海側は冬なら常に湿度が高い」と決めつけることはできません。
太平洋側でも雨や雪の日は湿度が高くなる
太平洋側でも、南岸低気圧や前線の影響で雨や雪になれば、相対湿度は高くなります。
湿った空気が流れ込み、降水が続けば、空気は飽和に近づくためです。
冬の地域差は、毎日必ず同じになる違いではなく、冬型の気圧配置が現れたときに繰り返し生じる典型的な傾向です。
北海道や西日本でも同じ仕組みなの?
基本的な考え方は共通していますが、地形や風向が違うため現れ方は地域ごとに異なります。
高い山地が季節風を遮る場所では、風上側と風下側の天候差が大きくなります。
逆に山地が低い場所や、風が抜けやすい地形では、日本海側の雪雲が太平洋側まで流れ込むことがあります。
日本列島の山脈の配置が、冬の湿度・雲・降水の地域差を作る重要な要素です。
相対湿度と絶対湿度を分けて考えると分かりやすい
日本海側と太平洋側の冬を比べるときは、相対湿度だけでなく、水蒸気量そのものも意識すると理解しやすくなります。
相対湿度が高いからといって、暖かい季節より多くの水蒸気を含んでいるとは限りません。
冬は気温が低いため、飽和できる水蒸気量自体が少なくなっています。
そのため、日本海側で相対湿度が70%台でも、夏の同じ70%より空気中の実際の水蒸気量は少ないことがあります。
東京と金沢の違いは何を示している?
気象庁の平年値では、冬の金沢は東京より相対湿度が高い傾向があります。
この違いは単に「海に近いかどうか」だけでは説明できません。東京も海に面しています。
重要なのは、冬の主な風向に対して、日本海側が山地の風上側、太平洋側が風下側になりやすいことです。
日本海で水蒸気を受け取った空気が山地で上昇・降水し、その後乾いた空気として太平洋側へ下りるという流れが、平年値の差にも反映されています。
冬型が弱い年は湿度差も小さくなる?
可能性があります。
冬型の気圧配置が頻繁に現れる年と、低気圧や前線の影響が多い年では、地域ごとの雲や降水、風向の出方が変わります。
そのため、年ごとの平均湿度や乾燥日の多さも変動します。
平年値は30年間の平均的な傾向を示すものであり、個々の冬のすべての日がその平均通りになるわけではありません。
冬の太平洋側と日本海側の違いを整理すると
- 大陸から冷たく乾いた季節風が吹く
- 季節風は日本海で熱と水蒸気を受け取る
- 日本海側の山地で空気が上昇・冷却し、雲や雪ができる
- 風上側では低温・多雲・降水で相対湿度が高くなりやすい
- 山地を越えた空気は水分を失い、下降しながら暖まる
- 太平洋側では晴天と下降・昇温で相対湿度が低くなりやすい
まとめ
冬に太平洋側と日本海側で相対湿度の傾向が違うのは、冬の季節風が日本海で水蒸気を受け取り、日本海側の山地で雲や雪を生み、その後、風下側へ下降・昇温して乾いた空気となるからです。
日本海側では低温・多雲・降雪の条件によって相対湿度が高めになりやすく、太平洋側では水分を失った空気が下降して暖まり、さらに晴天で気温が上がることで相対湿度が低くなりやすくなります。
ただし、これは冬型の気圧配置で現れやすい典型的な傾向です。低気圧や前線、局地風、地形によって例外もあります。
冬の湿度を理解するときは、単に「海側か内陸か」だけでなく、風がどちらから吹き、山の風上側か風下側か、その空気が途中でどれだけ水分を失ったかを見ることが大切です。

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