なぜレム睡眠の長さや現れ方は人や状態によって違うの?

同じ人でも、ある日は夢をよく覚えていて、別の日はほとんど覚えていないことがあります。また、睡眠検査をすると、レム睡眠の長さや現れる時刻が人によって少しずつ違います。こうした差は、レム睡眠が毎晩まったく同じ量・同じ時刻に現れる固定的な現象ではないために生じます。

レム睡眠は、ノンレム睡眠と交互に繰り返しながら夜の睡眠を構成します。その現れ方には、年齢、睡眠をとる時刻、前日までの睡眠不足、体内時計、睡眠の途中での覚醒、薬剤や体調などが影響します。つまり「レム睡眠が多い人・少ない人」という単純な体質差だけでなく、その日の条件による変化も大きいのです。

重要なのは、レム睡眠の長さだけで睡眠の良し悪しを判断できないことです。レム睡眠は健康な睡眠に必要な一部ですが、ノンレム睡眠とのバランスや睡眠全体の連続性、日中の状態まで含めて見る必要があります。

目次

そもそもレム睡眠は毎晩どのように現れるの?

人の睡眠には、大きく分けてノンレム睡眠とレム睡眠があります。一般的には、眠り始めるとまずノンレム睡眠へ入り、その後レム睡眠が現れます。その後もノンレム睡眠とレム睡眠が何度か交互に繰り返されます。

この周期は時計のように毎回同じ長さではありません。夜の前半は深いノンレム睡眠が多く、レム睡眠は比較的短めです。夜が進むにつれて深いノンレム睡眠は減り、レム睡眠の時間は長くなる傾向があります。

そのため、同じ合計睡眠時間でも、どの時刻に眠ったか、途中でどれだけ起きたか、朝どの時点で目覚めたかによって、最終的に含まれるレム睡眠の量は変わります。

なぜ夜の後半ほどレム睡眠が増えやすいの?

睡眠の構造は、起きている間にたまる睡眠圧と、約24時間周期で働く体内時計の両方から影響を受けます。夜の前半では、長く起きていたことによって高まった睡眠圧が強く、深いノンレム睡眠が多く現れます。

眠っている間に睡眠圧が下がっていくと、深いノンレム睡眠は減少します。一方、レム睡眠には体内時計による時刻依存の影響もあり、普段の睡眠の後半から朝方にかけて現れやすくなります。

このため、夜の前半だけ眠った場合と、朝まで十分な時間眠った場合では、レム睡眠の割合が同じとは限りません。早朝に睡眠を切り上げる生活が続けば、本来朝方に現れやすいレム睡眠の一部が短くなることがあります。

人によってレム睡眠の量が違う主な理由

1.年齢によって睡眠構造が違う

レム睡眠の割合は、生涯を通じて一定ではありません。乳幼児期にはレム睡眠に相当する睡眠が成人より多く、成長とともに割合が大きく減少します。成人以降も、総睡眠時間や睡眠構造が年齢とともに変化するため、レム睡眠の時間にも変化がみられます。

成人期から高齢期にかけた研究をまとめたメタ解析でも、レム睡眠の割合や時間は年齢によって一定ではなく、ライフステージに伴う変化が報告されています。ただし、加齢で最も目立ちやすい変化は深いノンレム睡眠の減少や夜間覚醒の増加であり、「高齢になるとレム睡眠がなくなる」という意味ではありません。

2.必要な睡眠時間と睡眠時刻が違う

人によって必要な睡眠時間には個人差があります。さらに、朝型・夜型など体内時計の時刻にも違いがあります。同じ午前6時に起きたとしても、本人の体内時計にとってどの段階の睡眠だったかは同じとは限りません。

夜型の人が社会生活の都合で早朝に起きると、睡眠の後半が削られやすくなります。レム睡眠は睡眠後半に多く現れる傾向があるため、短い睡眠が続けばレム睡眠の時間にも影響が出る可能性があります。

3.前日までの睡眠不足や睡眠履歴が違う

睡眠は、その一晩だけで独立しているわけではありません。前日までにどれだけ眠ったか、どの睡眠段階が不足したかによって、その後の睡眠構造が変化します。

実験研究では、レム睡眠を選択的に減らすと、その後にレム睡眠が増えやすくなる「レム睡眠リバウンド」が観察されます。これは、レム睡眠にも一定の恒常性調節があることを示す現象です。

ただし、日常生活で一晩睡眠不足になったから必ず同じ量だけレム睡眠が増える、という単純な仕組みではありません。ノンレム睡眠の回復、体内時計、睡眠時刻なども同時に影響します。

同じ人でも日によってレム睡眠が違うのはなぜ?

レム睡眠は、毎晩同じ条件で測定されるわけではありません。就寝時刻、起床時刻、途中覚醒、前日の睡眠、体調などが変われば、睡眠周期の回数や各周期の長さも変化します。

変化する条件 レム睡眠に起こりうる変化
睡眠時間が短い 朝方の睡眠が削られると、後半に多いレム睡眠も短くなりやすい
睡眠時刻がずれる 体内時計との位置関係が変わり、レム睡眠が現れやすい時刻も変化する
途中で何度も目覚める 睡眠周期が分断され、レム睡眠の連続性や長さが変わる
特定の睡眠段階が不足する その後の睡眠で反動的な変化が起こることがある
薬剤・アルコールなど 睡眠段階の比率やレム睡眠の出現時刻を変えることがある
心身の状態 睡眠の連続性や睡眠段階の構成が変化することがある

薬によってレム睡眠が変わることがあるの?

あります。とくに脳内のセロトニン、ノルアドレナリン、アセチルコリンなどに作用する薬は、睡眠段階にも影響することがあります。

抗うつ薬を例にすると、薬の種類によって作用は異なりますが、多くの抗うつ薬ではレム睡眠が始まるまでの時間が長くなったり、レム睡眠の量が減ったりすることが報告されています。一方、すべての薬が同じ方向に働くわけではなく、種類、用量、服用時刻、服用期間によって睡眠への影響は異なります。

そのため、薬を使用している人の睡眠検査でレム睡眠が少なかったとしても、それだけで病気や異常を断定することはできません。服用している薬やその時点の状態を含めて解釈する必要があります。

アルコールや生活習慣でもレム睡眠は変わる?

睡眠段階は、アルコール、カフェイン、光環境、就寝時刻などの生活条件にも影響されます。たとえばアルコールは寝つきを一時的に早めることがありますが、睡眠の後半を不安定にしたり、睡眠段階の構成を変えたりすることがあります。

夜更かしによって睡眠時間が短くなる場合も、朝方に多いレム睡眠を削ることにつながります。反対に、休日に長く眠ると普段より多くの睡眠周期を含むため、結果としてレム睡眠時間が増えることがあります。

こうした変化は「レム睡眠だけを増減させる」というより、睡眠全体の時刻や長さ、連続性が変わった結果として起こります。

夢をよく見る人はレム睡眠が多いの?

レム睡眠では鮮明な夢が報告されやすいことが知られていますが、「夢を覚えている量=レム睡眠の量」と考えることはできません。夢はノンレム睡眠中にも生じることがあり、夢を覚えているかどうかは、夢を見た直後に目覚めたか、記憶として保持できたかなどにも左右されます。

そのため、夢をたくさん覚えている朝があっても、その一晩にレム睡眠が特別に多かったとは限りません。逆に、夢の記憶がなくてもレム睡眠がなかったとは言えません。

ストレスや心の状態でも違いが出る?

心身の状態は睡眠全体に影響します。強いストレスや不安があると、寝つきが悪くなったり途中で目覚めやすくなったりして、睡眠周期そのものが分断されることがあります。

また、うつ病など一部の精神疾患では、レム睡眠が始まるまでの時間やレム睡眠の密度に特徴的な変化がみられることがあります。ただし、睡眠検査の一つの数値だけで精神疾患を診断することはできません。

レム睡眠の変化は、体調や薬の影響を含む多くの要因で起こるため、「レム睡眠が多いから○○の病気」「少ないから異常」と単純に結びつけないことが重要です。

レム睡眠の個人差はどうやって調べるの?

睡眠段階を正確に判定する標準的な方法は、睡眠ポリグラフ検査です。脳波、眼球運動、あごの筋活動などを同時に記録し、ノンレム睡眠とレム睡眠を区別します。

家庭用のスマートウォッチや睡眠アプリでも「レム睡眠」と表示されることがありますが、多くは体の動きや心拍などから睡眠段階を推定しています。医療用の脳波を含む睡眠検査と同じ精度で直接判定しているわけではありません。

そのため、家庭用機器で一晩のレム睡眠が少なく表示されたからといって、すぐに異常と考える必要はありません。日ごとの変動や機器の推定誤差も考慮する必要があります。

レム睡眠が多ければ多いほど良いの?

いいえ。睡眠はレム睡眠だけで構成されているわけではなく、ノンレム睡眠とレム睡眠が周期的に入れ替わることが重要です。深いノンレム睡眠も睡眠全体の重要な一部です。

レム睡眠の割合には年齢や睡眠条件による違いがあり、健康な人でも毎晩少しずつ変動します。「理想のレム睡眠は○分」と一つの数字だけを目標にするより、十分な睡眠時間が取れているか、夜中に何度も目覚めていないか、日中に強い眠気がないかを見る方が実用的です。

レム睡眠の違いで注意したい状態

レム睡眠の量そのものを家庭で判断するのは難しいため、実際には周囲の症状を見ることが重要です。次のような状態が続く場合は、レム睡眠の個人差だけではなく睡眠障害などが関係している可能性があります。

  • 十分な時間眠っているのに強い日中の眠気が続く
  • 大きないびきや睡眠中の呼吸停止を指摘される
  • 夢に合わせるように大きく手足を動かし、けがをすることがある
  • 突然眠り込む、感情が高ぶると力が抜けるなどの症状がある
  • 新しい薬を飲み始めてから睡眠の状態が大きく変わった

こうした場合は、「レム睡眠が多い・少ない」と自己判断するより、症状全体について医療機関に相談する方が適切です。

よくある疑問

毎晩レム睡眠の割合は同じなの?

同じではありません。睡眠時間、睡眠時刻、途中覚醒、前日までの睡眠、体調などによって変動します。

レム睡眠が短い日は睡眠の質が悪い?

一晩のレム睡眠時間だけでは判断できません。ノンレム睡眠とのバランス、総睡眠時間、睡眠の連続性、日中の状態も重要です。

朝寝坊するとレム睡眠が増えるの?

睡眠の後半にはレム睡眠が長くなる傾向があるため、普段より長く眠ればレム睡眠を含む時間が増えることがあります。ただし、増え方はその日の睡眠条件によって異なります。

夢を覚えていない日はレム睡眠がなかったの?

そうとは限りません。夢の記憶とレム睡眠量は同じものではなく、目覚めるタイミングや記憶の保持にも左右されます。

まとめ

レム睡眠の長さや現れ方に人や状態による違いがあるのは、レム睡眠が体内時計、睡眠圧、睡眠周期、年齢、睡眠時刻、前日までの睡眠履歴、薬剤や体調など複数の条件に影響されるからです。

また、レム睡眠は夜の前半と後半で同じように現れるわけではなく、一般に後半ほど長くなります。そのため、睡眠時間を短くしたり、起床時刻を変えたりするだけでも、その晩に含まれるレム睡眠の量は変わります。

個人差と日ごとの変動がある以上、「レム睡眠は何分なら正常」という一つの数字だけで判断するのは適切ではありません。睡眠全体の長さと連続性、ノンレム睡眠とのバランス、日中の眠気や生活への影響まで合わせて見ることが大切です。

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