なぜ反射では刺激が強くなると動員される運動ニューロンが段階的に増えるの?

反射は「起こるか、起こらないか」だけの単純なスイッチではありません。弱い刺激では小さな反応しか起こらず、刺激を強くすると反応が大きくなることがあります。

このとき、1個の運動ニューロンが刺激に応じて無限に強く反応しているわけではありません。実際には、脊髄内の運動ニューロンプールの中で、活動に参加する運動ニューロンの数が段階的に増え、さらに各運動ニューロンの発火頻度も変化することで、筋全体の出力が調節されます。

なぜ強い入力になるほど、より多くの運動ニューロンが動員されるのでしょうか。重要なのが、運動ニューロンごとに興奮しやすさが異なることと、「サイズの原理」と呼ばれる動員順序です。

目次

結論:運動ニューロンごとに活動を始める閾値が異なり、入力が強くなるほど高閾値の細胞まで活動するから

同じ筋を支配する運動ニューロンは、一つの集団、すなわち運動ニューロンプールを作っています。

この集団の中には、比較的小さく興奮しやすい運動ニューロンと、より大きく、活動を始めるために強い入力を必要とする運動ニューロンがあります。

弱い興奮性入力では、まず低閾値の小さい運動ニューロンが活動します。入力がさらに強くなると、それまで閾値に達していなかった運動ニューロンも順番に活動し始めます。

このように、小さい運動単位から大きい運動単位へおおむね順序立って動員される仕組みは「サイズの原理」と呼ばれます。大阪大学の学位論文でも、Ia感覚神経線維からの入力に対して、小さい運動ニューロンは入力抵抗が高く、より早く活動電位の閾値へ達しやすいことが説明されています。

運動ニューロンが大きいと、なぜ活動しにくいの?

運動ニューロンの大きさによって、同じ程度のシナプス入力を受けたときの膜電位変化が異なります。

一般に、小さい運動ニューロンは入力抵抗が高いため、同じシナプス電流が流れた場合でも膜電位が比較的大きく変化します。そのため、活動電位を発生させる閾値に達しやすくなります。

一方、大きい運動ニューロンは入力抵抗が低く、同じ入力では膜電位変化が小さいため、活動を始めるにはより強い総シナプス入力が必要になります。

NCBI Bookshelfの神経科学教材でも、運動ニューロンプールへのシナプス入力が増えると、低閾値のS型運動単位からFR型、さらに高い入力でFF型へと、より大きな運動単位が順次動員されると説明されています。

「運動単位」とは何?

一つのα運動ニューロンと、そのニューロンが支配する複数の筋線維をまとめて「運動単位」と呼びます。

運動ニューロンが1回活動すると、その運動単位に属する筋線維群も収縮します。そのため、筋全体の力は、いくつの運動単位が活動しているかと、それぞれの運動ニューロンがどの程度の頻度で発火しているかによって決まります。

弱い反射では少数の低閾値運動単位だけが参加し、より強い反射では追加の運動単位が参加します。こうして筋全体の収縮力を段階的に増やすことができます。

刺激が強くなると、感覚神経側では何が変わるの?

反射の出力が大きくなる理由は、運動ニューロン側だけにあるわけではありません。

刺激が強くなると、感覚受容器からの発火頻度が増えたり、追加の感覚線維が活動したりして、脊髄へ入る求心性入力が大きくなることがあります。

たとえば伸張反射では、筋がより強く、あるいはより急速に伸ばされると、筋紡錘由来の求心性入力が増えます。その結果、脊髄内のα運動ニューロンプールへ届く興奮性入力が強くなり、低閾値の運動ニューロンだけでなく、より高閾値の運動ニューロンも活動しやすくなります。

つまり「強い刺激→強い反射」という関係には、感覚入力の増加と運動ニューロンの追加動員という複数の段階が関わっています。

なぜ最初から全部の運動ニューロンを使わないの?

必要な力が小さいときに、最初から最大数の運動単位を動員すると、筋力の細かな調節が難しくなります。

低閾値で小さい運動単位は、一般に一つあたりの発揮張力が小さく、疲労しにくい性質を持ちます。まずこうした運動単位を使い、必要に応じてより大きな運動単位を追加することで、小さな力から大きな力まで滑らかに調節できます。

日本体育大学の運動生理学資料でも、運動単位は小さいものから大きいものへ動員され、必要な力に応じて活動参加数が増えることが示されています。

この仕組みは反射だけでなく、随意運動でも広く利用されています。

反射では運動ニューロンが一個ずつ順番に増えるの?

概念的には「低閾値から高閾値へ順に増える」と説明できますが、実際の神経回路はもっと複雑です。

運動ニューロンごとの閾値には連続的な差があり、シナプス入力の分布も完全に均一ではありません。また、抑制性入力、脳からの下行性入力、姿勢、筋の活動状態などによって、どの運動ニューロンがどの時点で活動するかは変化します。

そのため「1番、2番、3番」と機械的に固定された順番で一個ずつ活動するわけではありません。

それでも、共通した入力を受ける運動ニューロンプールでは、低閾値で小さい運動単位から高閾値で大きい運動単位へという秩序だった動員が基本原理として観察されます。

運動ニューロンの数だけで反射の強さは決まるの?

いいえ。動員される運動単位数だけでなく、すでに活動している運動ニューロンの発火頻度も重要です。

一つの運動ニューロンがより高い頻度で活動すると、その運動単位の筋線維で起こる収縮が時間的に加重され、より大きな張力を発揮できます。

したがって筋出力は、主に「新しい運動単位を追加する動員」と「各運動単位の発火頻度を高める頻度調節」の組み合わせで変化します。

反射強度の変化も、単純に動員数だけを見るのではなく、こうした複数の機序の総和として考える必要があります。

H反射では刺激を強くするとずっと大きくなるの?

ここは重要な例外です。

H反射は、末梢神経を電気刺激してIa求心性線維を活動させ、脊髄の伸張反射回路に近い反応を電気生理学的に調べる方法です。

低い刺激強度では、刺激を強めるとより多くの求心性線維が活動し、H反射は大きくなります。しかし、さらに刺激を強くすると運動神経軸索そのものも直接刺激され、逆行性に進む活動電位が増えます。

この逆行性活動電位と、脊髄から筋へ向かう反射性の活動電位が衝突すると、H反射はかえって小さくなります。

近年のH反射レビューでも、刺激強度の上昇とともにH反射は初め増大するものの、より高い刺激ではM波の増大や逆行性衝突などにより低下しうることが示されています。

したがって「刺激が強いほど反射は必ず大きい」という単純な比例関係ではありません。

なぜ段階的な動員は反射の調節に向いているの?

反射には、姿勢維持のような小さく持続的な調節から、転倒を防ぐための大きな筋出力まで、さまざまな強さが必要です。

もし反射が常に全力で起こるなら、わずかな姿勢変化でも筋が強く収縮しすぎてしまいます。

低閾値の運動単位から必要な分だけ順に参加させることで、弱い入力では小さな補正、強い入力では大きな補正という連続的な調節が可能になります。

これは、反射を単なるオン・オフ反応ではなく、身体状況に応じて大きさを変えられる制御系にする重要な仕組みです。

姿勢や脳からの指令でも動員のされ方は変わるの?

変わります。

運動ニューロンは、反射入力だけを受けているわけではありません。脳幹や大脳皮質から下る神経経路、他の感覚入力、脊髄内の抑制性介在ニューロンなどからも常に影響を受けています。

そのため、同じ末梢刺激でも、立位か座位か、筋があらかじめ緊張しているか、運動中か静止中かによって反射の大きさは変化します。

ある運動ニューロンがすでに閾値近くまで興奮していれば、わずかな追加入力でも活動しやすくなります。逆に強い抑制を受けていれば、同じ刺激でも動員されにくくなります。

サイズの原理は絶対に崩れないの?

基本原理として非常に重要ですが、すべての状況で完全に固定された順番が守られると考えるのは適切ではありません。

異なる運動ニューロン群に異なるシナプス入力が選択的に入る場合や、特殊な運動課題、強い神経調節入力がある場合には、動員順序にずれが生じることがあります。

2023年のJournal of Physiologyのレビューでも、共通入力を受ける運動ニューロンではサイズの原理が強い制約として働く一方、入力分布が一様でない場合などには例外が起こりうると整理されています。

したがって「刺激強度が上がるほど、小さい運動ニューロンから大きい運動ニューロンへ動員が広がる」というのは重要な基本モデルですが、実際の反射出力は抑制・促通・下行性制御なども含む総合結果です。

まとめ

反射で刺激が強くなると動員される運動ニューロンが段階的に増えるのは、運動ニューロンプールの各細胞で活動閾値が異なるからです。

小さい運動ニューロンは入力抵抗が高く、同じシナプス入力でも閾値へ達しやすいため、まず低閾値の運動単位が活動します。入力が強くなると、より高い閾値を持つ大きな運動ニューロンまで順次活動し、筋全体の出力が増えます。

このサイズの原理に、感覚入力の増加、運動ニューロンの発火頻度、抑制・促通、脳からの下行性調節が重なることで、反射は弱い補正から強い防御反応まで幅広い強さを作り分けられます。

ただし、H反射のように強い電気刺激では反射振幅がかえって低下する場合もあり、刺激強度と反射出力は単純な比例関係ではありません。

参考資料

関連記事

関連する「なぜ?」

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

目次