結論からいうと、堆積岩に場所や条件による違いがあるのは、堆積物を運ぶ水や風の強さ、堆積する場所の水深や波・流れ、材料の供給源、生物活動、化学環境、さらに埋没後の圧密・セメント作用などが場所ごとに異なるからです。
同じ「堆積岩」でも、山地に近い場所では礫の多い礫岩ができやすく、河川や海岸では砂岩、静かな湖底や沖合では泥岩ができやすくなります。また、温暖な浅海では生物の殻が集まって石灰岩になることがあり、蒸発の強い閉鎖的な水域では岩塩や石こうなどができることもあります。
つまり堆積岩の違いは、単に「材料の粒が違う」だけではありません。どこから材料が来て、どのくらいのエネルギーで運ばれ、どの環境で堆積し、その後どのように固まったかという履歴の違いが岩石に残っているのです。
堆積岩は、堆積する場所の条件を強く反映する
産業技術総合研究所 地質調査総合センター(GSJ)は、堆積岩を、堆積物が固結してできた岩石として説明し、砕屑性堆積岩では粒子の大きさが分類の重要な基準になるとしています。代表的には礫岩、砂岩、シルト岩、泥岩があります。
USGS(米国地質調査所)も、堆積岩は既存の岩石片や生物起源の物質などが地表で堆積し、埋没後に圧密・セメント作用を受けて形成されると説明しています。
このとき、どの粒子がどこに堆積するかは、運搬する水や風の力によって大きく変わります。流れが強い場所では大きな礫も動きますが、流れが弱くなると大きな粒から順に沈みます。そのため、堆積場所の違いが、そのまま岩石の粒径の違いにつながります。
山地や扇状地では礫の多い堆積岩ができやすい
山地の谷や山麓の扇状地では、川の勾配が急で、豪雨時には大きな礫を運べるほど流れが強くなることがあります。
こうした場所では、直径数センチ以上の礫が大量に堆積することがあります。その堆積物が後に固結すると礫岩になります。
山地に近い堆積物は、運搬距離が短いため粒が角ばっている場合があります。一方、下流まで長く運ばれると、礫同士の衝突や摩耗によって丸みを帯びやすくなります。
つまり、礫岩の粒の大きさや丸みを見ると、堆積した場所の流れの強さや、材料がどのくらい運ばれてきたかを考える手がかりになります。
河川では流れの強さと位置によって砂と泥の割合が変わる
河川では、同じ川の中でも流れの速さが場所によって違います。
川の中央や瀬のように流れが強い場所では、砂や礫が運ばれやすくなります。一方、湾曲した川の内側や氾濫原など流れの弱い場所では、細かなシルトや粘土が沈みやすくなります。
洪水が起こると、普段は川の中を流れている水が氾濫原へ広がります。川からあふれた直後は比較的粗い砂が堆積しやすく、川から離れるほど流れが弱くなり、細かな泥がたまりやすくなります。
そのため、過去の河川堆積物が固まった地層では、砂岩と泥岩が場所によって複雑に入れ替わることがあります。
デルタでは、わずかな場所の違いでも粒度が変わる
河川が海や湖へ流れ込む河口では、流れが急に弱くなり、運ばれてきた土砂が堆積してデルタが形成されます。
しかし、デルタ内部でも環境は一様ではありません。河口に近く流れが強い場所では砂が多く、さらに沖合の静かな場所では泥が多くなります。
木曽川デルタのボーリングコアを調べたJ-STAGEの研究では、プロデルタ、デルタフロントなどの位置の違いによって粒度組成や堆積速度が異なることが示されています。河川から土砂が集中する場所では比較的粗い粒子が多く、波浪や沿岸流で再配置される場所では粒子の淘汰度も変化します。
このように、同じデルタの中でも、河口からの距離、波の強さ、沿岸流、土砂供給量によって、将来できる堆積岩の性質が違ってきます。
海岸では波が粒子を選別する
海岸では、波が砂や礫を繰り返し動かします。そのため、粒子が大きさごとに選別される淘汰が進みやすい環境があります。
強い波が当たる海岸では、細かな泥は沖へ運ばれやすく、比較的そろった砂や礫が残ります。そのため、海浜砂が固まってできた砂岩では、粒径が比較的よくそろっている場合があります。
一方、湾の奥や波の弱い場所では、細かな泥も沈みやすくなります。
USGSは、堆積物の粒径分布が運搬・堆積時の力学的条件を反映し、特定の堆積環境を推定するための基本的な情報になると説明しています。
沖合や深い海では泥岩ができやすい
海岸から離れた沖合では、河川が運んできた大きな砂や礫の多くは手前で沈み、非常に細かなシルトや粘土が水中を浮遊して遠くまで運ばれます。
流れが穏やかな深い海底では、こうした細粒物質がゆっくり沈み、泥として積もります。それが埋没・固結すると泥岩や頁岩になります。
USGSの海底堆積物研究でも、低エネルギーの環境ではシルトや粘土が主体となる細粒堆積物が広く分布することが示されています。
つまり、泥岩が多い地層は、少なくともその堆積時に比較的静かな水環境があった可能性を考える材料になります。
供給源の岩石が違えば、同じ砂岩でも成分が違う
堆積岩の違いは、堆積した場所の条件だけでなく、材料を供給した地域の地質にも左右されます。
花こう岩が広く分布する山地から流れてきた砂には、石英や長石が多く含まれることがあります。火山地域から供給される砂には、火山岩片や火山灰が多く含まれることがあります。
また、長距離を運ばれる間に風化に弱い鉱物が減り、比較的安定な石英が残りやすくなることがあります。
そのため、同じ砂岩でも、石英を多く含むもの、長石を多く含むもの、岩片を多く含むものなど、鉱物組成に違いが生まれます。砂岩の成分は、過去の山地や火山、地殻の性質を考える手がかりになります。
石灰岩は生物や水の化学条件によって地域差が生まれる
堆積岩には、岩石片ではなく生物の殻や化学沈殿物を主な材料とするものもあります。
GSJは、生物起源の代表的な堆積岩として、石灰質の殻をもつ生物に由来する石灰岩や、珪質の殻をもつ微生物に由来するチャートを挙げています。
サンゴや有孔虫などが多く生息する温暖な浅海では、炭酸カルシウムに富む堆積物がたまり、石灰岩が形成されやすくなります。一方、陸から大量の泥や砂が流れ込む場所では、それらが混ざるため純度の高い石灰質堆積物はできにくくなります。
このため、生物の生息条件、水温、水深、陸からの土砂供給量なども、堆積岩の地域差を生みます。
蒸発の強さや水の化学状態でも堆積岩は変わる
乾燥した地域の閉鎖的な湖や内海では、水の蒸発が非常に強くなることがあります。
水が蒸発すると、溶けていた塩類の濃度が高まり、一定の濃度を超えると鉱物として沈殿します。その結果、石こうや岩塩などの蒸発岩が形成されることがあります。
このような岩石は、通常の河川砂や泥からなる堆積岩とは形成条件が大きく異なります。
つまり、降水量と蒸発量、水域が外海とどれだけつながっているか、水に何が溶けているかといった化学的・気候的条件も、堆積岩の違いを決めます。
同じ堆積物でも、埋没後の条件によって硬さや空隙が変わる
堆積した直後の砂や泥はまだ未固結です。その後、上に新しい堆積物が積み重なると、圧密とセメント作用が進みます。
しかし、地下にどのくらい深く埋没したか、地下水にどんな成分が含まれていたか、温度がどの程度上がったかによって、固まり方は異なります。
たとえば砂岩では、石英や方解石などのセメントが粒子の間を強く埋めると緻密で硬い岩石になります。一方、セメントが少なければ空隙が多く残り、比較的もろい岩石になることがあります。
長岡地域の砂質堆積物を調べた研究でも、堆積相の違いによって粒度組成や間隙径分布が異なることが示されています。つまり、もとの堆積環境は、岩石になった後の空隙の構造や流体の通りやすさにも影響します。
堆積岩の違いは「堆積相」として読み解ける
地質学では、粒径、堆積構造、化石、鉱物組成、地層の重なり方などを組み合わせて、堆積した環境を推定します。このような特徴のまとまりを堆積相と呼びます。
たとえば、礫岩と斜交層理をもつ砂岩の組み合わせは強い流れの河川を示す場合があり、細かな泥岩に海生生物の化石が含まれていれば、静かな海底環境を示す可能性があります。
ただし、一つの特徴だけで環境を決めることはできません。同じ砂岩でも河川、砂漠、海岸、デルタなど複数の環境で形成されるため、粒径、淘汰、堆積構造、化石などを総合して判断します。
場所の違いは地層の上下方向にも記録される
堆積環境は時間とともに移動します。海面が上昇したり、デルタが海側へ前進したり、川の流路が移動したりすると、同じ場所でも堆積する物質が変わります。
たとえば、ある地点で最初は沖合の泥がたまり、その後デルタが前進して砂がたまるようになると、地層は下から上へ泥岩から砂岩へ変化することがあります。
木曽川デルタの研究でも、デルタの前進に伴う粒度変化が地層中に記録されています。
つまり、堆積岩の違いは「地域差」だけでなく「同じ場所の時代差」としても現れます。
まとめ
岩石の堆積岩に場所や条件による違いがあるのは、運搬する流れの強さ、堆積場所の水深や波浪、供給される材料、生物活動、水の化学状態、気候、埋没後の圧密・セメント作用などが場所ごとに違うからです。
山地や扇状地では礫岩、河川や海岸では砂岩、静かな湖底や沖合では泥岩ができやすくなります。さらに、温暖な浅海では石灰岩、蒸発の強い閉鎖水域では蒸発岩が形成されることがあります。
同じ砂岩でも、河川・デルタ・海岸など形成環境が違えば、粒の大きさ、淘汰度、鉱物組成、堆積構造が異なります。埋没後の地下水や圧力の条件によっても、硬さや空隙の残り方は変わります。
つまり堆積岩は、堆積した場所のエネルギー、材料、環境、そしてその後の地下での変化を記録した岩石です。その違いを読み取ることで、過去に川・海岸・デルタ・深海など、どのような環境があったのかを考えることができます。

コメント