なぜ変成岩はできる場所や条件によって異なるのか?

結論からいうと、変成岩に場所や条件による違いがあるのは、もとの岩石が経験した温度・圧力・流体・変形の強さが地域ごとに異なるからです。さらに、同じ温度や圧力でも、もとの岩石である「原岩」が違えば、できる鉱物や組織も変わります。

たとえば、マグマの近くでは温度が高くなりやすく、強い熱による接触変成が起こります。プレートが沈み込む地域では、温度に比べて圧力が高い条件になりやすく、高圧型の変成岩が形成されます。一方、地殻が強く加熱される地域では、高温・比較的低圧の変成作用が起こることがあります。

つまり、変成岩の地域差は「同じ岩石が場所によって偶然違って見える」のではなく、その場所がたどった地質学的な温度・圧力・変形・流体の履歴が岩石に記録された結果です。

目次

変成岩の違いを決める基本は温度と圧力

産業技術総合研究所 地質調査総合センター(GSJ)は、変成作用でどのような変成岩ができるかを決める基本条件として、温度と圧力を挙げています。地下深くなるほど一般に温度と圧力は高くなりますが、その上がり方は場所によって同じではありません。

たとえば、マグマが近くにある場所では、深さのわりに温度が高くなります。逆に、沈み込み帯のように比較的冷たいプレートが地下深くまで入り込む場所では、温度のわりに圧力が高くなることがあります。

この違いによって、同じ原岩でも安定する鉱物の種類が変わり、岩石の組織も変化します。地質学では、こうした温度・圧力条件の違いを、低圧型・中圧型・高圧型などとして整理します。

接触変成はマグマの近くで起こりやすい

地下に高温のマグマが貫入すると、周囲の岩石が強く加熱されます。これによって起こるのが接触変成作用です。

GSJは、マグマの熱を主に受けてできたものを熱変成岩、または接触変成岩と呼んでいます。泥岩が加熱されて緻密なホルンフェルスになるのは代表的な例です。

接触変成では、変成作用の中心がマグマの熱なので、マグマに近いほど高温になりやすく、離れるにつれて変成の程度が弱くなる傾向があります。つまり同じ地域でも、貫入岩体からの距離によって変成岩の鉱物組成が変わることがあります。

このため、花こう岩体の周囲では、中心から外側へ向かって異なる変成鉱物が現れる「接触変成帯」が形成されることがあります。

広域変成ではプレート運動や造山運動が重要

山地形成やプレートの沈み込み・衝突に伴い、広い範囲の岩石が地下へ運ばれると、熱と圧力の両方を受けます。これが広域変成作用です。

広域変成では、単に温度が上がるだけでなく、岩石が強く圧縮・変形されることがあります。その結果、雲母などの板状鉱物が一定方向に並び、片理や片麻状組織が発達する場合があります。

USGSも、変成岩は高温、高圧、鉱物を含む高温流体、またはそれらの組み合わせで形成され、圧力によって平たい鉱物が一定方向へ並ぶと片理が生じると説明しています。

つまり、同じ温度帯でも、どの方向からどれほど強く圧力を受けたかによって、岩石の見た目や割れ方が変わります。

沈み込み帯では「低温高圧型」ができやすい

海洋プレートが沈み込む場所では、比較的冷たいプレートが地下深くまで運ばれます。そのため、深さによる圧力は大きくても、温度はそれほど高くならない条件が生まれることがあります。

このような環境で形成されるのが、低温高圧型の変成岩です。日本では三波川変成帯がその代表として知られています。

GSJの地域地質資料では、三波川帯について高圧型の変成作用を受けた岩石が分布し、領家帯とは異なる温度・圧力条件を示すことが整理されています。

低温高圧条件では、藍閃石など高圧環境で安定する鉱物が現れることがあります。こうした鉱物は、岩石が過去に沈み込み帯の深部へ運ばれたことを示す重要な手がかりです。

地殻が強く加熱される場所では「高温低圧型」ができる

一方、地殻がマグマ活動などによって強く加熱される地域では、比較的浅い深さでも高温になることがあります。

日本の領家変成帯は、高温・比較的低圧の変成作用を受けた代表的な地域です。GSJの資料では、領家変成岩類が高温低圧型の変成作用を受け、黒雲母帯、カリ長石珪線石帯、ざくろ石菫青石帯など、変成温度の違いによる分帯が可能であることが示されています。

このような地域では、高温で安定する珪線石や菫青石などの鉱物が現れる場合があります。

三波川帯と領家帯の違いは、同じ日本列島でも、形成された場所と地殻内部の温度・圧力条件が違えば、変成岩の種類や鉱物組成が大きく変わることを示す例です。

同じ地域でも深さが違えば変成度が変わる

変成作用を受ける場所では、深さによって温度や圧力が変わります。そのため、同じ地域の中でも変成の程度が一様とは限りません。

一般に、温度・圧力条件がより高くなると、低温で安定な鉱物が消え、より高温・高圧で安定な鉱物が現れます。こうした変成の強さを変成度と呼びます。

広域変成帯では、変成度の低い地域から高い地域へ、鉱物の組み合わせが段階的に変化することがあります。GSJの展示資料でも、広域変成岩は変成度の上昇に伴って千枚岩、結晶片岩、片麻岩などへ変化する例が示されています。

ただし、実際の岩石名は原岩や化学組成にも左右されるため、すべての岩石が同じ順序で変化するわけではありません。

原岩が違えば、同じ温度・圧力でも別の変成岩になる

変成岩の違いを考えるうえで、温度・圧力と同じくらい重要なのが原岩です。

原岩とは、変成作用を受ける前の岩石のことです。泥岩、砂岩、石灰岩、玄武岩、花こう岩など、原岩の化学組成はそれぞれ違います。

たとえば石灰岩は主に方解石からできているため、再結晶すると大理石になりやすくなります。石英を多く含む砂岩は、再結晶すると石英岩になることがあります。泥質岩はアルミニウムやカリウムなどを含むため、黒雲母、ざくろ石、菫青石など多様な変成鉱物をつくることがあります。

つまり、同じ温度と圧力を受けても、材料が違えばできる鉱物も違います。変成岩の地域差は、地質条件だけでなく、そこにもともとどんな岩石が存在したかにも左右されます。

流体の量や成分でも違いが生まれる

地下では、水や二酸化炭素などを含む高温流体が岩石中を移動することがあります。流体は鉱物の反応を進めたり、元素を運んだりするため、変成作用に大きな影響を与えます。

USGSの研究でも、変成作用において流体が熱や化学成分を運び、鉱物反応の進行に重要な役割を果たす例が示されています。

流体が多く通る場所では鉱物反応が進みやすくなり、逆に流体が少ない場所では、同じ温度・圧力でも反応が十分に進まないことがあります。

そのため、同じ変成帯の中でも、断層や割れ目など流体が通りやすい場所と、流体が入りにくい場所で鉱物組成が違うことがあります。

断層周辺では変形の強さが岩石の違いを生む

断層の近くでは、岩石が強くせん断され、押しつぶされたり引き延ばされたりします。このような変形を主な原因とする変成作用を動力変成作用と呼びます。

強い変形を受けると、鉱物粒が細かくなったり、一定方向に引き延ばされたり、再結晶したりします。マイロナイトなどは、そのような強いせん断変形を記録する岩石です。

つまり、変成岩の違いは温度と圧力の数値だけではなく、断層運動による変形の強さや方向にも影響されます。

変成岩は「変成相」で地域ごとの条件を比較できる

地質学では、特定の温度・圧力条件で安定する鉱物の組み合わせをまとめて変成相と呼びます。

緑色片岩相、角閃岩相、グラニュライト相、青色片岩相、エクロジャイト相などが代表例です。これらは単なる岩石名ではなく、「どのような温度・圧力条件だったか」を示す枠組みとして使われます。

USGSの地域変成岩研究でも、変成岩を温度・圧力条件と変成年代に基づく変成相単位として区分し、地域ごとの変成履歴を比較しています。

たとえば高圧低温の青色片岩相は沈み込み帯との関係を示し、高温の角閃岩相やグラニュライト相はより強い加熱を受けた環境を示します。

同じ変成岩でも形成後の履歴によって違いが出る

変成岩は、最高温度・最高圧力を受けたあと、そのまま地表に現れるわけではありません。地下深部から隆起する途中で温度や圧力が下がり、再び鉱物反応が起こることがあります。

これを後退変成作用と呼びます。たとえば高温でできた鉱物の周囲に、低温で安定な鉱物が新しく成長することがあります。

一つの岩石の中に高温期と低温期の鉱物が共存する場合、その岩石は複数段階の変成履歴を記録している可能性があります。

そのため、同じ地域から採れた岩石でも、地表へ戻る過程の違いや流体の入り方によって、現在見える鉱物組成が異なる場合があります。

変成岩の地域差からプレート運動を読み取れる

変成岩の温度・圧力条件を調べると、その岩石が過去にどのくらい深くまで運ばれ、どのような地殻環境を経験したかを推定できます。

低温高圧型の変成岩が広く分布する地域では、過去に沈み込み帯が存在した可能性があります。高温低圧型の変成岩と大量の花こう岩が一緒に分布する地域では、大規模な地殻加熱やマグマ活動が関係した可能性があります。

このため、変成帯の分布や変成相、鉱物組成を比較することは、過去のプレート運動や造山運動を復元する重要な方法です。

まとめ

岩石の変成岩に場所や条件による違いがあるのは、原岩が経験した温度・圧力・流体・変形の条件が地域ごとに異なり、さらに原岩そのものの化学組成も違うからです。

マグマの近くでは高温の接触変成が起こりやすく、沈み込み帯では低温高圧型、地殻が強く加熱される地域では高温低圧型の変成作用が起こることがあります。日本の三波川帯と領家帯は、その違いを示す代表的な例です。

さらに、同じ地域の中でも深さ、流体の通り道、断層変形、原岩の種類、後退変成の程度によって鉱物組成や組織が変わります。

つまり変成岩は、その場所が過去にどのような深さ・温度・圧力・変形・流体環境を経験したかを記録する岩石です。場所ごとの違いを比べることで、地球内部の環境やプレート運動の歴史を読み解くことができます。

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