なぜ大型の台風でも暴風域が広いとは限らないのか?

天気予報では、台風について「大型」「非常に強い」「暴風域を伴う」といった言葉が並びます。これらは似ているように見えますが、実は別々の基準を表しています。

では、なぜ大型の台風でも暴風域が広いとは限らないのでしょうか。結論からいうと、気象庁の「大きさ」は風速15m/s以上の強風域の半径で決まるのに対し、暴風域は風速25m/s以上の範囲だからです。弱めの強風が広い範囲まで吹いていても、25m/s以上の非常に強い風が広く分布しているとは限りません。

目次

「大型」は台風全体の見た目の大きさではない

気象庁は、台風の大きさを強風域の半径によって分類しています。風速15m/s以上の風が吹いている、または吹く可能性がある範囲を強風域と呼び、その半径が500km以上800km未満なら「大型」、800km以上なら「超大型」です。

つまり「大型」という表現は、雲の広がりや中心気圧、暴風域の半径を直接表しているわけではありません。基準になっているのは15m/s以上の風の広がりです。

暴風域は25m/s以上の風の範囲

一方、暴風域は風速25m/s以上の風が吹いている、または吹く可能性がある範囲です。

15m/sと25m/sでは基準となる風速が違います。そのため、15m/s以上の風が中心から遠くまで広がっていて「大型」と分類されても、25m/s以上の風が中心付近の狭い範囲にしかなければ、暴風域はそれほど広くなりません。

逆に、強風域の半径が「大型」の基準に達していなくても、中心近くに急な気圧傾度があり、強い風が集中していれば暴風域を伴うことがあります。

風速分布の形が台風ごとに違う

台風の風は、中心から外側へ同じ割合で弱くなるわけではありません。中心近くに風が集中した台風もあれば、比較的強い風が広い範囲まで続く台風もあります。

たとえば二つの台風で強風域の半径が同じ500kmだったとしても、一方は25m/s以上の範囲が中心から100km程度、もう一方は200km程度まで広がっているという違いがあり得ます。

この違いは、最大風速半径、中心から外側への気圧傾度、内部の対流構造、周囲の環境風などによって生じます。

中心気圧が低ければ暴風域も必ず広いわけではない

中心気圧が低い台風ほど強い風を伴う傾向はありますが、中心気圧だけで暴風域の広さは決まりません。

風を強めるうえで重要なのは、中心と周囲の気圧差がどの距離で変化するかという気圧傾度です。中心付近で気圧が急激に下がる小型で締まった台風では、非常に強い風が狭い範囲に集中することがあります。

反対に、気圧差が広い範囲に分布する台風では、強風域が大きくても25m/s以上の領域の広がり方は別になります。

「強さ」と「大きさ」も別の分類

気象庁は台風の「強さ」を最大風速で分類し、「大きさ」を強風域の半径で分類しています。

そのため、「大型で強い台風」という表現には二つの情報が含まれています。「大型」は15m/s以上の風域が広いこと、「強い」は最大風速が一定以上であることを意味します。

大型だから強いとは限らず、強いから大型とも限りません。同じように、大型だから暴風域が必ず広いとも限りません。

台風の進行方向でも暴風域の広がりは左右で違う

北半球の台風では、反時計回りの渦の風に台風の移動や周囲の風が重なるため、進行方向の右側で風が強まりやすい傾向があります。

その結果、25m/s以上となる暴風域が左右対称の円にならず、片側だけ広くなることがあります。気象庁の台風情報でも、暴風域や強風域を円で示す場合と、方向別の半径で示す場合があります。

したがって、暴風域の「広さ」を考えるときは、一つの半径だけでなく風域の非対称性にも注意が必要です。

台風の発達や衰弱でも風域の組み合わせは変わる

台風は時間とともに構造が変わります。発達中には中心付近の最大風速が急に強くなる一方、外側の風域の広がりはそれほど急に変わらないことがあります。

逆に、衰弱や構造変化の過程では最大風速が低下しても、広い範囲に強風が残ることがあります。高緯度へ進み温帯低気圧の性質を帯び始めると、強い風の領域が中心から離れたり、非対称に広がったりする場合もあります。

このため、強風域と暴風域は固定された比率で拡大・縮小するわけではありません。

大型の台風では暴風域の外でも警戒が必要

暴風域の外だから安全という意味ではありません。強風域では15m/s以上の風が吹く可能性があり、瞬間的には平均風速よりかなり強い突風が吹くことがあります。

また、大型の台風では強風が長時間続く地域が広くなる可能性があります。進行速度が遅ければ、同じ地域が長く風の影響を受けることもあります。

防災では「暴風域に入るか」だけでなく、強風域、暴風警報、最大瞬間風速の予想などを合わせて確認する必要があります。

W00657・W00667との違い

W00657「なぜ台風には暴風域ができるのか?」は、台風の気圧傾度と回転する風によって25m/s以上の領域が生じる基本原理を扱います。

W00667「なぜ台風の暴風域は左右非対称になることがあるのか?」は、台風の移動や環境風によって暴風域の左右差が生じる理由を扱います。

この記事では、気象庁の「大型」という大きさ区分と「暴風域」という25m/s以上の風域が別の基準であるため、両者の広さが一致しない理由に焦点を当てています。

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まとめ

大型の台風でも暴風域が広いとは限らないのは、「大型」と「暴風域」が別の風速基準で決まるからです。

大型・超大型という大きさの分類は15m/s以上の強風域の半径で決まり、暴風域は25m/s以上の風が吹く範囲です。台風ごとに中心から外側への風速分布が違うため、強風域が広くても暴風域が同じように広いとは限りません。

台風情報を見るときは、「大きさ」「強さ」「暴風域」を同じ意味として扱わず、それぞれが何を表す情報なのかを分けて確認することが重要です。

参考資料

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