なぜ台風の目は眼壁置換のあとに大きくなることがあるのか?

強い台風では、はっきりした目が見えていたのに、その後いったん目が不明瞭になり、再び現れた目が以前より大きく見えることがあります。

なぜ台風の目は眼壁置換のあとに大きくなることがあるのでしょうか。結論からいうと、古い内側の眼壁より外側に新しい眼壁が形成され、その外側の眼壁が内側へ縮まりながら古い眼壁に取って代わるため、新しい眼壁に囲まれた目の半径が、置換前より大きくなる場合があるからです。

目次

台風の目の外側には眼壁がある

台風の目は、強い上昇流と積乱雲が環状に並ぶ眼壁に囲まれています。眼壁付近には台風の非常に強い風が分布し、目の大きさは眼壁が中心からどの距離にあるかと深く関係しています。

ただし、眼壁は一度できたら同じ位置に固定される構造ではありません。特に成熟した強い熱帯低気圧では、眼壁の外側に別の環状の対流域と風速極大が形成されることがあります。

外側に二つ目の眼壁ができることがある

強い台風では、もとの眼壁を囲むように外側の雨帯が組織化され、二つ目の眼壁、すなわち外側眼壁が形成されることがあります。この段階では内側眼壁と外側眼壁が同心円状に存在します。

NOAAの観測研究では、外側眼壁の形成過程には複数の要因が関わり、すべての事例を一つの単純な仕組みだけで説明できるわけではないことも示されています。そのため「強くなれば必ず同じ手順で二重眼壁になる」と考えるのは適切ではありません。

外側眼壁が内側眼壁を弱らせる

外側眼壁が発達すると、内側へ流れ込む水蒸気や運動量の分布が変わり、古い内側眼壁の対流が弱くなっていきます。一方、外側眼壁は徐々に中心方向へ縮まりながら組織化されます。

やがて内側眼壁が崩れ、外側眼壁が新しい主眼壁になります。この一連の変化が眼壁置換です。置換中には最大風速が一時的に低下し、その後、新しい眼壁が確立すると再び強まる場合があります。

新しい眼壁は古い眼壁より外側から始まる

目が大きくなるポイントは、新しい眼壁の出発位置です。外側眼壁は、もとの内側眼壁より中心から遠い場所に形成されます。その後に内側へ縮まっても、古い眼壁があった位置まで必ず縮むとは限りません。

そのため置換が終わった時点で、新しい主眼壁の半径が置換前の眼壁より大きければ、その内側に囲まれる目も以前より大きくなります。NOAAの研究でも、眼壁置換に伴って最大風速の位置が外側へ移り、より大きな新しい眼壁へ置き換わる事例が観測されています。

眼壁置換中は目が一時的に見えにくくなる

眼壁置換の途中では、古い眼壁が弱まり、新しい眼壁がまだ完全には整っていないため、衛星画像で目が雲に覆われたり、輪郭がぼやけたりすることがあります。

したがって「目が消えたあと突然大きな目ができた」ように見えても、実際には内側と外側の眼壁が入れ替わる連続的な構造変化が進んでいる場合があります。

目が大きくなれば台風が強くなったとは限らない

目の大きさと台風の強さは一対一には対応しません。眼壁置換中には最大風速が一時的に弱まることがあり、新しい眼壁が確立した後に再び強まる場合もあります。

一方で、新しい眼壁が外側にできることで強風域が広がる場合があります。つまり、中心付近の最大風速が一時的に下がっても、強い風の影響を受ける範囲が広くなることがあります。目の大きさだけから危険度を判断することはできません。

すべての台風で眼壁置換が起こるわけではない

眼壁置換は特に強い熱帯低気圧で観測される現象ですが、すべての台風が経験するわけではありません。また、外側眼壁がどのように形成されるか、その後どの速さで縮まるかは事例によって異なります。

鉛直シアや周囲の湿度、海面から得られる熱と水蒸気、台風内部の構造なども発達過程に影響します。そのため眼壁置換後の目が必ず同じ割合で大きくなるという規則はありません。

W00676との違い

W00676「なぜ台風の目は円形や楕円形など形が違うのか?」は、目の形が円形・楕円形・不明瞭などになる理由を、眼壁の対称性や鉛直シアなどから説明する記事です。

この記事では、眼壁置換という特定の構造変化のあと、なぜ目の大きさが拡大する場合があるのかに焦点を絞っています。外側眼壁の形成、内側眼壁の衰弱、新しい眼壁への置換、最大風速半径の外側への移動が中心テーマです。

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まとめ

台風の目が眼壁置換のあとに大きくなることがあるのは、古い眼壁より外側に形成された新しい眼壁が、内側眼壁に取って代わるためです。新しい眼壁は中心方向へ縮まりますが、置換前の眼壁と同じ位置まで縮むとは限らず、より外側で新しい主眼壁になると、その内側の目も大きくなります。

眼壁置換の途中では目が不明瞭になったり、最大風速が一時的に低下したりすることもあります。一方で強風域が広がる場合もあるため、目が大きくなったことを単純に「台風が弱くなった」と読み替えることはできません。

台風の目は固定された穴ではなく、眼壁を含む台風内部の対流と風の構造が変化するなかで、大きさや見え方も変わる動的な構造なのです。

参考資料

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