同じ地域の雪でも、真冬の寒波ではさらさらした乾いた雪が多いのに、冬の初めや春先、低気圧の接近時には、重くまとまりやすい湿った雪が増えることがあります。さらに、降った直後は乾いていた雪が、その後の暖気や雨で湿雪へ変わることもあります。
結論からいうと、湿雪のできやすさが季節や天候によって変わるのは、雪が0℃に近づいて液体の水を含めるかどうかが、気温、上空の温度構造、日射、雨、湿度、風、積雪の温度状態によって変わるためです。湿雪は固定した雪の種類ではなく、そのときの熱と水の条件によって現れたり失われたりする雪の状態です。
湿雪とは含水率の大きい雪
気象庁は「湿り雪」を、含水率の大きい雪と定義しています。予報では「湿った重い雪」などの表現が使われます。
湿雪では、雪粒や雪片の間に液体の水が含まれています。そのため乾いた粉雪より粒同士がまとまりやすく、密度が高く、電線や樹木にも付着しやすくなります。
雪が0℃に近づくと液体の水が生まれやすい
雪は0℃より十分低い間は、ほとんどが固体の氷として存在します。しかし雪粒が周囲から熱を受け取り0℃に近づくと、さらに入った熱は氷を融かすために使われます。
一部だけ融ければ、氷の粒と液体の水が混じった状態になります。これが湿雪になりやすい基本条件です。
冬の初めは湿雪になりやすい日がある
初冬は、上空では雪ができるほど寒くても、地上付近や地面には秋までの熱が残っていることがあります。
雪片が暖かい下層を通ると表面が一部融け、湿った雪になりやすくなります。地面へ積もった後も、地面からの熱で下部が湿ることがあります。
真冬でも暖気が入れば湿雪になる
真冬だからといって、いつも乾いた雪になるわけではありません。低気圧や前線の接近で南から比較的暖かい空気が流れ込むと、上空や地上付近の気温が上がります。
雪として地上へ届く程度の寒さを保ちながら、雪粒が一部融ける温度帯があると、重い湿雪になりやすくなります。
春先は湿雪が増えやすい
春が近づくと日射が強まり、日中の気温も上がりやすくなります。
朝に乾いた雪が降っても、昼には雪面が0℃へ近づき、融雪水が生じることがあります。そのため季節が進むほど、積雪表面や新しく降った雪が湿雪へ変わる機会が増えます。
ただし「春の雪は必ず湿雪」ではない
春でも強い寒気が入り、地上から上空まで十分に低温なら乾いた雪が降ることがあります。
逆に真冬でも暖気が入れば湿雪になります。季節は背景条件ですが、直接決めるのはそのときの気温と雪が受け取る熱です。
低気圧の位置で湿雪になりやすさが変わる
南岸低気圧などでは、低気圧の位置が少し変わるだけで、雪域へ入り込む暖気の強さが変わります。
冷気が十分残れば乾いた雪になりやすく、暖気が強く入れば湿雪やみぞれ、さらに雨へ変わることがあります。湿雪は、雪と雨の境界に近い温度環境で現れやすい状態です。
雨が雪の上に降ると急速に湿る
気象庁は、積雪が大雨や気温上昇によって融ける現象を融雪としています。
雪の上に雨が降ると、液体の水が積雪へ直接入り込みます。さらに雨が周囲より暖かければ熱も運び込み、積雪の融解を進めます。そのため乾いていた雪が短時間で湿った重い雪へ変わることがあります。
日射も湿雪をつくる重要な熱源
晴れた日には雪面が太陽から短波放射を受け取ります。新雪は多くを反射しますが、一部は吸収されます。
春に近づき日射が強くなると、雪面が受け取る熱が増え、融雪水が生じやすくなります。NSIDCも、春の雪融けは雪面反射率の季節低下と関係し、湿った雪の状態が現れると説明しています。
古い雪は新雪より湿りやすくなることがある
新雪は白く反射率が高い一方、時間がたつと雪粒が粗くなり、汚れも付着します。
その結果、日射を吸収しやすくなり、同じ晴天でも古い雪のほうが融雪が進みやすくなる場合があります。
雪の中では粒の構造も変化する
NSIDCは、雪の変態を、温度、液体水や水蒸気の移動、積雪内部の圧力の変化によって雪粒の構造や質感が変わる現象と説明しています。
したがって、湿雪は「水が加わるだけ」の変化ではありません。液体水が増えると雪粒同士の結びつきや粒径も変わり、積雪の硬さや密度が変化します。
湿雪では雪粒がまとまりやすい
液体の水は雪粒の接触部に入り、粒同士をまとめやすくします。
そのため湿雪は、乾いた粉雪より雪玉を作りやすく、大きな雪片にもなりやすい性質があります。気象庁も湿り雪は大きな雪片となりやすく、着雪被害を起こしやすいとしています。
湿度だけで湿雪になるわけではない
「湿雪」という名前から、空気の湿度が高いほど湿雪になると思われがちですが、直接重要なのは雪そのものが液体の水を含むかどうかです。
周囲の湿度は雪片の昇華や融け方に影響しますが、湿度が高いだけで湿雪になるわけではありません。雪の温度と受け取る熱が重要です。
乾いた空気では雪片が冷えやすいことがある
乾いた空気の中では、雪片の一部が昇華して周囲から熱を奪います。
この冷却によって、地上気温が0℃を少し上回っていても雪片が融け切らずに届くことがあります。したがって地上気温だけから湿雪かどうかを決めることはできません。
降り始めと降雪中で雪質が変わることもある
降り始めは地上付近が比較的暖かく湿雪でも、降水による蒸発・融解冷却で空気が冷えれば、途中から乾いた雪へ変わることがあります。
反対に、低気圧が近づいて暖気が強まれば、乾いた雪から湿雪、みぞれ、雨へ変わることもあります。
風は雪面の熱交換を変える
風は雪面と空気の間の熱交換を強めます。
暖かい空気が強い風で流れ込めば雪面へ熱が運ばれ、融雪が進みやすくなります。一方、冷たい風なら雪面の低温が保たれやすくなります。気象庁も融雪について、風が強いと解けやすくなる場合があるとしています。
湿雪は夜に再凍結することがある
日中に湿った雪でも、夜になって気温が下がると、雪粒の間にあった液体水が再び凍ることがあります。
すると、ふわふわした新雪には戻らず、硬い雪面や氷の層に変わることがあります。湿雪は時間帯によっても状態を変えます。
翌日にまた融ければ再び湿る
再凍結した雪も、翌日に日射や暖気で0℃へ近づけば、再び融け始めます。
このため春先の積雪では、昼に湿る、夜に凍るという融解・再凍結の周期を繰り返すことがあります。
同じ積雪でも上部と下部で湿り方が違う
積雪は一枚の均一な層ではありません。日射は主に表面を暖め、地面からの熱は下部へ作用します。
また融雪水は上から下へ移動するため、積雪内部でも液体水の量は場所によって違います。表面は湿っていても内部は乾いていることがあります。
標高によって湿雪になりやすい時期がずれる
低地では早い時期から気温が0℃付近まで上がりやすく、湿雪や雨になりやすい傾向があります。
高標高では低温が長く続くため、同じ季節でも乾いた雪が保たれやすく、湿雪化の時期が遅れることがあります。
斜面の向きでも湿雪化の速さは変わる
北半球では一般に南向き斜面のほうが日射を受けやすく、雪面が暖まりやすくなります。
そのため同じ標高でも、日当たりのよい斜面では湿雪化が早く、日陰の斜面では乾いた雪が長く残る場合があります。
同じ冬でも湿雪の多い年と少ない年がある
暖冬では0℃付近の気温になる日が増え、雪が降っても湿雪になったり雨へ変わったりしやすくなります。
寒冬では乾いた雪が続きやすい一方でも、一時的な暖気や雨があれば湿雪化します。年平均の気温だけで一冬の雪質を単純に決めることはできません。
W00706との違いは「なぜ湿雪になるか」ではなく「いつ湿雪になりやすいか」
なぜ気温が高めの雪は水分を多く含む重い湿雪になりやすいのか?では、0℃に近い環境で雪が一部融け、液体の水を含むことで重い湿雪になる基本的な原因を説明しました。
本記事ではその先を扱い、初冬・真冬・春先、寒気・暖気、低気圧、日射、雨などが変わると、その基本条件がいつ成立し、いつ崩れるのかを中心に説明します。
W00734との違いは「積雪全体」ではなく「湿雪という状態」
なぜ積雪の深さや雪質は季節や天候によって変わるのか?では、積雪全体の深さ、密度、雪質、含水状態が冬の間にどう変化するかを整理しました。
W00736ではその中でも、液体の水を多く含む湿雪という状態に絞り、どの季節・天候で現れやすく、どの条件で乾いた雪や再凍結した雪へ変わるかを扱います。
W00735との違いは粉雪の反対側の条件を見ること
なぜ粉雪は季節や天候によってできやすさが変わるのか?では、乾いた低密度の雪が現れやすい低温条件と、その状態が風・圧密・日射などで失われる理由を説明しました。
湿雪では逆に、0℃へ近づいて液体水を含む条件に注目します。両者は完全に別種類ではなく、雪の温度と含水状態の連続的な違いです。
「気温が高いほど湿雪になる」と単純にはいえない
気温が高くなりすぎれば、雪は完全に融けて雨になります。
湿雪は「雪として残れる寒さ」と「一部が融けるほどの暖かさ」が重なる範囲で現れやすい状態です。上空の温度構造や湿度、降水強度も影響するため、地上気温だけでは決まりません。
まとめ
湿雪のできやすさが季節や天候によって変わるのは、雪の温度と液体水の量が、気温、暖気・寒気、日射、雨、風、湿度、積雪内部の熱状態によって変化するためです。
初冬や春先、暖気の流入時、雨が雪の上に降るときには湿雪になりやすくなります。一方、強い寒気の中では乾いた雪が保たれやすく、いったん湿った雪も夜間の冷え込みで再凍結します。
つまり、湿雪の季節変化とは、雪が一定の種類に固定されるのではなく、その時々に受け取る熱と水によって、乾いた雪・湿った雪・再凍結した雪の間を変化することなのです。

コメント