同じ場所の積雪でも、冬の初めにはほとんど融けなかったのに、春が近づくと晴れた日だけで急に雪面が下がったり、雨のあとに一気に融雪が進んだりすることがあります。反対に、暖かい日のあとでも寒気が戻ると、融雪が止まり、融けた水が再び凍ることもあります。
結論からいうと、融雪の進み方が季節や天候によって変わるのは、雪が受け取る熱の量と、その熱がどこから入るかが、日射、気温、風、湿度、雲、雨、地面の状態などによって時間とともに変化するためです。さらに、積雪そのものも新雪・しまり雪・ざらめ雪へ変化し、含まれる水分や反射率が変わるため、同じ気温でも融け方は同じになりません。
融雪は雪が熱を受け取ることで進む
雪は氷の結晶や粒が集まったものです。雪を水へ変えるには、外から熱エネルギーを与える必要があります。
積雪へ入る熱には、太陽からの日射、暖かい空気との熱交換、大気や雲から届く長波放射、雨が持ち込む熱、地面から伝わる熱などがあります。融雪の進み方は、これらの合計がその時々にどれだけ大きいかで決まります。
気象庁の積雪モデルも複数の気象要素を使っている
気象庁の解析積雪深では、降水量だけでなく、気温、風速、相対湿度、短波・長波放射量などを積雪変質モデルへ入力し、積雪の状態を計算しています。
これは実際の積雪変化が、気温一つでは決められないことを示しています。融雪は、熱と水の出入りをまとめて考える必要がある現象です。
初冬は雪が積もっても融雪を繰り返しやすい
冬の初めは、雪が降るほど上空が冷えていても、地面や地上付近の空気がまだ比較的暖かいことがあります。
このため積もった雪が地面から熱を受けたり、次の暖気で融けたりして、積雪が増えては減る変化を繰り返すことがあります。本格的な根雪になる前は、融雪が断続的に起こりやすい時期です。
真冬は低温のため融雪が抑えられやすい
真冬に強い寒気が続くと、雪面も積雪内部も低温に保たれやすくなります。
雪が融け始める前には、まず雪そのものを0℃付近まで暖める必要があります。そのため低温状態が続く時期には、日中に日射を受けても、受け取った熱の多くが雪を暖めることに使われ、融解まで進まないことがあります。
ただし真冬でも融雪は起こる
「真冬なら雪は融けない」とは限りません。低気圧や前線の接近で暖気が入り、気温が上がれば、真冬でも融雪が起こることがあります。
さらに雨が雪の上に降ったり、強い風で暖かい空気が運ばれたりすれば、融雪が急に進む場合があります。季節より、その時の熱収支が直接の条件です。
春に近づくと日射が強くなりやすい
春へ向かうと太陽高度が上がり、昼の時間も長くなります。
その結果、雪面が一日に受け取る日射エネルギーが増えやすくなります。晴天が続くと、日中の雪面温度が0℃付近まで上がり、融雪が進みやすくなります。
日射は気温が低めでも融雪を進めることがある
融雪を「気温が0℃を超えたかどうか」だけで判断することはできません。
空気の温度が低めでも、強い日射を雪面が受け続ければ、雪面はエネルギーを吸収します。雪面の熱収支が正になれば、局所的に融解が進むことがあります。
新雪と古い雪では日射の吸収量が違う
新しく白い雪は太陽光の多くを反射します。
一方、時間がたって雪粒が粗くなったり、ほこりや土などで雪面が汚れたりすると、反射率が下がることがあります。すると同じ日射でも吸収する熱が増え、融雪が進みやすくなります。
融雪が進むとさらに雪面が変わる
融雪によって雪粒が大きくなり、ざらめ雪のような状態へ変化すると、新雪のときとは光の反射や水の動きが変わります。
つまり積雪は、融雪の結果として性質が変わり、その変化が次の融雪速度にも影響します。融雪は一方通行の単純な過程ではありません。
暖かい空気は雪面へ熱を運ぶ
気温が上がると、周囲の空気から雪面へ熱が移りやすくなります。
特に雪面よりかなり暖かい空気が流れ込むと、空気と雪の温度差が大きくなり、融雪を進める方向に働きます。
風が強いと空気との熱交換が大きくなることがある
風は雪面の近くにある空気を入れ替えます。
暖かい空気が強い風で次々と運ばれると、雪面への熱供給が増える場合があります。反対に、冷たい風が吹けば雪面が冷やされ、融雪が抑えられることがあります。
湿度も融雪の進み方に関係する
空気が乾燥していると、雪面から昇華や蒸発が起こりやすくなります。
この相変化には熱が必要なため、雪面から熱が奪われ、融雪を抑える方向に働くことがあります。一方、暖かく湿った空気では、その冷却効果が小さくなり、雪面への熱供給が優勢になる場合があります。
雲は日射を弱める一方で長波放射を増やすことがある
曇りの日は、太陽からの直接の日射が弱くなるため、晴天より融雪が進みにくいように見えます。
しかし雲は大気から雪面へ届く長波放射を増やすことがあります。特に夜間は、晴天時より雪面が冷えにくくなり、融雪期には一日を通した熱収支が変わることがあります。
晴れた夜は雪面が再び冷えやすい
夜間に雲が少ないと、雪面は放射によって熱を失いやすくなります。
その結果、日中に融けて湿った雪が夜間に再凍結し、翌朝には硬い雪面になることがあります。春の積雪では、昼の融雪と夜の再凍結が繰り返されることがあります。
雨は水だけでなく熱も積雪へ持ち込む
雪の上に雨が降ると、液体の水が積雪へ直接入ります。
雨水の温度が0℃より高ければ、その熱も雪へ伝わります。また雨天時には暖かく湿った空気が流れ込むことも多く、空気からの熱交換とあわせて融雪が進みやすくなることがあります。
雨だけでなく気温・風・湿度の組み合わせが重要
同じ雨量でも、寒い雨と暖かい雨では融雪への影響が同じではありません。
暖かく湿った強風を伴う雨では、雨水そのものの熱に加え、空気から雪面へ運ばれる熱も大きくなりやすいため、短時間に融雪が進むことがあります。
融けた水は積雪内部へしみ込む
雪面で生じた融雪水は、雪粒の間を通って下へ移動します。
積雪内部がまだ0℃より低ければ、その途中で再凍結することがあります。その場合、雪面では融けていても、流出する雪どけ水はすぐには増えないことがあります。
積雪全体が0℃に近づくと流出が増えやすい
春先に熱が入り続けると、積雪内部の冷たさが少しずつ解消されます。
積雪全体が0℃付近になると、融雪水は再凍結しにくくなり、下へ流れやすくなります。そのため同じ融雪量でも、冬の途中と本格的な融雪期では、川へ出てくる水の量が違うことがあります。
地面からの熱も積雪の下部を変える
地面の温度は積雪の温度より高いことがあり、積雪の底部へ熱を伝えます。
特に初冬や春先には、地面からの熱が底面融雪に関係します。ただし厚い積雪では断熱効果もあるため、地面からの熱だけで融雪全体が決まるわけではありません。
新たな降雪があると融雪が一時的に遅くなることがある
春先でも寒気が戻れば、新雪が積もることがあります。
白い新雪は日射をよく反射し、下にある古い雪を覆います。そのため一時的に雪面の反射率が高まり、融雪が弱まることがあります。
しかし新雪が融ければ再び古い雪面が現れる
その後に暖気や日射が戻ると、新雪は比較的早く融けることがあります。
下から粒の粗い古い雪や汚れた雪面が現れると、再び日射吸収が増え、融雪が加速する場合があります。このため春先の融雪速度は数日単位でも大きく変動します。
融雪は一日の中でも変化する
春の晴天日には、朝は雪面が凍って硬くても、太陽が高くなるにつれて融雪が強まります。
夕方以降は日射がなくなり、夜間に気温が下がれば融雪は弱まり、再凍結へ移ることがあります。同じ日でも午前と午後、昼と夜で状態は大きく変わります。
融雪速度と積雪深の減少速度は同じではない
積雪深が減っていても、そのすべてが融雪によるとは限りません。
雪は自重による圧密でも沈み込みます。気象庁の積雪変質モデルでも、とける雪の量だけでなく、時間の経過による積雪の沈み込みが計算されています。
逆に融雪していても積雪深が増えることがある
春先に融雪が進んでいても、その途中で新たな降雪があれば、積雪深が一時的に増えることがあります。
そのため積雪深だけを見て、「融雪が止まった」「雪が増えたから融けていない」と判断するのは正確ではありません。
融雪期の始まりは毎年同じ日ではない
春の訪れ方は年によって違います。
暖気が早く入り、晴天が多ければ融雪の本格化が早まることがあります。反対に寒気が長く残り、新雪が繰り返されれば融雪期の進行は遅くなります。
暖冬なら必ず雪が早く消えるとは限らない
冬全体の平均気温が高くても、一時的な大雪で積雪が厚くなれば、春まで雪が残ることがあります。
逆に寒冬でも積雪量が少なければ、春の暖気で比較的早く消えることがあります。雪が消える時期は、融雪速度と冬に蓄えられた雪の量の両方で決まります。
低気圧の通過で融雪の進み方が急変することがある
低気圧の接近前には暖気や南風が入り、気温が上がることがあります。さらに雨が加われば融雪が急に進む場合があります。
低気圧通過後に寒気が入ると、今度は融雪が弱まり、雪面が再凍結することがあります。数日の天候変化だけでも、積雪の熱状態は大きく変わります。
融雪が急に進むと川の水量も増えやすい
広い流域で気温上昇や雨が重なると、多くの地点で同時に融雪が進みます。
積雪全体が十分に暖まり、融雪水を内部で再凍結しにくい状態になっていると、雪どけ水が河川へ流れ込みやすくなります。そのため融雪期には、雪面の変化だけでなく河川流量にも注意が必要です。
W00709との違いは「なぜ春に融けるか」ではなく「なぜ融け方が変わるか」
なぜ春になると積もった雪は融けて雪どけ水になるのか?では、日射、暖かい空気、雨、地面などから熱を受け取ることで雪が水へ変わる基本的な仕組みを説明しました。
本記事ではその基本を前提に、同じ場所でも初冬・真冬・春先、寒波・暖気・晴天・雨などによって熱の入り方が変化し、融雪の強さや継続時間が変わる理由を中心に説明します。
W00729との違いは「場所差」ではなく「同じ場所の時間変化」
W00729では、標高や斜面方位、地形などによって、同じ時期でも融雪速度が場所ごとに違う理由を扱いました。
W00739では同じ地点に注目し、季節の進行や天候の変化によって、その場所の融雪がいつ強まり、いつ弱まり、いつ再凍結へ移るのかを整理します。
「気温が0℃を超えたら融雪」と単純にはいえない
気温は重要ですが、それだけでは不十分です。
強い日射、暖かい風、湿度、雲、雨、雪面の反射率、積雪内部の温度などが組み合わさって、最終的な熱収支が決まります。反対に気温が少し高くても、夜間の放射冷却などで雪面が凍ることもあります。
「春になれば融雪はずっと加速する」わけでもない
春先でも寒気が戻れば、融雪は弱まります。新雪が積もれば一時的に積雪深が増え、白い雪面が日射を反射するため、融雪が抑えられることもあります。
融雪は季節の進行とともに大きくなる傾向はありますが、毎日一直線に強まるわけではありません。
まとめ
融雪の進み方が季節や天候によって変わるのは、積雪が受け取る熱の量と種類が常に変わるためです。
初冬は地面や暖気の影響で断続的な融雪が起こり、真冬は低温によって融雪が抑えられやすくなります。春に近づくと日射が強まり、暖気や雨も加わって融雪が本格化しますが、寒気の戻りや夜間冷却によって再凍結することもあります。
つまり、融雪の季節・天候変化とは、単に「春ほど暖かいから雪が融ける」ということではなく、日射・気温・風・湿度・雲・雨・雪面状態・積雪内部の温度がつくる熱収支が時間とともに変化する結果なのです。

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