なぜ岩石は侵食されるのか?

結論からいうと、岩石の侵食は、川・波・氷・風などが岩石や岩片に力を加え、削る・はがす・砕く・運ぶという作用が繰り返されることで成り立っています。とくに河川では、水そのものの力に加えて、水に運ばれる砂や礫が岩盤へ衝突して摩耗させることが重要です。また、亀裂の多さや岩石の強度、風化の進み具合によって、同じ流れでも侵食の進み方は大きく変わります。

侵食は、単に「水が岩を溶かすこと」ではありません。地表では、岩石が風化して弱くなり、そこへ水流や波、氷河、風などの運動が加わることで、岩石や土砂が削り取られ、別の場所へ移動します。つまり侵食の仕組みは、削る力・運ぶ粒子・岩石側の強さが組み合わさって成り立っています。

目次

そもそも侵食とは何か

国土地理院は、川の地形をつくる基本的な作用として、侵食・運搬・堆積を挙げています。川の水が山や河床を削り、その土砂を運び、流れが弱くなった場所に堆積させることで、谷や扇状地、氾濫平野などの地形がつくられます。

米国国立公園局(NPS)も、風化と侵食を区別し、岩石がその場で分解・破砕されるのが風化、粒子が水・風・氷などによって移動すると侵食になると説明しています。

そのため、侵食には「岩石が削られること」と「削られた物質が移動すること」の両方が含まれます。

河川では、流れる水だけでなく砂礫が岩盤を削る

河川侵食を考えるとき、水の流れだけをイメージしがちですが、実際には流れに運ばれる砂や礫が重要です。

砂礫は川底を転がったり、跳ねたりしながら下流へ移動します。その途中で岩盤に繰り返し衝突すると、表面が少しずつ削られます。これは摩耗侵食と呼ばれる代表的な岩盤侵食の仕組みです。

土木学会の研究では、岩盤河川の侵食要因として砂礫の衝突摩耗が主要な役割をもつことが示されています。砂礫が岩盤にぶつかるたびに小さな破壊が起こり、その積み重ねによって河床が低くなったり、溝状の地形ができたりします。

砂礫が多ければ多いほど侵食が強いとは限らない

砂礫は岩盤を削る「道具」になりますが、量が多ければ必ず侵食が強くなるわけではありません。

岩盤の上を薄く砂礫が移動する場合は、粒子が岩盤に直接衝突しやすくなります。しかし砂礫が厚く積もって岩盤を覆うと、粒子が岩盤へ直接当たりにくくなり、かえって岩盤を保護することがあります。

このため、岩盤侵食は、流砂量と岩盤を覆う砂礫の割合のバランスによって変わります。砂礫は侵食を進める材料であると同時に、条件によっては岩盤を守るカバーにもなるのです。

岩盤の強さが侵食速度を左右する

同じ大きさの礫が同じ速さで衝突しても、すべての岩石が同じように削られるわけではありません。

岩石には、引張りに対する強さ、圧縮に対する強さ、亀裂の入りやすさなどの違いがあります。USGSが紹介する岩盤河川の研究では、流砂の衝突による侵食速度が岩盤の引張強度と強く関係することが示されています。

硬く緻密で亀裂の少ない岩盤は比較的削られにくく、強度が低く、割れ目や空隙の多い岩盤は、衝突によって小片がはがれやすくなります。

つまり侵食の速さは、水流の強さだけでなく、岩石側の性質にも大きく左右されます。

岩石の種類によって侵食されやすさが違うのはなぜか

岩石には、花崗岩、砂岩、泥岩、石灰岩、凝灰岩などさまざまな種類があり、構成する鉱物、粒子や結晶の結びつき、空隙の多さ、亀裂の入り方が異なります。そのため、同じ強さの流水や波を受けても、侵食への抵抗は同じではありません。

たとえば、緻密で結晶の結びつきが強い岩石は摩耗に耐えやすい一方、粒子の結合が弱い岩石や空隙・割れ目の多い岩石は、砂礫の衝突や水の作用によって小片がはがれやすくなります。また、同じ種類の岩石でも、風化の程度や亀裂の発達具合によって侵食されやすさは変化します。

こうした違いによって起こるのが差別侵食です。侵食に強い部分は尾根や岩峰、岬などとして残りやすく、弱い部分は谷やくぼみ、湾などとして先に削られます。つまり、岩石の種類や状態による侵食抵抗の差は、長い時間をかけて地形の違いとして現れます。

風化すると、なぜ岩石は侵食されやすくなるのか

岩石は地表で乾いたりぬれたり、凍結と融解を繰り返したり、化学反応を受けたりすると風化します。風化が進むと、微細な亀裂や空隙が増え、鉱物粒の結びつきが弱くなることがあります。

J-STAGEの研究では、岩盤を乾湿サイクルにさらすと引張強度が低下し、流砂の衝突による侵食が進みやすくなることが実験的に示されています。USGSに掲載された同系統の研究でも、乾湿風化によって岩盤強度が低下し、侵食率が変化することが報告されています。

つまり、風化と侵食は別の現象ですが、風化が「下準備」となって岩石を弱くし、その後の侵食を加速することがあります。

亀裂や節理から岩塊がはがれる侵食もある

岩盤には、節理や割れ目などの亀裂が入っていることがあります。流水がその亀裂に作用すると、岩塊が持ち上げられたり、押し出されたりして、まとまった大きさの岩がはがれることがあります。

このような侵食は、細かな摩耗とは異なり、岩盤の構造的な弱点を利用して進みます。もともとの節理が多い岩盤や、風化によって亀裂が広がった岩盤では、塊状にはがれる侵食が起こりやすくなります。

そのため、岩石の侵食を理解するには、鉱物の硬さだけでなく、割れ目の方向や間隔も見る必要があります。

河川が岩盤を下へ掘り込む「下方侵食」

川が河床を削り、谷を深くする作用を下方侵食または下刻といいます。

国土地理院は、穿入蛇行について、河川が下方侵食を復活させ、蛇行した流路の形を保ちながら基盤岩中へ深く掘り込んでできる地形と説明しています。また峡谷は、下刻作用が卓越した狭いV字谷として示されています。

このような地形は、長い時間をかけて川が岩盤を少しずつ削った結果です。河床が低下すると谷壁も不安定になり、崩壊や斜面移動が加わって谷が広がることもあります。

側方侵食は谷や蛇行の形を変える

河川は下方向だけでなく、横方向にも侵食します。これを側方侵食といいます。

蛇行した川では、一般に外側の岸で流れが強くなり、河岸が削られやすくなります。一方、内側では流れが弱まり、砂や礫が堆積しやすくなります。この侵食と堆積の組み合わせによって、流路の位置が少しずつ移動します。

岩盤河川でも、砂礫の移動や二次流の影響によって横方向の侵食が起こります。J-STAGEの岩盤河川研究では、摩耗侵食や風化が河床・河岸の形を変え、蛇行流路の発達に関与することが示されています。

波は海岸の岩石をどう削るのか

海岸では、波が岩壁に繰り返し衝突します。波の力そのものに加えて、波に含まれる砂や礫が岩壁へぶつかることで摩耗が進みます。

また、岩の割れ目に海水や空気が入り込み、波の圧力変化によって亀裂が広がることもあります。亀裂が発達すると岩塊がはがれ、海食崖や海食洞などの地形が形成されます。

岩質が違う場所では侵食速度も異なるため、硬い部分が岬として残り、弱い部分が湾として削られることがあります。

氷河も巨大なやすりのように岩盤を削る

寒冷地域では、氷河が岩盤の上をゆっくり移動しながら侵食します。

氷河の底には岩石片や砂礫が取り込まれており、それらが岩盤をこすることで表面が磨かれ、筋状の傷が残ることがあります。また、氷が岩盤の亀裂に入り込み、岩塊を取り込んで運び去る作用もあります。

このような氷河侵食が長く続くと、U字谷や氷食地形が形成されます。

風による侵食は、砂粒の衝突で進む

乾燥地域や砂の多い場所では、風が砂粒を運び、その砂粒が岩石表面に衝突して摩耗させることがあります。

原理は河川の砂礫による摩耗と似ていますが、運搬する媒体が水ではなく空気です。風速が強く、砂が十分に供給される環境では、長い時間をかけて岩石表面が削られます。

ただし、風だけで大きな岩山が短期間に削られるわけではなく、風化や重力、流水など他の作用と組み合わさって地形が変化します。

侵食された岩石は、その後どうなるのか

侵食で削られた岩石は、砂・礫・泥などの粒子となり、川や波、氷、風によって運ばれます。

移動中にも粒子同士が衝突し、破砕や摩耗が進みます。J-STAGEの河川砕屑物の研究では、砂礫が下流へ運ばれる過程で破砕・摩耗し、粒径や丸みが変化することが示されています。

そして流れのエネルギーが小さくなると、粒子は堆積します。こうして山地で削られた岩石が、川原、扇状地、氾濫原、三角州、海底などへ運ばれ、新しい堆積物になります。

侵食は一定の速さで進むわけではない

侵食速度は、流量、洪水の頻度、運ばれる砂礫の量、岩盤の強度、風化状態、亀裂、植生、地形勾配など、多くの条件によって変わります。

平常時にはほとんど変化しなくても、大洪水のときに大きな岩塊が移動し、短時間で河床が大きく削られることがあります。逆に、砂礫が厚く堆積して岩盤を覆えば、一時的に侵食が弱まることもあります。

つまり侵食は、いつでも同じ速度で進む連続的な現象というより、環境条件によって強弱を繰り返す現象です。

まとめ

岩石の侵食は、水・波・氷・風などが岩石に力を加え、削る・はがす・砕く・運ぶ作用が繰り返されることで成り立っています。

河川では、とくに流砂となる砂や礫の衝突摩耗が岩盤侵食の重要な仕組みです。しかし、砂礫が厚く岩盤を覆えば侵食を抑えることもあります。また、岩石の強度や亀裂、風化の進み具合、岩石の種類によって削られやすさは変わり、その差は差別侵食による地形の違いとして現れます。

さらに、下方侵食は谷を深くし、側方侵食は川の流路を横へ移動させます。海岸では波、寒冷地域では氷河、乾燥地域では風による砂粒の衝突が岩石を削ります。つまり岩石の侵食は、外から加わる運動の力と、岩石そのものの性質が組み合わさった結果として進む仕組みなのです。

関連する「なぜ?」

参考資料

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

目次