なぜ岩石の硬さは鉱物だけで決まらないのか?

結論からいうと、岩石の硬さは、岩石をつくる鉱物そのものの硬さに加えて、鉱物や粒子がどれだけ強く結びついているか、空隙や亀裂がどれほどあるか、風化しているか、水を含んでいるかなどが組み合わさって成り立っています。

そのため、「硬い鉱物を含む岩石なら必ず硬い」とは限りません。石英のように傷つきにくい鉱物を多く含んでいても、粒どうしの結合が弱かったり、亀裂が多かったりすれば、岩石全体としては壊れやすくなることがあります。逆に、個々の鉱物の硬度だけでは高くなくても、緻密に結びついていれば強い岩石になる場合があります。

目次

まず「硬さ」には複数の意味がある

岩石の硬さを考えるときに最も大切なのは、何を「硬い」と呼んでいるのかを分けることです。

鉱物では、表面を引っかいたときの傷つきにくさをモース硬度で表すことがあります。USGS(米国地質調査所)は、モース硬度を、標準となる鉱物同士を引っかいて比較する相対的な硬さの尺度として説明しています。たとえば方解石は3、長石は6、石英は7です。

一方、岩石全体では、引っかきへの強さだけでなく、押しつぶす力にどれだけ耐えるかという圧縮強度、引っ張る力への引張強度、衝撃や摩耗への抵抗なども重要です。

つまり、鉱物の「硬度」と岩石全体の「強度」は関係していますが、同じものではありません。岩石の硬さの仕組みを理解するには、鉱物レベルと岩石全体の構造レベルの両方を見る必要があります。

鉱物の硬さは、原子の結びつきと結晶構造から生まれる

岩石をつくる鉱物は、原子やイオンが規則正しく並んだ結晶です。鉱物によって、どの元素が含まれるか、原子がどのような結合でつながるか、どんな結晶構造をつくるかが違います。

この違いが、表面の傷つきにくさや割れ方の違いにつながります。たとえば産業技術総合研究所 地質調査総合センター(GSJ)の地質標本館では、石英を含む酸化鉱物には硬度の高いものが多い一方、方解石を代表とする炭酸塩鉱物には比較的硬度の低いものがあると説明しています。

したがって、岩石にどの鉱物がどのくらい含まれているかは、表面の削れにくさや摩耗しにくさに影響します。

岩石は鉱物の集合体なので、組み合わせ方が重要

GSJは、岩石を鉱物やガラスの集合体として説明しています。たとえば花こう岩では、石英、長石、黒雲母など複数の鉱物が互いに接しながら一つの岩石をつくっています。

ここで重要なのは、岩石全体の強さが個々の鉱物の硬度を単純に足し合わせたものではないことです。鉱物粒がどのように接しているか、結晶がどのくらいかみ合っているか、粒界に弱い部分がないかによって、力を受けたときの壊れ方が変わります。

火成岩のように結晶が互いにかみ合う組織では、粒が外れにくくなることがあります。一方、堆積岩では、砂粒や礫そのものだけでなく、それらを結びつけるセメント物質の量や種類が重要です。

結晶がかみ合っていると、なぜ壊れにくくなるのか

岩石に外から力が加わると、その力は鉱物粒から別の鉱物粒へ伝わります。粒どうしが広い面積でしっかり接していれば、力を多くの粒へ分散しやすくなります。

反対に、粒どうしの接触が少なかったり、境界が弱かったりすると、そこに力が集中して亀裂が生じやすくなります。

花こう岩などの深成岩では、マグマがゆっくり冷える間に複数の鉱物結晶が成長し、互いにかみ合った組織をつくります。この組織は岩石の強さに関係しますが、結晶粒界や鉱物内部に微小亀裂があれば、そこが破壊の起点になることがあります。

堆積岩では「セメント」が硬さを左右する

砂岩や礫岩のような砕屑性堆積岩は、もともとばらばらだった砂粒や礫が固まってできています。そのため、粒子同士をつなぐセメント作用が岩石の強さに大きく関係します。

地下水に溶けていた石英、方解石、鉄酸化物などが粒子の間に沈殿すると、接着剤のように粒子を結びつけます。強く固結した砂岩では粒が簡単には外れませんが、セメントが少ない、あるいは風化でセメントが溶けた岩石では、指でこするだけで砂粒が落ちることもあります。

つまり、同じ「砂岩」という名前でも、固結の程度が違えば強さも大きく変わります。

空隙が多いと、なぜ弱くなりやすいのか

岩石の中には、鉱物や粒子で満たされていない小さな空間があります。これを空隙といいます。

空隙が多い岩石では、実際に力を支える固体部分が少なくなります。また、空隙の周囲には力が集中しやすいため、亀裂が発生するきっかけになることがあります。

USGSが行った複数の岩石の強度測定では、岩石によって空隙率や強度が大きく異なり、表面風化や既存亀裂も強度へ影響する可能性が示されています。また、火山岩を対象にした研究でも、一軸圧縮強度と空隙率、鉱物変質の間に強い関係がみられる例があります。

ただし、「空隙率が高ければ必ず弱い」と単純には決まりません。空隙の形、大きさ、つながり方、鉱物組成なども影響します。

亀裂は岩石の強さを大きく変える

岩石の中には、肉眼では見えない微小亀裂から、大きな節理までさまざまな割れ目があります。

岩石に力が加わると、亀裂の先端には応力が集中しやすくなります。そのため、亀裂がまったくない材料に比べ、既存の亀裂がある岩石ではそこから新しい破壊が進みやすくなります。

岩石が大きな塊になるほど、内部に弱い亀裂や不均質な部分を含む可能性も増えます。琉球石灰岩を使ったJ-STAGEの研究では、供試体が大きくなるほど一軸圧縮強度が低下する寸法効果が確認され、密度や岩石の不均質性が強度を左右することが示されています。

このため、岩石の硬さや強さは、小さな鉱物片だけを見ても完全には予測できません。岩石全体にどんな亀裂が分布しているかが重要です。

風化すると岩石が弱くなるのはなぜ?

地表にある岩石は、水、酸素、温度変化、生物などの影響を受けて風化します。

物理的風化では、加熱・冷却や凍結融解などによって亀裂が増えることがあります。化学的風化では、長石などの鉱物が粘土鉱物へ変わったり、粒子を結びつける成分が溶けたりします。

J-STAGEに掲載された花こう岩・斑れい岩などの研究では、風化によって生じた組成や組織、亀裂の変化が、岩石の破壊挙動に影響することが示されています。別の研究でも、花こう岩に含まれる長石粒子は風化によって圧壊強度が大きく低下する例が報告されています。

つまり風化は、鉱物そのものを弱くする作用と、岩石内部に亀裂や空隙を増やす作用の両方を通じて、岩石全体の強さを変えます。

水を含むと硬さや強さが変わることがある

岩石の強さは、乾いているか水を含んでいるかでも変化する場合があります。

水が空隙や亀裂に入ると、鉱物表面との化学反応が進んだり、粘土鉱物が膨潤したり、粒子の結合が弱まったりする岩石があります。また、亀裂の中の水圧が高まれば、亀裂を開く方向に働くこともあります。

一方で、すべての岩石が同じように水で弱くなるわけではありません。鉱物組成や空隙構造によって影響の大きさは異なります。そのため、地盤や岩盤を評価するときは、乾燥状態だけでなく実際の地下水条件も重要になります。

地下深くでは、周囲からの圧力も岩石の壊れ方を変える

岩石の強さは、周囲からどの程度押さえつけられているかによっても変わります。

地表近くでは岩石の側面が自由なため、亀裂が開いて破壊しやすい場合があります。地下深くでは周囲の岩石から高い圧力を受けるため、亀裂が開きにくくなり、より大きな力に耐えることがあります。

USGSのHayward断層周辺の岩石試験でも、有効圧力が高くなるにつれてピーク強度と摩擦強度が系統的に増加しました。つまり、岩石の強さは材料固有の一つの数字だけではなく、置かれた圧力条件にも左右されます。

同じ岩石名でも硬さが一定ではない理由

「花こう岩は硬い」「砂岩は柔らかい」といった説明は、傾向を理解するには便利ですが、実際には同じ岩石名でも強さには大きな幅があります。

たとえば花こう岩でも、結晶が緻密にかみ合った新鮮な岩石と、長期間の風化で亀裂が増えた岩石では、壊れやすさが異なります。砂岩でも、石英質の強いセメントで固められたものと、固結が弱いものでは強度が違います。

さらに、鉱物の割合、粒径、空隙率、亀裂、風化度、水分状態などは同じ岩石名の中でも変化します。このため、工事や石材利用では岩石名だけで判断せず、実際に試験して強度を測定します。

「モース硬度7の石英が多いから強い」とは限らない

石英はモース硬度7で、引っかきには比較的強い鉱物です。しかし、石英を多く含む岩石だからといって、必ず圧縮にも強いとは限りません。

たとえば、石英粒がばらばらに近い状態で弱くセメントされている砂岩では、石英粒そのものは傷つきにくくても、粒と粒の間から壊れることがあります。

逆に、個々の鉱物の硬度よりも、結晶がどのようにかみ合い、亀裂がどれだけ少なく、空隙がどれだけ小さいかのほうが岩石全体の破壊に重要な場合があります。

この違いを理解すると、「硬度」と「強度」を混同せずに岩石を観察できます。

岩石の硬さの仕組みは地形にも表れる

岩石の強さや風化への抵抗性の違いは、長い時間をかけて地形にも反映されます。

亀裂が少なく風化・侵食に強い岩石は、崖や尾根、岩峰として残りやすくなることがあります。一方、鉱物が変質しやすい、空隙や亀裂が多い、固結が弱い岩石は削られやすく、谷や低地になりやすい場合があります。

ただし地形は、岩石の強さだけでなく、地層の傾き、節理の方向、水の流れ、気候、隆起速度などにも左右されます。硬さは地形を決める一要因です。

まとめ

岩石の硬さは、鉱物そのものの硬度だけではなく、鉱物や粒子の結びつき、結晶組織、セメント作用、空隙、亀裂、風化、水分、周囲の圧力などが組み合わさって成り立っています。

モース硬度は鉱物の引っかきへの抵抗を比較する尺度で、岩石全体の圧縮強度や壊れにくさとは別の性質です。岩石全体では、力がどのように粒から粒へ伝わるか、どこに弱い亀裂や空隙があるかが重要になります。

つまり岩石の「硬さ」は一つの数字だけで説明できる性質ではありません。鉱物の性質と岩石の内部構造、さらに風化や水・圧力といった環境条件が重なった結果として現れる性質なのです。

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参考資料

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