結論から言うと、土の保水性は、土の粒子の間にある細かな孔隙や粒子表面に、水が毛管力や吸着力によって保持されることで成り立っています。砂・シルト・粘土の割合、団粒構造、有機物量、土の締まり方などによって孔隙の大きさや量が変わるため、土ごとに「どれだけ水を蓄えられるか」「その水を植物がどれだけ使えるか」が異なります。
水はけのよい土と水持ちのよい土は、反対の性質に見えることがあります。しかし、実際には土の中に大きな孔隙と小さな孔隙がバランスよく存在すれば、余分な水は排出しながら、必要な水は残すことができます。土の保水性を理解するには、「土がスポンジのように水を吸う」とだけ考えるのではなく、孔隙の大きさと水を引きつける力の違いを見ることが大切です。
土の保水性とは何か
土の保水性とは、雨や灌水で入った水を、重力ですべて流し去らずに土の中へ保持する性質です。
土に水を十分与えると、最初は多くの孔隙が水で満たされます。その後、大きな孔隙にある水は重力によって下へ移動します。一方、細かな孔隙や粒子表面には水が残ります。この残った水の一部が、植物の根に利用されます。
農研機構は、土壌の保水性を表す特性値として、最大容水量、圃場容水量、初期しおれ点、永久しおれ点などの土壌水分量を用いています。また、圃場容水量から永久しおれ点までの水分量を「有効水分容量」として整理しています。
つまり保水性は、単に「水を多く含めるか」だけではありません。土が保持した水のうち、植物が利用できる範囲がどれくらいあるかも重要です。
水は土のどこに保持されるのか
土は、砂、シルト、粘土、腐植などの固体だけでできているわけではありません。粒子と粒子の間にはたくさんのすき間があり、これを孔隙と呼びます。
孔隙には大小さまざまなものがあります。大きな孔隙は雨の直後には水で満たされますが、重力の影響を強く受けるため、時間がたつと水が下へ移動し、空気が入ります。一方、小さな孔隙では水が孔隙の壁や粒子表面に引きつけられ、簡単には流れ落ちません。
この違いが、土に水が残る基本的な理由です。
毛管力が水を土の中にとどめる
細い管に水を入れると、水面が上がる現象を毛管現象といいます。土の細かな孔隙でも、これと似た働きが起こります。
水分子は土粒子の表面へ引きつけられ、同時に水分子同士も引き合います。そのため、細かな孔隙では水が表面張力によって保持されます。孔隙が細いほど、一般に水は強く保持されます。
このため、砂のように大きな孔隙が多い土では水は重力で抜けやすく、粘土のように非常に細かな孔隙が多い土では水が残りやすくなります。
ただし、細かな孔隙に保持された水のすべてを植物が使えるわけではありません。強く吸着された水は、根が吸い取れないほど強い力で土粒子に保持される場合があります。
砂質土はなぜ水を保持しにくいのか
砂は粒子が大きく、粒子間にできる孔隙も比較的大きくなります。大きな孔隙では毛管力が弱く、重力の影響が相対的に大きいため、水は下へ移動しやすくなります。
そのため砂質土では、雨や灌水の直後には多くの水を含んでいても、比較的短時間で水分量が減りやすくなります。
また、砂粒は粘土粒子より単位重量あたりの表面積が小さいため、粒子表面に保持できる水の量も少なくなりやすい傾向があります。
この結果、砂質土は一般に排水性や通気性が高い一方、乾燥しやすく、頻繁な灌水が必要になることがあります。
粘土質土はなぜ水を多く保持できるのか
粘土粒子は非常に細かく、同じ重さでも砂よりはるかに大きな表面積を持ちます。また、粘土粒子が多い土では細かな孔隙が多くなります。
このため、水は粒子表面や細かな孔隙に強く保持され、土全体として多くの水を蓄えやすくなります。
農研機構も、土壌の保水性や透水性を示す特性値が粘土含量によって大きく異なるとしています。
ただし、ここで注意が必要です。粘土質土は「総水分量」が多くても、その全部が植物に使えるわけではありません。細かな孔隙の水は強く保持されるため、植物が根から吸収できない水も増えます。
したがって、水をたくさん含む土と、植物が利用できる水を多く持つ土は必ずしも同じではありません。
圃場容水量とは何か
土へ十分な水を与えた直後は、大きな孔隙まで水で満たされています。その後、重力によって自由に排水される水がある程度抜けると、水分量の減少はゆるやかになります。
このときの土壌水分状態を、農業では一般に圃場容水量と呼びます。
USDA Natural Resources Conservation Service(NRCS)は、圃場容水量を、十分に湿った土から重力水が排出された後に残る水分量として説明しています。
圃場容水量付近では、大きな孔隙には空気が戻り、小さな孔隙には水が保持されています。植物にとっては、水と酸素を両方確保しやすい状態です。
永久しおれ点とは何か
土が乾いていくと、根はより強い力で水を吸い上げなければならなくなります。やがて、土に水が残っていても植物が十分に吸収できない状態になります。
この下限の目安が永久しおれ点です。
USDA NRCSは、永久しおれ点を、植物がしおれて水を与えても回復できない程度まで土壌水分が低下した状態として説明しています。
永久しおれ点より乾いた土にも水分は残っています。しかしその水は土粒子に強く保持されているため、多くの作物は利用できません。
植物が利用できる水はどの範囲か
一般に、圃場容水量と永久しおれ点の間にある水分が、植物が利用できる水の目安になります。これを有効水分容量またはAvailable Water Capacityと呼びます。
農研機構の土壌物理特性値マップでも、有効水分容量は圃場容水量から永久しおれ点までの間の水分量として扱われています。
重要なのは、保水性を見るときに「最大で何リットルの水を含めるか」ではなく、植物が実際に使える範囲をどれくらい保持できるかを見ることです。
なぜ壌土は植物に使える水が多くなりやすいのか
砂質土は水が抜けやすいため、圃場容水量そのものが低くなりやすい傾向があります。一方、非常に粘土の多い土では多くの水を保持できますが、そのうち強く保持されて植物が使えない水も多くなります。
砂、シルト、粘土が適度に混ざった壌土やシルト質壌土では、重力で流れ去らず、かつ植物が吸収できる強さで保持される水の割合が比較的大きくなることがあります。
USDA NRCSのAvailable Water Capacity資料でも、土性によって圃場容水量と永久しおれ点の差が変わり、植物利用可能水の量が異なることが示されています。
このため「最も水を抱え込む土」が、必ずしも「植物に最も多くの水を供給できる土」ではありません。
団粒構造は保水性にどう関係するのか
土の粒子は、粘土、腐植、微生物がつくる物質、植物の根などによって集まり、団粒を形成します。
団粒の内部には細かな孔隙が多く、団粒と団粒の間には比較的大きな孔隙ができます。この組み合わせが、保水性と排水性の両立に役立ちます。
農林水産省は、団粒内部の小さな孔隙には毛管現象によって水が保持され、団粒間の大きな孔隙からは重力水が排出されると説明しています。
つまり団粒構造が発達した土では、余分な水を排出する経路を持ちながら、細かな孔隙に水を残すことができます。
これが、「水はけがよいのに水持ちもよい」という一見矛盾した性質が同時に成り立つ理由です。
有機物はなぜ保水性に関係するのか
腐植などの土壌有機物も保水性に関係します。
有機物そのものが水を保持する性質を持つだけでなく、有機物は微生物の活動を支え、粘土や鉱物粒子がまとまって団粒をつくることにも関係します。その結果、大小の孔隙が発達し、土壌全体の水分保持特性が変わります。
USDA NRCSは、有機物が土の水保持能力を高め、土壌構造の改善を通じて浸透や保水にも影響すると説明しています。
農研機構のデータでも、有機物含量によって土壌の保水性が大きく異なることが示されています。
ただし、有機物を入れればどんな土でも同じ割合で保水性が高まるわけではありません。もともとの土性、団粒構造、投入量、分解速度などによって効果は変わります。
土が締め固まると保水性はどう変わるのか
重い機械の走行や踏圧などで土が締め固まると、大きな孔隙が減ります。その結果、雨水が入りにくくなったり、根が伸びにくくなったりします。
土全体の水分量だけを見れば増える場合もありますが、植物にとって使いやすい水の量や、根が実際に探索できる土の体積が減ることがあります。
USDA NRCSも、有効水分容量は土性だけでなく、締め固めや有機物量などによって変化するとしています。
保水性は、単に土に水が残るかどうかだけでなく、根がその水に到達し、吸収できるかまで含めて考える必要があります。
礫が多い土ではなぜ保水性が低くなりやすいのか
礫や大きな石は、砂・シルト・粘土のような細かな土粒子に比べると、水を保持する能力が小さい傾向があります。
土の体積のうち礫が占める割合が増えると、水を保持できる細土部分の体積が減ります。そのため、同じ深さの土でも、礫が多い土では根域全体として蓄えられる水の量が少なくなる場合があります。
USDA NRCSも、有効水分容量を左右する固有条件として、土性だけでなく礫などの粗大な破片の量や土層の深さを挙げています。
土の深さも「蓄えられる水の量」を左右する
表土10cmだけを見ると保水性が同じでも、根が伸びられる深さが違えば、植物が利用できる総水分量は変わります。
根が1m近くまで伸びられる土と、30cmの深さに硬盤や岩盤がある土では、根が探索できる土の体積が違います。
そのため農業では、有効水分容量を土壌水分の割合だけでなく、根域の深さと組み合わせて考えます。深く根が張れる土ほど、同じ単位体積あたりの保水性でも、植物全体として利用できる水の貯蔵量が大きくなることがあります。
保水性は高ければ高いほどよいのか
保水性は高ければ高いほどよいわけではありません。
水を強く保持しすぎる細かな孔隙ばかりでは、植物が水を吸いにくくなります。また、排水できる大きな孔隙が少ないと、大雨のあとに土が長時間過湿になり、根の酸素不足を招くことがあります。
理想的なのは、余分な水が排出される大きな孔隙と、植物が利用できる水を保持する小さな孔隙がバランスよくある状態です。
農林水産省が団粒構造を望ましい土壌の物理性として重視するのも、このバランスが作物の水分・空気環境に重要だからです。
土の保水性を左右する主な条件
- 砂・シルト・粘土の割合
- 粘土鉱物の種類と量
- 孔隙の大きさと分布
- 団粒構造の発達程度
- 腐植などの有機物量
- 土の締め固まり
- 礫や石の割合
- 根が伸びられる土層の深さ
- 乾燥や湿潤の履歴
農研機構の全国データでも、保水性の特性値は土壌の種類、粘土含量、有機物含量によって大きく異なります。したがって、同じ地域でも畑ごと、深さごとに保水性が違うことがあります。
保水性と水はけはどう違うのか
保水性は「水を土に残す力」、水はけは「余分な水を移動・排出する性質」です。
砂質土では水はけが良く保水性が低い傾向がありますが、団粒構造が発達した土では、団粒間の大きな孔隙から水を排出しながら、団粒内部の小さな孔隙に水を保持できます。
そのため、良い土壌は「水はけか保水性か」の二者択一ではありません。両方の性質が適度に共存することが重要です。
土の保水性の仕組みをまとめると
- 土の水は粒子間の孔隙と粒子表面に保持される
- 大きな孔隙の水は重力で抜けやすい
- 細かな孔隙では毛管力によって水が残りやすい
- 砂質土は大孔隙が多く、水を保持しにくい傾向がある
- 粘土質土は多くの水を保持するが、植物が使えない水も多い
- 圃場容水量から永久しおれ点までが植物利用可能水の目安になる
- 団粒構造は保水性と排水性の両立に役立つ
- 有機物は直接・間接の両方で水分保持に関係する
- 締め固め、礫、土層の深さも植物が利用できる水量を左右する
つまり、土の保水性は「土が水を吸い込む量」だけで決まるのではなく、水がどの大きさの孔隙に、どの程度の力で保持され、そのうちどれだけを植物が利用できるかという仕組みで成り立っています。土の粒子、孔隙、団粒、有機物、土層の深さが組み合わさって、植物にとっての水の貯蔵庫としての働きが決まるのです。

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