発達した台風の衛星画像を見ると、中心にある「目」はいつも同じ形ではありません。きれいな円形に見えることもあれば、楕円形に見えたり、輪郭が崩れて不明瞭になったり、二重の眼壁を伴うこともあります。
では、なぜ台風の目は円形や楕円形など形が違うのでしょうか。結論からいうと、目の形は、目を取り囲む眼壁の対流と風の分布がどれだけ対称にそろっているかで変わるからです。台風内部の渦がよく整っていれば円形に近づきやすく、鉛直シアや周囲の乾燥空気、眼壁置換などで対流や風の分布が偏ると、楕円形や不明瞭な形になりやすくなります。
台風の目は必ず完全な円ではない
NOAA/AOMLは、台風の目を「おおむね円形の領域」と説明していますが、実際の観測では円形だけでなく、楕円形や不明瞭な目もあります。
米国の気象観測で使われるコードでも、熱帯低気圧の目の形は「円形」「楕円形」「見かけ上の二重眼」「その他の形」「不明瞭」などに分類されています。つまり、目の形が一種類ではないこと自体が観測上の前提になっています。
目の形は眼壁の形と一体で決まる
台風の目だけが独立して存在しているわけではありません。目の周囲には眼壁と呼ばれる積乱雲の輪があり、そこに強い上昇流と風が集中します。
この眼壁が中心をほぼ均等に取り囲んでいれば、目も円形に近い形になりやすくなります。一方、眼壁の一部が強く、別の部分が弱いなど非対称になると、目の輪郭もゆがんで見えます。
そのため、目の形を見ることは、台風内部の対流や風の対称性を見ることでもあります。
鉛直シアが強いと目や眼壁がゆがみやすい
鉛直シアとは、高度によって風向や風速が変わることです。NOAA/AOMLは、鉛直シアが強いと熱帯低気圧の中心構造が傾き、対流や風の分布が非対称になりやすいと説明しています。
台風の下層の循環中心と上層の対流中心がずれると、眼壁の積乱雲も一様に並びにくくなります。すると、衛星画像やレーダーでは目が楕円形に見えたり、一部が開いたように見えたりすることがあります。
つまり、強い鉛直シアは台風の目そのものを直接押しつぶすというより、眼壁の対称性を崩すことで目の輪郭を変えます。
眼壁の対流が片側に偏ると目は不明瞭になる
台風が十分に組織化されていると、眼壁の深い対流が中心を取り囲む輪として見えやすくなります。しかし、周囲の乾燥空気が入り込んだり、海面水温が下がったり、鉛直シアが強まったりすると、眼壁の一部の対流が弱くなることがあります。
その場合、目の輪郭は途切れたり、雲に埋もれたりして、不明瞭に見えるようになります。
したがって、「目がはっきり見えるかどうか」は単に雲があるかないかではなく、中心を取り囲む対流がどれだけまとまっているかを反映しています。
発達中には目が小さく締まって見えることがある
発達中の強い台風では、最大風速半径が小さくなり、眼壁が中心へ締まるように変化することがあります。このとき、目も小さく円形に近い形で見えることがあります。
ただし、目が小さいから必ず強い、円形だから必ず発達中というわけではありません。台風の強さは海面水温、鉛直シア、湿度、内部構造など多くの要素で決まります。
眼壁置換が起こると目の形や大きさが変わる
非常に強い台風では、内側の眼壁の外に新しい眼壁が形成されることがあります。これを眼壁置換といいます。
NOAA/AOMLによると、眼壁置換の過程では内側の眼壁が弱まり、外側の新しい眼壁が主役へ変わります。その途中では一時的に二重の眼壁が見えたり、目が不明瞭になったりします。
新しい眼壁が定着すると、以前より大きな目へ変わることもあります。つまり、同じ台風でも時間の経過とともに目の形や大きさが変わります。
「二重の目」に見えることがあるのはなぜか
衛星画像やレーダーで、目の周囲に二つの輪があるように見えることがあります。これは台風そのものに中心が二つあるという意味ではなく、内側と外側に二重の眼壁が形成されている場合があります。
外側の雨帯が次第にまとまり、外側の眼壁として発達すると、内側の眼壁への水蒸気や角運動量の供給が変化し、内側の眼壁が弱まっていきます。
そのため、眼壁置換の途中では目の見え方が大きく変わります。
目が楕円形だから異常とは限らない
目が円形でないと「台風が壊れている」と考えたくなりますが、楕円形ややや歪んだ目は実際の熱帯低気圧で観測されます。
渦の内部にはさまざまな波動や非対称な流れがあり、周囲の風との相互作用でも眼壁の形は変化します。NOAAの観測資料でも、目の形として円形だけでなく楕円形が正式に記録対象となっています。
したがって、楕円形の目は必ずしも異常な状態ではなく、台風内部の三次元構造や環境の影響が表面に現れたものと考えられます。
目の形だけで台風の強さを判断できない
くっきりした円形の目は、強く組織化された台風で見られやすい特徴の一つです。しかし、目の形だけで中心気圧や最大風速を正確に判断することはできません。
眼壁置換中の台風は、目の形が崩れたり大きくなったりしながら、最大風速が一時的に弱まることがあります。その後、外側の眼壁が整うと再び発達することもあります。
逆に、目が円形に見えていても、環境条件が悪化していれば衰弱へ向かう場合があります。
W00666との違い
W00666「なぜ台風の中心には目ができるのか?」は、眼壁の上昇流、中心部の下降流、断熱昇温などから、目が形成・維持される基本原理を説明する記事です。
この記事ではそれとは別に、できた後の目が、なぜ円形・楕円形・不明瞭・二重眼壁など異なる形に見えるのかを、眼壁の対称性、鉛直シア、対流の偏り、眼壁置換から比較します。
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まとめ
台風の目が円形や楕円形など異なる形になるのは、目を取り囲む眼壁の対流と風の分布が、いつも完全な対称ではないからです。
台風内部の渦がよく整っていれば円形に近い目が見えやすく、鉛直シアや乾燥空気などで眼壁の一部が弱まると、楕円形や不明瞭な目になることがあります。また、眼壁置換が起これば二重眼壁や目の拡大など大きな構造変化も起こります。
そのため、目の形は台風内部の構造を知る手がかりになりますが、形だけで強さを決めることはできません。

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