なぜ吹雪の起こりやすさは季節や天候によって変わるのか?

同じ場所でも、雪が降った直後には強い地ふぶきが起きたのに、数日後には同じくらいの風が吹いても雪がほとんど舞い上がらないことがあります。反対に、しばらく雪が降っていなくても、新しい軽い雪が広く残っていれば、強風だけで急に視界が悪くなることもあります。

結論からいうと、吹雪の起こりやすさが季節や天候によって変わるのは、風の強さだけでなく、積雪表面の雪が乾いて軽いか、湿って重いか、風や圧密で締まっているか、融解・再凍結で硬い層になっているかが時間とともに変わるためです。吹雪は「強風さえあれば同じように起こる現象」ではなく、風と雪面状態の組み合わせによって発生しやすさが変わります。

目次

吹雪には降っている雪と地面の雪の両方が関係する

気象庁は「ふぶき」を、やや強い風程度以上の風が雪を伴って吹く状態としています。そこには、実際に雪が降っている場合と、降雪がなくても積もった雪が風で舞い上がる地ふぶきの両方が含まれます。

つまり吹雪の強さを考えるときは、その場で降っている雪だけでなく、地表にどのような雪が残っているかを見る必要があります。

新雪が降った直後は地ふぶきが起こりやすい

降ったばかりの新雪、とくに低温で乾いた軽い雪は、粒同士の結びつきがまだ弱く、風で動かされやすい状態です。

そのため降雪後に風が強まると、雪面から多くの雪粒が持ち上げられ、地ふぶきになりやすくなります。NOAAの技術資料でも、ゆるい新雪は比較的低い風速から吹雪を起こしやすいとされています。

真冬の寒波では吹雪の条件がそろいやすい

真冬の強い寒気では、乾いた新雪が積もりやすく、低温のため雪面が融けにくくなります。

そこへ強い季節風が重なると、降雪中の雪と地面から舞い上がる雪の両方が空中に増え、激しい吹雪になりやすくなります。雪が軽く、風も強いという二つの条件が同時に成立しやすいためです。

ただし真冬なら必ず吹雪くわけではない

真冬でも風が弱ければ、乾いた雪が多くても激しい吹雪にはなりません。

また、雪面がすでに風で締め固められていたり、表面に硬い層ができていたりすると、同じ風速でも雪粒が持ち上がりにくくなります。季節だけで吹雪の発生を決めることはできません。

風に飛ばされるには雪粒同士の結びつきを超える力が必要

積雪表面の雪は、完全にばらばらな粒ではありません。時間がたつと雪粒同士が接触し、結びつきが強くなります。

そのため地ふぶきが始まるには、風が雪粒を引き離すのに十分な力を与える必要があります。NOAA関連研究でも、吹雪を開始させる風速は、その後に吹雪を維持する風速より高くなる場合があると報告されています。

一度吹雪いた雪面は、その後は飛びにくくなることがある

強風で雪が移動すると、軽い粒が先に運び去られ、残った雪面は締まりやすくなります。

さらに風圧で雪粒同士の接触が増え、雪面が硬くなると、次に同じ強さの風が吹いても前回ほど大量の雪が舞い上がらないことがあります。過去に風を受けたかどうかも、吹雪の起こりやすさを変えます。

雪が古くなると圧密によって飛びにくくなる

積雪は時間の経過とともに自重で沈み込み、密度が高くなります。

新雪のようなふわふわした構造が失われると、雪粒は風で簡単に引き離されにくくなります。NOAAの予報資料でも、積雪の年齢や圧密状態は吹雪予測の重要な要素とされています。

暖気が入ると雪面は湿って重くなる

気温が上がって雪面が0℃へ近づくと、一部の雪が融けて液体の水を含むようになります。

湿った雪は乾いた粉雪より重く、粒同士がまとまりやすいため、一般には風で細かく舞い上がりにくくなります。そのため暖気流入後は、風が強くても地ふぶきが弱まることがあります。

雨が降ると吹雪きにくくなることがある

積雪の上に雨が降ると、雪面へ液体水が入り、雪粒同士の結びつきが強まりやすくなります。

雨や融雪で雪面が湿れば、軽い新雪のときより雪粒を持ち上げるのに強い風が必要になります。降雪後の天候が吹雪の起こりやすさを大きく変える一例です。

融けた雪が再凍結すると硬い雪面になる

日中に融けた雪が夜間の冷え込みで再び凍ると、雪面に硬い層や氷状の表面ができることがあります。

このような雪面では、風が吹いても雪粒がばらばらに持ち上がりにくくなります。春先に強い風が吹いても、真冬の新雪直後ほど激しい地ふぶきにならないことがあるのは、この影響もあります。

春先は吹雪の条件が長続きしにくい

春が近づくと日射が強まり、日中の気温も上がりやすくなります。

新雪が降って一時的に吹雪きやすい状態になっても、雪面が早く湿ったり締まったりして、飛ばされやすい状態が短時間で失われることがあります。季節変化は、吹雪の「起こるかどうか」だけでなく「起こりやすい状態がどれだけ続くか」にも影響します。

初冬は積雪が少ないため地ふぶきの材料が不足することがある

初冬に雪が降っても、地面の多くがまだ露出していたり、積雪が薄かったりすると、風で巻き上げられる雪の量そのものが少なくなります。

そのため強風でも、地ふぶきの規模が限定的になる場合があります。十分な積雪が広がっているかどうかも重要です。

一方、積雪が広がった真冬は雪粒の供給源が大きい

広い平野や雪原が連続して雪に覆われると、風が長い距離にわたって雪面を吹き続けられます。

その結果、風上側から次々と雪粒が供給され、吹雪が長時間続きやすくなります。広い積雪面があるかどうかは、吹雪の持続性にも関係します。

風速が少し変わるだけで吹雪の強さが急に変わることがある

雪粒が動き始めるには、ある程度以上の風の力が必要です。

そのため、風速が雪面の状態に応じたしきい値を下回っている間は雪がほとんど動かなくても、少し風が強まってしきい値を超えると、急に多くの雪粒が空中へ持ち上がることがあります。

しきい値となる風速はいつも同じではない

新しく乾いた雪なら比較的弱い風でも動き始めますが、湿った雪や締まった雪、再凍結した雪面では、より強い風が必要です。

NOAAの最近の吹雪解説でも、予測には風速だけでなく、積雪の状態や予想気温が重要だとされています。

降雪中は地面の雪が飛ばなくても視界が悪くなる

強い風と降雪が同時に起きている場合、地面の雪がそれほど舞い上がらなくても、空から降る雪そのものが横向きに運ばれて視界を悪化させます。

そのため湿雪で地ふぶきが起こりにくい条件でも、強い降雪と風が重なれば吹雪になることがあります。

降雪が止んだ後でも地ふぶきは続くことがある

反対に、雪が降り終わっても地表に軽い新雪が大量に残っていれば、強風だけで地ふぶきが続くことがあります。

NOAA/NWSもblowing snowを、すでに積もった雪が風で持ち上げられて視界を悪化させる現象として説明しています。雪が降っていないからといって吹雪の危険がなくなるわけではありません。

寒気が戻ると新しい乾雪が積もり、再び吹雪きやすくなる

いったん暖気や雨で雪面が締まっても、その後に寒気が入り、新しい乾いた雪が上へ積もれば、再び飛ばされやすい表面ができます。

このため一冬の中では、「新雪で吹雪きやすくなる→圧密や融雪で起こりにくくなる→新たな寒波で再び起こりやすくなる」という変化が繰り返されます。

低気圧の通過前後で条件が急変する

低気圧が近づくと、降雪量や風向・風速が変わります。通過前は比較的湿った雪でも、通過後に強い寒気と乾いた雪、強風が重なると、急に吹雪が激しくなることがあります。

反対に、暖気が流れ込んで雪が湿れば、風が続いていても地ふぶきは弱まる場合があります。

風向の変化でも吹雪の起こり方が変わる

同じ場所でも、風向が変われば、風が長く雪面を吹き抜けられる距離や、周囲の建物・樹木による遮られ方が変わります。

そのため気象条件の時間変化に伴って、同じ道路でも吹雪きやすい区間や吹きだまりのできる場所が移動することがあります。

森林や建物の影響は天候によって効き方が変わる

樹木や建物は地表付近の風を弱めるため、一般には吹雪を抑える方向に働きます。

ただし風向が変わると、その風下側で乱流や吹きだまりができる場所も変わります。吹雪の季節・天候変化には、風そのものだけでなく、風と地表面の相互作用も関係します。

気温が低ければ低いほど必ず吹雪きやすいわけではない

低温は乾いた軽い雪を保ちやすくしますが、吹雪には十分な風が必要です。

また雪面が古く硬くなっていれば、非常に寒くても雪粒が舞い上がりにくいことがあります。低温は一つの条件であって、吹雪を単独で決めるものではありません。

雪が多いほど必ず吹雪が強いわけでもない

深い積雪があっても、表面が湿って固まっていれば、地ふぶきは弱いことがあります。

一方、積雪がそれほど深くなくても、表面に乾いた新雪が広く残り、強い風が吹けば視界が急激に悪化することがあります。重要なのは積雪深そのものより、風に供給される雪粒の状態です。

W00707との違いは「発生の基本原理」ではなく「起こりやすさの時間変化」

なぜ雪は強い風で舞い上がると吹雪や地ふぶきになるのか?では、雪粒が風で運ばれ、降雪や積雪の巻き上げによって視界が悪化する基本的な仕組みを説明しました。

本記事ではその基本を前提に、同じ場所でも季節や天候によって、雪面が新雪・圧密雪・湿雪・再凍結雪へ変わり、吹雪を始めるのに必要な風の強さも変わるため、起こりやすさが時間とともに変化する理由を扱います。

W00727との違いは「場所差」ではなく「同じ場所の時間変化」

W00727では、地形、風向・風速、雪質によって同じ時刻でも吹雪の強さが場所ごとに違う理由を説明しました。

W00737では、同じ地点に注目し、新雪直後、寒波、暖気、雨、融雪、再凍結などが進むにつれて、その場所の吹雪きやすさがどう変わるかを中心に整理します。

W00734〜W00736との関係

なぜ積雪の深さや雪質は季節や天候によって変わるのか?では積雪全体の季節変化を、なぜ粉雪は季節や天候によってできやすさが変わるのか?では乾いた軽い雪の変化を、なぜ湿雪は季節や天候によってできやすさが変わるのか?では液体水を含む雪の変化を扱いました。

吹雪では、これらの雪質変化が「風にどれだけ雪粒を供給できるか」という形で直接影響します。雪面の変化と風の変化が重なった結果として、吹雪の起こりやすさが変わります。

吹雪の予測では風速だけを見ても不十分

NOAAは、吹雪の予測が難しい理由として、風速、積雪の状態、予想気温など複数の変数が関係することを挙げています。

実際には、「新雪がいつ降ったか」「その後に暖気や雨があったか」「雪面が再凍結していないか」といった履歴まで考える必要があります。

まとめ

吹雪の起こりやすさが季節や天候によって変わるのは、風の強さだけでなく、風で持ち上げられる積雪表面の状態が絶えず変化するためです。

乾いた新雪が積もった直後や、強い寒気と強風が重なると吹雪は起こりやすくなります。一方、時間経過による圧密、暖気や雨による湿雪化、融解・再凍結による雪面硬化が進むと、同じ風でも雪は舞い上がりにくくなります。その後に新たな乾雪が積もれば、再び吹雪きやすくなります。

つまり、吹雪の季節・天候変化とは、風そのものの変化だけではなく、風に飛ばされる雪面が新雪・締まった雪・湿雪・再凍結雪へと変わり、雪粒を動かすために必要な風の強さまで変化することなのです。

関連する「なぜ?」

参考資料

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

目次