なぜ照明の配光は、レンズ・反射板・器具の向きで変わるのか?

同じLEDを使った照明でも、細い光を遠くまで飛ばすスポットライトもあれば、部屋全体へ広く光を広げるシーリングライトもあります。また、同じ器具でも向きを変えると、壁を強く照らしたり床へ光を集めたりできます。

なぜ照明の配光は、レンズ・反射板・器具の向きで変わるのでしょうか。結論からいうと、配光は「光をどの方向へどれだけ出すか」という方向別の光度分布であり、LEDやランプから出た光をレンズ、反射板、拡散板などで曲げたり反射させたり散らしたりすることで形が決まるからです。さらに器具を傾ければ、その配光全体の向きが空間に対して変わります。

目次

配光は「光の量」ではなく「光をどの方向へ出すか」を表す

日本照明工業会は、配光を「照明器具やランプから出ている光の広がり方」と説明しています。また、光度はある方向へ出る光の強さを表します。

つまり配光は、照明器具から出る全光束が何lmかという総量とは別の性質です。同じ1000lmでも、狭い角度へ集めれば正面方向の光度は高くなり、広い角度へ分散すれば一方向あたりの光度は低くなります。

Illuminating Engineering Society(IES)は、配光特性を角度ごとの光度分布として扱い、IESファイルには照明器具がどの方向へどれだけ光を出すかという測光データが記録されると説明しています。

LEDそのものにも光の出やすい方向がある

白熱電球のフィラメントは比較的多方向へ光を出しますが、LEDは半導体チップの構造上、発光面から前方へ光が出やすい特徴があります。

日本照明工業会のLEDガイドでも、LEDモジュールから発生する光には指向性があり、一般的な電球形LEDランプは配光が比較的狭くなりやすい一方、構造を工夫して白熱電球に近い広い配光を持たせた製品もあると説明されています。

ただし、実際の照明器具の配光はLEDチップだけで決まりません。チップの前に置かれたレンズや反射板、カバーなどによって光路が変わり、最終的な配光が作られます。

レンズは光を屈折させ、狭角にも広角にもできる

レンズは、光が異なる材料の境界を通るときに進行方向が変わる「屈折」を利用します。LEDの前へ適切な形のレンズを置くと、ばらばらに進む光を一定方向へそろえたり、反対に広い角度へ広げたりできます。

米国エネルギー省は、LED照明の二次光学系としてTIRレンズなどが使われ、狭いビームから広い配光、回転対称から非対称の配光まで作れると説明しています。

そのため、同じLEDチップでもレンズ形状を変えると配光角は変わります。店舗のスポットライトでは狭い角度で商品を強調し、廊下や広い面を照らす器具では広角のレンズを使う、といった違いが生まれます。

反射板は横へ出た光を必要な方向へ戻す

反射板は、LEDやランプから横方向へ出た光を反射し、必要な方向へ向けます。懐中電灯や投光器の内側にある金属光沢のある曲面も、反射板の一例です。

反射板の深さ、開口の大きさ、曲面形状、光源との位置関係を変えると、光が集まる角度や広がり方が変わります。

DOEのLED光学設計資料では、反射板は側面へ向かった光を反射させて方向を変える一方、中心付近をそのまま進む光は直接制御しないため、TIRレンズとはビームの輪郭や制御特性が異なると説明されています。

拡散板は光を散らし、均一な広がりへ近づける

乳白色のカバーや拡散板を通すと、入射した光はさまざまな方向へ散乱します。LED素子が点々と並んでいても、拡散板を通すことで一つの大きな発光面のように見せることができます。

光を拡散すると、狭い方向へ集中していた光は広がり、眩しさや明るさのむらを減らしやすくなります。一方で、狭い場所へ強く光を集中させる用途には向きません。

シーリングライトや面発光照明が広い配光を作りやすいのは、発光面の大きさだけでなく、こうした拡散光学系が使われているためです。

遮光板やルーバーは「出したくない方向の光」を抑える

配光を作る方法は、光を広げたり集めたりするだけではありません。特定の方向へ光が出ないように遮ることでも、配光は変わります。

たとえばルーバーやフードを付けると、横方向や上方向の光を遮り、必要な方向へだけ光を出しやすくなります。屋外照明では、上空や住宅側へ不要な光が漏れないように遮光することがあります。

この場合、光源が発生させる光の総量が同じでも、器具から外へ出る方向分布は変わります。配光設計では「どこへ光を送るか」と同時に「どこへ送らないか」も重要です。

器具の向きを変えると、配光そのものではなく空間に対する向きが変わる

ここで区別したいのが、器具固有の配光と、部屋の中で実際に光が届く方向です。

照明器具を傾けても、レンズや反射板の形が変わらない限り、器具を基準にした配光曲線そのものは基本的に同じです。しかし、器具全体の向きを変えるため、その配光が空間のどの方向へ向くかは変わります。

スポットライトを床へ向ければ床面に光が集中し、壁へ向ければ壁面に光が集中します。照明学会の研究でも、照明器具の配光特性や配置条件を変えると、室内の照度分布が変化することが示されています。

つまり「器具を傾けると配光が変わる」と表現する場合、厳密には配光の形そのものより、配光の向きと、それによって生じる照度分布が変わると考えると正確です。

取り付け高さを変えても、器具固有の配光角は基本的に変わらない

同じ器具を高い天井へ移したからといって、レンズや反射板が変わらなければ、その器具の配光角そのものが広くなるわけではありません。

ただし、照射面までの距離が大きくなるため、床や机で見た光の広がりは大きくなり、照度は低くなります。その結果、「光が広がった」と感じることがあります。

これは配光特性の変化ではなく、一定の角度で進む光が長い距離を進んだ結果、照射範囲が広がったものです。

配光と照度分布を混同しないことが、照明の変化条件を理解するうえで重要です。

可変配光器具では、光学系そのものを動かして配光を変える

一部のスポットライトや舞台照明、展示照明には、配光角を変えられる機能があります。

ズーム機構では、レンズ同士の距離やLEDとレンズの位置関係を変えることで、狭角から広角までビームを調整します。また、光学部品をLEDに対してずらし、ビームの方向を変える研究開発も行われています。

このような器具では、単に器具全体を傾けるのではなく、内部の光学系を動かすため、器具固有の配光そのものが変わります。

複数のLEDや光学系を個別に制御すると配光を電子的に変えられる

LEDは小型なので、一つの器具に多数のLEDを並べ、それぞれに異なるレンズを付けることができます。

たとえば中央を照らすLED群と、左右へ広げるLED群を別々に制御すれば、点灯するLEDの組み合わせによって器具全体の配光を変えられます。

自動車の前照灯や一部の高度な建築照明では、多数の発光素子を個別制御し、必要な場所だけへ光を送る技術が使われています。この場合、機械的にレンズを動かさなくても、どの光源をどれだけ点灯するかによって方向別の光度分布を変えられます。

部屋の壁や天井は、配光とは別に「実際の光の広がり方」を変える

照明器具の配光が同じでも、白い壁の部屋と黒い壁の部屋では、空間の明るさは同じにはなりません。壁や天井で反射した光が、別方向から再び室内へ届くからです。

J-STAGEに掲載された照明学会の室内照度分布シミュレーション研究でも、照明器具の配光特性と壁面の反射率が、観測面の照度分布に影響することが検討されています。

この反射光は器具固有の配光そのものではありませんが、人が実際に感じる「光の回り方」には大きく影響します。そのため照明設計では、器具の配光と室内表面の反射特性を合わせて考えます。

配光を比べるときに確認したいポイント

  • 全光束だけでなく、角度ごとの光度や配光曲線を見る
  • 狭角・中角・広角など配光角を確認する
  • レンズ、反射板、拡散板、ルーバーなどの光学構造を見る
  • 器具の向きと、実際に照らしたい面の方向を確認する
  • 設置高さによる照射範囲の変化と、配光特性そのものを分けて考える
  • 壁や天井の反射による二次的な光の広がりも考える

まとめ

照明の配光が条件によって変わるのは、光源から出た光の進む方向を、レンズ、反射板、拡散板、遮光部品などで制御できるからです。

レンズは光を屈折させて集光・拡散し、反射板は横へ出た光を必要な方向へ戻します。拡散板は光を広く散らし、ルーバーやフードは不要な方向の光を抑えます。可変配光器具では、こうした光学系の位置を変えたり、複数のLEDを個別制御したりして配光そのものを変えることもできます。

一方、器具の向きや取り付け高さを変えた場合は、器具固有の配光が変わったのか、同じ配光の向きや照射範囲が変わっただけなのかを区別することが重要です。配光を正しく理解すると、必要な場所へ必要な量の光を届けやすくなります。

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