なぜ積雪表面の霜は埋もれると弱い層になりやすいのか?

雪が積もった斜面では、雪面の上に羽毛のような霜の結晶が育つことがあります。これは「表面霜」と呼ばれ、見た目は美しいものの、その後に新しい雪で埋められると雪崩に関係する弱い層になることがあります。

結論からいうと、表面霜は晴れて冷えた雪面で水蒸気から直接成長する大きく繊細な氷結晶で、粒同士の結びつきが弱いため、その上に新雪が積もって埋められても上下の雪を強く結びつけにくいからです。雪面上では単なる霜でも、埋没すると積雪内部の「弱層」へ役割が変わるのが重要な点です。

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表面霜は雪の上に直接成長する霜

一般の霜と同じように、表面霜も空気中の水蒸気が液体を経ず、直接氷の結晶として成長することでできます。気象庁は、地面や物体の表面が十分に冷えると、空気中の水蒸気が直接氷の結晶となって霜をつくると説明しています。

雪面でも同じように、表面が強く冷えれば水蒸気が雪の表面へ付着して氷結晶を成長させます。

晴れて風の弱い夜ほど雪面は強く冷えやすい

表面霜が育ちやすい代表的な条件は、晴天、弱風、比較的高い湿度です。

晴れて雲が少ない夜は、雪面から赤外線として熱が逃げやすくなります。風が弱いと周囲の暖かい空気との混合も少ないため、雪面だけが空気より強く冷えることがあります。

このとき雪面付近の空気が霜点まで冷えると、水蒸気が雪面上で氷結晶として成長します。

表面霜は平たい板状や羽毛状の結晶になりやすい

表面霜は、細かな丸い雪粒とは違い、板状や羽毛状、葉のような形の結晶として成長することがあります。

Avalanche.orgは、表面霜を雪面上に成長する羽毛状の結晶と説明しています。結晶が大きくなるほど見た目は目立ちますが、構造はとても繊細です。

雪面にある間は外力で簡単に壊れやすい

表面霜は風、日射、雨、気温上昇などで壊されやすい結晶です。強い風が吹けば結晶は折れたり吹き飛ばされたりし、日射や暖気が強ければ変形・融解しやすくなります。

そのため、表面霜ができても必ず積雪内部に残るわけではありません。

新しい雪が静かに積もると表面霜が埋め残される

表面霜が壊れないまま降雪が始まると、その結晶は新雪の下に埋められます。

ここで重要なのは、表面霜が「地表の霜」ではなく「積雪内部の一層」へ変わることです。防災科学技術研究所の積雪断面観測でも、表面霜は積雪を構成する雪質の一つとして区別されています。

埋もれた表面霜は粒同士の接点が少ない

表面霜は大きく平たい結晶が疎らに立った構造になりやすく、丸く締まった雪粒に比べて粒同士の接触点が少なくなります。

接触点が少ないと、粒同士の間で力を伝える結合も少なくなります。そのため、上から荷重が加わったときに壊れやすい層になりやすくなります。

弱層とは「周囲より壊れやすい雪の層」

積雪は均一な塊ではなく、降った時期や気象条件の違う層が重なっています。その中に周囲より柔らかく、結合の弱い層があると、そこが弱層になります。

SLFは、典型的な弱層には大きな角張った結晶や表面霜など、粒同士の結合が弱い結晶が含まれると説明しています。

表面霜の上にまとまりのある雪が載ると危険性が増す

表面霜が埋もれただけで、すぐ雪崩が起きるわけではありません。その上にまとまりのある雪の板、つまりスラブが形成されると、弱層としての意味が大きくなります。

上の雪板が荷重を伝え、下の表面霜層が壊れると、破壊が横方向へ広がることがあります。

表面霜は長く残る弱層になることがある

Avalanche.orgは、埋没した表面霜がpersistent weak layer、つまり持続性の弱層として数週間から数か月残ることがあると説明しています。

これは表面霜の結晶が大きく、周囲の雪と強く結合しにくいためです。新しい雪がさらに積もると見えなくなりますが、弱さだけが内部に残る場合があります。

表面霜はどこにでも同じようにできるわけではない

表面霜の形成には、風が弱く、冷え込みやすく、湿度条件が合う必要があります。そのため、尾根のような風の強い場所では壊れやすく、風の弱いくぼ地や樹林の切れ間などで残りやすいことがあります。

同じ斜面でも場所によって表面霜の有無が違うことがあるため、埋没後の弱層も一様ではありません。

雪面上では見つけやすくても埋もれると見つけにくい

表面にあるときは羽毛状の結晶として比較的分かりやすい表面霜も、新雪に埋もれると外から見えなくなります。

積雪断面を掘ると、薄く灰色がかった層や大きな結晶の集まりとして確認される場合がありますが、分布が不連続だと見落としやすくなります。

表面霜としもざらめ雪は同じ弱層でもでき方が違う

雪崩に関係する弱層には、表面霜のほかにしもざらめ雪やこしもざらめ雪があります。

表面霜は雪面の上に水蒸気から直接成長します。一方、しもざらめ雪は積雪内部の大きな温度勾配によって水蒸気が移動し、内部の雪粒が角張った大きな結晶へ変化してできます。

どちらも結合が弱くなりやすい点は共通していますが、形成場所と成長過程は異なります。

雪面の温度と空気の湿度の両方が重要

表面霜は、単に気温が低いだけでは育ちません。雪面付近の空気に十分な水蒸気があり、その雪面温度が霜点より低くなることが必要です。

そのため、冷たく晴れた夜でも空気が非常に乾燥していれば成長しにくく、逆に湿度が高くても風が強ければ結晶が育ちにくくなります。

「なぜ雪と霜はどちらも氷の結晶なのにできる場所が違うのか?」との違いは「霜がどこでできるか」ではなく「雪面霜が埋もれた後」

なぜ雪と霜はどちらも氷の結晶なのにできる場所が違うのか?では、雪が雲の中でできて降るのに対し、霜は冷えた地面や物体表面で直接成長するという一般的な違いを扱っています。

この記事ではそこから一段深く入り、雪面そのものに成長した表面霜が、新雪に埋もれた後になぜ周囲より結合の弱い層として残るのかに焦点を絞ります。

「なぜ表層雪崩では弱層の破壊が広がると雪の板が一気に滑り出すのか?」とのつながりは弱層の「材料」と「破壊」の違い

なぜ表層雪崩では弱層の破壊が広がると雪の板が一気に滑り出すのか?では、弱層で始まった破壊が広がり、雪板が滑り出す仕組みを説明しました。

本記事は、その弱層の材料の一つになりうる表面霜が、どのような気象条件で成長し、なぜ埋没後も結合の弱い層として残りやすいのかを説明する記事です。

積雪断面観測では表面霜も雪質として記録される

防災科学技術研究所の積雪断面観測では、新雪、しまり雪、ざらめ雪、しもざらめ雪、氷板などと並んで「表面霜」が雪質分類の一つとして記録されています。

これは、表面霜が一時的な見た目の現象ではなく、その後の積雪構造や安定性に関係する重要な層として扱われていることを示しています。

表面霜が弱層になる流れ

まず晴天と弱風で雪面が強く冷えます。次に雪面付近の水蒸気が直接氷結晶となり、羽毛状の表面霜が育ちます。

その後、風や日射で壊される前に新雪が積もると、表面霜は積雪内部に保存されます。さらにその上にまとまりのある雪が積もると、表面霜層は荷重を受ける弱い境界になります。

条件がそろえば、この弱層の破壊が雪崩につながることがあります。

まとめ

積雪表面の霜が埋もれると弱い層になりやすいのは、表面霜が大きく繊細で、粒同士の接触や結合が少ない氷結晶だからです。

晴れて冷えた、風の弱い雪面では水蒸気から表面霜が成長します。その結晶が壊されないまま新雪に埋められると、上下の雪を十分に結びつけにくい層として積雪内部に残ります。

つまり、表面霜は「雪面上では霜、埋もれると弱層」という二つの顔をもつ雪の構造なのです。

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参考資料

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