なぜ低い層雲は夜に雲底が下がり、地表に達して霧になることがあるのか?

低い層雲が夜に雲底を下げ、地表に達して霧になることがあるのは、夜間の放射冷却によって層雲の上端やその下の空気が冷え、空気が飽和する高さが次第に低くなるからです。もともと地面から少し離れていた低い層雲でも、雲頂からの放射冷却と下層への熱の混合が続くと、凝結する層が下へ広がり、雲底が少しずつ地表へ近づくことがあります。最終的に雲底が地面に接すれば、地上からは霧として観測されます。

この過程は英語でstratus build-downと呼ばれることがあります。この記事では、霧と雲の一般的な定義ではなく、低い層雲が夜間に下へ成長し、霧へ変わる仕組みを説明します。

目次

霧と低い層雲は何が違うの?

霧と低い層雲は、どちらも主に微小な水滴からできています。

大きな違いは、その水滴の層が地表に接しているかどうかです。雲底が地面から離れていれば層雲、地面に接して視程を悪化させれば霧として扱われます。

つまり、低い層雲の雲底が夜の間に下がって地表まで達すれば、同じ水滴の層が「雲」から「霧」と呼ばれる状態へ変わることがあります。

なぜ夜になると雲底が下がることがあるの?

夜は太陽からの短波放射がなくなり、地面や雲は赤外線として熱を宇宙へ放出します。

低い層雲がある場合、雲の上端は上空へ長波放射を出して冷えます。上空に厚い雲が少ないほど、この放射冷却は強くなりやすくなります。

雲頂付近で冷えた空気は、乱流混合によって雲の内部やその下へ影響を広げます。その結果、層雲の下にある空気も冷え、飽和へ近づきます。

雲頂の放射冷却が雲底を下げるのはなぜ?

空気が冷えると、飽和水蒸気量は小さくなります。水蒸気量がほぼ同じなら、気温が下がるほど相対湿度は高くなり、露点へ近づきます。

NWSの霧予報資料では、層雲の上端が放射冷却すると、その冷却が混合によって下へ再分配され、雲の下の空気を冷やして凝結高度を下げると説明されています。

つまり、雲の下にあった未飽和の空気が夜間に飽和へ近づくことで、新しい雲粒がより低い高度でも生じ、雲底が下へ成長していきます。

「雲底が下がる」とは雲全体が落ちてくることなの?

必ずしも雲の塊全体がそのまま落下しているわけではありません。

実際には、もともと雲底より下にあった空気が冷やされて飽和し、そこで新しい水滴が生まれることで、雲の下端が下へ広がっていきます。

そのため「雲が落ちてくる」というより、凝結できる層が下へ拡大すると考える方が正確です。

地面の温度もbuild-downに関係するの?

関係します。

地面が暖かいと、地表から空気へ熱が供給され、下層の冷却を打ち消す方向に働きます。

一方、地面が冷たいと、層雲の下にある空気がより冷えやすくなり、雲底の低下を助けます。

NWSの専門資料では、冷たい地面ほどstratus build-downが速くなり、特に積雪面では放射冷却が強まりやすいため霧への移行リスクが高まるとされています。

なぜ雪があると層雲が霧へ変わりやすいことがあるの?

雪面は夜間に強く放射冷却しやすく、地中からの熱が上へ伝わりにくいため、地表付近の空気を低温に保ちやすくなります。

その結果、低い層雲の下の空気が露点まで冷えやすくなり、雲底が下がる条件が整います。

NWSのbuild-down資料でも、積雪域では層雲の雲底低下と霧発生が起こりやすいと説明されています。

低い層雲なら必ず霧になるの?

いいえ。

雲底が低くても、地表付近の空気が十分に冷えなければ地面まで飽和層は広がりません。

地面が暖かい、風が強く乾いた空気が混ざる、上空に雲が多く雲頂の放射冷却が弱い、といった条件ではbuild-downが止まることがあります。

その場合、低い層雲のまま残ったり、雲底が再び上がったりします。

上空に別の雲があるとbuild-downしにくくなるの?

なることがあります。

層雲の上に厚い雲があると、低い層雲の雲頂から宇宙へ直接逃げる長波放射が減り、雲頂冷却が弱くなります。

雲頂冷却が弱まれば、その下への冷却の広がりも弱くなり、雲底が下がる速度が遅くなることがあります。

NWSの実例でも、薄い雲域では雲頂冷却が効いて濃霧が形成された一方、厚い雲層がある地域では霧が発達しにくかった例が紹介されています。

風が弱い方が霧になりやすいの?

多くの場合、強すぎない風の方が有利です。

風が強いと上空の乾いた空気との混合が強まり、地表付近の飽和が妨げられることがあります。

一方、適度な乱流は雲頂で生じた冷却を下へ運ぶため、build-downには一定の混合も必要です。

つまり、完全な無風よりも弱い混合があり、しかし乾いた空気を大量に取り込むほど強風ではない状態が雲底低下に適する場合があります。

層雲の中では水滴も成長するの?

成長します。

雲頂が冷えると相対湿度が高まり、水蒸気が既存の雲粒へ凝結します。

NWSの専門資料では、雲頂冷却による水滴成長と沈降も、雲底を下げる方向に働くと説明されています。

ただし霧への移行の中心は、水滴が物理的に下へ落ちることだけではなく、雲の下の空気が冷えて新たに飽和することです。

実際に一晩で層雲が霧になった例はあるの?

あります。

米国カンザス州で2005年12月20〜21日に起きた事例では、夕方から低い層雲が存在し、夜間に雲底が次第に下がって濃霧へ移行しました。

NWSの事例解析では、雲底が500〜800ft程度だった地域で夜間に雲底がさらに低下し、その後、広い範囲で濃霧が発生しています。

この事例では積雪、弱い混合、雲頂冷却などがbuild-downを助けたと考えられています。

雲底はどれくらいの速さで下がることがあるの?

NWSの専門資料では、典型的なbuild-down速度として1時間あたり100〜200ft程度、冷たい地面など条件が強い場合には300〜400ft程度の雲底低下が観測されることがあるとされています。

ただしこれは普遍的な速度ではなく、地面温度、上空の雲量、湿度、風、層雲の厚さなどによって大きく変わります。

夜の地表放射冷却だけで霧になる場合とは何が違うの?

通常の放射霧では、まず地面が冷え、そのすぐ上の空気が下から冷やされて飽和します。

一方、stratus build-downでは、すでに低い層雲が存在しており、雲頂の放射冷却と乱流混合が雲の下の空気を冷やす重要な役割を持ちます。

つまり、放射霧は「地面から上へ」、build-downは「低い層雲から下へ」という側面が強い違いがあります。

ただし実際の大気では両方の冷却が同時に働くため、明確に分離できない場合もあります。

気象庁の衛星画像では霧と下層雲はどう見えるの?

気象庁の気象衛星センターでは、夜間の霧や下層雲をNight microphysics RGB合成画像などで監視しています。

霧と低い層雲は衛星から見ると似た性質を持つため、画像だけでは区別が難しいことがあります。

このことからも、層雲と霧が微物理的には連続した低い水雲であり、雲底が地表へ達するかどうかが重要な違いだと分かります。

なぜ朝になると再び霧が層雲へ戻ることがあるの?

日の出後に地面が暖まると、地表付近の気温が上昇し、相対湿度が下がります。

すると地面付近の霧粒から蒸発が始まり、最も低い層から霧が消えていきます。

上空にはまだ飽和した雲層が残るため、地表では霧が消えたのに、少し上には低い層雲が残る状態になることがあります。

つまり、夜のbuild-downとは逆に、朝の加熱で雲底が持ち上がることがあります。

「風が強まると霧が低い雲になる」記事とは何が違うの?

霧が低い雲へ変わる記事では、地表付近の霧が風や乱流の増加によって持ち上げられ、雲底が地表から離れる方向の変化を扱っています。

一方、この記事では、すでに存在する低い層雲の雲底が夜間冷却で下がり、地表へ達して霧になる逆方向の変化を扱っています。

「霧と雲はなぜ呼び分けられるのか?」という記事とは何が違うの?

霧と雲の一般的な違いを扱う記事では、両者が同じような微小水滴でできていても、地面に接しているかどうかで呼び分けられる理由が中心です。

一方、この記事では、その境界を低い層雲が夜の間に実際に越え、雲底が地面へ達して霧になる過程を説明しています。

まとめ

低い層雲が夜に雲底を下げ、地表に達して霧になることがあるのは、雲頂の放射冷却と乱流混合によって雲の下の空気が冷え、飽和する高さが次第に低下するからです。

地面が冷たい、上空に厚い雲が少ない、湿度が高い、風が強すぎないといった条件がそろうと、build-downは進みやすくなります。

低い層雲が霧になるのは、雲が丸ごと落ちてくるからではなく、凝結できる空気の層が下へ広がり、ついには雲底が地表へ接するからなのです。

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参考資料

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